「あ~疲れた」
自分で手伝わないとか傍観主義に徹してる馬鹿はオレである。
結果的にはスレイがパワーアップしたから良いものの、傍観主義に徹したいよ。でも、魔王が居るんだよな。
「本当、なにやってんだろ。どうせ放置してもハッピーエンドで良い感じに終わる話……だよな?なんかベルセリアがどうのこうのとか書いてたけど、続編があってまた災禍の顕主登場とか世界の真実的なのねえよな?そんなんしたら、炎上もんだぞ」
あの後、水中で大翼の歌を弾いて、家へと帰ったオレは布団に引きこもる。
何時もの様にコーラを売っておけば良かったのに、スレイのレベルが8ぐらいの時に幹部とかの負けイベント発生するかもと調子こいてついてったんだ。別にスレイが災禍の顕主倒さなくても良いんじゃねと思ったんだ。
「はぁ、本当になにやってんだろ。これじゃあナビィと変わらん……あ、雨降ってる。洗濯物入れねえと」
色々と悶絶した後、雨が降ってることに気付く。
雲の流れ的に降らないと思っていたのに、急に降りやがったな。
「って、うぉぁお……雨に対しての川の奔流の比率よ!」
外に出ると…こう、あれだ。傘は差さないといけないけど、そこまで酷くない皮膚に当たっても痛みを感じないレベルの雨がふっていた。
しかし、直ぐ側にある川はおっそろしいぐらいに奔流しており、そこまで流れるかとツッコミたくなるレベルだった。
「流石に水車ぶっ壊されるのは嫌だからな……自然を無理矢理弄くると後々、面倒になるけども嫌な事から逃げる努力はしないと」
このままだと家とか色々とぶっ壊れてしまう。
アリーシャが不便な生活するぐらいならレディレイクに住めば良いのではと勧めてくれるが、王都なんぞに住めば税金の未払いとかがバレてしまう。脱税とか色々とやってるし、変なものを作った罪で処刑されるかもしれん。オレは時のオカリナを取り出して太陽の歌を吹いた。こう言うことをするとややこしいのだが、やっとかないと生活が危ない。
「取り敢えず、洗濯物を……ええーーー!」
太陽の歌を吹いて、雲一つ無い爽快な青空にした……と思ったら、一瞬で雨雲が集まった。
どんな自然現象だよと驚きながらも、オレはもう一度太陽の歌を吹いて雨雲を消して青空にする。
「っち、自然現象じゃねえのか」
だが、また雨雲に戻ってしまう。
如何に異世界といえども、こんなのはありえない。ビールとかシャンパンとかグミの雨ですら、普通の雨の様に降るんだから。そうなると考えられるのは憑魔になった自然を操るなにかだ。つーか、天族だな。
「このままだとこっちの生活がままならねえ、スレイが無理ならライラでも引っ張って来るか」
自転車を取り出し、オレは川辺を下る。
川になんかいるかどうか調べ、いなかったらレディレイクに向かって誰か引っ張る。スレイ達に恩を売っておくのは良いが、逆に恩を返さないといけなくなるのは嫌だから出来れば直ぐに終わってくれれば良い。そう思い、レディレイクに向かう目印となる橋がある所まで向かうのだが、珍しく大勢の人や王都の騎士達がいる。
「おい、どったんだ?」
「ん?ああ、コーラ売りか……見ての通りだ」
「いやいやいや、見てわかんないから聞いたんだ」
「川が奔流し、向こう側に行く橋が壊れたんだ。この辺で向こう側に渡る橋と言えばこの橋だけで、石橋作りの職人達もこの様よ」
騎士はチラリと木陰にいる職人達を見る。
蒸し暑いなと職人達は暑がっており、やる気を全くと言って見せない。
「いや、流石にこの川じゃ無理だ。ひのきぼうとか突っ込んだら根本からボキッといく」
「川の奔流を何度も何度もくらっても壊れないのが石橋だ。だったら、この奔流でも壊れない物を作れないでどうする?帝国からの支援金はちゃんと渡されているはずだ」
そこそこ外道な発言をしている衛兵。職人達は無理なら無理で金を返せばいいだけなのに、税金が高くなったとかでなんかに使って返すに返せなくなったな。後、受け取ってから無理ですだと職人としての価値が落ちる。仕事が出来る様になれば、ちゃんとするんだろうな。
「奔流の原因はなんだ?何処かの水路ぶっ壊れたか?」
「いや、それが」
「水神様だよ」
「?」
「水神様が水を荒らしてやがるんだ。橋を壊すのを俺達はこの目で見たから確かさ」
「と、こんな事を言っている」
木陰にいた職人のおっさんが橋を作れない理由を聞いて呆れる衛兵。
水神様と言うことは、天族なんだろうな……穢れに呑み込まれて、エドナの兄みたいにドラゴンみたいに見えるレベルになった天族か。
「なにが水神様だ、仕事を放棄しおって」
「そう言うなら、聖剣抜いた導師を連れてきやがれってんだ」
「おいこら、オレを放置して喧嘩すんじゃねえ」
いがみ合う衛兵と橋職人達。スレイは倒してしまったから、アリーシャを引っ張っていってもどうしようもない。ライラとミクリオに頼んでもダメっぽいだろうし、明日の生活の為に頑張るか。
「もうオレがどうにかするから、退いてろ」
「どうにかするだと?お前がか?」
「オレ、コレでも魔法使いなんでな」
手から炎をボォオオっと出して、職人と衛兵を黙らせる。もしかしてという顔を橋職人達は浮かべるが、オレは導師でなく勇者である。
「はい、じゃあいくぞー」
両手の指を指の間に入れて交差し、天に掲げるかの様に手を伸ばす。
「え~……天に輝くは万人を照らす焔。その道筋を行くは12の輝き、今その輝きの奇跡を御覧あれ。我が使いしは11番目の輝き、万人を癒す清らかなる水を入れし器を持ちし天帝の浮気相手」
「おい、待て。なんだその詠唱は」
「今こそ絶対…は無理っぽいけど、永久凍土を今此処に!!オーロラエクスキューション!!」
適当な詠唱を言い、魔力を溜めて放ったのは冷気。目の前にある壊れた石橋の残骸ごと川を凍らせた。
「お、おお……川が瞬く間に凍りついた!!」
「いや……まだだ」
「なに?」
割と手を抜いて放ったオーロラエクスキューション。
威力的に言えば、ダイヤモンドダストと変わらず、水瓶座最強の奥義じゃない。凍らせたのは本当に極一部だけであり、川全体を凍らせたわけじゃない。
「っ、来たか!」
「す、水神だぁ!!」
魚じゃなくて憑魔なら壊せるレベルの氷にヒビが入ると、竜巻が起こる。橋職人が水神だと騒いで逃げていく……て、おい、衛兵まで逃げんなよ。
「どうやら川の奔流の原因はお前の様だな」
竜巻の中に蛇の様な憑魔がいやがる。
アレをぶっ倒せば恐らくこの雨も川の奔流も止まる。
「はいじゃあ、ゼブルゥウ!!ブラストォオオオオ!!」
ぶっ倒すべき相手を見つけたので、速攻でけりをつける。右手の拳に雷を纏わせて、蛇の憑魔を殴り飛ばすと当時に雷を放つ。
「はい、終了……雨が止んだか」
憑魔を一撃で倒すと、雨が止む。それだけでなく川の奔流も弱まっていき、雨雲も消え去る。
「お、おい……今、竜巻に攻撃しなかったか?」
「もしかして、最近噂になっている導師様じゃ」
「ちっげーよ、最近噂になってる導師ことスレイはレディレイクで寝てる。オレはこの川の上流で暮らしているナナシノ・ゴンベエで、導師でもなんでもねえよ」
「だ、だけど今、雷とか氷を」
「使ったけど、オレは導師じゃない。名無しの権兵衛だよ。それよりも川の奔流もさっきと比べて収まったんだから、作ってくれよ」
「そうしたいのは山々だが……この流れではまだ橋作りは出来ない」
流れがさっきよりも緩やかになっただけであり、強い激流に変わりはない川。
橋職人達は申し訳なさそうな顔をしている。
「な、なぁ、もう一度、川を凍らせる事は出来ないのか?」
「出来なくはねえが、水圧とかで氷が砕けたり溶けたりする。根本的な所からカチンコチンに凍らせないといけねえが、水は自然の中で最も多い。
一ヶ所を凍らせてもどっか別の隙間から出て来て、その隙間をぶっ壊して大きな穴を開きやがるから……いや、待てよ?」
川を凍らせている間に橋を作ると言うが、そこまで器用じゃない。
しかし、代わりに良い案が…いやこれ、良い案なんだろうか?とにもかくにも、面白いのが浮かんだ。
「橋職人、ロープとかあるか?」
「ロープならあるけど、なにに使うんだ?」
「いや、ちょっとトリックに。アリバイを証明するトリックに……藁束も持ってきてくんない?」
「持ってくる、ちょっと待っててくれ」
取り敢えずこのまま放置していると物流とかがヤバイ。
頼むから藁束とかあってくれよと願っていると一人の男性が近付いてくる。
「すまない、助かったよ」
「ん、ああ気にすんな」
お礼を言ってくるけど、オレの家が壊されない為にやっただけだ。と言うか後で洗濯物をどうにかしないといけない。後、今日の夕飯なにしようか。
「だが、君が居なければ元に戻ることが出来なかった。長い間導師がいなく、穢れに呑み込まれた私を助けてくれた事を本当に感謝する」
「……ん?」
「ああ、自己紹介がまだだった。私はウーノだ」
「え~と、お前」
「お~い、藁束もロープも沢山あったぞ!」
「あ、うん」
天族かよ、お前。
浄化した天族はオレを導師だと勘違いしているのだが、そんな暇は何処にもない。橋職人達からロープを受けとるとオレはペガサスブーツに履き替える。
「よーい、ドンっと!」
ペガサスブーツの空を歩ける力を使い、向こう岸に渡り、向こう岸にロープで縛った杭を何本も打ち込む。
「よし、じゃあやるか」
「やるって、なにをやるんだ?」
「① 藁束を投げる ② 水をぶっかける ③ 凍らせるの繰り返しで向こう岸に繋ぐ。氷の橋を作って、それが溶けるまでの間に石を埋め込む……とにかく人手が必要だ!」
かの有名な金田一の色んな意味で命がけのトリック。それを一時的に作っておいて、その間に橋を作らせる。
その場しのぎにしかならないかもしれないが、やらないよりましだ。オレは藁束を投げ、バケツで川の水を掬い藁束に投げて凍らせる。
「……案外、頑丈だな」
なんちゃって金田一のトリックなので怖く、地面にかかと落としを入れてみるも特に壊れない。
「おい、此処にも氷を頼む」
それを見て、橋職人はやる気を出す。
藁束を投げてバケツにいれた川の水をぶっかけてくれたのでオレは凍らせる。役割分担をし、一応の氷の橋は完成した。一応だけど。
「時間的にもって数日だから、それまでに何とかしろよ」
「ああ、助かったよ。導師様!」
「導師様じゃねえつってんだろ!それはレディレイクで寝てるスレイだ!」
何度言わせれば気がすむ。此処にいる奴等はオレの事を導師だと勘違いしてやがる。
「雷とか氷を扱うのは導師だろう」
「でも、レディレイクに伝わっているのは浄化の炎だったような?」
「じゃあ、この人は……」
「オレか?オレは……ゆ……オレが誰だって構わねえだろ。こうして橋を直す切っ掛けは与えたんだ、後はこれをお前達が上手く活かす。困ったら導師様、導師様じゃねえ。導師様は一人しかいないんだから、お前達が頑張らないといけない。むしろ、導師様なんぞに頼るな」
危うく勇者と名乗りかけたが、勇者なんて柄じゃないし面倒。
魔王に世界の半分をくれてやると言われたら、オレは確実に寝返る男だ。世界の半分を貰ったら、アリーシャの屋敷ぐらいの大きさの家に暮らして美人なメイドを雇ってキャバクラに通いたい。もう最近、結婚とかよりも風俗で良いんじゃないかと思うようになってきた。
「さてと……ウーノだったっけ?さっきから何度も何度も言ってる様にオレは導師じゃない。今、導師はレディレイクにいる。レディレイクにある聖剣を引っこ抜いてお前が知ってるであろう手順で導師になった男がいるから、取り敢えずそっちの方にいかないか?」
「それは構わないが、君はいったい……」
「名無しの権兵衛だよ、ほらいくぞ」
自転車に乗って颯爽と行きたいところを押していくんだ。オレ達はレディレイクに向かった。
ゴンベエの術技
オーロラエクスキューション
氷の魔法で絶対零度に近い冷気をぶつける。
詠唱の中に天帝の浮気相手と言っているが、紛れもなく浮気相手。水瓶座最強の奥義のパチもんだが、威力は強い。
ゼブル・ブラスト
絶対的な雷を拳に纏わせ、殴り飛ばすと同時に纏った雷を飛ばす魔王の咆哮。