テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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 ザビーダ様と色々と言い争い、一先ずはスレイ達に会うこととなり導師が向かったと言う村へとやって来た。

 どちらかと言えば小さな村でなにか特産品やこの街出身の著名人が居るかと言われればそうでない普通の村で、マーリンドの時と同じく病に苦しむ人が多いが、マーリンドと違い大きな街でもなんでもないので戦争をするしないで争っている国に後回しをされている村。

 

「割と小さな村だな……アリーシャ、これ着けてろ。気休め程度にはなる」

 

「前もつけていたな……意味はあるのか?」

 

「口から病気が入らないようにするためだ」

 

三角巾を巻いて口を隠すゴンベエ。

口から病気の原因である憑魔が入るのをこれで防ぐことが出来るのだろうかと思ったが、此処はゴンベエの言うことを信じるのが一番だ。

 

「ありゃ、俺には無いの?」

 

「お前、そんな格好をしてるんだ……風邪ひかねえだろ?」

 

「確か、特定の人物は風邪をひかないと本で……特定の人物と言うのは、天族の事でしたか」

 

 ずっと気になっていた服を着ず上半身裸でいるザビーダ様。

 ずっと上半身を裸にしているならば風邪をひいてしまうが、風邪をひかないと言うのであらば着なくても良い。服や鎧は時として最大の重りにもなることがある。世界各地を放浪している風邪をひかないザビーダ様はそれを真に理解し、あえて脱ぎ捨てているのですね。

 

「アリーシャちゃん、それは違う。ザビーダお兄さんはその特定の人物じゃない」

 

「いや、どっちかと言えばお前はそちら側の住人だろう。

つーか、さっきから村人Aすら見当たらんが何処に居る?OKザビーダ、なんとかしろ」

 

「なんとかって人使い荒えな……お、一ヶ所に集まってるみたいだ。あっちだな」

 

 村に来たのに村の人達が何処にもいない。ザビーダ様が軽く風を吹かせて探索すると村人達が集う場所に移動する。

 村人達が集っている場所には、この村の人達全てがと思えるぐらいにいて、全員で会議をしているのではなく誰かを見ていた。

 

「あの、よろしいですか?」

 

「ん、此処等では見ない顔だな……」

 

「あ、はい、少し遠いところから来まして、ハイランド中を地質調査?をしている者です。この村の人達が一同に集っていますが、何かあったのですか?」

 

 近くにいたこの村の中年男性になにがあったかを偽りの身分を明かし、聞き込みをする。

 嘘をつくのは本当に心苦しいが、一応ハイランドの何処でどんな鉱石が取れるのかを調べているのであながち嘘ではないと罪悪感を無理矢理かき消す。地質調査の意味はイマイチ分からないが。

 

「ああ、導師がやって来たんだ」

 

「導師って、あの導師か?」

 

「どの導師かって聞かれれば、王都でこの前のローランスとのいざこざでマジギレした奴だ」

 

「その、導師はなにをしに此処へ?」

 

「この村は今、病気が流行っていて薬も入手しづらい。

そんな時、この街にあらゆる病気を治す薬を格安で売ってくれると言ってきたんだが……導師なんて胡散臭い存在をはいそうですかと受け入れる程に俺達は心は広くはねえ」

 

「……そう、ですか」

 

 スレイは紛れもなく世界が待ち望んでいた導師だ。

 天族の皆様と共に力を合わせて穢れを浄化し、災厄の時代を終わらせようとしている。だが、スレイを疑う者は危険視する者はまだまだ沢山居る。ネイフト殿の様に強く信頼している者は極僅かだと改めて思い知る。

 

「あらゆる病気を治す薬を売るだと?確かに胡散臭えな。そんな薬、絶対ねえだろ」

 

「いやいや、ところがどっこいあるんだよなそれが」

 

「?」

 

 どんな怪我や病気でも治せる薬を疑うゴンベエだが、ザビーダ様はその薬に心当りがあり語ってくれる。

 

「エリクシールつって、マオテラスが作った薬があるんだよ。

製造方法は俺も知らねえが、稀にだが古代の遺跡から見つかることがある」

 

「……マオテラスとかいうのが関わってる、エリクシールを製造する遺跡という名の工場をスレイが見つけ出した?」

 

「そもそもスレイがその様な事をするのだろうか?」

 

 ザビーダ様が言ったことから色々と考える私達。

 スレイが何故この様なところに来てまでエリクシールを売るのだろうか?病の原因は穢れなので、薬を売るよりも地の主を見つける方が大事だ。そうすればエリクシールを使わずに済む。なによりエリクシールを見つけたならば、無償で配るはずだ。

 

「オレへの借金返済の為に頑張ってるのか……無償でボンボン配るなとライラから言われたのかのどっちかだろう」

 

「え、なに、あの導師、お前に借金してるの?」

 

「20000ほど借金している」

 

「ゴンベエ、スレイに限ってそれは……後者の方はどういう意味だ?」

 

 傷や病を治す天響術は存在しているらしいが限界はある。マオテラスが作ったとされるエリクシールはそれをも遥かに上回るものだと言われている。もしそれが本当ならば、ライラ様が止める理由は何処にもない。

 

「なんでも治る薬なんて、争いの種だろう。

大量生産をすることが可能で普通の人に買える値段だったら医者要らずで、この国の医者は仕事を奪われて職を失う。

製造に必要な材料を商人が、国が、材料を作っている奴等が牛耳る。

今、この時代までエリクシールの製造法が伝わっていないのはそう言うのが原因で無償で、無料で渡すと確実に争いの引き金になる」

 

「……どんな、傷や病も治す薬が最も傷や病を作る戦争を生み出す道具に……」

 

「皮肉だろう。だが、そんなもんだ。

つーか、まだそれは良い方だぞ……仮に国が正しく管理して病気になった人に使ってねと一般の人達でも買える値段で売って、風邪をひいたらエリクシール、熱を出したらエリクシール、インフルエンザになったらエリクシールって世界になったら……あ~恐ろしい」

 

「インフルエンザ?……どうして恐ろしいんだ?」

 

「その辺は自分で考えろ」

 

 あらゆる病気を治す薬があり、それを安定して大量生産出来て国が正しく管理し、扱うのならば戦争の引き金にならない。何処に恐ろしい要素があるのだろうか?

 

「お、アレが導師様か……割と普通だな」

 

「……誰だあのおっさんは?」

 

 色々と話し合っていると、導師が村人達の前にやって来た……が、違う。

 導師スレイとは似ても似つかぬ男性で服装も私がスレイの為にと用意したものに似ているが異なるものを着ており、まるで世間で聞こえるスレイの噂だけで作られた格好だった。

 ザビーダ様もスレイを知っており、私とゴンベエが口に出来ない事を口にした。

 

「お集まりの皆様、この度は私の話をお聞きしていただき、ありがとうございます」

 

「……ライラ様達も何処にもいない。奴は明らかに偽者だ」

 

 導師の正体はスレイの名を騙る偽者、もしかすればバルトロ大臣の一派の者かもしれない。今すぐに捕まえなければ、また戦争にスレイが駆り出される可能性があると前に出て捕まえようとするもゴンベエとザビーダ様が止める。

 

「なにも理論上はできるけどスレイしか成功していない存在じゃねえだろ」

 

「?」

 

「世界に導師は一人じゃないってことよ。

天族と契約し、天族の器になった奴は過去に複数人存在している。もしかすると、導師の手伝いをしていたりする奴かもよ」

 

「成る程……」

 

 今までゴンベエとスレイしか肉眼で天族を認識することが出来る人はいなかった。もしかするとあの導師と名乗る人物はスレイの新しい従士なのかもしれない。もしかすると普通に天族を見ることが出来る人なのかもしれない。

 そう言った線を一切考えず、スレイの名を騙る悪徳な商売をする者だと勝手に決めつけた事を少し反省し、一先ずは見守ることに。

 

「しかし、皆様は私達の事を疑っているのは分かっています。

私には天族の方々が見え、声を聞くことが出来ますが皆様は見ることは出来ません。人は目に見えないモノを信じられない、そう言った存在です。ですが、私はそれについては攻めません。見えないなら、見える様にする努力をすれば良い。

この村は今、病に苦しんでいると聞き此度はかのマオテラスが作りし、ありとあらゆる病や傷を治す万能薬 エリクシールを私が製造し、持ってきた。」

 

「ゴンベエ」

 

「全員疑ってんぞ?」

 

 アレはもう黒じゃないのか?とてつもない胡散臭さが感じられる。

 なにか騒ぎを起こす前に捕まえた方がスレイの為でもあるのだが、導師と名乗る人物に村の人達は疑いの目を向けている。

 

「このエリクシールは飲めば病気を治すことが可能だ。

しかし、製造が可能なのは導師である私と極一部の限られた者しか出来ない。

本来ならば、この様な小さな村では絶対に買うことの出来ない代物だが、なんとか安く売れる様にと努力した」

 

「おいおいおい、こんなにハードル上げて大丈夫なのか?マジで天族居るのか?」

 

 エリクシールが入っていると思わしき箱を従者に出させる偽導師。もう村の人達は疑いしか持っておらず、帰ろうとしている者達もいる。ザビーダ様もこんなバレるボロが出る嘘をついて大丈夫なのかと笑い出す。

 

「此処にこの村の者達全員に行き渡る分がある。

なに、貴族や王家が課す馬鹿高い値段で売るなどと私は言わない。1000ガルドで売ろう」

 

 1000ガルド、エリクシールが本物だとすれば安すぎる。偽物なのだろうが……。

 

「きっと今、皆は私が胡散臭いのだろう。そう思われても仕方があるまい。

本来ならばこういう事に使うのは天族達が悲しむのだが、導師としての力の一端をお見せしよう……アレを持ってこい」

 

 導師としての力を見せる……神依?いや、神依は普通の人には見えない。となれば、浄化の力?それとも天響術と称して炎を何処かから出したりすることだろうか?

 どうせインチキだろうと思っている村の人達はついでだからと見ていくことにし、トリックを見破ってやろうと考える。

 

「これは御覧の通り、普通の炎だ。

この村の薪で出来ており、火打石で火を起こした……疑うと言うのならば、この火を消してから別の誰かが違う薪で火をつけてくれ」

 

「なら、私が」

 

「お前は行くな……ミスディレクションに近いのか?」

 

「?」

 

 偽の導師の前にある焚き火を消しに行こうとすると、止めるゴンベエ。目を細めて聞いたことのない言葉を出す。

 私が行かなかったので、先程話を聞いた村の中年男性が火を消して別の所から薪を持ってきて火打石で着火し、さっきと同じく炎に近い焚き火を燃やす。

 

「この者と私は通じていない。

それは村の者達が十二分に理解している筈だ。故に、炎を起こす薪に仕掛けもなにもない。

御覧の通り、これは皆が起こそうと思えば起こせる普通の炎……しかし、導師の私が力を加えれば、こうだ!!」

 

「!?」

 

七色炎橋(レインボーブリッジ)!!」

 

 偽の導師の目の前にある炎は、なにか特別でもなんでもない極普通の炎だ。

 火打石で着火した何処にでもある炎で、自分を疑っているならばと自分が用意した炎でない、この村の薪で、この村の人達がつけた炎だ。

 

「炎の色が!?」

 

「緑色に!?」

 

 それなのに炎の色が変わっていく。黄色、青、緑、紫と瞬く間に変化していく。

 

「どうでしょう、私の力の一端は?」

 

「凄い……」

 

 今の今まで胡散臭さしか感じることの出来なかった偽の導師。

 この力を見せられれば、本物としか言わざる終えない。天族が何処にも見えないのはライラ様達の様にあの男の中にいるからか。

 

「ほぅ、やるじゃねえか」

 

「皆様、私を信じ……なにか用ですか?エリクシールは村の人達全員に行き渡っても少しは余るので売ることは」

 

「……成る程ねぇ」

 

 偽者と思っていた導師に感心する私達を余所に、炎の前に出るゴンベエ。

 

「この村は特に大きな村じゃない。

名産品らしい名産もなければこの村出身の著名人もいない割と普通の村……だから狙ったのか?」

 

「な、なにを言っている?今のは、導師としての力の一つで種も仕掛けもない!第一、炎に仕掛けをするなんてどうやってすると言うんだ!?」

 

「いくらでもあんだよ、そんなもん。

自分が用意した炎だったら薪だったらなにか仕掛けがあると疑われるが、それを逆手に取る。

相手に炎を起こさせる事により、これで仕掛けもなくなったと思わせる。強制したんじゃなく、相手が選択して用意した物を使わせることにより、疑いを消す、無くす……コスい手使うなよ」

 

 冷たい目でゴンベエは男を見つめ、炎に向かって塩を投げる。すると、炎はさっきと同じ様に黄色くなった。

 

「歴史はとびとびで王政ならば社会系の授業は出来ない。

困ったら導師や天族に頼り、水車が限界で蒸気機関が無い国の小さな村なら文字の読み書きや因数分解辺りは教えそうだが、生物……はまだしも、科学に関しては教える機会はない。そもそもで理科は専門職以外は社会に出てもペーパーテストでしか使わない……炎色反応なんてちゃっちいことすんなよ。誰か、銅を粉にした物持ってないか?後、硫黄の粉末を」

 

「っ!」

 

「あ、逃げやがった……まぁ、どうでもいいか」

 

「ゴンベエ、いったい何がどうなっているんだ?」

 

「炎に塩とか銅とかぶちこめば、色が変わる。

それをする前に炎の準備を村の人達にさせて、種も仕掛けもありませんよと思い込ませる。

後はこの胡散臭いエリクシールとか言うのを売り付ける……多分、偽物だろうな。塩、入れてみろ」

 

「……本当だ」

 

 調理用の塩を渡されたので塩を投げると色が変化した。

 と言うことはさっきの導師は偽の導師で、偽のエリクシールを売って、一儲けしようとした輩……

 

「今すぐに追いかけて捕まえなければ!!」

 

「アリーシャちゃん、正義に燃えてるのは良いが、周り見た方がいいぜ」

 

「?……」

 

 追いかけようとするとザビーダ様に止められ、周りを見渡す。

 周りの人達は酷く落ち込んでおり、泣いている人達もいた。

 

「今すぐに、あの偽の導師を捕まえて皆様に謝罪を」

 

「……謝罪なんかで、病気が治せるか!!」

 

「病気、ですか」

 

「ああ、そうだ。今、此処にいない子供や若い連中は皆、病気で寝込んでるんだよ!!

薬を買おうにも、この前あったローランスとの小さないざこざのせいで値段が高くなった。やっとの思いで買えた少しばかりの薬も効き目がなかった……本物だと、本物のエリクシールだと思ったのに、くそ!!こんな小さな村じゃ、国は援助もなにもしてくれない。それどころか、まだ戦争を続けるかもしれず税を更に上げようとして、もう、おしまいだ……」

 

 悲しみに明け暮れる村の人達。私はつい、ザビーダ様を見てしまった。

 

「残念だが、このザビーダ兄さんは回復系の術は出来ねえ。悪いな」

 

「い、いえ……困ったら天族に頼ろうと考えてはいけないのに、申し訳ありません」

 

「そこは気にすんな。治せるなら治す……そこに天族だ人間だ境界線を勝手に引いてたら、治るもんも一生治らん」

 

 また誰かを頼ろうとしてしまった。

 こんな事をしてはいけないと、せめて偽の導師を捕まえて皆に謝罪をさせようと走ろうとすると、ふと思い出す。

 

「この薬なら治るだろうか?」

 

「お前、まだ持ってたんかい」

 

 聖剣祭の通達や伝承に纏わる地を旅する際にゴンベエから貰った薬。

 あの時は病気にならなかったので飲まなかったが、万が一にと保管している。

 

「治るかどうかは知らねえよ。

少なくとも、どんな病気なのか分からない以上は飲ませないとなんとも言えない……つか、それ一人分、毎食後に飲む一週間分だから誰に渡すんだ?」

 

「……作り方を教えてくれ」

 

「そう来るか」

 

 きっとゴンベエなら、この薬と同じものを沢山作っている。

 それを譲ってくれと言えば解決だが、それだとゴンベエに頼り過ぎている。これは宝石の様に天然の物でなく人為的に作ったものならば、私にも作れる筈だ。一度、作り方を覚えればゴンベエに頼らなくてもいい、ここ以外で同じ病が広まっても直ぐにこの薬を作って持っていける。

 

「……アリーシャ、これ渡してきなさい」

 

「確かにそれは嬉しいが……製造方法を知りたい、秘伝の物だとは分かっている」

 

 だが、それでも知りたい。知って、皆を助けたい。

 瓶に入った薬の受け取りを拒否し、作り方をゴンベエに聞くのだが渋い顔をする。

 

「あの、あれだ。

今からペニシリンの作り方を教えるから、そっちの方で……サルファ剤はちょっと」

 

「ペニシリン?というのは、人海戦術が、数が必要じゃないのか?」

 

 それならば、ゴンベエ一人で作れる薬を教えてほしい。

 

「……いや、あの……うん、ちょっとややこしい材料がある……アンモニアとか」

 

「アンモニア?」

 

「凄くざっくりと言えば……尿素」

 

「……やぁっ!?」

 

 薬の原材料を聞いて私は薬を投げてしまった。尿素、つまりそれは尿でこの薬にはゴンベエのアレが……

 

「それでも知りたいのならば……大丈夫。アリーシャのなら多分、ダイレクトでも、最早一種のご褒美と」

 

「なにを言っているんだ!?」

 

 なにも入っていない瓶を渡さないでくれ!

 

「な、治るのか?そんな汚い物が入っている薬で」

 

 少量の薬では全くといって治らなかったそうだが

 

「……まぁ、治せないのもあるが万能薬っちゃ万能薬だから割と効くぞ。

200年ぐらい前の男性死因の代表格と呼ばれている病気も治せるぐらいに強力な薬で、髪の毛抜けるとかの危険な成分が含まれていないし……使う?作るなら、アンモニアはアリーシャから採取する。今から家に帰ればアンモニアとか炭酸水を用意するだけで完成するが?」

 

「それしか……無いのか?」

 

「無い!因みにペニシリンでも治るが、一週間以上は掛かるし運要素も含まれるので100回やって100回とも同じものは作れない可能性が高い!青カビ採取からスタートだ」

 

「……っ……ん……そのペニシリンは教えてくれるのだな?」

 

「教えるけど、今救わないとヤバい奴はいるかもしれんぞ?」

 

「……背に腹は変えられないのか」

 

「安心しろ、最悪オレを晒し首にすれば良い……全力で抵抗するが」

 

 苦渋の決断に迫られた私は覚悟を決めて、ゴンベエから薬が入った方の瓶を受けとる。

 材料はアレだが、ゴンベエはこの様なところでは嘘をつかない。信じるしかないと村の人達に薬を渡す。

 

「お~い、偽の導師の居場所分かったけどどうする?成敗するなら手伝うぜ?」

 

 薬を渡し終えたところで、いつの間にか居なくなっていたザビーダ様。偽の導師を追い掛けていてくれたのですね。

 

「そっちの方はもうどうでもいい……それよりも聞きたいことがあるんだ」

 

「だから、先祖については裏の天遺見聞録を手に入れてからだって」

 

「ちげえよ……オレが聞きたいのはそれじゃない……このループは何時から続いているんだ?」

 

……ループ?





スキット 等価交換の法則

アリーシャ「その……他は大丈夫なのか?」

ゴンベエ「なにがだ?」

アリーシャ「この薬、そのゴンベエのアレが……べ、別に私は飲む分には構わないが、その……他にも危険なものが」

ゴンベエ「目に当たったら失明する液体で作られた皮膚にかけたらドロドロに溶ける液体とか、海水から出来た死体を溶かす液体とか、色々とある」

アリーシャ「そ、そんな物で治るのか!?もっと薬草的な物だと」

ゴンベエ「いや、流石に原材料そのまま飲んだら死ぬよ。色々と弄って作るんだ。青カビで出来た薬も色々と弄って作るんだよ。足し算と引き算を永遠とするんだ」

アリーシャ「とてもその液体で作れるとは思えないが……ゴンベエの国はこの薬で病を治しているのか」

ゴンベエ「いや、多分それもう効かないぞ」

アリーシャ「?」

ゴンベエ「病気も人間と同じで常に変化する。昔は効いていた薬が効かなくなったってのはよくある話だ。
インフルエンザって病気は年々変化してて、同じ薬で効かないとかあって……もし仮にエリクシールが今の時代まで当たり前の如く薬として普通に使われていたとなると、エリクシールで治らない病気が生まれて……あ~こわっ」

アリーシャ「……もしそうだったら、エリクシールだけに頼りきった国は新しい薬の製造が」

ゴンベエ「出来ないどころか、薬の概念すら無くなってたりしてな……改めて恐ろしいな、エリクシール」

アリーシャ「私としてはゴンベエの薬の方が恐ろしい」

ゴンベエ「馬鹿言ってんじゃねえよ、なんのリスクも無しに便利な物は作られない。
自然の法則や原理を無理矢理ぶん曲げて、偶然では生まれない物を人間は作っているんだぞ?お前の槍も鎧もその眼鏡もお前も偶然じゃなくて人為的に作られてんだ。なにかを得る代わりになにかを失う、これは絶対の法則で努力は失う物を極力最小限に抑えること。金ってのはある意味、失う物の代用品だからな」

アリーシャ「なにかを得るにはなにかを失う……」

ゴンベエ「名探偵は事件の謎を解決するから名探偵なのと同じだ……いや、これ違うか?……ともかく、これを間違いだと言うならばオレはそいつを全力でシバき倒す、もしなにも失わずになにかを得る世界になんてなったらおしまいだ。勿論、オレを犠牲に世界を救う的なので切り捨てられそうになっても全力で足掻いてやるさ。ワガママ人間なんでな」

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