テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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マオクス=アメッカ

「あ~……あ~、うん」

 

 アリーシャの屋敷前でオレは空を眺めて、ついさっきの出来事を思い出す。

 デクナッツの仮面を使い、デクナッツになってアリーシャを手助けしたら憑魔と間違われた。

 幸いにもアリーシャだけは敵じゃないと信じてくれたが、喋れないのはキツかった。

 

「どうしようか……」

 

 今後、世界は大きく動いていく。戦争して、この国が大勝利!もしくは魔王的なのの登場で戦争なんてしてる暇は無いと停戦、そっから和平のどっちか。それに加えて魔王的なのはスレイがシバき倒し、ハッピーエンドを迎える……オレ、いらねえんだよな。この世界に転生したのは良いが、原作は知らない。転生特典はゼルダと知識という神秘と叡智。現代っ子のオレは異世界の生活に耐えられずに日夜、現代じゃ当たり前の物を作ったりして細々と暮らしている。

 

「ああ、くそ。本当に向いてねえな、オレ」

 

 自分が今後なにをすべきか、今後社会はどう動くか考えるがなにも頭に浮かばない。

 戦闘能力に999のパラメーターを振っているタイプの人間だと地獄で言われていたが、その通りだ。

 他の転生者ならば、例えばオレよりも先に転生した黛千裕とかだったら答えが出せてたかもしれねえ。

 

「ゴンベエ?」

 

「やっと来たか」

 

 色々とああだこうだと考え、時間を潰しているとアリーシャがやって来る。いや、この場合は戻ってくると言った方が正しいな。

 

「街の何処かに居るとは聞いていたが、屋敷の前にいたのか」

 

「まぁ、自転車を此処に置いてきたからな。それよりも、眼鏡に違和感はないか?」

 

「前に貰った物と同じで、ぴったりだ。それよりも、スレイが大変なんだ!スレイが聖堂にやって来て」

 

「聖剣引っこ抜いて、導師になったんだろ?」

 

「あ、ああ。確かにそうだが、どうしてそれを?」

 

「誰も抜けない聖剣を抜いて、暴動を収めたんだ。嫌でも噂になり、耳に届く」

 

 それと当事者だ。なんて言えないが、こう言っておけば納得する。

 アリーシャは噂が早まるのは広いなと驚くが、直ぐに微笑んだ。

 

「なにがおかしい?」

 

「聖剣が抜ければ、この災厄の時代を終わらせることが出来る。私にはあの聖剣を抜く資格はなく、指を咥えて見ているだけだった……だが、もう違う。スレイが導師となり、穢れを浄化し災厄の時代を終わらせる。勿論、スレイだけに世界は背負わせない、私も出来る限りの事を手伝うつもりだ」

 

 どうしようもない絶望的な状況だったこの世界に一筋の希望の光が注ぎ込む。

 導師スレイの誕生はそんな感じで、コレから世界は良い方向へと変わると喜ぶ。

 

「ゴンベエもスレイを手伝ってくれないだろうか?」

 

「え、やだけど?」

 

「凄くあっさりと断る、か」

 

 自分の事をどうにか出来ない奴が世界をどうのこうのなんてやれねえよ。

 それ以前に導師が自転車経営なんだから、どっちか片方いれば良いだろう。

 

「つーか、穢れを浄化するって具体的にはどうすんだ。憑魔一体一体をシバいて浄化しても永遠に終わらないだろうし、親玉をシバき倒しても鼬ごっこが続くぞ?」

 

「それに関しては私も詳しくは……だが、ライラ様なら御存知なのかもしれない」

 

「知らなかったら、スレイは別の意味で地獄味わうぞ」

 

 憑魔は穢れの塊みたいな物で生物どころか無機物に宿ったりするらしい。

 それを全て一体一体浄化なんて、日本のゴキブリを一匹残らず消すぐらいの難しさで実質不可能だ。

 

「そうだ、ゴンベエ。スレイの衣装を用意したいんだ」

 

「用意したけりゃしろよ。オレはそう言うのは門外漢だ」

 

「だからこそだ。今の服装は導師らしい格好ではない、導師らしい衣装をスレイには着て欲しい。一目見て、如何にも導師だと言う衣装を。」

 

「導師らしい衣装ねぇ。勇者らしい衣装なら知ってるけど、それは知らねえな」

 

 神父、巫女、坊さんの衣装しかしんねえ。ギリシャっぽい衣装にしとけば洋風なこの国的にはセーフなんじゃ無いだろうか?

 

「勇者らしい衣装?」

 

「オレの故郷とはまた別の国にある昔話に出てくる勇者の挿絵は確実に緑衣を身に纏っているんだ、ほらよ」

 

 オレは本をアリーシャに投げる。

 この本はただの本でなく、悪乗りして作った物でハイラル語で書いた風のタクトのOPで見る時の勇者の伝説とかが載っている。

 

「スレイは勇者じゃなくて、導師だからつくんじゃねえぞ……どうした?」

 

「この勇者が被っている帽子、さっき見た蛸のような者も被っていた」

 

 あ、やべ。アリーシャの言葉でムジュラの仮面やトワイライトプリンセスとかも書いている事を思いだし、本を回収する。開けていたのが時の勇者のところでよかった。ムジュラの仮面の所にはデクナッツの挿絵を書いているからバレる所だった。

 

「蛸のような者ってなんだよ、天族か?」

 

「それが、よくわからないんだ。ライラ様達も見たことも聞いたこともなく、暴動を起こした者や巻き込まれた者達の肉眼で見えていた」

 

「じゃあ、そう言う感じの生物なんだろう」

 

「そう言う感じの……木の妖精か!?天族が実在するならば、妖精も存在してもおかしくない!!」

 

 ごめん、それそんなに高尚な存在じゃない。むしろ邪悪な方に分類されている。お願い、目をキラキラと輝かせないでくれ。

 取り敢えずはスレイの導師の衣装を用意するとアリーシャは届け、暫くするとスレイ達がやって来た。

 

「あ、ゴンベエもいたんだ」

 

 アリーシャにお礼を言いに来たスレイ。導師の服を気に入っているが、真っ白な導師の服はカレーうどんが天敵だぞ。

 

「色々と聞きたいことがあるんだよ。ライラ、憑魔の穢れを浄化する事が出来るようになったらしいが、諸悪の根元的な奴をぶっ倒したら残った穢れも自然に減っていくのか?」

 

 スレイの礼は終わったので、隣に立っているライラに聞いた。

 諸悪の根元的な奴をぶっ倒せば自動的に穢れが減っていく御都合主義だったら、いいんだがな

 

「いえ、自然には減りません。諸悪の根元……とは言い難いですが、導師が最も浄化をしなければならない強い穢れを持つ存在、災禍の顕主を浄化したとしても穢れは消えません」

 

 ライラは無理だと首を横に振る。やはりそう都合よくは行かないようだ。

 

「先ずは、世界中の穢れの領域を減らしていく事が重要なのです。穢れを浄化するのはスレイさんの導師としての役目なのですが、浄化をして清らかになった土地に再び穢れを近付けさせない為には地の主が必要なのです」

 

「地の主…あ~はいはい、土地神的なアレか。この辺の地域はわしのシマじゃいって線引きして、余計なもんを近付けない代わりにショバ代としてお祈りを捧げんかい、供物を寄越しやがれ的なのか」

 

「ゴンベエ、その例え方は……神、と言うことはその地の主は天族で、天族に祈りを捧げれば穢れから私達をお守り頂けると言うことなのですか?」

 

 いや、だから一緒だろう。言い方はともかく、結果的には。

 

「はい、その通りです……ですが、今この街にいる天族は私とミクリオさんだけです。更に申し上げれば、地の主だけでなくスレイさんの様に穢れの無い器が必要で、その器と共に祀られなければなりません」

 

 要するにこの壺には神様が宿っている、神様ありがたや。壺ありがたや。毎日祈りを捧げろか……ん?

 

「人と天族、共に力を合わせて共存しなければ穢れはどうにか出来ないのですね」

 

 地の主のシステムを聞いて成る程と頷くアリーシャ。そのシステムって、どう頑張っても天族が上にいるから共存とは言い難い。

 霊的な存在で、炎とか出したりすることが出来るのは知っているが……これ以上は考えないでおくか。

 

「街一つにつき、天族一人祀るぐらいの事をすれば穢れを完全に退けるのか?」

 

「完全、とは言い難いですが余程の事がなければ問題ありません」

 

「そっか……ミクリオ」

 

「断る」

 

「でも、此処にいる天族はミクリオだけだよ!ライラは俺の中にいないといけないし……それに浄化の力を手に入れたのは俺で、ミクリオじゃない」

 

 地の主をミクリオがすればと提案するスレイ。サラッと酷い事を言っている気もするが、ミクリオと目線を合わさない。

 

「確かに浄化の力を得ていない。だから、はいそうですかと僕が納得すると思うか?君の考えはお見通しだ。僕が地の主になれば穢れを退けることが出来て、穢れから僕を守ることが出来る。そう思っているんだろう」

 

「……」

 

 ミクリオの質問に答えないスレイ。こういう時の沈黙はその通りですと言っているものだぞ。

 

「ライラ、僕にも浄化の力は扱えないか?」

 

「可能と言えば可能です……ですが、よろしいのですか?浄化の力を得れば今と同じくスレイさんと共に歩めますが、それと同時に穢れが強いところを常に歩き続けます。もしかすれば穢れに当てられミクリオさんが憑魔になり、スレイさんや無垢な民を傷つける可能性が出てきます」

 

「ミクリオ、俺、憑魔になったミクリオを斬りたくないよ。例え浄化の力を持っていても……親友を攻撃したくない」

 

 なんかくっせーのがはじまったぞ。

 ミクリオの心配をするスレイだが、その心配が大きな御世話だ。本人なりに気遣っているが、それがダメだと言わんばかりにスレイの胸ぐらを掴む。

 

「舐められたものだな。スレイ、僕も覚悟を決めて此処へやって来た!憧れと同時に危険もあると分かっていたが外へと出た!なのに、僕だけがノコノコと加護領域を作って引きこもり君だけを危険な場所に行かせるわけにはいかない!なによりも、加護領域を作れば、世界中の遺跡が探検できない!!」

 

 一番はそれかよ。いやまぁ、本人がやりたいことをやらせるのが一番だけども。

 

「スレイ、勝負だ!!僕が勝ったのならば、僕は浄化の力を得る!」

 

「ミクリオ……分かったよ。ただし、俺が勝ったら俺が災禍の顕主を鎮めるまではレディレイクにいて貰うよ」

 

 杖を手に取るミクリオ、剣を握るスレイ。互いに譲れない意思を武器に乗せて、にらみ合う。

 

「ど、どうすれば……このレディレイクに天族の加護が与えられるのは良いことだ。だが、そうなる為にはミクリオ様の御力が必要。しかし、ミクリオ様を留めるわけにもいかない。穢れが溢れる地に赴けば憑魔となる可能性がある。浄化すれば元に戻るとはいえ友を斬りたくないスレイの気持ちも…ラ、ライラ様、どうすればよろしいのでしょうか!?」

 

「なるようになれ、ですわ!これぞ正に青春の一ページです!」

 

「いや、言うてる場合か!!」

 

 殴りあった末に答えが出るとか古くさいんだよ。ライラは見守ろうとするが、こんな屋敷の庭で超常現象引き起こせる奴がタイマンしてみろ。確実に庭が荒れるし、下手すれば屋敷が崩壊してしまう。

 

黄金玉衝撃(ゴールデンショッキング)!!」

 

「ぬぅ、お!?」

 

「あひゅん!?」

 

 バトルしはじめたスレイのスレイとミクリオのミクリオに蹴りを入れる。

 具体的には飛び蹴りしVの字に股を開いて右足でスレイのスレイを、左足でミクリオのミクリオを攻撃している。

 

「お、おぉ」

 

「むごい、ですわ」

 

「そ、そんなに痛いのですか?」

 

「らしいです。金槌で間違えて指を叩いた時よりも痛いらしいです」

 

 地面に倒れて悶え苦しむスレイに青ざめるアリーシャ。

 この程度で済ませた事に感謝してもらいたい。

 

「臭い青春ドラマしてんじゃねえ。つーか、まだ話の途中だぞ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 生まれたての子馬を思わせるほどプルプルと震えるエグい内股で立ち上がるスレイ。

 ミクリオは劇画チックな顔になって痛みに苦しんでるが、天族ならなんとか出来んだろう。

 

「忘れんなよ、現時点で人間はスレイ一人だけだ。ミクリオが浄化の力を得たとしても、浄化の力を振るえるのはたったの三人だ。災禍の顕主が人間みたいに知識や知恵、それに考える事が出来るならば人海戦術されれば瞬殺だぞ」

 

 ぶっちゃけ適当な洞窟に誘い込んで爆弾で爆破的なのをしてみたい。

 一大決戦の末に破れたとかそんなんじゃなくて、あっさりと敗北する姿を見てみたい。

 

「その点についても問題はありません!導師となった者には従士を作る事が可能になります。そして主神となった私は陪神を作ることも出来ます。

従士や陪神となればスレイさんが放つ加護領域の中でなら浄化の力を振るう事が……ゴンベエさん!!」

 

 また便利なシステムがあったものだな。ライラは俺の手を握り、俺の目を見つめる。

 

「貴方が導師となるのを拒んだ事は責めません。それほどまでに導師は危険で、孤独な戦いを強いられるものなのです。ですが、今はスレイさんがいます。例え、困難な道程でも御二人が手を取り合い協力すれば一歩ずつ前に進むことが」

 

「それ、こういう時に聞きたくねえよ」

 

 結婚式とかで言うことだぞ、それ。と言うか、アリーシャを無視すんな。残念そうな顔をしているだろう。

 

「お願い致します、どうかスレイさんと従士契約を結んでください!!」

 

「無理無理無理」

 

「俺も出来れば、ゴンベエと従士契約をしたいかな?導師になる前は、レディレイクに向かうまでは深く考えてないとこもあった……従士でってのはおかしいけど、俺に色々と考えさせてほしいんだ」

 

「うん、無理」

 

 そう頭を下げても無理なもんは無理だ。

 

「ゴンベエ、どうしてそこまで頑なに拒むんだ?」

 

「一重に言えば、世界救うなんて面倒だから」

 

「……スレイ、もう諦めた方がいい。彼は絶対に動かない、それよりも陪神の方を」

 

「それともう一つ……俺は従士になることは出来ない」

 

「?」

 

「まぁ、物は試しだ。従士契約とやらをしてみろ」

 

 首を傾げるスレイに説明をしようとしても無駄だ。と言うか、どういう風に説明をすればいいのかがわからない。

 結果的には従士契約をしてくれるんだと喜ぶライラとスレイ。具体的になにをするかライラが説明をするとオレとスレイの手を握ると目を閉じた。

 

「我が宿りし聖なる技に新たなる芽、きゃあ!?」

 

「うわぁ!?」

 

「ライラ、スレイ、大丈夫か!」

 

 従士契約の呪文を唱えると、炎の様なオーラをライラが纏う。

 オーラを介して俺が従子になるのかと思えば、ライラとスレイは謎の光に弾かれて尻餅をついた。

 

「いててて。大丈夫だよ、ミクリオ。ライラは?」

 

「は、はい。怪我はありません……ですが、契約は失敗です」

 

「契約の詠唱中に噛んだの?」

 

「いいえ、噛んでいません」

 

「なら、呪文を間違えたんじゃないのか?」

 

「昔からこの呪文です。詠唱の方にもスレイさんの方にも問題はありません……ゴンベエさんに従士になる様にした瞬間に私やスレイさんの力が別のとてつもない謎の力に押し返されたのです」

 

「だから、言っただろう。無理だって」

 

 勇気に知恵に力のトライフォース、鬼神の仮面やデクナッツの仮面。

 他にも色々と神秘で胡散臭い力をオレは宿しており、従士契約なんてしたら主にトライフォースが拒む。

 

「謎の力って?」

 

「分かりません、今までこの様な前例はありませんでしたので」

 

「スレイが導師になったばっかで未熟者だからとかそんなのは関係ねえ。ざっくりと言えば宗教的な違いで出来ねえ」

 

「それはどういう意味だ、ざっくりとし過ぎだろう!」

 

「異教を持ち込むの面倒だろう。オレの話はこれで終了。オレは色々と余計なのがあるけど、アリーシャなら従士になれる筈だろ?」

 

「わ、私が!?」

 

 ずっと黙っていたアリーシャは指名された事に驚く。

 この場で肉眼で天族を見れないのは自分だけで、従士に指名されるなんてありえないと思っていたのだろうか?

 

「確かにアリーシャさんは穢れの無い純粋な御方です……」

 

「躊躇いがあるなら、言っておく。オレがこの街に来て、約一年の間、まことのメガネでアリーシャはお前を認知した……見ていたんだろ?」

 

 アリーシャはずっとずっと自分が剣を引き抜けたらと思っていた。

 災厄を終わらせる方法は直ぐ目の前に存在しているのに、手を伸ばす事を許されなかった。

 

だが、今はもう違う。伸ばせないならば、差し伸べればいい。それをスレイは出来る。

 

「スレイ、私が従士になっても良いのだろうか?私はこの眼鏡を使わなければ、ライラ様やミクリオ様の姿を見ることも声を聞くことも出来ない……ズルをしているも同然だ」

 

「う~ん、アリーシャはどうしたいの?」

 

「私は……穢れの無い故郷を見てみたい。私が物心ついた時から、権力者は私腹を肥やし、作物の不作が続いていた。きっと、その時からこの国は穢れていたのだと思う。だからこそ、私は見てみたい。穢れの無い故郷を、スレイと出会ったあの場所の様に美しいハイランドを……だが」

 

「決まりだね、ライラ」

 

「はい!」

 

 アリーシャの気持ちを聞いて、微笑むスレイ。ライラは先程と同じように手を繋いで従士契約をしようとする。

 

「良いのか?」

 

「構わない……いや、違うか。俺も穢れの無いアリーシャの故郷を見てみたくなったんだ」

 

「スレイ……」

 

「私も見たいです。穢れの無いハイランドを……では、参りましょう。我が宿りし聖なる技に新たなる芽いずる。花は実に、実は種に、宿りし宿縁はここに寿がん。今、導師の意なる命を与えよ、道理の証とせん。覚えよ、従士たる汝の真名は」

 

 さっきと同じ呪文を詠唱すると光るライラとアリーシャ。

 この後に古代の言葉でアリーシャに名前を与えるが、この国の古代の言葉ってイントネーションとかムズそうだな。スレイがセンスなくてアウトになる的な展開もありえそうだな。

 

 

 

「マオクス=アメッカ!!」

 

 

 

 

「……え?」

 

 スレイがアリーシャの真名を呼ぶと、ライラとアリーシャから光が消えた。だが、代わりにとんでもないものが出てきやがった。

 

「ど、ど、どうしてその名前にしたんだ?」

 

「えっと……なにか問題でもあった?」

 

「スレイさん、その真名なのですが、千年程前にいたアリーシャさんの先祖と思わしき方と同じ名前なんです」

 

「へ~そうなんだ!アリーシャの先祖と同じ名前なんだ。きっとその人も名前みたいに笑顔が似合う人なんだろうな」

 

「笑顔が似合う?」

 

「うん。マオクス=アメッカは、笑顔のアリーシャって意味なんだ!」

 

「おい、ミクリオ……スレイは素で言っているのか?」

 

「純粋に似合っていると思ってるからそう言っていると思う。スレイに下心なんて存在しない」

 

 要するに天然ジゴロなんだな。ヤンデレを量産して刺されなければ良いが、素でそう言うのを言えるのは羨ましい。しかしまぁ……今の今まで謎だったマオクス=アメッカについてこれでやっと分かった。

 

「ふっふふふふ」

 

「どうしたの?」

 

「気にすんな。スレイはお使いを済ませるだけじゃなく導師になったし、アリーシャは従士になった。ミクリオはどうなるかは知らないが、これ以上はオレが居ても無駄なだけだ。家に帰ってコーラでも作っておくか」

 

 笑うオレを気にするが、オレはここでおさらばだ。自転車を回収してアリーシャの屋敷を出ていった。

 

「未来は明るいどころか、暗くて絶望一色に染まってるな」

 

 時のオカリナを懐から取り出してオレはそう呟いた。





スキット ゴンベエの御仕事

スレイ「ゴンベエ、行っちゃったな」

アリーシャ「ああ、行ってしまった……だが、数日後にはまたやって来る。水瓶いっぱいに入ったコーラをもって」

スレイ「コーラ?」

ミクリオ「そう言えば、スレイが寝ていた宿の主人もコーラがなくてすみませんと言っていたが、それはいったい?」

ライラ「ゴンベエさんが御作りになる炭酸水のジュースです。
甘くて爽快なお味で値段もお手頃、この辺は水は豊かなのですが、炭酸水が涌き出ないので飛ぶように売れています!」

スレイ「へー、俺も飲んでみたいな!」

ミクリオ「この辺では手に入らない炭酸水なのに、どうして水瓶いっぱいの量を用意出来るんだ?」

アリーシャ「それは秘密とのことで、決して危険な事はしていないと……そのコーラを売ろうと、紙芝居をしたりする時もあります。ゴンベエの国のお話で、とても面白いです」

スレイ「異国のお話!?それって、どんなの!?」

アリーシャ「色々とある。例えば世界征服を企む悪の組織に改造された男が正義に目覚めて悪の組織と戦う話とか」

ライラ「子供達には大人気なんです……ただ、そのお話で出てくるダンクロト神と言う神様は色々と強烈過ぎます」

ミクリオ「ダンクロト神…いったい、どんな神様なんだろう」

アリーシャ「それはですね」

スレイ「待った待った、ネタバレは禁止だよ。またゴンベエに会った時にコーラを飲みながら、紙芝居で見ないと!」

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