テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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もしもしトータス、トータスよ

「もしもし、ねこにん、ねこにんよ!」

 

 かめにんを追い掛けるとマーリンドからちょっと離れた森林に入った。

 こんな所に人や天族が居るわけねえだろうと思っていると、かめにんは叫ぶ。

 

「ニャあ」

 

「あ、出てきたっす。

それではあっしはこれで失礼いたしやす!」

 

「あ、うん……え?」

 

「アレは、どう見ても普通の猫だが……」

 

 かめにんの呼び掛けに答えたのは、たった一匹の猫だった。

 感じる気配からして、普通の猫じゃないが……かめにんみたいな擬人化でなくマジの猫型の天族なのか?

 

「この猫……普通の猫だ」

 

「アリーシャ、変な病気を持ってるかもしれないから気を付けろよ」

 

 眼鏡を外して普通に持ち上げるアリーシャ。

 裸眼で猫が見えているってことは、この猫は普通の猫でありねこにんでもなんでもねえ事になる。かめにんの奴、面倒だから適当な猫をオレ達に押し付けやがったんじゃねえのかと思っていると、猫が暴れてアリーシャの手から離れて空中で宙返りをして煙を出す。

 

「消えた!?」

 

「そう言うパターンか」

 

「誰が病気持ちニャ!!おミャーさん失礼にも程があるニャ!」

 

 煙が消えるとかめにんと比べて安っぽい衣装……猫っぽい全身タイツを身に纏う人間がいた。

 アリーシャは裸眼で見えておらず、眼鏡をつけると猫人間が見えたので、オレ達が探していたねこにんで間違いない。

 

「猫に化ける天族も……」

 

「ねこにんはねこにんで、それ以下でもそれ以上でもなんでもないニャ!!」

 

「あ、申し訳ありません」

 

「分かれば良いニャ……で、おニャーさん等、なんか用か?」

 

「ねこにんの里に行きたいんだ」

 

「おぉ、お客様かニャ!!」

 

 お客様?……ねこにんの里に人が来ないから喜んでいるだけだよな?金、取られないよな?

 ねこにんの里に行きたいと言えば、予想以上に喜ぶねこにん。人間嫌い!とハッキリと言うかと思ったがコレは良いことだ。

 

「紹介状を出すニャ」

 

 だが、世の中そんなに上手くはいかない。ねこにんが元のテンションに戻ると、手を差し出す。

 一見さん御断りだと言っていたのは本当の様で紹介状が必要になる。

 

「コレではダメだろうか?」

 

「あ~……王家の方でもダメニャ。

ねこにんの里に行ったことある人とか高位天族の身分を証明するものじゃないと連れてけないニャ」

 

 王家の紋章が印されたナイフを取り出したが、ダメだった。

 

「そうなると、まだハイランドで加護が働いていない場所に行って、高位天族を探さなければならないな……そういえば、ゴンベエはなにか身分を証明するものは持っていないのか?」

 

「身分を証明する物か……」

 

 そんな物をオレは持っていない。天族の知り合いなんてライラ達ぐらいだ……だが、もしかするとの可能性がある。

 これから先、お世話になるであろう時のオカリナを取り出すとねこにんは一歩引いた。

 

「そ、そのオカリナは!?」

 

「お、ビンゴ……マオクス=アメッカって、知っているか?」

 

「過去に何度か訪れたお客様ニャ!」

 

「と言うことは、ナナシノ・ゴンベエもここに!!」

 

「はい、いっしょに訪れました!」

 

 今までかなり有力な情報をゲットする事が出来そうだ。

 一度ねこにんの里に行ったことのある者の紹介があれば、ねこにんの里に行けるとならこの時のオカリナで連れていってほしい。そう頼んだが、ダメだった。

 

「両方とも人間で、来訪してから1000年以上経ってるニャ!

仮に本物のオカリナだとしても、二人とも死んでるから……二人の繋がりを証明出来る物を出してほしいニャ!」

 

「証拠か……そうだ、私の鎧はどうだ?」

 

「ニャ……確かに、マオクス=アメッカが着ていた鎧ニャ!」

 

 何処にしまっていたかというツッコミはせず、アリーシャは鎧の一部を取り出してねこにんに見せる。

 オレの予想ならマオクス=アメッカがアリーシャだから、一度でも会ったことあるならば顔を知っている筈なのに……

 

「ねこにん、お前はマオクス=アメッカとナナシノ・ゴンベエに出会った事があるのか?」

 

「あるにはあるけど……ちょっと、諸事情で顔とか見れてないニャ」

 

「顔を知らないなら、実質知らねえじゃねえか」

 

 この世界にはカメラが無い。絵で見たことあるにしても、アリーシャの顔ならちゃんと覚えられる。こんな美女は中々にいない。

 

「実は魂だけの状態で、よく覚えてないニャ。一名様、ご案内!!」

 

「待て待て待て、オレも連れてけ」

 

 アリーシャを連れていこうとするねこにんを止める。

 オレが行かなければなんの話にもならない。オレがちゃんと聞いて考えないと……アリーシャはまだ気付いていない。ついてきてもらってなんだが、アリーシャにも知って貰わないといけない。

 ねこにんの腕を掴んで止めると、ナナシノ・ゴンベエとの繋がりを見せてくれたら連れていくと言った。

 

「多少は手間が掛かるが、私が何度もねこにんの里と此処を往復すれば情報が」

 

「オレが欲しい情報は、遺跡の場所だけじゃねえよ……他にも知らないといけないことがある」

 

 アリーシャは気遣ってくれたが、心配はいらない。

 繋がりを証明するもなにも、ナナシノ・ゴンベエはオレであり、繋がりもへったくれもあるか。

 時のオカリナを知っているならば、確実にねこにん達の前で吹いた事になる。時のオカリナの曲を手当たり次第吹いてみると拍手を送るねこにん。

 

「マオクス=アメッカとナナシノ・ゴンベエの紹介で二名様、ご案内します!!」

 

「やった!」

 

「……」

 

 果たしてなんの曲に反応したのか気になるが、今はねこにんの里だ。

 ねこにんが手を差し伸べるのでオレとアリーシャが握ると眩い光に包まれて、目を閉じて……もう一度目を開くと見知らぬ場所にいた。

 

「ようこそ、ねこにんの里へ!」

 

「此処がねこにんの里……とてものどかで平穏なところだな」

 

「つーか、ガリバー旅行記の主人公になった気分」

 

 レディレイクともマーリンドとも違う雰囲気を醸し出すねこにんの里。

 ねこにんがそこかしこに居るのだが、ねこにんとオレ達の体格はかなりの差があって階段とか橋とかねこにん基準になっている。

 

「調べもの……の前に飯だな。

さっきオレ達を客って言ってたから、飲食店ぐらいはあるだろ?」

 

 一先ずの目的地についたら、腹が減っちまった。

 高位天族がなんでこんな所に来たりしているかは知らないが、美味い飯を食いたい。

 

「勿論、此処には美味いニャゴヤ飯があるニャ!

エビフリャー、ひつまぶっし、天むすん、味噌っカツ、カリャーうどん、オーグラトースト、どれもコレも頬っぺが落ちるほど絶品ニャ!!」

 

「え、なに?ねこにんの里って愛知県にあるの?」

 

「違うニャ。ねこにんの里はニャゴヤ地方にあるニャ!」

 

「いやだから、愛知の名古屋だろ」

 

「ナゴヤじゃなくてニャゴヤ!」

 

 さっきから方言が出てくるなとは思っていたが、意外な場所にねこにんの里はあった。つーか此処って海外なのか。

 

「ゴンベエ、ニャゴヤ地方の料理を知っているのかニャ?」

 

「知ってるっちゃ知ってる……でも、味噌カツは東北の方が旨かった」

 

「味噌カツじゃなくて、味噌っカツニャ!」

 

 ねこにんの語尾がアリーシャに移ってしまったが、可愛いので特に気にせずに飯屋に向かう。

 飯屋は最近の日本じゃあんまり見ないと言うか常連さんの空気で入りづらくなっている、何処か素朴な昔ながらの定食屋であり、メニューは名古屋名物の物が多かった。

 

「私が未熟なせいで……もう少し、箸の練習をしておけばよかった」

 

 そしてアリーシャはカレーうどんを食べて、服を黄色くして何時もの鎧姿になった。

 真っ白い服でカレーうどんに挑戦するなと念を押したのに食べやがって、最後の方はもうやけくそだったぞ。

 

「このねこにんの里に図書館かなにかねえか?」

 

 腹も満たしたので、目的であるゼンライが祀られている遺跡の手懸かりを探す。

 天族のコネでねこにんの里に行けるならば、天族に関する記録が残っているはずだ。ガイドのねこにんに聞くと変な顔をされた。

 

「街…いや、里はずれの所にあるけど、おみゃーさん、ねこにんの里まで来て調べものって」

 

「それがメインでやって来たんだよ」

 

「ゼンライと言う光を操る高位天族について調べたいのだが……」

 

「ゼンライって、ゼンライ様ですニャ?」

 

「すごいジジイの天族なんだが、何度か来たことあるのか?」

 

 ウーノ達曰くゼンライは物凄い天族で、高位の天族。

 ねこにんの里が天族のコネが無いと行くことが出来ない場所なら、来たことになる。

 

「来たことがあるもなにも、今ニャバクラに居るニャ!」

 

「……割とあっさりと見つかったな」

 

 情報どころか御本人登場と出だし好調なんてもんじゃない、余りにも上手く行きすぎている。見つかった事は嬉しいが、もしかすると聞きたいことが聞けない可能性がある。

 

「ニャバクラ?」

 

「アリーシャ、それに触れるな」

 

 ゼンライが居る場所にキョトンとするアリーシャ。お前とは一生縁遠い場所であり、お兄さんが利用したいと思っている場所だ。

 

「飲んで騒いで、笑いまくって身も心も綺麗にする極楽無双のお店ニャ!」

 

「成る程……酒場ということか」

 

「ま、眩しいニャ……」

 

 純情過ぎるアリーシャ……もし、ニャバクラの実態を知ったのならばどういう反応をするんだろうか?此処はオレが先陣を切って、ニャバクラについて調べてみるしかないな。もしかすれば猫カフェ的なオチもありえるかもしれない。

 

「ゼンライ殿がそこに居るならば、行っても良いだろうか?」

 

「ニャバクラは大人の社交場ニャ」

 

「私は二十歳を越えている」

 

「あ、オレも越えてるから」

 

 実際の年齢は分からないが、この見た目は二十歳を越えている。

 ワインとかビールでなく日本酒派で、この辺では日本酒手に入りづらく一人身で二日酔いが来たら明日に響くから数える程度しか飲んでいないが酒は強い方だ……何名かの転生者を除いてだが。

 

「ニャバクラは2000歳を越えてからニャ!」

 

「2、2000歳……真の大人は2000を越えた者なのか」

 

「アリーシャ、それ多分天族基準だ……」

 

 人間でも不老長寿の術を極めて、西遊記みたいに食えば寿命が延びる桃を食い散らかしたりしない限りは2000年も生きられない。転生者の中でも2000歳越えてる人っつったら……転生のシステムが出来て間もない頃に転生した黛千裕ぐらいしか思い浮かばん。

 

「そこは精神年齢は2000歳を越えているでイケるニャ。今来ているダークかめにんさんも999歳の時に精神年齢は2000という事にして通ってるニャ」

 

「2000越えた精神年齢って……」

 

 それはもうなにも感じない植物人間とか目覚めた人とかと同じジャンルじゃねえのか?2000年も生きてたら、完全に性欲が消えてそうだ。

 ガイドのねこにんの案内の元、ニャバクラに向かう……アリーシャ、置いていかなくて良いのだろうか?

 

「なぁ!?」

 

「……セクハラで訴えられないよな?」

 

 ニャバクラは……まぁ、ニャバクラだった。中にいるねこにんだけ、なんかオレ達と同じサイズだった。良い感じのお姉さんがね……うん。

 アリーシャにとっては色々な意味で初体験なもので、顔を真っ赤にして両手で隠すが指の隙間からチラッと覗く。本当は気になるんだろ、お?真っ赤なアリーシャを連れてVIPルームに行こうとすると、アリーシャに腕を掴まれて無理矢理店の外に出された。

 

「ダ、ダダ、ダメだ。私達の年齢はまだまだ2000歳には程遠い!」

 

「精神年齢って言ってただろう……オレが行ってくる」

 

 純情なアリーシャにはニャバクラは早かった。と言うよりは一生縁の無い世界だ。夜遊びを覚えると大変だから、お兄さん一人で行かなければ。ゼンライに会って、質問するのはオレなんだからオレさえ行けば良いんだ。うん。

 タダで情報を聞くのもアレだし接待して色々と聞かないと。酒、飲むの久々だなぁ。

 

「……」

 

「アリーシャ、退いてくれ…!…そこ、そこはダメだ!!」

 

「……ニャバクラには行かないな?」

 

「正直、行きたい!!身も心も綺麗にしたい!ちょ、やめろ!」

 

 首の頸動脈を左手で掴み、ナイフを右手で持ち、オレの背中に当てるアリーシャ。何時でもオレを刺せると脅す。

 確かにあんな店に通うなんてと思うお前の気持ちも分からないでもないが、オレはフリーなんだ。問題ない。

 

「別に行っても良いじゃねえか!!

オレは一人身なんだから、別になんの汚点もつかん!!アリーシャとはそう言う関係でもなんでもないんだ。ちょっとぐらい出会いとか美味しい思いをしたいんだ!例え偽りだとしても、遊びたい!いや、むしろ偽りだからこそ良いんだ!余計な事を考えなくて良い。コレで終わりだから、諦めがあっさりとつく。また味わいたいと必死になって働く。明日でなく今日頑張ろうと思うようになる!!」

 

 真剣に交際する事は大事なのは分かるが、もう良いかなって思っている自分がいる。

 互いに変な感情を抱かない故に精神的なゆとりを持つことが出来る。堂々と遊んでくださいと言うのもまた一つの誠実だと黄帝に捕まった神獣も言っていた。

 

「……っ……酷い……」

 

「オレはイイ人じゃないんだ……」

 

 涙を流すアリーシャだが、オレには通用しない。

 キャバクラ好きで有名な【天帝】の異名を持つ転生者は今と似たような状況でお前よりもキャバクラに走っていったのを見たことある。それと同じ事を再現してやる。

 

「うぃ~っく……なんじゃ、喧しい」

 

 いざ、ニャバクラへと走り出したのだが店のドアが開き、小柄なジジイとガイドのねこにんが出てきた。

 

「やっぱりニャバクラは2000歳からじゃニャいとキツいから呼んできたニャ!」

 

 余計な事をしてんじゃねえよ、去勢するぞ。

 

「んん~……おぉ、確かお前さんは?」

 

「…………お久しぶりです、ジジイ殿」

 

 顔を真っ赤にして酔っぱらっているジジイもといゼンライの爺さん。アリーシャの顔を見ると、アレ?と首を傾げたのでアリーシャはゴミを見る目で挨拶をする。

 

「ジジイ殿!?」

 

「この様ないかがわしい店の常連だったとは思いませんでした……スレイはこの事を御存知なのですか?」

 

 物凄く冷たい声でゼンライの爺さんに話しかけるアリーシャ。

 スレイの事が話題に出されると血の気が引いて、一気に酔いが冷める。

 

「と、年寄りのちょっとした楽しみじゃから、その……」

 

「……っ……」

 

「あ~あ、泣かせやがった。爺さん、アリーシャは純情な分、こういうのに弱いんだぞ」

 

 膝をついて涙を流すアリーシャ。さっきオレに対して泣いていた時よりも泣いている。

 

「む、むぅ……どうすれば、良いんじゃ!?」

 

「諦めろ。もうそれしか道はない……一緒に飲んで、全てを忘れよう」

 

 こういう時こそ、酒の力に頼るんだ!

 駄目人間まっしぐらな発言をし、ゼンライの爺さんの肩に触れて一緒にニャバクラに行こうとする……が、アリーシャが槍を投げてきたので行けなかった。

 

「何処にいくつもりだ……目的のゼンライ殿には会えた筈だ」

 

「はて、お主には名前を教えたつもりは無かったが……」

 

「色々と調べたんだよ……自己紹介が遅れたな。オレはナナシノ・ゴンベエ。色々と知りたいことがあってあんたを探していたんだ」

 

「御主がナナシノ・ゴンベエか……悪いが、儂はナナシノ・ゴンベエにもマオクス=アメッカについても知らんぞ」

 

 これ以上はアホな事は出来ないとニャバクラを諦め、真面目な話をする。

 なんやかんやでここまで来れたんだ、色々と聞いておかねえと。

 

「その二人については、心当たりがあるからそれじゃない。そっちについては何時でも……とは言えないな。オレ達にも時間が限られている……スレイの方もだが」

 

「スレイか……風の噂で聞いたが、スレイは元気にしておるか?」

 

「スレイは皆が待ち望んだ導師となり、ミクリオ様は陪神になりました。

ほぼ全ての人が天族を見ることが出来ないので、力を恐れられたり政治の道具に利用されかけましたが……今は元気で旅をし、世界を巡りながら災禍の顕主を鎮める力をつけて頑張っております」

 

「……そうか、災禍の顕主を鎮めるか……」

 

 長生きしているせいか、アリーシャが導師とか陪神とかの用語を言ってもすんなりと話は通る。だが、何処か上の空でありなにかを思い出している。スレイの出自について、なにかを知っているんだな。

 

「無理なら無理で、知らないなら知らないでハッキリと言って欲しい。実は」

 

「よい……御主が聞きたいことは分かっておる……スレイの事であろう?

天族の杜であるイズチの中で唯一の人間であるスレイ。ただ捨てられていたから気紛れに拾って、育てたと言って納得する筈もあるまい」

 

「ゼンライ殿、スレイにはなにか秘密が」

 

「災禍の顕主を鎮めるのであれば、いずれミクリオもスレイも知らなければならん。

……御主達には先に話しておこう。天族を認識出来る者ならば、真実を知ってしまったスレイとミクリオの助けになるやもしれん。じゃが、二人にはなにも言わんでくれ。二人には自力で気づいてほしい……スレイとミクリオの秘密、それは」

 

「違います」

 

「……へ?」

 

 シリアスな空気になっているところ悪いが、そうじゃない。

 

「オレはそんなどうでもいいことを聞きに来たんじゃねえんだよ」

 

 確かにスレイが天族の杜で育ったのは謎だが、それはそれだ。ミクリオにも秘密があろうがなかろうが、そこまで気にならない。そう言うのは本人が色々と見てから答えを決めれば良い。オレはスレイ達の心の支えなんぞになるつもりはねえ。なったとしても精々きっかけを与えるだけで、選ぶ選ばないはスレイ達次第で選ぶ義務はない。あるとするならば、きっかけを与えられた事で選択肢が増えたということを自覚する義務だ。

 

「ゴンベエ、それだと何故ゼンライ殿を探していたんだ?」

 

「だから、聞きたいことが色々とあるんだよ。

長生きしている天族の方がなにかと知っていそうだから……」

 

 ウーノとロハンじゃなにも分からない。かといって、見知らぬ天族を探すのも一苦労だ。

 ならば、出来るだけ長生きでジジイな天族を見つけ出して聞いた方が早い。そいつで無理ならそいつより顔が広かったり長生きで物知りな奴を紹介してもらえば良い。

 

「スレイ達のことではないのか……此処まで来た者を帰らせるのも無礼じゃ。儂に答えられる事ならば、答えよう」

 

 スレイ達の事でないので若干しょんぼりする爺さん。

 その辺についてはオレは知らんと袋に手を入れて地図を取り出そうとしながら、爺さんにする質問の内容を頭に浮かべていると

 

「ごヴぁ!?」

 

 酒瓶が飛んできて後頭部に直撃して意識を失った。





スキット 黄色い悪魔

ゴンベエ「あ~腹減った……って、如何にもな店だな」

ねこにん「いらっしゃいニャせ~…ニャン名様ですか?」

アリーシャ「二名ニャマです」

ゴンベエ「……まぁ、可愛いからいいか」

アリーシャ「?」

ゴンベエ「え~っと、メニューはって、壁に釘で固定した木の板にメニュー書いてる……」

アリーシャ「メニューも余り見たことない物ばかりだニャ……」

ゴンベエ「殆どが名古屋名物だな。味噌系は好みがあるからパスして……よし、決まった」

アリーシャ「もう決まったのか?」

ゴンベエ「大丈夫だ、先に注文はしねえよ。ゆっくりと決めればいい」

アリーシャ「ゆっくりと考えて決めたいところだが、聞いたことのない料理が多くて難しいな……」

ゴンベエ「食品サンプルとか写真とかあれば楽なんだけどな」

アリーシャ「食品サンプル?」

ゴンベエ「蝋細工とかの一種で、蝋を料理の形にしたものだ。このメニューに載っている料理はこう言うものですよとかうちの店はこう言うの置いてますよとかに使われる……最近はスマホ一台が当たり前で写真の方が効率が良かったりするから、あんま見ねえけどな」

アリーシャ「食文化一つとっても、ゴンベエの国は優れているのだな……よし、私はコーチンチキンカリャーうどんの天むすんセットに決めた」

ゴンベエ「コーチンチキンカリャーうどん……アリーシャ、それはちょっと」

アリーシャ「美味しくないのか?」

ゴンベエ「……美味いよ、万人に受ける味だと思うから……」

アリーシャ「それならば、是非とも食べなければ。未知なる物を知るのは大事なことだ」

ゴンベエ「はぁ……すんませ~ん、ひつまぶっしーとSUGAKIYAラーメンとコーチンチキンカリャーうどんの天むすんセットで!」

ねこにん「ニャしこまりました!」


~~十分後~~


ねこにん「おニャたせしました!ひつまぶっしーとSUGAKIYAラーメン、コーチンチキンカリャーうどんの天むすんセットです!」

ゴンベエ「お~きたきた」

アリーシャ「うどんが入ったカレーとおにぎり?」

ねこにん「違うニャ!ニャゴヤ名物のコーチンが入ったチキンカレーと海老天を具に握った物!そんじょそこらのカレーうどんとは格が違う!」

ゴンベエ「いただきまーす……あ~久々に食っても美味いな。このラーメン」

アリーシャ「いただきます。汁に浸かった麺類を先に……あつっ!?」

ゴンベエ「カレーうどん、とろみがあるせいか熱が逃げにくいぞ。鰻美味い…」

アリーシャ「そ、そう言うのは出来れば早く言って欲しかった……熱かったが、出汁とカレーのコクが混ざりあっていて美味い……では」ズルズルズルズル

ゴンベエ「あ」

アリーシャ「んん……麺も腰があって美味しい。体の芯まで温まりそう……ゴンベエ?」

ゴンベエ「アリーシャ、服」

アリーシャ「?……!?」

ゴンベエ「カレーうどんを汚さずに食べるの、結構難しいんだ。その学生服っぽいの、白いから確実に汚れるぞ」

アリーシャ「知っていニャのか!?……は!何時の間にかねこにんの口癖が移ってしまった!?」

ゴンベエ「気付いてなかったのかよ!」

アリーシャ「……!」ズルズルズルズル

ゴンベエ「やけ食いかよ……あ、最後に余ったカレーに天むすぶちこんでカレー擬きにしたら美味いぞ」

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