「導師アルトリウス、あれがお前の標的か」
「お前、殺るなら殺るでプラン練ってからにしろよ。ストレートに殴りかかっても死ぬぞ」
「……ええ、そうね」
アルトリウスの形の無い暑苦しい演説も終わり、少しだけ人気の無い場所にたまるオレ達。
ウーノが言っていた1000年も昔に誕生した最初の導師、それがアルトリウス。ベルベットの標的が人類史初の導師とはまた、神がかった運命……いや、これこそがベルセリアというやつか。
「アルトリウス様を殺す……」
「どうして、どうして、そうなったんだ?」
此処にと言うよりは、この時代に来てから一気に変化の兆しを見せるアリーシャ。
何時もの調子ならば真っ先に間違っているとか言いそうだが、そんな事は言わず、頭ごなしに否定する事もなく自分を制御し、取り敢えずと立ち止まり、同じ場所を別の方向から見ようとする。
「……あんたには関係の無いことよ」
「だが、ベルベットはさっき」
「別に、手伝ってって言ってないわ!」
知ろうと歩み寄ろうとするアリーシャを拒むベルベット。
復讐の手伝いが欲しいのならば、理解者の一人や二人集っておかなければ裏切られるぞ。
「ところで、二人の目的の人物は?」
「俺の方は居なかった。
まぁ、ああいう堅苦しいのには出ないし、出ても問題を起こすだけだから居ないだろうとは見る前から感じていた。
だが、ある程度の情報はあるから嫌でも見つかる……向こうからやってくるかもしれん」
「オレの方に関しては人は見つけたが、それだけだ」
「そうか……手懸かりだけでも、ましな方か」
オレの方は、手懸かりどころかなーんにも掴めていない。
いや、掴めているには掴めているんだろうが、どうしてそうなったという疑問は残っているし……三人目を見つけないと。
「さて、そろそろワシはおいとまするかの」
「ん、どっかに行くのか?」
「うむ、実は捜し物があってのう。名残惜しいが、此処でお別れじゃ」
マギルゥの捜し物?胡散臭そうだな。
「さよなら」
「うむ、坊も達者にの。皆の大願成就、七転八倒を祈っておるぞ」
「お前、悪魔か!」
「残念、ワシは魔女じゃよ。じゃあの~」
マギルゥは最後の最後にクソッタレな事を言って、去っていった。
「ったく、嘘とかそういうの言うにしても優しげな言葉を選びやがれよ」
「七転八倒って、七回転んでも八回起きる、何度でも挑戦しろ……じゃないの?」
「それは七転八起、七転び八起きだ。
七転八倒は激しい苦痛などで、ひどく苦しんで転げまわることで、七回転んで八回目には倒れる……遠回しにクタバレって意味だな」
七転八起をせめて言って去ってくれよ、マギルゥ。
ベルベットとアイゼンが結構イラッとした顔を……何時も通りの顔だな。
「お前等にはウザいかもしれんが、オレ達はこのままお前達について行かせてもらう。
どうも色々と不明な点が多すぎる……復讐鬼ベルベットが誕生した原因、行方不明の海賊団船長、開門の日、世間的に治らぬ病とされる業魔病、数えたらキリがない。これを知るには、お前達と一緒に居た方がいい、綺麗な言葉にはもう飽きた」
「好きにしなさい……それと、これは暫く借りるわよ」
フックショットの便利さに気付いているベルベットはオレが使ったフックショットをしまった。
「それで、これからどうするんだ?
相手は導師で国の重要人物、近付こうにも近付けん……さっきのゴンベエの透明マントは」
「残念ながら一品物だ。
というよりはあれは姿を消すだけであり、コウモリみたいに超音波で、蛇みたいに熱で探知されたら引っかかる」
「なら、先ずは情報を知ることが大事だ。
お前が言ったように、色々と不明な点が多すぎる……奴等が何をしようとしているのかを知らなければ話にならん」
「とは言うが、王国の重要人物。そう易々とは知れず世間で出回っている情報は遅すぎるし、信憑性が薄すぎるぞ?」
「問題ないだろ」
ロクロウの言うとおり、アルトリウスに関する情報は少ないだろうしガセネタが多い。だが、心配することはない。
「SNSどころか、Wi-Fiもインターネット、いや、発電所の一つすら無いこの大陸。
船を泊めてくれるグレーな奴がいるように、情報を売り買いしているグレーな奴等も存在しているだろう」
「SNS?」
「ソーシャルネットワークサービスのことだ。
説明すると洒落にならない程に時間がかかるから教えない……というか、教えたらこの国、色んな意味で滅ぶ」
オレの言っていることに疑問を持つライフィセットだが、SNSについては教えられないな。それを教えれば、オレ達は下手したら全滅、それどころかこの大陸が崩壊する。
「SNSだか、インターネットだかよくわかんないけど……グレーな奴はいるの?」
「確かアイフリードが懇意にしていた闇ギルドがあったはずだ。
バスカヴィルとかいうジジイが仕切っていて、王都の酒場が窓口だとか」
お前の方がジジイだろう?とアイゼンにツッコミを入れようかと思ったが、取り敢えずは言わない。
しかし、闇ギルド……アリーシャを襲おうとした奴等はどうしたんだ?つーか、スレイは今、なにやってんだ?
現代のスレイは順調かと少しだけ気にしているとライフィセットのお腹が鳴った。
「わっ!?」
「ははははは!とにかく酒場に行ってみよう。そこなら腹ごしらえも出来るはずだ」
「う、うん……」
取り敢えずはここに固まっても意味はないと酒場に向かうことにするオレ達。
歩きだすのだがアイゼンは足を止めており、オレとアメッカの背後を睨んでくる。
「なにか?」
「……お前達は何処まで知ってる?」
「何処まで、か……なにも知らないんだ、私達は」
恐らくはさっきの業魔病が切っ掛けだろう、アイゼンはオレ達を怪しんでいる。
乗船させると言ったのはアリーシャの思いは本物だと認めているからだが、それはそれ、これはこれと一線を敷いて色々と気にしだしたか。
「なにも知らないのに、業魔病の正体は知っているのか?」
「なんもでねえぞ」
アイゼンが疑いを持つのも無理はないと思う。
業魔病、穢れて業魔になることをこの時代では病とされている。菌やウイルスが発見されるまで病気は呪いだなんだと言われている時代があったから、そう言われていてもおかしくはない。オレは怪しむアイゼンに先に言っておく。
「オレ達が見ているものが正しいのか正しくないのか分からなくなってるのに、信じろなんてふざけたことは言わねえ。
お前がお前の目で見て、それから答えを出してくれ……少なくとも、オレ達は敵になるつもりはない。色々とこっちの方も頭がこんがらがってる」
「アイゼン、すまない……話した方がいい事はあるかもしれない。
だが、それはそれと同時に話すことができないもので……今は絶対に無理なんだ……」
未来から来たなんて言って、はいそうですかと信じられるわけないし未来の知識なんて糞の役にもたたん。
アリーシャの顔をみて、これ以上は聞いても無駄だとベルベット達を追いかけていった。
「アイゼンなら、話しても信じて色々と察してくれるだろうが……心苦しいな……」
「どうしてなんでっていうシンプルな疑問はもっていいが、難しいことを考えるな。
オレ達が今やることは見て、覚えること……なんでこうなったって、知ってから自分の中で色々と混ぜて答えを出すんだ。ただまぁ、今から見ようとしているのは汚い世界なんだよな……」
「大丈夫……汚い世界は慣れている」
アリーシャはそういい、アイゼンを追う。
「汚い世界には慣れている、か……オレは色々と大事な事を教えれるほど、器用じゃない。うん、無理だな」
綺麗な世界を見てみたいとは汚い世界を知っているということ。
今から見る汚い世界を、結末を見て、アリーシャはどうするのかが心配だが、それはオレがどうにか出来ることじゃない。結末を見て、変わるのは案外オレなのかもしれない。典型的な主人公にだけはならねえけどな!
「ところで、アイゼン……この国とまともにやりあえる奴等って居るのか?」
「なにを言ってやがる、オレ達アイフリード海賊団は王国の海軍とまともにやりあえる唯一の海賊だぞ?」
「……うん……」
分かっていたとはいえ、これから先、戦うであろう相手は遥か過去のローランス帝国の奴等もといミッドガンドという国だ。
スレイは仕方なくで戦ったのに、オレとアリーシャは分かっていて普通に戦おうとしている……本当になんでこうなったと思う。皮肉どころの騒ぎじゃない。
一応の為にと確認するが、予想通りと言うべきか戦えそうなのがいない。
「聖寮の雑兵の実力は知らねえが、最終的に狙うは導師の首だ。
道中までの雑魚は導師と戦う際の予行演習だとしても数が多すぎるしなによりもって、導師だから強いか。
質はこっちの方が圧倒的に上かも知れないが、数による戦法は洒落にならねえ。此方もなんとかして数を揃えられねえのか?」
「闇ギルドや聖寮の政策に不満を持つ者はごまんといる。そいつ等を束ねれば、数だけなら対等に渡り合える……数だけならな」
それはつまり雑兵の質も物凄いということか。
ベルベット達が一緒にいるがベルベット達はアイフリード海賊団の一員ではない。
ベンウィックとかの部下が色々といたのに誰一人連れてこないとなると、船員は船乗りとしては超一流だが戦うものととしては別で、他の闇ギルドの奴等もか。
「ならば、天族の方々に頼るのは……そういえば、王都に来てから天族の方々を見ていない。
アルトリウスが導師で、対魔士達が従士だとすれば天族の方々はいったい何処に……スレイの様に人を器にしているのだろうか?」
「……お前達のところの聖隷は、どうなってやがる?」
「聖隷は天族と呼ばれていて……人との共存……とにかく、人と歩み寄ろうとしている」
地の主のシステムは共存じゃない、どちらかと言えば依存させるに近いシステムだ。
前にそう言ったことが響いているのか共存と言うのを途中でやめた。
「……大陸が変われば、在り方一つも変わるか」
「ライフィセットとアイゼン以外の天族はいったい何処に……」
「対魔士達の中だ……器にしていると言ったら分かるだろう?」
「それは分かるが、導師アルトリウスが功績を残したとしても、どうして天族の方達には称号を用意されていない?」
「天族は、聖隷は意志を奪われている」
「!?」
「おおっと……いや、そういうことか」
ここに来てからアイゼンとライフィセット以外は天族を見ていない。
天族が見えて当たり前で、世間も天族を認知しており、天族と契約して戦っている奴等…どころか組織がある。
なのに、さっきの式典ではアルトリウスばかりを持ち上げていた。国としては人間を持ち上げたいのかもしれないが、本当に持ち上げなければならないのは天族だ。
「どういうことだ?」
「どういうこともなにも、聖寮は聖隷を捕まえて意志を抑制して契約している。今ではオレの様な聖隷が稀なぐらいだ」
「……人間が、聖寮がその様な事をしているのか!?」
「そうだ。お前達のところは……三年以上前の対魔士と同じか」
わけがわかんねえな、マジで。
アイゼンの口ぶりからして数年以上前はスレイみたいな奴にしか見えなかったが、なんらかが原因で見えるように。
見えるようになったから、聖隷と契約して戦える力を手に入れて…………。
「ある意味、オレ達が想像できなかったしなかった答えだな」
「っ、違う!!天族の意志を抑制して、正しいとは言えない!
もしこれが正しいというのならば穢れがないというならば私は真っ向から否定する……少なくとも、私はこんなのを想像しなかった」
天族が見えるようになれば種族間での政治とかパワーバランスがおかしくなる。
意志を抑制する事により力だけを摘出すれば天族が余計な事をいってこない。至ってシンプルだが、そういう感じの非情な事を思い付かなかったのはオレもまだまだだということだな。
「そうなると、アイゼンが正しい答えだな」
「オレが正しい答えだと?」
「……天族と人間の繋がりとはどうすべきか、繋がりはなんなのか答えを出すのが、私達の旅の目的の一つだ。
アイゼンは……失礼だが、私の知る天族の方達とは大分違う。私が勝手にそう思っている、思い込んでいた部分もあったが、大きく違う」
「だろうな、海賊をやっている聖隷なんぞオレ以外には存在しない」
「そうじゃない。いや、確かにそう言った部分もあるが、アイゼンは……人間臭い?のだろうか……」
アリーシャの言いたいことは、なんでそう思ったのかは分かる。
天族も術を使える以外は人間以外と大差変わらないというのと信仰する存在で祈りは大事なものとどうとか思っていたが、アイゼンはウーノ達とは違い色々と異なる天族だ。と言うよりは人間に近いな。
種族での差や壁を作っていない。
「聖隷や人間といったものなんて関係無い、普通の関係を築いている」
「……そうか」
「すまない、上手く説明できなくて。全てを教えれば簡単に説明が出来るのだが、それが出来ないんだ。
だが、聖寮が天族を無理矢理使役しているというのならば見過ごすことはできない。人と同じで、心を持っていて、ちゃんと誠意を持って話せば力を貸してくれる。災厄の時代をどうにか出来るならばと、力を……忘れてくれ」
「悪いが、それを聞いて忘れることは出来ない……お前が一発ぐらい、アルトリウスや聖寮の奴等をぶん殴らねえとな」
「ああ!反省をしてもらう!」
「なんか上手い風に纏まっているが、ベルベット達に置いて行かれたぞ」
「「!?」」
ロクロウと色々と話しながらスッと行った。
その事を伝えるとアイゼンは走り出して、ベルベット達がいるであろう酒場に向かう。
「数の有利を無くさないとどうにもならない、マジでどうすん……え、マジで?」
このまま戦ったとしても、数的な意味で分が悪すぎる。
アリーシャが戦えるようになっても焼け石に水、どうしたものかと考えていると黄金の毛を持つ狼の姿が見えた。
DLC
アリーシャ
謎のヒロインX
説明
サーヴァントユニヴァースと呼ばれる謎の時空から来訪したストレンジャー。
騎士として正々堂々と闇討ちを行い、自分以外のヒロインを、自分と似た顔を殺そうとする危ないやつの衣装。
色々とツッコミを入れたい衣装だが、アリーシャは恐ろしいまでに違和感なく着こなす。
呪われた装備なのか、これを着た途端にベルベットとライフィセットとロゼにとてつもない殺意を抱く。
だがしかし、彼女達は無実であり真に倒さなければならない悪はPである。
ゴンベエ
絶版おじさん
説明
天を掴めライダー!刻めクロニクル!今こそ時は極まれり!
あらゆるゲームの力を凌駕する全知全能の神であり究極のバグスターであるラスボス、ゲムデウスを理論上攻略可能にする伝説の戦士。能力やスペックをはじめとするあらゆるものがチートなのだが、それをも上回るチートが何体かいる。
これを着るとなんだか不出来なゲームとか制作者を絶版にしたくなる。