「全集中!水の呼吸、壱の型!水面斬り!」
「どうやらコレで終わりみたいね」
救世軍から街への地図を見せてもらい頭に叩き込んだ。
道中に魔物が出てくると言っていたので魔物を倒していく……こんな事をしてもワクワクを感じない。魔物を倒して経験値をゲットしてなんてRPGのド定番中のド定番な行いなのに俺はなにも思わない……
「ここがか……普通の街……いや、違うか」
「イクス、なにか心配事でもあるの?」
「なにかが起きている、俺達が知らないだけで……でも……俺には関係無い事だ」
マークさんが救世軍と言っていて魔女と呼ばれる者と敵対している。
魔女っぽいのは前に見かけたミリーナさんだ……ただ冷静になって考えてみればミリーナさんがあの時に何時もみたいにストーキングしてくればいいのに何故か魔女っぽい格好をしていた。そんな事は割とどうでもいいと思っていたが、今になって思えばここに居るミリーナさんとあの時に出会ったミリーナさんが違っていた気がする……だが、どうだって良いことだ。
帰るべき故郷は滅んだ、イクスくんの祖父は死んでるかもしれない……俺自身の人格は100%白崎敬太だ。自転車に乗って道を走っていると葬式会場で葬儀が行われている、あ、誰か死んだのかぐらいの認識だ。
「…………イクス…………怖いって思うし戸惑う事も多いけど一緒に頑張りましょう!」
「嫌です、ミリーナさんと一緒に居たくないです……もう10回以上話してますけども俺はイクスじゃないんです」
故郷を失い新天地で頑張ろう!とミリーナさんなりに励まそうとしている、その気持ちは嬉しいがミリーナさんはイクスに対して言っている。ミリーナさんが大好きなのはイクスだ、俺じゃない。そして俺もミリーナさんは綺麗な人とかそういう認識はあるが性愛の対象じゃない、俺にはちゃんとオタク趣味を理解してくれる彼女が居たんだ。一緒に薄い本作ったりオタク談義で盛り上がったりして楽しかったのは今でも心に残っている。
「イクスはイクスでそれ以上でもそれ以下でも無いわ!」
「だから、ちゃんと話を聞いてくださいよ!頭バーサーカーですか!…………」
どうしてミリーナさんは俺をイクスだと認定しているんだ?
何度も俺はイクスじゃなくて白崎敬太と言う人間だと話した、中二病な設定じゃないと真剣に話している。それでもイクスはイクスなのだと否定してくる。俺の人格はイクスじゃない、100%白崎敬太だ。イクスの知識と記憶のみを持っているだけで完全な別人だ。
「そこの者達、なにを騒いでいる?」
「あ、すみません…………なんかよくわからないんですけど海に出てたら故郷が火の雨が降り注いで……」
「……ま……まさか生き残りか!?」
ミリーナさんに対してツッコミを入れていると街を巡回している衛兵に声をかけられた。
深く関わり合いは持ちたくないのだが情報だけは頭に叩き込んでおこうと故郷が火の雨で燃えた云々を言えば衛兵は驚いた。
生き残りなのか発言からしてやっぱり故郷は完全に滅んでしまっている、別に愛着らしい愛着は特に抱いていないが生き残りが居たのだと驚かれた。
「やっぱり、完全に滅んだ感じですか……まぁ、いいか。取り敢えず就活したいんで……漁師の仕事をしてたので仕事を斡旋してくれたらちょっと嬉しいかな……なんて」
ミリーナさんから逃亡を繰り返してて路銀が底をついたとは言わないがかなり減っている。
真面目に働いておかないと……まだ学生だったし電子工学メインで勉強してたのに何故に漁業で働かなきゃならないんだろ……いや、蟹とか鮪は成功すればスゴく儲かる世界だとは聞いたことがあるけども。
「漁師の仕事……まさかイクス・ネーヴァか!?」
「いえ、白崎敬太です」
「そっちに居るのはミリーナ・ヴァイスか…………全員集まれ!!なんとしてでも奴等を捕らえよ!!」
「え?え?」
何故かイクスくんの名前を当てる衛兵
隣にいるミリーナさんの名前もピンポイントで当てたのでなにか訳ありであり衛兵は笛を鳴らした。
笛を鳴らしたと思えば街の巡回にあたっている衛兵達が集ってきたので俺はマズいとミリーナさんの手を掴んだ。
「ミリーナさん、逃げますよ!」
「え、でも」
「確実に厄介な事に巻き込まれる!自ら進んで地雷を踏みに行く程に俺は馬鹿じゃない!ミリーナさんも危ない事に首突っ込まないでください!じゃないとイクスくんが悲しみます!」
衛兵達が俺達を捕らえようとしてきている。
ミリーナさんとの逃亡劇で手に入れた3Dマリオの様な立体的なパルクールな動きで住居の屋上をミリーナさんを抱えて飛び乗っては逃げる。向こうは鎧姿の衛兵達、ならば身軽さに置いてはこちらの方が圧倒的なまでに上であり住居を飛び交い街の出口を見つけたので飛んだ。そして何かにぶつかった……目には見えない壁、なんだコレと理解が追いつかないまま地面に倒れた。
「クソッ……なにすんだよ!」
衛兵達に捕まり武器を取り上げられた。頑丈な手錠で拘束されて連行されたのはデカい宮殿で……なんだここは?
この感じの展開からして牢屋にぶち込まれるのが普通だろうが何故か馬鹿デカい宮殿の馬鹿デカい部屋のよくわからないバカでかい装置が置かれている場所に連れてこられた。
「すまない、手荒な真似をしてしまった」
「…………ミリーナさん、なにしてるんですか?」
「我が名はゲフィオン、そこの者とは違う」
「いや、俺の隣にいるのミリーナさんだって一言も言ってないですよね?」
「…………」
1回だけ出会った魔女っぽい格好をしているミリーナさんが現れて手錠の鍵を外して武器を返してくれた。
捕まえろって言ったのは大方このミリーナさんだけども……ミリーナさんは隣にいる。しかし目の前にもミリーナさんがいる。つまりはどっちかがミリーナさんの偽物……となるのだがミリーナさんの偽物と言われても妙な違和感しか感じない。
「…………………もしかして、どっちかミリーナさんが術で生み出したミリーナさんの分身とか一側面的なのか?」
「……何故、何故分かったの?」
「…………なんとなく?と言うかミリーナさんを相手に逃亡する日々を繰り広げてたから俺の中のミリーナさんレーダーが反応してるんだけど……」
どっちかが偽物、と言われても違和感を感じるので浮かんだ事を呟けば魔女の格好をしているミリーナさんは自分自身がミリーナさんであることを認めた。なんで分かったかと聞かれてもミリーナさんはミリーナさんだし、ミリーナさんレーダーに引っかかっている。
「この人が私?………………どういうこと?」
「さぁ……イクスとイチャイチャしたいけども仕事を放棄するわけにはいかないからミリーナさんがイチャイチャ担当を作ったんじゃないんですか?」
「え……じゃあ私は……ミリーナ・ヴァイスじゃない、ミリーナ・ヴァイスの記憶と人格を引き継いでるだけの偽者ってこと?」
「まぁ、考えようによってはどうなるんじゃないんですかね?」
今まで頭バーサーカーだったミリーナさんも目の前にいるのがミリーナさんだとなれば頭は少し冷える。
目の前にいるのが自分だと言われても全くと言ってピンと来ていないが自分自身が何者なのかが分からないとミリーナさんは怯えている。自分は偽者だと分かればなんとも言えない落ち込んだ顔をしている……
「ミリーナさん……イクスが好きだって言う思いはきっと本物のミリーナさんと同じはずですよ……ミリーナさんが偽者とか本物とか関係無いと思いますよ」
「で、でも」
「偽物が本物に勝てないなんて事はないんですよ……今日まで俺と追いかけっこを繰り広げていたのは貴女ですし、貴女が思っている様に……偽物だろうが心はある。それでいいんじゃないんですか?」
「イクス……うん!そうね!目の前に居るのがオリジナルの私でイクスとイチャイチャする為に生み出されたのなら……そうよイクス!デートに」
「だから何回も言ってますよね!俺はイクスじゃないって」
いい感じに話を纏めたらミリーナさんが持ち直した。
しかしイクスくんに向けている感情を向けているので否定から入ればオホンと魔女の格好をしているミリーナさんが咳き込んだ。
これからシリアスな空気になる筈がイクスくんとイチャイチャしたいが為にイチャイチャ担当の自分を生み出すのは……恥だろう。いや、それ自体は恥じゃない、それを好きな相手だったイクス……と思わしき人物にバレる……これほど恥ずかしい事は無いだろう。
「…………まず…………なにから説明するべきか……」
「なんか故郷が滅んだ的なのは聞いてますよ」
「いや、故郷どころではない……このセールンド王国の首都であるセールンドがある大陸以外滅びた」
「…………そうですか」
「驚かないのか?」
「いや、だって……思い入れもなにもないところが滅んだと言われてもそれがどうした?って話になりますし」
石川県出身だけども青森で交通事故が起きたとニュースで見て、あ〜物騒だなぐらいの認識と同じ感じだ。
イクスならば色々と思うことがあるだろうけども俺は……マジでなんの思い入れもない、他の人達も死んでると言われても仲良くないから……しいて言うならば祖父さんが死んじゃったのがな。
「で……わざわざ俺達を探していた……いや、この場合だと俺を探してたみたいですけどなにかあるんですか?」
「この世界は滅びの危機に迎えている……まず」
「業界用語を1から説明したりするのめんどくさいですしかいつまんで、ザックリと分かりやすくお願いします」
「アニマから発するキラル粒子をこの世界に満たしアイギスの盾を直さなければならない」
「……要するにこの世界は重大なエネルギー不足が起きている、それを解決する何かを俺は持っている……そんな感じか」
「スゴくざっくりと言えばそうなるわ」
アニマはなんだっけ……魂のエネルギー的な感じで色々な属性的なのがあった筈だ。
それが今、この世界は不足している。魔術的なのがある世界で深刻なエネルギー問題、そりゃ大変だが…………俺になにが出来るんだ?こう、斬撃を飛ばす的な事をすることは出来るけども……
「この世界は今、キラル粒子が満たされていない……キラル粒子を満たさなければならない」
「満たすって言いますけど……どうやって?」
「このカレイドスコープを使うのです」
「…………平行世界からエネルギーを搾取するんですか?」
「……………貴方、ホントにイクスなの?」
「だから何回も言わせないでくださいよ俺はイクスじゃないって……その手のファンタジーなものは知識はありますよ」
どうやってアニマを満たすのかと聞けばカレイドスコープを使うという
カレイドスコープと言えば万華鏡だ、平行世界とか異世界とかを見たりしたりしてそこからエネルギーを搾取する的な感じだろうか?
あまりにも話がスムーズに行っているのでゲフィオンさんが色々と疑うのでイクスじゃないから持っている知識だ。
「平行世界からエネルギーを搾取する、ではない……異世界をこの世界に具現化する」
「………………俺の役割は?」
「キラル粒子に満たされている世界そのものを具現化する……イクスにのみ可能な事だ」
なんかスゲえめんどくせえ事を言ってきやがったな。
異世界ってことは大体はロクな事が起きてないイメージがある。
「デメリットは?」
「しいて言うならば向こう側からなにも承認を取らずに世界を具現化する……世界と言っても大陸等の自然のみを具現化するわけではない、その地に住まう者達も具現化する……」
「……………………………随分と身勝手な事をするんだな……」
「それ以外にこの世界を救う術は無い」
「…………イクス………この世界を救えるのはイクスだけみたい」
世界を救う方法はあまりにも身勝手だった。
異世界の人間は……はいそうですかで力を貸してくれるとは限らない、異世界をコピーする過程で確実に……ん?
「……具現化するんだよな?」
「ええ」
「………召喚じゃなくて具現化する、それはつまりコピーを作るって事なのか?」
異世界を召喚するではなく異世界を具現化すると言っている。
異世界を召喚するってことならば例えば北海道をそっくりそのままドンッと呼び出せる、でもゲフィオンさんは具現化すると言っている。それはつまり異世界を召喚するのでなく異世界の大陸を創り出す、大陸だけでなく人間も創り出す……それはつまりコピーを生み出すという事だ
「……………」
「沈黙は肯定だ……………つまりはコピーを作り出してそれで世界を満たすか……………………………コピーで世界を生み出す過程でなにかしらのデメリット……いや、違うか」
俺がざっくりと教えてくれと言ったから多分だがゲフィオンさんは聞かれなかったから答えなかった的な事を幾つか隠している。
例えば異世界をコピーする過程で異世界側を干渉しなければならない、その干渉で異世界側になにかしらの影響を及ぼす可能性がある……それを指摘しないでおく。俺だけしか出来ない事にやや違和感を感じるのだが、ゲフィオンさん……いや、ミリーナさんも大分苦肉の策なんだろう。
「……異世界か……異世界ってことは異世界独自の技術とかあるはずだろうがそういうのは?」
「エンコード、この世界に合わせて変化する」
「……成る程、独自の技術が存在している異世界があるわけか」
ワールドトリガーで言うところのトリガー、家庭教師ヒットマンREBORN!で言うところの死ぬ気の炎があるかもしれない。
そういう技術がある世界の技術はこの世界に合わせて変化する……ゲフィオンさんは詳しく言えば特殊な力同士がぶつかり合って世界が崩壊しないためだと教えてくれる……。
「独自の技術が存在している異世界…………」
何故俺がイクスになっていたかは分からない……だが、俺がイクスになったのならばもとに戻る方法やもしかしたら俺の中に眠っているイクスを呼び起こす技術が異世界に存在しているかもしれない。
正直な話、世界が滅びるならば勝手に滅びろと思っている。世界全てが死ぬならばそれはそれで受け入れることが出来る……だが、それでも友達に会いたい。家族に会いたい。彼女に会いたい……。
「やりますよ……ただ……俺には俺の目的がある。この世界を救いたいとか守りたいなんて高尚な思いは俺には無い。俺は俺の目的を果たせればそれで構わない」
「貴方の目的?」
「……失った日常を取り戻して家に帰ることだ……その過程であんた達が世界を救いたいなら勝手にすればいい」
俺の目的は家に帰ることだ……それだけは見失っちゃいけない。
ゲフィオンさんはなにかを考えているがミリーナさんはポンッと俺の肩に手を置いてくれる。しかし俺は直ぐにそれを弾いた。
「イクス、そんなに気張り過ぎたらダメよ……」
「…………」
ミリーナさんとは気持ちは重ならない、重ねてはいけない。ミリーナさんが大好きなのはイクスだから。
取り敢えずキラル粒子を放出するアニマに満ちた世界を具現化するのに少しだけ準備しなければならないのだと言うので俺とミリーナさんはご飯を食べることになった。折角の国の首都なのでなにか美味しいものを食べようと外で食べようと思っていると……なんか行列が出来る屋台があった。
「カーッカッカッカ!出店サービスだ!1杯100ガルドだぜ!」
「アレは……親子丼?」
「やぁやぁ、そこの諸君……親子丼は如何かね?初出店サービスで1杯100ガルドだよ」
1杯100ガルドと大分破格の値段な親子丼の店があった。
美味い美味いと親子丼を食べているコックの格好をした人が出店サービスだとオススメしてくる……丼にご飯を乗せている人が親子丼を食べてる人をアイアンクローを叩き込む
「お前、こんな時もか!」
「当たり前に決まってるじゃないか!世界最高峰のシェフが作る親子丼だ!食べる側にならなくちゃ勿体ないだろう!」
「テメエが1番働けや!!」
「やだなぁ、出汁の仕込みとかをしっかりとしたじゃないか……旨味!!」
坊主頭の人とアイアンクローを入れている人が親子丼をガツガツと食べている人を怒っている。
この3人で屋台を切り盛りしているのかと2人分の席が空いたので親子丼を注文する……外で親子丼を食べる機会なんて冷静になって考えてみれば中々に無い……親子丼は今まで食べたことがない程に極上な物、今まで食べていたものが腐ってたんじゃないかと思えるぐらいに美味かった
どれにしようか
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デカマスター
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アバレキラー
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ウルザードファイヤー