「ぐっ、がぁあああ!?」
左腕を斬り落とされたヘルダルフ。
馬鹿デカい声を出して悶え苦しむのだが、左腕からは血が一滴も流れない。
代わりにおぞましいまでの穢れを放っている。
「こいつ、元はなんだ?」
憑魔には元となってる生物とかがいる。
狼とか人間とか植物とか、色々とあってオレ達がシバき倒せば元の姿に戻る。
こいつも浄化すれば元に戻るんだろうが、いったいなにが元になってんだ?
ライオンみたいな見た目だから、ライオンかと思ったが普通に人間の言語を話すことが出来る。
強い力を持った天族、もしくはかなりの武人だった人間の可能性が高いが……う~ん、血が流れないからさっぱりだ。
「人の悪意の集合体だったら、やべえな」
「おのれぇ……」
穢れを腕っぽくして水を放つヘルダルフ。
ハイリアの盾で防ぎながらも、オレはこいつの正体について考える。
穢れは人間の負の感情で、ヘルダルフの正体はそんな穢れの集合体……的なオチだったらヤバい。
「おい、ヘルダルフ……てめえは人間か?」
災禍の顕主だけあって、その辺の有象無象やアリーシャより強い。
ただ強いのでなく身体能力に任せた動きをせず、精錬された動きで攻撃をしてくる。
明らかに人間の動きをしており、高位の人間を裏で操って戦争を起こしているから人間だと思うんだが……天族でも良いんだがな。
「さて、どうだろうな!!」
今度は竜巻を起こすヘルダルフ。
属性攻撃はオレには効かないぞと闇でなく、炎を剣に纏ってかき消す。
……う~ん、人間の穢れが集合し意思を持った。使っている術技は全て集まった穢れ……じゃない事を祈る。
「恐怖と絶望を味わってみよ、汝は絶望の淵にあり、我は霊霧を統べる者、汝は虚空に散り行きし者」
「ん?」
近接戦メインのヘルダルフが呪文を詠唱する。
さっき水とか竜巻を出してきて尽くかき消してやったのに、まだ呪文を使うとなると最大級の呪文を使うつもりか。
「天光満つる処、我は在り」
「……成る程」
元から怪しい雲達がゴロゴロと音を鳴らす。
ヘルダルフがなにをするか大体予想出来る……そして天候を操れる程の憑魔と言うのもだ。
「黄泉の門開く処に汝在り」
「……まぁ、あながち間違いじゃないな」
詠唱を聞きながら黄泉の国から、地獄からやって来たオレは頷く。
それと同時に身構える……オレを中心に、デカい立体的な魔方陣が出現した。
「出でよ、神の雷!!コレで貴様も終わりだ!!インディグネイション!!」
「20秒掛かるって、コスパ悪くね?」
長々と詠唱をしていたのだが、20秒ぐらいかかっている。
オレはその間、敢えてなにもしなかったがスレイ達ならば詠唱を中断させるべく全力でシバき倒していたぞ。
その点に関してツッコミを入れるとオレ目掛けて雷が落ちてきた。
「はぁ、はぁ……さしもの貴様もマオテラスから得たこの雷の前では無力……っく、マオテラスを用いていない分、力の消費が激しいか。喜ぶが良い、貴様は文字通り時間稼ぎは出来た。我は暫くの休養が必要だ」
「おいおい、まだ裏に誰かいるのかよ。なんだ、大魔王的なのか?」
「!?」
今の術で恐ろしく力を消耗したヘルダルフがこぼしてくれた。
マオテラスって誰なんだ?この期に及んで、真の魔王とか歴代の災禍の顕主はマオテラスの配下でしたオチか?
そうなるとライラ……達はアレだから、ウーノを経由して教えておくか。
「な、何故生きて、何故無傷だ!!インディグネイションは神の雷だぞ!
人は炎、水、風、地を防ぐ術を持っている。だが、光からは……雷から身を守る術は無い筈だ!!
貴様が本当に勇者であろうとも、導師と同じく人間の枠からは抜け出ないであろう!!」
ありえないと叫ぶヘルダルフ。
20秒も長々と詠唱をしているお前を待ってやったんだぞ、耐える術があるに決まってんだろう。
「お前が神の雷を呼び起こしたのならば、オレは女神の愛を発動した……ただそれだけだ」
青いダイヤ型のバリアーを張って見せる。
これは地面に落ちた衝撃とか元からあるマグマの温度とかそう言う攻撃じゃない自然なダメージ以外を防ぐゼルダの伝説では全く使わないが、スマブラではゼルダの通常Bでお世話になっている魔法。
「反射してもよかったが、流石にそれだとお前が死んでしまうからな。オレの目的はお前の討伐じゃない、シバき倒すことだ」
「!」
「やっと理解したか」
オレはちゃんとお前に有利な交渉をしたんだぞ。
ヘルダルフはやっと理解した。まだなにかを隠しているかもしれないが、それでも現時点では最強の一撃を放った。
その結果は無傷、全くといってダメージを受けていない……そしてオレにはまだまだ戦闘する意思がある。
「オレ、お前よりも遥かに強いぞ?」
伊達に転生者になる前に訓練はしていない。その気になれば世界を作り変え得る転生特典すらある。
色々とバフは掛けているが、素の状態でもお前を倒せるほどに強い。慢心とかそんなのは抜きでだ。
災禍の顕主になっていたのが原因なのか、それとも格上の存在にあったことないのか逃げ出そうとするヘルダルフ。
「逃がすわけ無いだろう。クロスエッジ」
十字の光の斬撃を飛ばし、ヘルダルフにぶつける。
今度は闇でなく光を飛ばしたせいか、効果はありバランスを崩すが直ぐに走り出す。
「足の早さで、オレに勝てると思ってんのか?」
だが、直ぐに詰める。
オレはどっちかっつーと、足は早い方なんだよ。
一瞬にして最高速度を出してヘルダルフの真正面に回り込み急停止、空いている隙を見つけ出して前に進みながら斬り込む。
「覇王戦舞刃!」
爪竜連牙斬とかいう技に似ている技を決める。
「……ん?」
もう少し、もう少しシバき倒しておこう。
そう考え斬り込んでいると、気付けば周りには大量の憑魔がいた。と言うか前からいたな。
ヘルダルフが移動したから追いかけてオレも移動したから、オレ達が群れに飛び込んだ感じか?
「者共、この者の動きを封じろ!」
「……」
自分が少しでも逃げる時間を増やす為に憑魔化した両国の兵士達に命令を出すヘルダルフ。
なんか小者臭えなと思う。憑魔達が言うことを聞いているから、魔王的な感じはしているがそれでもだ。
「……やるか」
質でなく量で攻める方法は間違ってはいない、スレイ達四人が如何に強くとも、1000の憑魔で襲えば誰か一人ぐらいは殺せる。
スレイ達の質は凄いだろうが、それでも無限でなく限界がある。体力気力、他にも色々とだ。無論、それはオレにも当てはまる。だから、目を閉じて呼吸を整える……全力を出すために。
「人間本気を出している時があるがそれは本気であって全力じゃない……全力じゃない理由は様々だ。
相手が弱すぎて手加減しても勝てる、他にしないといけない事がある、腹が減っている、とにもかくにも色々とある」
そう言った細かな雑念が、色々と邪魔して精神的にも肉体的にも極限な状態に出来ない。
「「「「さて、やるか……」」」」
だが、オレはそんな事は知ったことじゃない。
文字通り全力を出す。100%を……世に言うゾーンに意図的に入り、袋に入れているフォーソードの力を使って四人にわかれる。
「赤、青、紫のオレは行ってこい……」
分かれたオレに向かわせ、マスターソードを構える。
何時もの様に構えるのでなく中腰になり後ろに手を伸ばし青白い邪悪を討ち祓う退魔の光をこれでもかと宿す。
「大回転斬り!!」
ゼルダの伝説とスマブラのリンクの復帰技としてお馴染みの回転斬り。
それをも上回り、そこかしこに回転しながら切り裂く……アリーシャ達を逃がしていて正解だったな。コレは辺りを巻き込むから、確実にアリーシャ達を怪我させていた。
「ふぅ……とっとと終わらせるか」
辺りのローランスだかハイランドだかどっちかは知らんが、憑魔になった奴等はぶっ倒した。
もう此処には用は無いとヘルダルフを追いかけると、赤のオレが魔法の杖を、青のオレが弓矢を、紫色のオレが鬼神の仮面をつけて鬼神化しており、ヘルダルフをしばいていた。
「背中がスゲえ事になってるじゃねえか、雲丹だな。ウニダルフだな」
「……っぐ……マオテラスさえ、マオテラスさえいれば貴様など……」
「そのマオテラスってのはなんだ?大魔王様か?」
背中に馬鹿みたいに矢が突き刺さっているヘルダルフ。
意識が朦朧としているがオレ達を殺したい意思は消えておらず、さっきから誰かの名前を呼んでる。
「ふん……異国の民に分かる筈もなかろう」
「ならば王族に聞けば良いだけだ……戻れ」
ヘルダルフはマオテラスについて答えるつもりはない。
今重要なのはマオテラスじゃないので気にせず、オレは指を鳴らして元の一人に戻る。
「くっくっく……まさか、最後を飾るのが導師でなく貴様の様な目にも留めない輩だったとはな」
「勘違いすんなよ」
「なに?」
物凄くやられているヘルダルフ。
死期を悟ったのか最後を潔く認める姿は武人だが、お前は一つ盛大な勘違いをしている。オレはお前を殺すつもりなんて全くといって無い。
「言った筈だ、スレイ達が強くなるまでの間の時間を稼ぐと。
オレとアリーシャに迷惑を掛けた罪は重いが、アリーシャもオレもお前を倒す役目を持っていない。
まぁ、力を求めて必死になっているアリーシャは力を得たら調子に乗ってお前に挑む可能性はあるが……やるつもりは最初からない……故に次の一撃にオレ個人の恨みを乗せて終わらせる。貴様が裏で色々な奴等を操ったせいで脱税がバレてしまった」
「それは貴様の自業自得であろう!!我とて税は納めていたぞ!!」
「じゃっかましいわ!!つーか、お前は人間だったんだな!!」
この恨みを乗せて八つ当たりさせてもらう!!
「ゾーン強制解放!!」
アリーシャの翔破裂光閃、中々のもんだった。だから、オレもやってみる。
「輝け我が手に宿りし神々の力!!」
「ご、ぉおお!!!」
ヘルダルフを中心に勇気・知恵・力のトライフォースと同じ正三角形が浮き出て光を放ち、無理矢理浮かせてオレは盾を放り投げてヘルダルフにマスターソードで乱撃する。
「悪しき者の体を斬り裂くは勇者!!悪しき者の心を鎮めるは賢者!!」
「……」
ヘルダルフは声を出さない……が、穢れを出しているから生きている。
オレは黄昏の光弓を取り出し、マスターソードを矢の代わりにして構え
「コレでとどめだ!神・斬魔滅矢光!」
ヘルダルフの脳天に射した。
「……う~ん、オリジナルでつけてみたがこんな感じで良いのだろうか?」
今までは漫画とかゲームとかからとっていたが、これは違う。
ノリで言っただけであり、シンプル過ぎるところもある……まぁ、改名は何時でも出来るから後にするか。
『……ベエ……メン……ベルベットを……』
「ん?」
脳内に不思議な声が流れてくる。聞いたことがなく、今にも死にそうな声で誰かの名前を叫んでいる……だが、それが誰かは分からない。
「……そろそろ、オレも色々とやらないといけないな……」
何故ならばヘルダルフは石となり、周りにいた有象無象の憑魔や穢れを持った兵士達は文字通り色を失い時間が止まったかの様に動かない。動くことが出来ないので誰も喋れないし、脳内に語りかけることが出来る奴もいない。
「あ、しまった」
封印をする前に一つだけお前に言っておかないといけないことがあった
「ヘルダルフ、さっきの詠唱は間違ってたぞ……雷はもう、神のもんじゃねえ」
この言葉がヘルダルフに通じているかは分からない。だが、それでもハッキリと言ってやる。神の雷なんてものはもう存在しない。
「オレは雷を手に入れる方法を知ってる……人間は手に入れたいって思えば、雷すらも手に入れられる……流石に疲れたな」
体の力をゆっくりと抜いて倒れる。
城を脱獄してバイクを走らせて魔法をバンバン射って、最後に封印。流石に疲れた……
「……オレがやるだけの事をやったんだから、ちゃんとしろよ」
ヘルダルフの事はスレイに託し、オレは雲一つ無い晴れた空を見上げた。
ゴンベエの術技
ブレイブショット
説明
ワールドワイド、世界を知る男のオーバーヘッド
一度の使用でTPが91程減るかなりの大技で遠くからでも攻撃できるロングシュート。何故か地属性判定がついている。
ギムレット
説明
アステロイド+アステロイドをして生み出された合成弾。
アステロイドよりも遥かに強い二重構造の徹甲弾で、ドリルの様に回転して相手を貫く
ハウンド
説明
追尾機能を持った光の弾。
相手の動きに合わせて弾道が変化するが、威力が低い
メテオラ
説明
光の弾の中でも最も強い相手にぶつけると爆発する炸裂弾。
かなりの威力があるのだが、遅いのが難点であるもののぶつけることが出来ない速度ではない
サラマンダー
説明
ハウンド+メテオラをして生み出された合成弾
早い奴には避けることが出来るメテオラをハウンドの追尾機能がカバーしている誘導炸裂弾
闇纏・次元斬り
説明
次元斬の闇属性版
闇を纏いし剣で次元ごと相手を切り裂く時空剣技。
防ごうにも次元ごと切り裂くので防ぎようがなく、相手の防御力を無視して攻撃できる
ULTIMATE ZONE
説明
無意識の内に抑え込んでいる力や何かしらの原因で出せない力を強制解放する文字通りの80%の本気でなく100%全力を引き出す技。
HPと素早さ以外のステータスが100%上昇し、素早さは150%上昇する。
時間制限付きで時間切れになると元に戻るのではなく、素早さ以外のステータスが20%下降するデメリットがある。
説明
ゴンベエがその場のノリで作り上げた秘奥義。
勇気・知恵・力のトライフォースが相手を囲み、穴が開いている中心に捕らえて光を放って浮かせる。
光、森、炎、水、闇、魂の力が籠ったマスターソードで乱撃した後、黄昏の光弓を使いマスターソードを矢の代わりにして相手を撃ち抜く。
一撃ごとに相手の物理攻撃力 術攻撃力 物理防御力 集中力を弱体化させ、ダメージを与えるのと同時に相手の体力の上限値も減らす。