テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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1000年の負の遺産

 

 アイゼンを仲間にすると提案をしてきたベルベット。アイゼンが現在どうなっているのかをベルベットは知らない。

 

「久しぶりにやってきたが、相変わらずの環境だな」

 

 体感的には何ヶ月か下手したら1年ぶりのレイフォルク。

 まともに草木が生えておらず人が住める環境ではない……ただここから僅かだが地脈の力を感じる。エドナとアイゼンの生まれ故郷だけあってか一応は神秘的な山に部類されている。

 

「ここにアイゼンが……」

 

「居る筈だ……」

 

「筈って随分と曖昧ね」

 

「……見れば全てが分かる」

 

 アイゼンはレイフォルクに居る筈だとアリーシャは言う。

 居ると断言できないが十中八九居る。しかしそこにいるアイゼンはオレ達の知っているアイゼンとは大きく異なっている。あの時の様にレイフォルクの山頂を目指して歩いていく。

 

「あの時は未熟だったが、今ならば多少はどうにかなる筈だ」

 

「どうにかなる、ね……」

 

 アイゼンと会う覚悟を決めるアリーシャ。さっさと出てこいと思っていると強い穢れの領域内に侵入をした。

 

「っ、なにこれ」

 

「アイゼンの領域だ」

 

 今のアイゼンの領域の中に入るのははじめてのベルベットは戸惑う。

 前に来たときよりは多少はレベルアップしているので前よりかはアイゼンが放つ強い穢れの領域に対して対抗出来る……いや、そもそもで直ぐ隣に災禍の顕主であるベルベットが居るのだから既に強い穢れの領域の内部に居るな。ベルベット、穢れを放ってないけども。

 

「二人共、準備はしておけ……来た!」

 

「グルゥオオオオオオオウ!!」

 

「アレは、ドラゴン!?」

 

 穢れの領域内に居るのならば何時現れてもおかしくはない。

 戦闘態勢に入ろうとしている最中、空からドラゴンが舞い降りてきて強い穢れの様な物を放つ。オレもアリーシャも長い旅のおかげでちょっとやそっとの穢れにやられない耐性の様な物を身に着けたのでたじろぐ事はしない。

 

「アレがアイゼンだ」

 

「!」

 

「ゴンベエ、ベルベットに説明をしている場合じゃない!来るぞ!マオクス=アメッカ!!」

 

 ベルベットに凄く分かりやすく説明をしているのだがアイゼンは待ってくれない。

 咆哮を轟かせるとオレ達に向かって突撃してくるのでミラーシールドを構えて攻撃を受け流す。

 

「虚空閃!」

 

「ガァアアアア!!」

 

「っ……ダメなのか」

 

 強い穢れを発するアイゼン目掛けてアリーシャは虚空閃を撃った。

 アイゼンは弾き飛ばされるが直ぐに体制を立て直して空を舞う……アリーシャの槍には退魔の力が既に宿っており、その状態での虚空閃は穢れを断ち切る事の出来る技になっている。今のアリーシャはライラやマオテラスの力を経由しなくても憑魔化した人間や植物を元に戻す事が出来る……ただ一つの例外を除いては。

 

「フィーの炎を纏った技でも無理だったのに、それでどうにか出来るわけないでしょ」

 

 浄化の炎を纏った空裂斬をベルベットは見ている。

 それを用いてもドラゴンを元に戻す事は出来なかったので虚空閃だけでどうにかする事が出来るわけがないと否定する。

 

「グルゥァアアアア!」

 

「来るぞ!」

 

 アリーシャの虚空閃でどうにもする事が出来ずに居るとアイゼンは空を飛び、炎を咆哮してくる。

 この程度の炎ならば海波斬で切り裂く事が出来るのだが問題はそこじゃない。アイゼンは穢れを断ち切る虚空閃を用いても元に戻す事は出来ない……ライラも浄化の炎でドラゴンを元に戻す事は出来ないと言っていたな。

 

「アイゼンがあんな調子だし、どうするベルベット?」

 

「どうするもなにも……殺すしかないんじゃないの?」

 

「っ、ベルベット!それはダメだ!!」

 

「アイゼンはこうなると分かっていた筈よ。何れは自分も同じ目に遭うって」

 

「分かっている……でもっ!」

 

 アイゼンをどうすることも出来ないのであの時に言っていた様に殺すことを即座に決断するベルベット。

 アイゼンがテオドラを殺して何時かは自分もドラゴン化するのを分かっていたので殺される事にアイゼンは悔いは残らないだろうがそれでもアリーシャは殺したくないと主張をする。

 

「どっちの味方になればええんやろ」

 

 アイゼンは何れはこうなることが分かっていた。だからザビーダに殺されたとしても文句は言わない。ザビーダじゃなくベルベットが殺しても文句は言わないだろう。ただ……アイゼンにとって最も大切な人が何よりも傷ついてしまう。アリーシャはそれを分かっているので殺す事をしたくはないと言っている……介錯を手伝うべきか、それとも新しい道があるかもしれないと可能性を探すべきか。

 

「っと、また来るぞ!」

 

 アイゼンをどう始末するのか悩んでいるとアイゼンは空を舞う。

 もう一度強烈なブレスを浴びさせられればひとたまりもないとは言わないが怪我をする。過去ではライフィセットやマギルゥが治癒の術を施してくれたが今ヒーラーは居ないので怪我をしたら回復アイテムで誤魔化すしかない。オメガエリクシールとかいうチートじみた回復薬を製造方法の過程から知っているとはいえ、回復アイテムを無駄に浪費してはいけない。

 

「磁界乱そう ジルクラッカー!!」

 

 とりあえずこの場を切り抜けなければならない思考を加速させているとアイゼンが飛んでいる空間に重力波的なのが発生をする。

 この術は知っている。重力を操って相手を押し潰す技でライフィセットが使っていた技だ……だが、ここにはライフィセットはマオテラスはいない。

 

「よぅ、ピンチそう…………はぁ!?」

 

「ザビーダ、あんただったのね」

 

 颯爽と現れたザビーダはオレ達を見て驚く。正確に言えばオレ達でなくベルベットを見て驚いている。

 

「ど、どういう事だ!?俺は過去にタイムスリップでもしちまったのか!?」

 

「違うわよ、タイムスリップしてたのはアメッカ、じゃなくてアリーシャとゴンベエで……説明すると色々とややこしいわね」

 

「一旦下山するぞ」

 

 1000年前の出来事を知っている天族と再会を果たして喜ぶのもつかの間、アイゼンが何時大きく暴れ出すのか分からない。

 とりあえず詳しい説明をしようとレイフォルクを下山する事になるのだが、いちいち山を登っては下ってを繰り返すのは不便なのでフロルの風を用いてマーキングをしておく。

 

「で、どういう事だ?アリーシャちゃんがアメッカの持ってた槍を持ってるのはまだ分かるけどなんでベルベットがここにいるんだ?」

 

「ザビーダ様……ゴンベエ、言ってもいいか?」

 

「ザビーダなら問題無いだろう」

 

 アイゼンの穢れの領域の外に出たので一息つくとザビーダは説明を求める。

 アリーシャの槍とベルベット両方を見ており、アリーシャは説明をすべきかとオレに許可を求めてくる。

 

「ザビーダ様、よく聞いてください。貴方が過去に出会ったマオクス=アメッカは私で、ナナシノ・ゴンベエはそこにいるゴンベエなのです」

 

「どういうことだ?」

 

「私とゴンベエは貴方に出会った後に1000年前の時代に時を越えたのです」

 

「おいおい、冗談キツいぜ。遠くの人と話したりする天響術はあるけど時空を越える天響術なんて聞いたことねえ……って言いたいんだけどな」

 

 ジロリとザビーダはベルベットに視線を向ける。

 アリーシャの言っている話はにわかには信じ難いのだがベルベットがここに居るというだけで話の信憑性は増していく。

 

「ライフィセットが……いや、マオテラスが降臨して直ぐにお前達は故郷に帰ったって聞いたが、ありゃ嘘だったのか」

 

「いや、嘘じゃない。オレ達はライフィセットがマオテラスになって直ぐに家に帰った……お前はどう話を聞いているんだ?」

 

「その前に1つだけ聞きてえ。俺の使っているジークフリートは元々誰の物か、天族は1000年前になんて呼ばれていたのか言ってみろ」

 

「アイフリードの物だろう」

 

「聖主に隷属するという意味合いで聖隷と呼ばれていました」

 

「っ…………どうやらマジのようだな」

 

 まだ信じ難いと言いたげなザビーダ。

 オレ達が時間を移動した事を信じてくれとは言わないが、しかし実際に時間を越える事は出来ており、オレ達が過去で色々とやった証拠としてベルベットが生き残っている。

 

「アイゼンからアルトリウスと相討ちになって終わったと聞いてたがありゃ嘘だったのか?」

 

「アルトリウスへの復讐は果たしたわ。けど、その後にコイツが色々と横槍を入れてきたのよ」

 

 ギロリとオレを睨むベルベット。

 オレがやった事に関してはオレは後悔はしていない。ベルベットの意志を無視してしまっている事に関しては申し訳ないとは思っている。

 

「あの後に色々とあってプルナハ湖の中でずっと眠っていたのよ……そういうあんたこそなにがあったのよ?」

 

「俺も俺で色々とあったんだよ」

 

「どうして喧嘩屋から憑魔狩りのザビーダになったのですか?」

 

 色々とあったで片付けようとするザビーダだが、アリーシャは敢えて触れる。

 

「憑魔狩り?あんた、今、業魔を狩ってるの?」

 

「……ああ……」

 

「それって殺してるって事でしょ?生かしてなんぼじゃないの?」

 

「……」

 

 1000年前のザビーダは生かしてなんぼ生きてなんぼだと言っていた。

 アイゼンが殺す事で救う事が出来るという死によって心の呪縛から開放する理論を認めようとはしなかった。

 

「この時代では浄化のシステムが完成されています。何故貴方は憑魔狩りをしているのですか?助ける事が出来る命を救わず、殺すとは何事なんですか!」

 

「……確かによ、マオ坊の陪審になりゃ浄化の力を得る事が出来る。憑魔化した人間を救う事が出来る……けど、それでも救う事が出来ねえ奴もいる。アイゼンの様に……お前等は1000年前の時と今の時代しか知らねえんだよな」

 

 ザビーダはスッと地図を幾つも取り出した。

 なにか書いているのかと思ったが極々普通の地図で、なにかオレ達が持っている地図と異なる部分があるのか確認をしてみるけれど、特に変わった点は無い。極々普通の地図だ。

 

「ちょっと待って……コレがこの大陸の地図なの?」

 

「そうだが……なにかおかしなところでもあるのか?」

 

「おかしいもなにも、大陸がくっついているじゃない!!」

 

 1000年前の地図をベルベットは取り出し、この時代の地図と見比べる。

 この時代では大陸で続いているが過去の時代では海を挟んでいる……

 

「1000年の間に地震だ火山の噴火なんだ巻き起こって……折角作った街や村が崩壊したなんてザラで、憑魔化した奴の中にはマオテラスの浄化の力を使っても元に戻す事が出来ねえ手に負えねえ憑魔が出てくる。確かに浄化の力が生まれた頃には俺も喜んだ。アイゼンは殺すことが救いだって言ってたけどよ、やっぱそれは間違いだって証明する事が出来た……けど、1000年の間にあまりにも色々な事が起こりすぎた。お前が思ってるよりもあまりにも色々な事が起きすぎたんだ」

 

「……絶望したのか?どうしようのない理不尽で残酷な現実に」

 

 1000年の間にザビーダを喧嘩屋から憑魔狩りに変えてしまう絶望があった。

 地図が大きく書き変わる程の地殻変動が巻き起こってそれに大多数の人間が巻き込まれて、穢れてしまったのを見たんだろう。

 

「当時の導師も必死になってよくやったよ……けどな、それでも救えない奴が居るんだ。そんな奴等をどうにかするのは……殺すしかねえんだ」

 

「ザビーダ様、それは」

 

「ああ、分かってるよ。ホントなら救う事が出来る筈の命を俺は見捨てて殺しちまってる……俺は諦めちまったんだ」

 

 殺す事を救いと捉えている事をザビーダは間違いだと認識している。それでも殺すことで救われる命だって存在していると本気で思っている。

 1000年という時間がザビーダの価値観や考え方を変えてしまう。ザビーダは自分は助けるというのを諦めた事を素直に認めた。

 

「エドナちゃんが導師の仲間に加わってレイフォルクから離れたからアイゼンがどうなったのか気になって来たけど、丁度いい。お前等が居るなら確実にアイゼンを仕留める事が出来る……力を貸してくれや」

 

「……嫌です、私はアイゼンを殺したくはありません」

 

「おいおい、今までの話を聞いてたのか?アイゼンは殺される事には躊躇いはねえ。何時か殺すと俺は宣言したんだぜ?」

 

「ゴンベエは嘲笑ってやれと言っていました……」

 

「アリーシャちゃん、感情論は止めようぜ。あれから1000年も経ってんだ!浄化のシステムも神依も完成された!それでもドラゴンを元に戻す事だけは出来なかったんだ……エドナちゃんは導師を信頼して一緒になってるみてえだが無理なんだよ……」

 

 エドナがアイゼンに心が囚われてしまっている。それはアイゼンが最も恐れていたことで、恐らくはスレイはアイゼンを元に戻す方法を見つけることが……。とにかくザビーダは無理だと諦めてしまっている。

 

「導師の力では不可能かもしれません。ですが、勇者の力ならばどうでしょうか?」

 

「勇者、だと?」

 

「ザビーダ様、今暴走しているアイゼン様は一度だけ意識が元に戻った事があります。ゴンベエの持つカノヌシやマオテラスとは異なる退魔の力ならばアイゼン様を元に戻す事が出来るかもしれません」

 

「おいおい、結局オレ頼りかよ」

 

 アリーシャは最終的にはオレに匙を投げた。

 

「ゴンベエならきっとどうにか出来る筈だ」

 

「そうは言うけどな…………マスターソードを使っても無駄だったんだよな」

 

 未完成とはいえ浄化の炎を纏ったマスターソードでの空裂斬でテオドラの意識を一時的に戻す事が限界だった。

 トライフォースを用いればワンチャン行けるかもしれないが、そうなればベルベットの様に人間かどうか分からない生物に生まれ変わる可能性がある。それではアイゼンを助けたと言えない、アイゼンを元の天族に戻してこそ意味がある。

 

「そもそもアイゼンはなんでドラゴンになったわけ?穢れを持った人間と長く一緒にいてもあの時からその浄化の力とやらで穢れをどうにかする事が出来るんでしょ」

 

 ふと疑問に思ったことをベルベットは尋ねる。浄化の力があるならばアイゼンに纏わりついた穢れを祓う事が出来る筈だ。

 それなのにアイゼンはドラゴン化してしまっている。穢れに満ちた人間と常に一緒にいたわけではなさそうだし……なんでそうなったんだ?

 

「今から200年程前……当時はデスエイジなんて呼ばれる程に飢饉で災厄に満ちていた時代でよ、裏で世界を穢れに満たしている災禍の顕主がいたんだ。アイゼンはそいつを喰い殺すのと引き換えにドラゴンになったんだ」

 

「誓約をかけたのか?」

 

「ああ……それだけ当時の災禍の顕主様がヤバかったんだよ……そっからだ。アイゼンがレイフォルクに舞い戻ったのは……エドナちゃんは何時かはこうなることが分かっていた。けど、その重たい現実を受け止めるのに時間がかかっちまった」

 

 アイゼンがどうしてドラゴンになったのかをザビーダの口から語られる。

 アイゼンは全てを承知した上でドラゴンになった……ならば殺される覚悟は出来ているのだろう。

 

「分かった。アイゼンを殺すのを協力しよう」

 

「っ、ゴンベエ!!」

 

「ただ最後に足掻く権利だけくれよ……オレはまだ底を見せていないんだ」

 

 アイゼンが殺される覚悟はあるのならば殺すしかない。

 1000年かけてもドラゴンを元に戻す方法は見つからなかった。過去の文献でもドラゴンを元に戻す事は出来なかったと載っていた。エドナには悪いがアイゼンは殺す。ザビーダとの約束の為に……でも、でも、それでも足掻く権利は欲しい。

 

「アイゼンを元に戻す……そんでもってアイゼンを嘲笑ってやるんだ。お前は殺すことが救えるだなんだ偉そうなことをほざいたけどホントは救える筈の命を救う事が出来たのにお前は無理矢理諦めさせたんだって」

 

「ゴンベエ、じゃあ」

 

「助ける……なにせオレは勇者だからな。邪悪なドラゴンをぶっ殺すなんてガラじゃない、助けてハッピーエンドを迎えさせた方がいい」

 

「あんたが私を幸せにする道を選んだ様に、今度はアイゼンを助けるのね」

 

「ああ……」

 

 アイゼンを殺せば悲しむ人が1人居る。アイゼンを助けて元に戻すことが出来たなら喜ぶ人が1人居る。だったらどっちを選ぶかは決まっている。これでも不幸なビターエンドやバッドエンドはどっちかといえば嫌いで、わがまま1つで災禍の顕主を花嫁に変えたんだ……だったら助け出してみせる。

番外編

  • 続 異世界プルルン転生記
  • ちょっと昔のゴンベエ達(地獄)
  • ザレイズ 総力戦 決戦KCグランプリ
  • まゆゆんの貧乏くじ
  • スペシャルスキットの続き
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