テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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日本の年齢は1000歳以上

「それは本当なのですか?」

 

 ねこにんの里で休み、ザビーダを探す旅になり数日がたった。

 天族の事は天族にしか分からないので、憑魔となった天族を元に戻してザビーダの情報を聞いているのだが中々に手がかりが見つからない。名前は知っている。各地を放浪している。ボウガンと大砲を合わせたかの様な不思議な武器を持っているぐらいしか分からず、有益な情報はない。

 Twitter等のSNSがある現代ならば直ぐに現在地を特定処か連絡先も手に入るが、この世界にんなもんはねえ。そもそも電気ねえし、天族は普通の人には見えねえ。

 

「どうした?」

 

 天族を元に戻して、地の主を増やしてしらみ潰しに探すしかない。

 憑魔化した天族が起こす災害は動物が元になっている憑魔が起こす災害よりも酷く、なにか情報が無いかと聞くアリーシャ(カレーうどんの染みが落ちたので学生服に戻った)は今いる村の住民から有力な情報を聞いたみたいだ。

 

「近くの村に導師が向かっているらしい」

 

「導師って……あいつ、なにやってんだ?」

 

 ザビーダに関する情報は一切出なかった代わりに出たのはスレイの情報だった。

 オレが時間を稼いだのはヘルダルフをスレイがシバき倒す為で、何故に大きな街がない細々とした小さな村に来ているんだ?この辺は普通に農耕しているだけの平穏な村ばかりだぞ。とっととパワーアップしやがれ。

 

「導師が向かった村には病が流行っている。スレイならば、放っておくことは出来ない」

 

「マーリンドみたいな事になっているのか」

 

「レディレイクから遠く、特にこれといった大きな街でもないから国が後回しをしてしまっている……」

 

「だから、導師様の出動か。村も国の一つだってのに、国の人間でなく宗教の人間が救わなければならないとは世も末……だったな」

 

「……耳の痛い話だ」

 

 大きな力ほど管理しきれない。人間、偉い地位になると大事なものが見えなくなる。

 偉い地位になるまでに受けた洗礼とか劣悪な事とかをこれは偉くなるための試練だと勘違いしやがる。あんなもん嘘だからな。真面目にコツコツ努力しても報われない時は報われない。遊び呆けてる奴は時には勝ち組になる。人生なんて理不尽だらけだぞ。努力友情勝利じゃなくて才能環境血筋だからな。

 

「スレイ達に会いにいこう」

 

「……」

 

「ゴンベエ?」

 

 正直に言えば、スレイ達に会いたくない。会えばザビーダに関するなんらかの情報を得ることが出来るだろうが、そうなるとどうして会いたいのか、なにを聞きたいのか聞いてくる。そうなれば……ライラ辺りが完全に邪魔になる。

 

「会いたくねえけど、会わねえとなんも始まらねえよな……はぁ」

 

「何故会いたくない?」

 

「聞くな……つーか、お前の方は大丈夫なのか?」

 

「……」

 

 行くなら行くで覚悟を決めるが、アリーシャは行って手伝える事があるのだろうか?貸している槍は邪悪な物に強いには強いが、邪悪な物を打ち祓う力は弱いし眼鏡だけだとヘルダルフやドラゴン並の穢れじゃないと感じることが出来ない。行ったところで、ドラゴンパピーとかいたらアリーシャは邪魔になる。もう一度、従士契約してくれなんて言うに言えないぞ。

 

「……それでも、行かなければゴンベエが知りたい事を知れない」

 

「それは卑怯だろうが」

 

 オレを出さんといてくれ。

 アリーシャも冷静に考え、会うに会えないけどもとオレを出して会いに行く覚悟を決める。そういう風に尽くすのやめろ、なんか重いし怖い。

 こうなったらと腹を括ったオレはその村まで行くことを決めて、この村の人にその村までの地図を貰い、スレイの元へと向かおうと草原を歩いていると憑魔が現れる。狼の憑魔で、アリーシャでも楽に倒すことの出来る相手だ。

 

「ったく、次から次に出てきやがって。時間が無いから、デラボンな」

 

 とっとと地の主を見つけるなりなんなりしないといけないので、手っ取り早くデラボンだ。

 手の平を狼の憑魔に向けてデラボンを放つとあっさりとやられるのだが、今の光に反応してか群れがやってくる。

 

「アリーシャ、任せた」

 

「ああ」

 

 これだけの数ならばアリーシャに任せる。

 リトル・シャイン・フリンジで倒して貰おうとアリーシャの後ろに回るとリトル・シャイン・フリンジを撃とうとするアリーシャ。

 

「風槍走ろう、ウィンドランス!」

 

「ん?」

 

 だがその瞬間、風の槍が出現して狼の憑魔を貫いてしまいリトル・シャイン・フリンジは不発に終わる。

 

「今のは風の天響術?」

 

「大丈夫だったかって、見えねえか……嘘だろ!?」

 

 突如放たれた風の槍に首を傾げるアリーシャ。すると少しだけ風が吹いて、上半身裸の男がアリーシャの目の前に現れてカッコつけるのだが、直ぐに固まる。アリーシャの顔を見て驚いている。

 

「あ、あの服を着てください!」

 

 アリーシャも服を着ていない男に驚き慌てる。

 

「見えてるのか俺が……いや、見えてて当然か。

つーことはそっちの方も……おいおい、なんだってんだ。タイムスリップでもしたっていうのか?」

 

 自分が見えている事に納得が行く男はオレを見て驚く。

 

「……割と直ぐ会えるもんなんだな。ザビーダ、って名前の天族はお前だな?」

 

「そういうお前さんは何者だ?」

 

「オレはナナシノ・ゴンベエ……」

 

「私はアリーシャ・ディフダと申します。少し前から、ザビーダ様の事をお探ししておりました」

 

「お、嬉しいね!こんな美女に探されるなんて、男冥利に尽きるってもんだ……と、何時もなら喜べたんだがな……」

 

 ジッとオレ達二人の顔を見るザビーダ。

 各地を放浪して憑魔を狩っているが、憑魔関係でなければ気前の良い男と聞いていた。オレ達は憑魔とは無関係とは言いがたいが憑魔でもなんでもないのに、難しい顔をしている。

 

「人間の親と子供は似るって言うけどよ、此処まで似ると不気味過ぎんだろ」

 

「ノルミン天族にエドナ様の御兄様も反応を示していましたが、それほどまでに似ているのですか?」

 

「……アリーシャちゃん、彼奴に会ったのか?」

 

「会いました……一年ほど前、ゴンベエがレイフォルクで磁石を作るのでそれを見に行った際にドラゴンとなったエドナ様の御兄様に会いました。その際にゴンベエと私に反応を」

 

「彼奴、まだ意識があったのか」

 

 エドナの兄と親交が深かっただけに、色々と思うところがあるザビーダ。

 自分の時間に浸るのは構わないのだが、そろそろ此処から動きたい。

 

「ノルミン天族に会ったって事は、知りたいのか?お前達の先祖について?」

 

「はい」

 

「……お前等、天遺見聞録って知ってるか?」

 

「天族とか導師とかについて書かれている本だろ?」

 

 読んだことはないが、どういう本なのかはざっくりと知っている。

 

「ああ、そうだ。誰が書いたかは知らねえが……アレ以外にも世界の何処かにたった一冊だけだが裏の天遺見聞録ともいえるものがある」

 

「裏、ですか?そのような話、聞いたことはありませんが」

 

「世間で知られてる天遺見聞録の作者とは違う奴が書いたんだよ。

それがどう書かれているかは知らねえし、何処にあるのかも分からねえが俺はその存在と何故存在しているのかを知っている。んでもって、知らないでほしい。ザビーダ兄さんのちっぽけなお願いだ」

 

「それは歴史の闇だからか?」

 

 光あるところに必ずと言っていいぐらいに影や闇はある。9を選んで1を切り捨て、1を選んで9を切り捨てるのが世の中だ。天族と人が良好な関係だった、導師が世界を救ったしか書かれていないのはありえない。世間や社会は、偉業を成し遂げた者を本当は悪いことをしているのに凄い人だとアピールするように、天族と人が険悪な関係だった事や導師が世界を滅ぼそうとした時代があってもなんらおかしくない。

 

「ああ、そうだ。アレは1000年以上生きている天族なら誰もが覚えている」

 

「1000年……いったい、なにがあったのだろうか」

 

「ん、知らないのか?」

 

 オレはこの国の住人でないのでこの国基準の教育は一切受けていない。だが、アリーシャはこの国で最上級の教育を受けているはずだ。歴史の授業なんて社会に出てもそんなに使わないが、王族ならば覚えろと暴君みたいな真似すんじゃねえぞと逆に徹底した教育を受けている筈だろう。

 

「そうか、ゴンベエは知らないのか。

この大陸の歴史は、途切れ途切れで分からないことが多いんだ。数百年前の事でも記録が全然残っていない事がある、千年以上も前となれば文字すら異なることも、ゴンベエの国は違うのか?」

 

「大まかとはいえ一応、2000年以上の歴史が……権力剥奪されたり与えられたりと色々とあったけど、今の王族になってから一回も血は途切れてねえし、なくなってねえぞ」

 

「2000年以上!?」

 

 場所が場所だけに日本は船か飛行機でしか攻められない。

 オレの知る限り世界大戦とか日清とか日露を除けばモンゴルとかと何回か揉めたぐらいで、海外から領土寄越せやぁ!と大々的に攻められて敗北して植民地化したとか歴史の授業では習っていない。むしろ内部で物凄く揉めに揉めまくったのが多い。

 

「途切れ途切れになってる要因は知らねえが、歴史の闇は裏の天遺見聞録に記されている。

それを読んだのなら、このザビーダ兄さんは二人の御先祖様について一から十まで教えてやるよ」

 

「ありがとうこざいます、ザビーダ様」

 

「ん?」

 

「私達の先祖についてはまだ聞けませんが、歴史の闇が記された天遺見聞録についてお教えいただき感謝します」

 

「ああ、気にすんな……俺はお前等の先祖に、特にゴンベエには世話になったんだ」

 

 オレに世話になっただと?

 

「俺を探しているなら、他の天族に俺を聞いたんだろ?俺の異名……憑魔狩りのザビーダをよ」

 

 ズボンと尻の間に挟んでいる拳銃を取り出すザビーダって、拳銃あんのかこの世界?

 今まで見たことなかった武器を見て、少しだけ心が浮わつくが真面目な空気なのでオレは無反応でいる。

 

「……聞いています。不思議な武器を持っており、その武器の力で憑魔を狩っていると。

何故、その様な事をしているのですか?憑魔を倒してくれるのは私達にとってありがたいことではありますが、ザビーダ様は浄化の力を」

 

「持ってねえぞ」

 

 ウィンドランスに貫かれた野犬の群を見るアリーシャ。これがオレ達ならば元の犬に戻っていた。

 浄化の力があれば元に戻すことが出来たのだが、ザビーダは浄化の力を持っておらず死んでいる。取り敢えず後で燃やしておこう。

 

「ライラ様の陪神となれば、浄化の力を」

 

「知ってるよ……ライラとは付き合い長いからな」

 

「ならば何故?浄化の力を得れば、無闇に殺さなくても」

 

「殺すことで救える奴も世の中にはいる……アリーシャちゃん、俺も昔はアリーシャちゃんみたいだった」

 

「?」

 

「ドラゴンとなった奴がいた。俺はどうにかしたかったが、当時は浄化の力もなくどうすることもできずにそいつが殺されるのを見ちまったんだ」

 

「だったら」

 

「そん時に、ゴンベエの先祖が話をしてくれたんだ。二人の死神って話をな」

 

 ほぅ、ライラが話していたブラックジャックの話。誰に聞いたのか言わなかったが、ザビーダだったか。

 

「そのお話は、ライラ様から聞いたことがあります。私はあの話がよく分かりません。最終的には、誰も救われずに終わっているではありませんか!」

 

 道中に聞いたザビーダの異名は憑魔を殺しているからついたもので、アリーシャはそれに納得が出来ない。ライラの陪神になればそれだけで浄化の力を得れる。恐らく、それ以外にも浄化の力を得る方法はあると思っている。

 アリーシャは手を伸ばしても、伸ばされても掴む事は出来なかった。だが、ザビーダは違う。必死になって頑張れば浄化の力を得ることが出来るのに、それをせずに憑魔を狩っている事に納得できない。

 二人の死神の端折った部分をちゃんと話せば、アリーシャは色々と考えることが出来るようになる……が、その前にだ。

 

「ザビーダ、覚悟は出来ているのか?」

 

「……ああ、出来ているさ」

 

 浄化の力で助けれない奴も存在しているようだが、助けようと思えば助けれる奴等は多々存在している。そんな奴等も殺しているらしいザビーダ。殺すことも一種の救いだが、絶対の救いではない。その辺の自覚をしているか聞いてみると、覚悟は出来ているらしい。

 

「何時かは俺が狩られる。

そうなったら俺は抵抗するつもりはねえ。俺の事を恨んでる奴からの攻撃は全部受け止める。

もし、俺が求めてるものを見つけることが出来たなら、犯した罪を全て償った後に罰を受ける……その覚悟は千年前から出来ているさ」

 

「そうか……他にも色々と聞きたいことがあるんだが、取り敢えずあっちにある村に行かないか?」

 

「聞きたいことだぁ?裏の天遺見聞録にお前が知りたいことは載ってるが」

 

「悪いが書かれた物じゃなく、生きた人から聞かないといけないんだよ。

出来たら導師が居ないところで聞きたいから、先にスレイがやってる事を片付けてからにしたい」

 

 この辺で聞いても良いが、万が一が怖い。

 

「……?」

 

「どうした?」

 

「いや、風の噂じゃ導師はこの辺じゃなくてローランス皇国に居るんだが」

 

「……え?」

 

 ローランス皇国にスレイ達がいる?それならアリーシャが聞いた話はいったいなんだ?新手の詐欺か?

 疑問や思うことが多かったものの、一先ずはと強制的に話に幕を下ろして一度その村に向かうことにした。




スキット 眠れない夜、君のせいだよ

アリーシャ「スー」

ゴンベエ「……なんでさ?」

アリーシャ「……どうした、ゴンベエ?」

ゴンベエ「おかしいぞ、アリーシャ」

アリーシャ「なにか変な事でもあったか?」

ゴンベエ「なんで一緒のベッドで寝ているんだ?」

アリーシャ「宿代節約の為だ」

ゴンベエ「ここの宿代二つのベッドでも100ガルドもかからない」

アリーシャ「今の御時世1ガルドでも命取りだ。幸いにも、気を使ってくれた店主が大きなベッドを用意してくれた。眠るのに何処も問題ない」

ゴンベエ「いやいや、オレ達そういう関係じゃないだろうに。絶対、昨日はお楽しみでしたねって言われるぞ」

アリーシャ「?」

ゴンベエ「とにかく、オレは床で寝る」

アリーシャ「ダ、ダメだ!」

ゴンベエ「んだよ、それが一番だろ」

アリーシャ「床で寝たら、疲れが余計に溜まるだけだ。二人で一つのベッドで寝れば問題ない」

ゴンベエ「だったら、手を離して、距離を置くぞ」

アリーシャ「……やだ……スー」

ゴンベエ「……一回ぐらい胸を揉んで、オレが悪人だって教えてやれば……ダメだ、それやったらアリーシャのハニトラ成功したことになる」


~~次の日~~

ゴンベエ「ねっむ……」

アリーシャ「寝不足か?」

ゴンベエ「うん……けど、これぐらいは別に馴れてる。朝六時起きとか割と普通だし」

アリーシャ「そうか……夜更かしは体に悪い」

ゴンベエ「誰のせいだと思ってんだ……腕をギリギリまで伸ばした瞬間に、一瞬で距離を詰めてビビっだぞ……やばい、本当にやばいぞ。これ、この旅が終わったらどうなるんだ…」

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