テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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剣を引っこ抜くなど、朝飯前

「アリーシャねぇ…」

 

「だから、行こうとしないでくれ!」

 

 アリーシャに背を向け、別の場所に行こうとすると首根っこを掴まれる。

 

「ん、この剣は…」

 

「オレの剣がどうかしたのか?」

 

「いや……外で待っていた狼の飼い主はこの人か。人に名前を訪ねたんだ、貴方も名前を教えてくれないか?」

 

「名前、ね…」

 

 確かに名乗らせたし、尋ねた。

 それならば此方が名乗るのが当然っちゃ当然なんだろう。だが、一つだけ問題がある。

 

「名乗ろうにも、こちとら名無しの権兵衛なんだよ」

 

 転生したら自分の容姿によって大体の名前が用意されている。

 転生者の魂と似ている容姿が作られており、憑依者とか転生特典除けばずっとそれになる。

 極稀に容姿とは関係の無い普通の名前を持った奴や転生する度に容姿が変わるやつもいるが、そこは問題じゃない。転生した際に特典とか色々と書かれていた紙には、名前が一切書いて無かったんだよな。

 

「ゴンベエと言うのか、変わった名前だな」

 

「いや、そうじゃねえ…って、もう良いよそれで」

 

 明らかに和風の名前に違和感を感じるアリーシャ。日本的な国、探せば見つかるのだろうかねぇ…

 

「名乗ったんだから、もう良いだろ」

 

「そうは行かない、ゴンベエを疑った詫びをしなければ私の気がすまない」

 

「あのな…お前が謝る必要はまぁ、あるにはある。だが、お前がごめんなさいって謝って終わるだけで本当に頭下げねえといけねえのはさっきのクソガキだからな?」

 

「それは…」

 

 謝る暇があるなら、とっとと連れてこいっつーの。まぁ、もうビビってオレを狙うことは無いし、この街の住人なのは判明している。

 

「ったく、オレみたいなのに言い負かされてんじゃねえぞ。世の中には口八丁だけで生きてる奴等もごまんといるんだ…疑う事も覚えておいた方がいいぞ」

 

「肝に命じておく…だが!」

 

「しつけぇな、おい」

 

 責任感の塊だな。

 

「はぁ…お前、この街の住人か?」

 

「ああ、此処が私の育った街だ」

 

「だったら、案内してくれ。オレは余所から来たもんだから、どういう事をしているかどういうものがあるか知らねえ。詫びたいなら、街案内してくれ。あ、貴族街とかオレには一生縁の無いところは省いてくれ」

 

「…それなら御安い御用だ」

 

 街の事は街の住人が一番知っている。アリーシャは微笑み、街を案内してくれる。これで責任感が強いこいつの中にある罪悪感がチャラになって、街の文明も見れる。

 

「そう言えば、ゴンベエは何処からやって来た?」

 

「日出国にある出雲の黄泉比良坂の奥からやって来た」

 

「日出国…聞いたことの無い国、遥か遠くの異大陸に異国の住人なのか」

 

「まぁ、そうだな…しっかし、適当に言ってみるもんだな、うん」

 

「なにがだ?」

 

「貴族街だよ。うちの国は貴族制度とかそう言うのとっくに滅んでて、王様も飾りだけで国を動かしてねえ…」

 

 異世界でと言うか中世の世界では民主制ってありえないか。

 中世は絶対王政か絶対の宗教政治だから、現代になるまでは民主制はない。日本だって民主制になるまでは大分時間がかかってるしな…

 

「貴族がいなくて、王が国を動かしていない!?」

 

「一生アリーシャとは縁遠い話だし、オレももう無関係だから気にすんな」

 

「だ、だが…」

 

「もうそこには戻らねえんだし、向こうから此方の国に来ないんだから気にしなくて良いんだよ」

 

 王族貴族を撤廃した事に驚きを隠せないアリーシャ。だが、もう日本には戻れない。この世界で一生を過ごさないといけない。となると、病気とかが怖い…ファンタジーっぽい力で治されるのもなんか怖いし、作れるなら仁みたいにカビはえたミカンから薬作りたい…て言うかアレってどうやるんだっけ…あ、なんか頭に出てきた。

 

「そうか…この国ならきっと」

 

「なんか勘違いしてねえか?王族貴族制度よりも民主制度の方が国が回るからそっちになっただけだからな?確かに上の人間、ロクでもない奴ばっかだけど生活水準の最低基準は上回ってるからな」

 

 糞みたいな田舎だから上京してきた田舎の地方民に向ける目をオレに向けるな。

 少なくとも、この国よりはましだからな。中世の時代よりは進歩してっからな。

 

「最後は、この聖堂だ」

 

「あ、それはいいから」

 

 武具屋、飲食店、宿屋と色々と案内してもらった末に無駄にデカい聖堂に連れてこられた。

 聖堂、オレ達転生者が絶対に行ってはいけないと言うかあんま行っちゃいけない場所のひとつ。

 

「宗教変えると、糞ややこしいんだよ。オレは天の神様よりも空中に浮かぶ仏様とかを祈るんでな」

 

「ここは神でなく、天族に祈りを捧げる聖堂だ。とにかく入ってくれ…本当なら、聖剣祭がおこなわれて賑わないといけないのに……」

 

「聖剣祭?」

 

「この大聖堂にある聖剣を引き抜き最後に、湖の乙女と呼ばれる御方に祈りと炎を捧げるものなのだが、飢餓や疫病で災厄の時代と呼ばれているこの数年は世相の混乱を避けるためにしなくて本当なら聖剣を引き抜こうと色々な人達が集っていて」

 

「その聖剣、抜けたらなんかあんの?」

 

「その聖剣を抜けたものこそ、混乱と災厄の時代を救う導師と言われている」

 

「うわー……」

 

 なんだその良くあるベターな展開。

 つーか、剣を引っこ抜いた奴が導師って、剣を引っこ抜いた奴が勇者のごまだれーと一緒じゃねえか。いや、アーサー王伝説が近いのか?冷静に考えればペンドラゴとか言うのもあれだし、うん。

 

「アレが湖の乙女が宿ると言われている聖剣だ」

 

「聖剣ね……」

 

 大聖堂の奥に案内されるとぶっ刺さっている剣…の横でグースカ寝ているアリーシャよりも年齢が上な女が目に入る。

 あんな所で人が寝ているとなると、聖剣祭の聖剣、皆、どうでも良いと思っている良い証拠だな。

 

「なにが聖剣だ。あの剣が引き抜かれた所なんて、見たこと無いぞ」

 

 ボソリと何処かからそう呟く声が聞こえた。

 あ~やっぱりそうなるよな。人間は目に見えるものを信頼する生き物だから、見えない存在なんぞ信じられん。つーか、その湖の乙女と導師二人で災厄の時代救済って難易度半端ねえな。八百万の神並みにいれば、役割分担出来たのに。

 

「…本当は賑わっている所を、見せたかった…。今年は無理だったが、来年には聖剣祭を必ずしてみせる!」

 

「それはどうでも良いけど、したらしたでさっきの奴みたいな事を言うんじゃねえのか?聖剣、引っこ抜けないなら結局のところ国の金を使うだけで、無駄足だし…いっそのこと、この聖剣の台座ぶっ壊すか?」

 

「ゴンベエ、なにを言っている!!」

 

「ほら、お伽噺とかでよくあるだろ?伝説の剣を引っこ抜いた者が勇者とか選ばれし者的なあれ。アレって、台座の方を刺さってる方をこう、ガーっとぶっ壊して引き抜きたい」

 

 結果的には剣を引っこ抜いた事になる。

 昔から疑問に思っていた事をしてみたいと思っていると、アリーシャが全力で止めに入る。

 

「冗談だよ、冗談」

 

「冗談でも言っていい事と悪いことがある」

 

「言っていい事と悪いことがあるなら、やっていい事と悪いこともあるだろう。彼処で寝てる女なんか、オレよりも質悪いぞ。なに、ボンボンなの?国家権力乱用してるの?」

 

 ずっと聖剣の側で寝ている女を誰も気にはしない。

 もうなにを言っても無駄だと諦めかけているんじゃねえだろうな…いやまぁ、こう言う胡散臭いの信じろってのが無理か。宗教の名前を盾に好き放題するのは何時だって何処もかしこもやっているんだから。

 

「……なにを言っているんだ?」

 

「いや、だから彼処で寝てる女だって。あの聖剣、なんか重要な物なんだろ?グースカと横で寝てたら怒られるだろう」

 

「聖剣の横……ゴンベエ、聖剣の横には誰もいないじゃないか」

 

「……」

 

 オレが指差した方向を見るアリーシャだが、女に気付いていない。と言うよりはまるでそこに居るのが見えていないかの様で、オレを疑ってる。

 

「いやでも、女が寝てるぞ?」

 

 アリーシャが疑うのでオレは空き瓶をポケットから取り出し、聖剣の横で寝ている女の上に置いた。

 

「空き瓶が、浮いている!?」

 

「え~…逆にお前の視点が気になる」

 

 空き瓶を女の体の上に置いたら、周りがざわめき出す。ただ単に女の上に空き瓶を置いているだけなのに、アリーシャ視点だとどうなってるんだ?

 

「!?」

 

「まさか……湖の乙女と呼ばれる天族がそこに居るのか!?」

 

「あ~……乙女と呼べるかどうかはまぁ、怪しいとして」

 

「乙女ですわ!」

 

「ぬぅお!?」

 

 女が居ることをアリーシャに教えようとすると、女は目を覚ました。

 何処から会話を聞いていたかどうかは不明だが、乙女じゃないと否定しようとしていたオレを燃やそうとするので、オレは前転して炎を消す。

 

「今、燃えた……と言うことは、そこに湖の乙女様がいらっしゃるのですね!」

 

「え、なんで敬語…天だから?つーかなに、オレが燃えたから信じたのか?」

 

 オレ、そこまでしないと信じられないってどんだけ信頼無いわけ?

 確かに悪よりの人間だって地獄でも言われたけど、まだ悪いことを1つもしてないんだぞ?生まれた事を罪とするのか?

 

「まぁ、私が見えるのですか!」

 

「見えるよ」

 

 つーか空き瓶を返せ。湖の乙女と呼ばれる乙女じゃない女はオレを見て、驚く。と言うよりは天族ってなんだ……オレしか見えないから、霊的な存在の一種なのか?

 

「失礼ですが、お名前と出身を」

 

「オレは出身は…言っても分からんが日出国にある出雲の黄泉比良坂を越えた所に最近までいた」

 

「ゴンベエ、湖の乙女様はなにを仰っている?」

 

「オレに自己紹介しろとよ。あ、でもなんか出身を聞いた途端、違うと否定してるな…うん…」

 

 自分が待ち望んでいた人物がやって来たと思ったら、違う人だったのか。

 まぁ、確かにオレはこの世界の住人じゃないからどう頑張っても別人に過ぎない。

 

「ゴンベエ、自己紹介するならば名も名乗らなければ」

 

「だから、名無しの権兵衛だっつってんだろ」

 

「私にでなく、湖の乙女様にだ!」

 

 こいつ、その内なんかやらかすぞ。オレが湖の乙女とやらを見えると分かれば何処かウキウキとしているアリーシャ。

 結果的には今ので自己紹介をした事になり、湖の乙女はオレの事をナナシノ・ゴンベエとして記憶した。

 

「私はライラと申します…この街では湖の乙女と呼ばれています」

 

「ちゃんとした名前があるなら、二つ名じゃなく本名を記録しとけよ」

 

「申し訳ありません…長い間、私を視ることが出来る人が居なくなってしまい湖の乙女として通っていて」

 

「ああ、そう」

 

「ゴンベエ、湖の乙女様はなにを?」

 

「オレを介して会話をするな」

 

 アニメのポケモンのロケット団のニャースの様な役割になりかけている。オレを介さずに会話をしろ。

 

「だが、湖の乙女様の姿を見ることが、声を聞くことが出来るのはゴンベエだけで」

 

「すみませんが、間に介していただけないでしょうか?」

 

「……いや、筆談すりゃ良いだろうが。時間と効率悪いけど」

 

「「…あ!」」

 

 少なくとも物に触れることが出来るのは空き瓶で証明したんだから、わざわざ声を介さなくても良い。

 言葉以外の会話方法は幾らでもあるんだからそれをしろよと言うとその手があったかと二人は口を開いた。

 

「少し待っていてください、今、書く物をお待ちしてきます!」

 

 アリーシャはペコリと一礼をすると聖堂から出て、何処かに向かって走っていった。多分、帰宅して家にある書く物を持ってくるんだろうな。

 

「にしても、見えないんだなライラのこと」

 

「霊力の低い方は私の姿は勿論のこと声も聞こえません」

 

「だが、そこにいる事実は変わらないんだろ?」

 

「はい…私は確かにここに存在します」

 

 となると、霊力の低い人間とぶつかるとどうなるんだろうか?霊力の低い人間には見えない壁となるのか、それとも透過していくのだろうか?こう、透過していくならそれはそれで見てみたいが、やったら怒りそうだ。

 

「さてと……アリーシャが帰ってくる前に帰るか」

 

「え!?」

 

「いやなんか、これ以上は面倒でしかないだろう。取り敢えず筆談する事が出来れば、アリーシャ的にも色々と嬉しいだろうし……うん」

 

 アリーシャが戻ってくると、確実にややこしくなる。と言うよりは、この台座に刺さっている聖剣を引っこ抜いてくれとか言うんだろうな。

 

「取り敢えず、抜けるかどうか試してから帰ろうっと」

 

「それは私と契約し導師になる者のみしか抜くことが」

 

「あ、抜けた」

 

「ええっ!?」

 

 試しにと引っこ抜いてみると、割とあっさりと抜けてしまった聖剣。

 なにか不思議な力が剣に宿っているのを感じるが、その力はオレが持っている力と比べて余りにも弱い。

 ライラが言う契約して導師になる奴のみ抜ける術をも遥かに上回る力を持っているからか?

 

「天族ってなにかは知らんが、少なくとも神様よりは下か」

 

 自分の手に宿る勇気・知恵・力のトライフォースを見て呟き、聖剣を台座に戻す。

 背負っている剣と比べ物にならない程に弱いな…。

 

「さーて、帰るか…んだよ、なんか言いたいなら言えよ」

 

 アリーシャが居たからか、それとも剣を引っこ抜いたからか僧侶?達がありえない者を見る目でオレを見る。

 鬱陶しいので言いたいことがあるならば、とっとと言えとオレは強く睨むと眼鏡かけたおっさんがオレに近付く。

 

「あ、貴方は導師様なのですか!?」

 

「いや、違うけど?」

 

「で、ですが…その聖剣を抜くことが出来る者は導師とされていまして」

 

「導師じゃねえつってんだろ…導師が必要かなんかしんねえけど、居ねえならどうしようもないじゃなくて導師じゃなくてもなんとか出来る方法考えろ」

 

 オレは聖堂を去り、レディレイクを出て帰路につく。財布スラれるわ、女騎士に睨まれるわ、怪しい宗教団体の導師に間違われるわ悲惨な目に遭ったな。あそこが王都である事以外にはなんの成果もねえな。




スキット 帰っていったゴンベエ

アリーシャ「はぁ、ゴンベエは勝手に帰ってしまった」

ライラ 「勝手に帰って(かって)しまいましたねぇ」

アリーシャ「しかし、彼には悪いことをしてしまったな…この街が良くない街と出来れば思わないでほしい」

ライラ「そういう時は街の美味しい名物を、彼にカレーを食べさせましょう!」

アリーシャ「そう言えば、あの狼は何処に…結局、ゴンベエが私と居る間は影も形も無かった」

ライラ「狼と居場所がおお、噛み合いませんね」

アリーシャ 「もしかすると彼が災厄の時代を救う導師…なのかもしれない…」

ライラ「導師がいなくて、どうしようもない…」

ライラ アリーシャ 「はぁ…」
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