テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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書いちゃった。


転生したら…

 目を覚ませば知らない天井だった。と言うよりは知らなくて当然で、なにせ転生したんだから。

 

「ふ~…あ、あーーあーー」

 

 何処にでもある質素なベッドからゆっくりと腰を上げて声を出し、喉の調子を確認する。

 特に喉には異常らしい異常は存在せず、そこそこの諏訪部さんボイスが出ている。

 

「手足の感覚に異常なし。いや、それどころか力が溢れでる…って、これじゃあ噛ませの踏み台転生者だな」

 

 自分の溢れる流れでる神秘的なパワーを実感して、喜ぶが直ぐに気持ちを落ち着かせる。

 転生者の定番の踏み台転生者にならない。オレはそんな事の為に転生したんじゃない。

 

「幸せにならないとな…」

 

 オレは世に言う転生をしている。正確に言えば創作物の世界に転生する謂わば二次創作の転生者だ。

 良い行いをしまくったから転生?神様のミスだから転生?違う、そう言うのじゃない。神の子の宗教とかに鞍替えしていない日本人は死ねば自動的に三途の川を渡り歩き、地獄に一度落ちる。そこで裁判をして生前の行いやお供物とか供養の仕方とかで地獄か天国行きか判断する…鬼灯の冷徹に似ている感じだな。通常は裁判をするけど中には例外が存在している。生きたまま冥界に地獄に人、現代にはそう言う奴はもういないから省く、生きたまま地獄に来るやつなんて大抵ロクなことしない。

 

「って、どっかにアレがあるはずだ」

 

 例外の中には子供も入る。

 親より早く死んでしまった子供は問答無用で賽の河原とか言うところに飛ばされて、暫くすると転生する。

 異世界転生じゃなく、輪廻転生の方なんだが、最近システムが変わったらしく二次元に転生しようと思えば出来る様になった。強制じゃなくしたい奴だけするシステムで、即座に転生はさせてくれない。

 オレは比較的に青年に近い年齢で死んだから良いけど、10歳以下の子供も居るわけで、間違った価値観や倫理観を押し付けられると困るので色々と勉強させられる。オレはつい最近、そこを卒業して異世界…いや、二次元転生を果たした。

 

「お、あったあった」

 

 ベッドから降りたオレはあるものを探し、見つける。

 ベッドの下にエロ本を隠すかの様に置かれている縦でなく横に長い長方形のファンレターとかに使う封筒、コレには色々と書かれている。転生先、転生特典、自分以外に転生者が居るのか、自分の立ち位置等色々と書かれている。転生したら真っ先にコレを読んでおけと言われており、オレはゆっくりと封筒を開いて中に入っている便箋を出す。

 

【長くもなければ短くもない期間の研修、お疲れ様です。貴方が転生した世界は限りなくゲーム版に近いけど、何だかんだでベルセリアと連動しているテイルズオブゼスティリアの世界で、この世界に転生者は貴方しか居ません。私達は基本的に見ているだけで、此処からは貴方の人生です。どうか第二の人生をお楽しみください。尚、今回転生した世界で一番のハズレを引きました】

 

「え、っちょ、マジかよ!?」

 

 自分が居る世界が地獄目線ではハズレだと言われ、オレは衝撃を隠せない。

 あんだけ努力したのに、物凄くハズレって…まぁ、確かに行きたかった世界には行けなかったな。ワールドトリガーとかに転生してみたかったんだけど、文句は言えないし頑張ればまた転生できる。

 

「転生特典はっと…?」

 

 一番の問題は転生特典だと転生特典を確認する。

 使えそうな感じの程よい万能な転生特典…だけでなく、変わったものが入っている。

 

「知識限定で知りたいことを教えてくれる?」

 

 仮面ライダーのベルトやスタンド名とか分かりやすい転生特典じゃないものが紛れ込んでいた。

 コレはどういう意味なんだと考えてみるが、よく分からない…試してみるか。

 

「え~っと……7297491×4919…お!」

 

 適当な数字で掛け算をしてみると、35896358229と頭の中に答えが出た。

 

「じゃあ、大小大小大小大□小大小大、□に入るのは……なんも出ねえな」

 

 別の問題を浮かべるが今度はなにも入らない。

 

「ねるねる○るねの元素記号」

 

 ならばと別の問題を出すと答えがでる。

 C₆H₈O₇ + 3NaHCO₃ Na₃(C₃H₅O(COO)₃+3H₂O+3CO₂(CaCO₃+H₂O→Ca(OH)₂+CO₂と…合ってるかどうかと聞かれれば頷きづらい。けど、この転生特典の使い方はよくわかった。理系の問題の答えを簡単に出してくれる、そう言った感じのものだと思う。試しに吉○家の牛丼のレシピを考えて答えがほしいと思うと、投稿サイトに載っているレシピが出てきた。

 

「……どう使えと?」

 

 料理のレシピを教えてくれるのは嬉しいが、別に出来ないわけでもない。

 理系の問題の答えを教えてくれるのも嬉しいが、こう言うのは専門職しか役立たず知識よりも知恵重視な文系の方が社会で役立つ筈だ。

 

「考えたって無駄だし、外の空気でも吸うか」

 

 使い方がよく分からん転生特典を頭の隅に置き、外に出る。

 そう言えば、テイルズオブゼスティリアってなんだ?テイルズは聞いたことあるが、やったことはない。二次元の世界ってことはゲームかアニメのどちらかだと思うが……

 

「嘘だろ、おい……」

 

 外に出るとオレは驚いた。オレが眠っていたのは小さな一軒家だが、それ以外にはなにもない。

 

「直ぐ側に川って、洪水起きたら死ぬ……いや、転生特典使えば良いのか。って、ちげえ。文字通り広大なまでの草原にオレ以外の人の気配を感じねえ」

 

 オレは恐る恐る転生特典の一つである海賊が使ってそうな片眼の望遠鏡を取り出す。頼むから、そう言う感じの世界じゃない様にとオレは強く願った……だが、そんな希望は一瞬で消えた。

 

「道らしい道はなし…完全に現代でも江戸でもないな。文字通りの異世界で地球っちゃあ地球だけど、独自の方向に進化してやがる感じか?」

 

 望遠鏡で見ても、道の舗装はされている所や立札らしきものはなし。

 川が直ぐ側にあるからと試しに歩いてみるけど…中世風の世界観だが独自の方向に進化した異世界…いや、進化できなかった世界か。

 

「よくよく見たら、水車小屋みたいな感じか……」

 

 これ以上は歩いたらダメだと来た道を戻り、一軒家を見る。

 現代の一軒家とは遠く離れている石や木で出来ている一軒家で、中に入ってみると色々と無いのに気付く。

 

「エアコン、テレビ、炊飯器……湯沸し機も無し」

 

 現代じゃあって当たり前のものはなにもない。

 風呂は薪を入れて温めるタイプで、シャワーは…って、これテルマエ・ロマエで見たことある風呂だ。幸いにも水は直ぐそこにあるし、なんかトトロでみた上下に動かして出す水道は存在する。飲める水かは分からないが、沸騰させたりすればなんとかなるだろうし……物凄く綺麗な水だから、身体を洗うのにも使える。

 

「食器類全般も御丁寧にある。衣類も金らしきものも食材もあるが底をつく、か」

 

 色々と優しくしてもらっているのでありがたいが、あんま喜べねえぞ。

 冷蔵庫、氷を入れて冷やす大正時代の冷蔵庫って…いや、まぁ、転生特典で氷を作れるから良いんだけどよ。

 

「……ハズレだな」

 

 ベッドがあった部屋に戻り、寝転んで天井を見ながら考える。

 この世界、多分、ハズレの世界だ。ゲーム無いし、漫画無いし、バスケも無い。下手すりゃ吉○三の歌よりも酷い世界に転生した…いや、下手すりゃじゃない確実だ。

 ここが二次元ならば物語があり、確実にロクでもない事になるのは確か。えっと……確か、FGOの世界に転生して生き残った無限に転生出来る人が二次元は読者だから面白いとかそんな事を言ってたな。

 

「今後の事、考えねえとな」

 

 どうせオレが居なくても、物語の方は勝手にハッピーエンドを迎える。

 原作知らねえけど、純粋に強い人間が一人いれば少しぐらいは良い方向に向くだろうが、関わるつもりはない。

 世界救ったり魔王倒したり領地経営なんてする柄じゃない…高い地位につくとロクなことにならない。

 

「王族とか貴族制度ありありなんだろうな。国に仕えるに人間になりたくないし、ある意味この家は正解かもしれねえな…羽ペンとか始めてみるかな」

 

 寝ながら考えているだけじゃダメだと直ぐ側にある椅子に腰を掛けて、机と向かい合う。

 

【何処かの街に出る 王族貴族制度あろうがマイペース1 世界観を知る 2 文明のレベルを知る 3 そこよりも大きな街を知る 4 仕事を探す 5 戦闘系はNG 6 世界を救ったりとかしない 7 家のレベルを上げる 8 コネを作る 9 出会いを求める 10 一夫多妻だろうがハーレムNG】

 

「まぁ、こんなもんか…」

 

 これから先のしなければならないものを取り敢えず纏めてみる。今後、コレが変わってくる可能性があるがそれでもコレを守っておきたい…無理だと思うけど。

 

「原作次第だと関わってたけど、そうじゃないなら真面目に勉強して良い学校とか入ったり、スポーツで活躍してプロにって思ってたんだけどな」

 

 地球が舞台のファンタジーでもなければバトルものかどうかも分からない世界に転生してしまった。

 誰かを救ったりする暇なんて何処にもない。出会いを求める暇なんて無いかもしれない。初日だからか不思議と腹がすかないオレはもう一度、ベッドに戻り寝転んで手の甲を見る。

 

「オレ、楽器とか弾けねえんだけどな」

 

 手の甲は黄金に光り輝く。

 光り輝く三つの三角形が大きな三角形がオレの腕には宿っている…が、オレには勇気も知恵も力も特にない。と言うよりは楽器とか上手く弾けねえから、一部の転生特典は…無駄になるかもしれない…

 

「音楽家とかオレに一番、似合わねぇ……」

 

 オカリナにタクトにラッパにギターに竪琴にコンガにハープ。

 どれもこれも生まれてこの方触ったことねえし、地獄でも教わらなかった。オレはこれから先の生活を心配しながら、ゆっくりとゆっくりと意識を落として眠りについた。


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