テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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マスターバイク

「……此処が、ゴンベエの家?」

 

「ワン!」

 

グレイブガント盆地に一気に向かうなにかがゴンベエの家にあるらしく、狼になったゴンベエの背に乗り、レディレイクとマーリンドを繋ぐ石橋がある川の上流に向かって十数分。

 

「なんだ、コレは……」

 

川の上流には確かに家があり、大きな水車が目を引いた。

 

「そこは作業場だ。オレが住んでる居住スペースはあっちで、其処は水車の力で色々とする小屋だ」

 

ゴンベエの背から降りると元に戻るゴンベエ。

水車小屋の奥にある小さな水車がついている家を指差した。

 

「色々とは、小麦を挽いて粉にしているのか?」

 

「第一次産業はしてない、効率が悪いからな。

水車を利用して空気を送り込んで製鉄したり、炭酸水を作ったり、発電したり、薬作ったり、とにもかくにも色々としている。アレを取ってくるから、少し待ってろ」

 

ゴンベエは直ぐ側にある滝の裏側に入った。

 

「……家が3つ」

 

大きな水車がついている家に小さな水車がついている家、小さな水車も大きな水車もついていない髑髏マークの看板がつけられた大きな扉がある家。ゴンベエは一人で暮らしているのに、どうして3つも家が必要なんだ?

水車のもたらす恩恵はレディレイクで育ったから深く理解している。色々な事をするのに3つ必要なのかもしれないが、髑髏マークの家にだけは水車がない。

 

「……コレは、あの時の磁石?」

 

大きな水車を利用して、何をしているのか気になり見た。

空気を送ると思わしき装置はまだ分かる。だが、鉄棒の磁石二つで二つの銅の円盤を挟み、一つは右回転をもう一つは左回転をさせているこの装置はなんだ?

 

「空気を送り込んで製鉄……は、分かる。

炭酸水を水車を利用して……作る方法があるのかもしれない。薬を作るのは、薬草を煎じる為に使う……発電?」

 

電と言うことは電気、真冬にビリっと来る静電気の電気なのだろうか?

ビリっと来る静電気を自力で再現する?なんの為に?静電気は驚き邪魔でしかない……?

 

「あの大きな扉は……」

 

ゴンベエの家が謎で気になる、なにもない大きな扉がある家が気になってしまう。

スレイ達の元に向かわなければならず、休んでいる暇はないのだが好奇心が私を動かし……ドアを開けてしまった。

 

「これは……」

 

大きな扉がある家は物置の様だ。

中は明らかに人が住むために作られておらず、ゴンベエの国の文字が書かれた紙が貼られた壺が沢山置いてある棚が右側にあった。

 

「……眼鏡の様に透明だ」

 

左側の棚にはそれこそメガネに使われるレンズの様に透明度の高いフラスコが並んでいた。

液体が入っていない物と入っているものがあるが、緑色の液体は野菜の絞り汁だろうか?

 

「おい」

 

「!?」

 

「勝手に触るんじゃねえよ。お前が持ってるそれは硫酸だ」

 

「す、すまない!今まで見たことのない物が多くて、つい」

 

緑色の神秘的な液体を眺めていると、ゴンベエが背後から現れた。

思わずフラスコを落としそうになるが、ゴンベエが直ぐに掴んで落ちないようにした。

 

「触るなっつったんだよ。

アリーシャじゃなくても、誰だって気になる。だから見るのは構わないが、危険な物が何個もあるんだ。

お前が今持っているそれだって、お前の鎧にぶっかければ余裕でお前ごと溶かす」

 

「この液体が!?ゴンベエ、それなら処分しなければ」

 

「アホ、硫酸は必要不可欠なんだよ。取り敢えず住居スペースの方に行くぞ」

 

「此処からグレイブガント盆地に一気に向かうなにかを取りに行ったのなら、今すぐにでも」

 

「脱走してから此処まで走ってきたんだぞ。少しは休ませろ……後、考えろ」

 

ただグレイブガント盆地に向かったところで、スレイに身の安否を伝える事しか出来ない。

スレイが戦線離脱するだけで戦争は納まらず、どうすれば一度戦争を中断する事が出来るのかを考える時間になった。

 

「随分と変わった作り……確か、遥か東の地方で用いられる畳と呼ばれるものだったか」

 

ゴンベエが普段寝ている住居スペースに入ると、独特の雰囲気だった。

家自体は何処にでもある数部屋ある家だが、畳と呼ばれる竹細工が敷かれていて……和を感じると言えば良いのだろうか?

マーリンドともイズチとも違う作りで出来ていた。

 

「元々買い物に行く予定もあったから……アリーシャ、コーラフロートで良いか?」

 

「別になんでも構わない……」

 

ゴンベエが異国の人だとこの家を見て、深く実感する。

 

「……あの丸いのは確か」

 

「そう言うのは全部終わってからだ」

 

天井についている球体型のガラスに見覚えがあったのだが、ゴンベエがアイスクリームの入ったコーラを小さな円形のテーブルの上に出したので中断させる。

 

「アイスクリーム、手間が掛かるというのにわざわざ?」

 

「数日前から凍らせていたから問題ねえよ」

 

「凍らせていたのが数日前なら、とっくに溶けているのでは……」

 

「アレの中に触れてみろ」

 

「?」

 

壁に嵌め込まれた二つの箱。

一つは大きく、もう一つは小さく、ゴンベエは小さな箱を指差す。

あの箱に何かあるのだろうと小さな箱を開いてみると、中は冷たく冷気が漂っていてアイスクリームが入れられている容器が入っていた。

 

「氷で冷やす……いや、違う。

確かに氷の冷気で冷やして食材の鮮度を保つ道具は屋敷にもあるが、その比じゃない。

隣にあるのも……コレならば、地下水で冷やした物よりも遥かに冷える」

 

隣にある大きい箱も開けてみると、小さい方と比べると温度は高いがそれでも充分に冷たく、家にある物と段違いでガラスの容器に入れられたコーラが入っていた。

 

「やっぱ、昭和初期の冷蔵庫か」

 

「昭和初期?」

 

「深いことは気にするな。

ポンプ二つ使って金の糸を間に挟んで空気を入ったり来たりさせて熱を飛ばしているもの。

と言っても理解しにくいだろうから、大きなのは食材を冷蔵して数日間鮮度を保つもの、小さいのは冷凍して長期に渡って保存する物だと思えば良い。小さい方に揚げる前のコロッケとか入れてたら、いざと言う時に揚げるだけで済むから便利だぞ」

 

「……ゴンベエの国ではコレが当たり前にあるのか?」

 

「笑わせんな、こんなもんは中々に見ない。

うちの国はコレよりも遥かに優れた物ばかりだ……エドナの兄が残した物に資源の王様が記された地図でも残ってたら楽だったんだがな」

 

「資源の王様?」

 

鉄、ではないな。

資源の王様と言われるもの……木材というわけでもなさそうだ。

 

「それないと確実に物作りの最中にどっかで詰むんだって……お前はそんな事を考えるんじゃなくて、戦争をどうにかする方法を考えろ!!」

 

「……そうだな……」

 

今、私達が向かって出来ることはスレイを戦線離脱させることだ。

だが、それは私達とスレイが鉢合わせして私達の無事を伝えれば良いだけでそこまで難しいものではない。

問題はどうやって戦争を止めるかだ……戦争が終わるのは、勝つか負けるかで、一時中断する方法は……!

 

「ゴンベエ、確か君は雨を降らせることが」

 

「出来るが……どうするつもりだ?」

 

「悪天候にして、戦にならない状態にする。

豪雨ならば爆薬の類はほぼ使い物にならなくなり、足場も不安定になって戦いづらい。」

 

両国共に鍛え上げられた騎士団ならば、豪雨での戦がどれだけ危険で困難なものか分かっている。

近くに雷が落ちたのならば怯える。雷は炎の様にどうすれば良いのか対処法が分からない、逃げなければならないものだ。

周りは山に囲まれている盆地ならば土砂崩れを意識しなければならず、優秀な将ならば撤退を考える。

 

「成る程……と、言いたいんだがな」

 

「なにか問題が?」

 

「オレは雨を降らせる事は出来るが、降らせた雨は簡単に上書きが出来る。

天族が無理矢理晴にすれば余裕で晴に出来るし、その逆もまた可能だ。戦地で確実に邪魔されるぞ」

 

「戦地に天族は……憑魔か!」

 

「そう」

 

戦地に天族はいない。

仮にいてもそれはエドナ様達で、雨を降らせて戦争を無理矢理中止にさせる方法を伝えれば賛成してもらえる。

天族はいないが、他に超常現象を引き起こせる存在が憑魔がいる。

 

「穢れが憑魔を生み出すならば、戦地は憑魔で……」

 

「溢れている、とは言い難いが確実に強い憑魔はいるだろうな」

 

「だったら、先ずはスレイに……ゴンベエが降らせる雨を邪魔する憑魔を浄化して豪雨を」

 

「それが一番良い方法だけど……それ、アリーシャいる?」

 

「っ!」

 

ゴンベエの言葉がグサリと胸に刺さる。

確かにそうだ……私は此処に隠れて、ゴンベエにグレイブガント盆地の場所を教えれば良いだけかもしれない。

向かったところで従士としての契約を解除した私はこの槍でしか浄化が出来ず、この槍を奪われたりすればなにも出来ない。

 

「……ごめん、なさい……」

 

「別に構わん……少なくとも、お前はあの場面でオレを動かすことが出来たんだ。

スレイでもエドナでもミクリオでもライラでもオレを動かすことが出来なかったと思っている」

 

結局のところ、ゴンベエとスレイ頼りだ。

ゴンベエなりに励ましてくれているが、きっと私じゃなくても動いていたはずだ。

 

「体も休まった事だし、行くぞ」

 

「ゴンベエ……私は残った方が」

 

「じゃあ、オレは行かんぞ?」

 

「別に、ゴンベエがちゃんと戦争を終わらせてくふぇ、ふぁ、ふぁふぃふぉふふ(な、なにをする)!?」

 

ゴンベエは私の頬を掴む。

 

「お前が来いつったから、一緒に出たんだぞ。

確かにお前が向かってもスレイに安否を報告する以外は糞の役にも立たんだろうが、それでも来い。

オレをわざわざ此処まで引っ張って来たんだから、最後まで責任を持て」

 

「糞の役にも……いくらなんでもそこまで私はなにも出来ない人間じゃない!」

 

「だったら、来いよ……少なくとも、顔としては必要だ。

スレイは導師と言う称号を持っているが、それはあくまで称号で社会的地位な意味ではそんなに力を持たない。精々、5%値引きをするクーポンぐらいの称号だ。だが、お前は王族である程度の力はある」

 

「君はスレイと私をなんだと思っている!」

 

「スレイは子供の教育に悪いドラえもん」

 

「ドラえもん?」

 

「アリーシャは……まぁ、今のところは脳筋で。

そんだけ騒げるんなら、もう大丈夫だな。オレの方も疲れがとれたし、いくぞ」

 

色々と聞き捨てならない事をサラッと言ったが、今は目を瞑らないとならない。

食器を洗って家を出ると、馬の造形がされている……自転車?が置いてあった。

 

「サイズ的に2人乗り出来るか……中型も大型も免許持ってないけど」

 

「確かに自転車は便利だが、馬の方が早い……いや、これは漕ぐところが無い?」

 

「これ、自転車じゃなくて自動二輪車だ。

オレ、車には興味ねえから果たして大型か中型かは知らんが……時速50kmは余裕で出るな、うん」

 

舵の部分を掴むと、自転車からブルンブルンと音が響く。

 

「さて、ヘルメットなんて存在しない。

更に言えばオレは原付の免許しか持っていないが、まぁ、なんとかなることを祈る……乗れ」

 

「……」

 

先程から不安しかないが、これに賭けるしかない。

ゴンベエの後ろに乗って、ゴンベエにしがみつく。

 

「アリーシャ、ちゃんと前を見てくれよ。

グレイブガント盆地には行ったことないから右とか左とか言ってくれないと!取り敢えずは、向こう岸に向かう!!」

 

ゴンベエが舵を捻ると、自転車は……自動車は走り出した。

足で漕いでいた時とは比べ物にならない速度で走り出し、僅か30秒でレディレイクとマーリンドを繋ぐ石橋に辿り着き石橋を飛び越えた。

 

「ゴンベエ、コレがあるのにどうして今まで自転車で来ていたんだ?」

 

「盗まれる可能性があるからだ……せめて、蒸気機関とか作れるレベルなら走らせてたがそうじゃないならな。

コレばっかりは一点物で盗まれればそこで終わり……オレ以外が運転出来ないようにはなっているけどな。アリーシャ、そろそろオレが知らん道だ。案内頼むぞ!!」

 

「少し右に曲がるんだ!」

 

自動車だったら、グレイブガント盆地にあっという間に辿り着く。

なんとかしてスレイを見つけ出し、身の安否を知らせ豪雨を降らせて戦争を止めてみせる。




DLC 超人血盟軍


アイゼンの衣装 「偽りの残虐筋肉男」

説明

とある星の王位継承権を持つかもしれない残虐の神が乗り移った男……を、打ち倒して成り代わったその星の王位継承権を持っていた男。王位継承権を争う実の弟の前に姿を変えて現れ、馴れ合いでない真の友情を見せつける冷静で的確な判断を持つがどう頑張っても衣装をペンキにつけて神父には化けれない。


ロクロウの衣装 「未完の大器」


説明

ドイツの鬼と恐れられた残虐超人の息子を用いた衣装
目にも止まらない速度の手刀、ベルリンの赤い雨はあらゆるものを切り裂く。
まだまだ未熟で、父の敵である美来斗利偉・拉麵男に助けられることが多い。


ライフィセットの衣装 「焦熱地獄の番人」


説明

悪魔将軍直属のエリート精鋭部隊・悪魔六騎士の一人。
悪魔の術と忍者としての術を巧みに扱う六騎士一のテクニシャン。
正義とは相容れぬ存在だが、真の漢に惚れ込み血盟軍に入る



スキットは次の話で

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