テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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それは正義を貫くRPGです。

「お帰りなさい、大変だったでしょう」

 

 フロルの風で王都に戻り、素知らぬ顔で酒場に戻ったオレ達。

 老婦人はよかったと微笑み温かく出迎えてくれるが、笑顔がなんだか胡散臭い。

 

「マーボーカレーはいかが?それとも、特製のピーチパイの方が」

 

「約束の本題よ」

 

 話題をそらすと言うよりは、まるでなにかに誘導するかの様に接してくる老婦人。

 ベルベットも薄々感づいてはいるものの、それと目的であるアルトリウスの首は関係ないと興味を持たない。

 

「オレ的にはピーチパイがいいな……ライフィセットは?」

 

「僕は、マーボーカレーがいいかな」

 

 料理の名前が出ると嬉しそうな顔をするライフィセット。ベルベットが話をぶったぎったので、シュンとした表情になるけれどオレとしては少し腹が減った。

 

「導師アルトリウスの居場所は、ダーナ街道の北にある聖寮の新神殿【聖主の御座】しばらくそこに籠るそうよ」

 

「新しい拠点に引っ越すつもりなのか?」

 

「ある意味そうね。聖主カノヌシの遷座儀式を行っているとか」

 

 オレとライフィセットの会話を普通に無視する老婦人。

 目的であるアルトリウスの情報を教えてくれると、ロクロウは何故にと疑問にもつがそこも答えてくれる。

 

「聖主カノヌシ……聖寮が掲げる新しい神様ね」

 

「カノヌシ……」

 

 未来の知識があるアリーシャはカノヌシの名前に心当たりがあるのか小さく呟く。

 そう言えば、あの無駄に喧しい演説で五聖主の一つであるカノヌシとか言っていたがあれか?マオテラスとかいう奴と同じ奴か?朱雀玄武白虎青龍の四神に真ん中の麒麟の五体の神獣みたいなのと同じ感じか?

 

「厳粛な儀式だから、付き添うのはメルキオル達をはじめとする数名の高位対魔士だけらしいわ」

 

「好都合だ」

 

「あいつもいるかもな」

 

「十分よ、それなら隙を狙えるわ」

 

 物騒な会話をしているベルベット達。

 取るべき首の居場所がわかれば後は向かうだけで良いとなるのだが、どうも都合よくはいかない。神殿に行くためには検問を通り抜けなければならず、抜けたところで結界があるので王都に入る時みたいな嘘はついても無駄らしい。

 

「あんた、結界を壊せる?」

 

「やったことねえし、そういうのは力技よりも正攻法がいい」

 

 闇纏・次元斬りをすれば結界を空間ごと斬り裂くことが出来ると思う。何回か使えばオレ達が入るスペースを作れるが、結界を力技で破壊なんてしたら向こうが確実に気付く。

 

「アルトリウス以外に高位対魔士数名がいるなら、結界を通り抜ける鍵があるはずよ」

 

 オレが無理だと分かると正攻法で抜けようとするベルベット。

 

「ええ、今、仲間が鍵について調べているわ。ただしそれは」

 

「別会計ね」

 

 このババア、確実に誘導しやがったな。

 口で説明する事をせず、かといって今から紙に依頼内容を書くわけでもない。普通にスッと依頼が書かれた紙を取り出した。本当は依頼が3つじゃなくて、4つだったとか言うオチか試してやがったな。

 

「……これは最高に穏やかじゃないぞ」

 

 背後からベルベットの持つ依頼書をチラ見するロクロウは一歩引くが、笑っている。

 

「なんて書いてあったんだ?」

 

「ミッドガンド教会のキデオン大司祭の暗殺よ」

 

「な!?」

 

 字が読めないのでベルベットに聞くと、第4の依頼はとんでもなかった。

 アリーシャは驚いているが、まぁ……殺されて当然と思われるぐらいの事を仕出かしているんだろうな。

 

「水酸化ナトリウムを作れれば、死体を溶かせる。証拠隠滅出来るぞ」

 

 暗殺ならば足跡は残さない方がいい。闇ギルドをはじめとする闇の業界は殺されたのを知っているとしておいた方がなにかと便利だろ。幸いにも海水はあるし、電気を作る磁石も電線もあるからロクロウとアイゼンに腕力発電させればいい。

 

「あら、聞かなくていいの?大司祭を殺す理由を」

 

「一つ目の赤箱の破壊は今ある赤聖水の流出を防ぐため、二つ目は赤聖水の製造に必要不可欠な赤精鉱の製造を終わらせる、三つ目は赤聖水の中毒者、大方貴女達の仲間の撃退……四つ目は赤聖水を売り捌いている奴を消す。大方、大司祭が赤聖水の元締めなんでしょ?」

 

「気付いていたのね、三つの依頼の関連性に」

 

「それが本当の試験じゃなかったの?

真っ先に依頼の関連性に気付いたゴンベエとアメッカの口止めをしたのも、その為でしょ?」

 

 本当に食えない婆さんだこと。

 無闇矢鱈と剣を振り回すだけの脳筋の馬鹿は必要ないと、ちゃんと考えられる知識も知恵も人格も持っている人間じゃないと情報は売れないとかどうとか。

 

「勘違いしないで、私はアルトリウスに辿り着くためならなんだってする。鞘なんてとっくに捨てたのよ」

 

「そう、貴女は剣そのものなのね……改めて名乗りましょう。私はタバサ・バスカヴィル。闇ギルド、血翅蝶の長よ」

 

「……アイゼン」

 

「まさか、女とは知らなかった」

 

 老婦人もといバスカヴィルが引き継いでギルドを運営していると思ったら、あんたがバスカヴィルだったのかよ。

 アイゼンの情報が中途半端すぎるのでちょっと睨むとすまんと目を閉じる。

 

「男だろうが女だろうが関係ないわ。大司祭の情報を」

 

「大司祭は毎晩、ローグレス王城の離宮で災厄祓いの祈りを捧げているそうよ。しきたり通りなら礼拝は単身で行うはず、狙うならこの時が一番よ」

 

「離宮に入る方法は?」

 

 何処までバスカヴィルの婆さんは読んでいたのか、逆に知りたくなった。

 記章を渡され、それさえ見せれば血翅蝶の面々から離宮に入る手伝いをしてくれる。国の中枢に血翅蝶が居るってヤバイな。

 

「礼拝は夜だから、今の内に休みなさい」

 

「鍵の情報、頼んだわよ」

 

「……それしか、ダメなのか?」

 

 ヤバい取引が成立、というところでアリーシャが待ったをかけた。

 

「赤聖水の依存者がどうなるのかは、分かった。

原材料の赤精鉱が危険な代物だと知られていることも、赤聖水が現時点でどれほど製造されていたのかも見た。

そのギデオン大司祭がどんな理由で赤聖水を量産していたとしても許される事じゃない……だが、殺すのは間違っている」

 

「ええ、そうね間違っているわ」

 

「!」

 

「あら、意外かしら?」

 

 殺されて当然とかいう結構あれな発言が飛んでくるかと思ったが、普通にアリーシャの発言を認めるバスカヴィルの婆さん。

 

「どんな理由があったとしても、殺すなんて間違っているわ。

証拠を突きつけて世間に晒して法的手段をとって、国が罪を裁けばいい。それが最善の理よ」

 

「だったら、それをすれば良いのではないのですか?

赤精鉱の製造方法を発見した為に監禁されたメンディが証言をすれば、そこから売っているルートなどを調べられる」

 

「それが出来ないからこうして依頼しているのよ。

社会や法律では裁けない人間は多数に存在しているの……ギデオン大司祭もその一人」

 

「っ……」

 

 法律で裁くことの出来ないまごうことなきクソッタレを知っているアリーシャはなにも言えない。

 殺せばそこで終わりで、もっと良い方法を探せばあるかもしれないが相手は裁くに裁けない相手よりも力を持っていないアリーシャはなにも出来ないままだ。

 

「いつだって法は力を持つ者の味方よ。

貴女の志は立派だけれど、力が無いとなにも出来ない。例えあったとしても、力を持つ人より弱ければこうしたことしか出来ないの」

 

「……力……」

 

「婆さん、これ以上はやめてくれ。アメッカには色々と毒になる」

 

「ええ、これ以上はやめておくわ」

 

 暗殺の決行は夜となり、二階で休憩してと場所を貸してくれた。

 1日で三つの依頼をこなしたので、思ったよりも疲れた。と言うかフロルの風を連発しすぎたな。マギルゥを含めて7人で跳んだりしたら魔力を結構持ってかれた。

 

「……」

 

「どうする?」

 

 オレは膝を抱えて俯いているアリーシャに時のオカリナを渡した。

 アリーシャを甘やかすのはいけないことだとは頭では分かっているが、暗殺となると流石に救済措置は一度だけ出さねえと。

 

「いらない」

 

 逃げても良いんだぞと言う甘い言葉の代わりとして渡したオカリナを返してくる。

 

「ことがことだけで、コレが最初で最後のチャンスだ。

断るならそれで構わないが、コレを返す以上はもう後戻りは出来ない……帰る時は全てが終わってからだぞ?」

 

「分かっている……私は、恵まれていたんだな」

 

「なんだ、急に?」

 

 位は低いとはいえ王家の出で、優秀な師匠と容姿を授かり、非の打ち所は女子力だけというアリーシャ。それが恵まれてたって、自慢か何かか?

 

「今の私はアリーシャ・ディフダでなくマオクス=アメッカ、アリーシャ・ディフダとしてならば、今ある証拠でギデオン大司祭を捕まえて裁くことが出来た。だが、アリーシャ・ディフダでないただの一人の人間なら、マオクス=アメッカとしては余りにも無力だ」

 

「……で?」

 

「でって……」

 

「不幸自慢をしたいのか?力が無いと思っていたら実は持っていましたと喜びたいのか?また迷惑をかけた罪悪感に苦しみたいのか?」

 

 自分が恵まれていたのと弱い人間はこうすることしか出来ない現実を突きつけられ落ち込んでいるアリーシャ。何時だって現実は理不尽まみれだ。オレなんてアクセルとブレーキ踏み間違えた糞な老害に殺されたんだぞ。十王の裁判で天国行きなんだぞ、轢いた糞老害。

 

「ゴンベエなら、ゴンベエならどうする?」

 

「オレはオレ、お前はお前だ」

 

 転生者になる為には人を殺しても悪いことをしたがそれはそれ、これしかなかった、何時かは報いを受けるかもしれないと一線を引いて割り切って生きれるように訓練されている。

 基本的に転生者は二十歳未満の子供がなれるもので、子供がやって良い訓練じゃない。自分で鳥を育てて絞めて余すことなく美味しく食べる道徳の授業は最初は辛かった。

 その辺の説明をざっくりしても良いが、オレははね除ける。答えを出すのはアリーシャで模倣するもんじゃねえぞ、アリーシャに色々と影響を与えているのは認めるが、あくまでも切っ掛けを与えているだけで、それを選択する義務は何処にもねえよ。

 

「…やだ…」

 

「!?」

 

「ゴンベエ、教えて……どうすればいいの?」

 

 こういうのは甘やかすもんじゃないと一線を引くと、アリーシャから穢れが出てきた。

 諦めて良いとか色々と誘導してたし、精神的に何度も何度も絶望に叩き落としたから穢れが出てきてもおかしくはないが、よりによって今出てくるのか?

 

「オレは、取り敢えずは見るぞ」

 

「見る……ギデオン大司祭は、黒だ。それは三つの依頼で分かったはずでしょ?」

 

「バルトロよりもゲスい事を平気で言う奴かもしれないが、それでも見てみるんだ。まごうことなきゲスなら斬るがな」

 

「ゴンベエは、なにも思わないのか?殺すことについて」

 

「思うには思う……だが、誰かがこうしないといけない時は何れ来るぞ?」

 

「……誰かに」

 

「逆だボケ」

 

「!?」

 

 誰かが痛みを受け止めないといけない汚れないといけない世界は、不条理は間違っていると言いたいアリーシャ。

 優しい人間なら良いそうなことだが、そんな考え方こそ間違っている。

 

「ライフィセットが食べたマーボーカレー、肉が入っていただろ?」

 

「それは」

 

「人間と食用の家畜は違う理論か?

確かにそれも一つの考えだが少なくともオレはそう思わない、なにかを得るにはなにかを失うのが絶対だ。

その法則を否定するならばテロリストにでもなれ、今の世界を滅ぼせ。そして新しい世界の繁栄を失敗しやがれ……目に見えないだけで、自覚がないだけで、オレ達は常になにかを得て失っている」

 

 食用の家畜を生きるために食うためにオレ達は殺している、これに対して違うと否定したりする時点でもうなにかと間違っているぞ。仏みたいに悟り開いた奴等以外はそんな言葉を使う権利は何処にもない。

 

「覚えておけ、いただきますは最高のありがとうだって……話変わってるな」

 

 何時の間にか、アリーシャから出る穢れが納まっている。

 ザビーダと話をした時と同じでなに一つ答えを出すことが出来ないものの、少しだけ意識が切り替わったお陰で抑え込む事が出来たのか?

 

「ゴンベエは汚れる覚悟はあるのか?」

 

「あるにはあるが、お前が思うものとは違えよ。

天秤に乗って、自分を軽くするんじゃなく、0という崖の頂点から如何にして下に落ちまくらないかを、汚れる前提で汚れないのはない話だ」

 

 必死になって上に登るんじゃなくて、如何にして墜ちないかを必死になって一寸先は闇の崖の壁に掴まって頑張るのが人間ですと転生者養成所の教官が言っていた。+も-もない人間なんてこの世に居るわけねえだろうって笑ってたな。

 

「大分、酷いね」

 

「綺麗事は言わない。才能の無い奴に才能無いぞとハッキリ言うような、褒めて伸ばす教育なんて一切しない所で色々と教わったからな……もう大丈夫か?」

 

「うん……先ずは、見てみるよ」

 

「そうか……手遅れな時はどうする?」

 

「……分からない。でも、その時の私がきっと教えてくれる」

 

「そうか」

 

 その時にならないと頭で考えても、暗殺について答えを出せないとアリーシャは腹を括って仮眠を取りに行った……が、それだけだ。結局はなにも決められず、未来の自分に丸投げだ。

 

「オカリナ……」

 

 返されたオカリナを見て、オレは考える。

 アリーシャが戦う事が出来るようになれば、アリーシャの考えや見ている世界は変わる。その為には力が必要になるが、恐らくだが聖寮の対魔士の様に天族と契約することはできない。穢れてしまっているから、器に出来ない。

 浄化すればと言いたいが、浄化は病原菌を殺す薬みたいなもので体内にある抗体を強化するとかそういうのじゃない。穢れの原因をどうにかこうにかしないといけない。それはアリーシャ自身が今後どうするとかの答えを出さないとどうにもならない。その為にも戦える力で、その力がオカリナにあるはずだ。

 

「謎解きの鍵は何時だって新アイテムだが、今回は謎解きじゃなくて力……」

 

 貰った転生特典の中でもよく分からないものがある。オカリナの曲がよく分からないものの一つだ。

 時の逆さ歌でオレ達は過去に来たのならば時の歌で元いた時代に帰れる、時の重ね歌は自分の時間を倍速にするものだった。嵐の歌は豪雨を起こし、太陽の歌は晴れにする。エポナの歌は恐らく馬を手懐ける歌だ。

 ゴロンのララバイは睡眠、目覚めの歌は封印の解除とか眠ってる奴を起こす歌。使ったことがないのもある。ぬけがらのエレジーみたいに何が起こるか分かってはいるものの、使い道がよく分からんのもある。

 

「……なんも、起きねえな」

 

 効果がワープという大翼の歌、そしてワープ先がこの世に無いので使い道がマジで無い光のプレリュードを吹いてみるも、なんも起きない。

 この使い道が無い曲が鍵を握っていると思っていたが、オレの間違いなんだろうか?

 

「今の、ゴンベエ?」

 

「ライフィセット、喧しかったか?」

 

 光のプレリュードが聞こえたのかやって来たライフィセット。今はゆっくりと休んだりしたり、準備をしたりしているのでオカリナを吹くのはまずかったと思っているとライフィセットは首を横に振る。

 

「……五月蝿くなんかないよ、とってもよかった」

 

「そうか」

 

「他にも吹けるの?」

 

「まぁ、色々とな。

だがまぁ、寝ている奴も居るだろうしそれはまた今度吹いてやるよ」

 

「ほんと!?」

 

「ああ……っと、ベルベット達は起きてないか?」

 

 ライフィセットはよかったと言うが、ベルベットならハッキリと喧しいと言ってきそうだ。

 他の面々の様子を確認するとアイゼンはバスカヴィルの婆さんと結構真面目な会話をしており、ロクロウは剣の手入れを、アリーシャは普通に寝ており……ベルベットは魘されていた。

 

「大丈夫?」

 

「病気……は無いか。ライフィセット、飲み水と清潔なタオルを持ってきてくれ」

 

「うん」

 

 ついさっきまでピンピンしていたベルベットが魘されているのは、悪夢を見ているからだな。

 

「ちが、う……違うの」

 

 どんな夢を見ているのかは知らないが、怒っているイメージが強いベルベットが出しているとは思えない弱々しい佐藤■奈ボイス。

 起こして夢を見ていると言えば終わりだと触れようとすると、背後からマギルゥの気配を感じる。

 

「なんのようだ?」

 

「なに、ちょっとのぅ。

それよりも触れたところで無駄じゃぞ。夢とは何時か覚めるから夢で、夢は都合よく出来ておる」

 

「現実が辛いなんて、今に始まったことじゃねえだろ」

 

「触れて夢だと言ったところでその悪夢は終わらんよ」

 

「……だったら、これか」

 

 精神安定剤がわりになるお香とか作るのには時間がかかる。現在進行形で悪夢を見ているベルベットに必要なのはいやしの歌でなく、鎮魂歌。魂のレクイエムを吹いてみるとベルベットの呟きは消え、少しだけ表情が柔らかくなった。

 

「ゴンベエ、持ってきたよ」

 

「何時でもベルベットが目覚めて良いように氷を」

 

「あ……あああ……嫌」

 

「ベルベット?」

 

「嫌だぁああああああああ!!!!」

 

「!?」

 

「聞くもんか、お前の言うことなんか聞くもんか!!」

 

 オレが魂のレクイエムを止めた途端、悪夢に魘されるベルベット。

 どんな内容かは知らないが予想以上にロクでもない悪夢なのは確かで、悪夢で目を覚ますと混乱して周りが見えておらずライフィセットの首をしめた。

 

「おい、なにやってんだよ」

 

 どんだけ恐ろしい夢を見たのかは知らんが、ライフィセットは無関係だ。

 オレが声をかけると自分が夢を見ていて混乱していることを自覚し、ライフィセットから手を離す。

 

「あんた達、どうして?」

 

「ベルベットが……うなされてた……から」

 

 掴まれていた首が離されたので、咳き込みながらも此処にいる理由を教えるライフィセット。

 するとベルベットが驚いた顔をし、ライフィセットから目をそらす。

 

「気安く近寄るな!!あたしが業魔だって、分かっているでしょ!!」

 

「ごめ、んな」

 

「謝るな」

 

 ライフィセットとなにかを重ねて八つ当たり気味に叫ぶベルベット。

 心配なんて余計な御世話とドライな対応ならまだ良いが、八つ当たりならば話は別だとライフィセットに謝らせない。

 

「あんたもよ!」

 

「オレにも当たるな」

 

「……」

 

 あーあー、ライフィセットが逃げちゃったじゃねえか。

 

「お前、後で謝っとけよ。純粋にお前を心配してたんだぞ」

 

「……っ、くそっ……」

 

 タオルと飲み水を見て、余計に苛立ちが増すベルベット。

 

「寝ても覚めても悪夢の続き」

 

「マギルゥ…」

 

「モノは石をぶつけて壊れるが、キモチをぶつけるとイキモノになる。扱うにも捨てるにも、モノの方が楽じゃぞ?」

 

「なにが言いたいの!」

 

「つーか、マジでなにしに来たんだ?」

 

「いやなに、【お主らとおれば、ビエンフーを使う女対魔士が現れるぞよ~】とマギルゥ占いに出たのでな」

 

 此処に来た理由を……いや、これからついてくる理由を教えるとマギルゥは去っていった。

 

「汗拭いて、水分取っとけよ。酷い汗だぞ」

 

「あんたも何処かに消えなさいよ」

 

「そうしたいのは山々だけど、幾らなんでもそこまでの奴は見捨てられねえよ」

 

 本当は見捨てないといけないけど、どうもオレは甘い。

 ベルベットはライフィセットが置いていったコップに水を注いで口に含み口内のベタつきを取る。

 

「私は業魔なのよ?」

 

「ベルベット……うちの国にはこんな言葉があるんだ」

 

「なに?」

 

「男の子は男の子同士で 女の子は女の子同士で恋愛すべ……じゃなくて、可愛ければ、それで良いのではと」

 

「待って、今なにかとんでもないことを」

 

「ベルベットはその世界に触れなくて良いから、忘れろ」

 

 冥府魔道の道があるのは知っているが、そこは関係無い。何故、間違ってそれを言いそうになったんだ?

 

「お前が憑魔とか天族とか、そう言うのは特に関係無いぞ?世の中って、基本的に顔とかだからな。

そりゃ腐った死体とかならウォっとドン引きするかもしれないけど、ロクロウもお前も人間姿を維持してて尚且つイケメソで、話が通じる相手だから種族どうのこうの言わんぞ。

どっかの研究者も人間は五感の中で視覚からの情報を頼りに生きてたり、基本的に視覚の情報を第一にしているとか言ってたし、研究結果もあった。比較的人間に近い……いや、元から人間だったな」

 

 業魔と接する変人だと思われているが、基本的には見た目だからな。

 

「これでも?」

 

 色々とあれな発言をしていると左腕を変化させるベルベット。

 

「特に問題ないぞ……自分は化け物なんだとかアホな事を考えても、世の中にはそれでも構わないって言う奴はいるぞ」

 

 人はそれを変態と言う。

 

「とにかく、まだ時間があるから休んどけよ」

 

「……」

 

 さっきのアリーシャみたいに膝を抱えて……体育座りをするベルベット。

 目を閉じてはいるものの、眠ってはいない。いや、必死になって眠らないようにしているのが正しいんだろうか?

 

「これぐらいはしてやるよ」

 

 オレはベルベットの隣に座り、魂のレクイエムを吹いた。

 ベルベットはオカリナを五月蝿いと一言も言わずに聞いており、途中で膝を抱えるのをやめ、ゆっくりとゆっくりとオレの肩に落ちてきた。

 

「……もう少し、吹き続けて」

 

「了解」

 

 魂のレクイエムを吹き続けていると、ベルベットはさっきと違って健やかに眠っていた。

 ワープにしか使えない魂の鎮魂歌(レクイエム)にはこういう使い道もあるんだな…………あ!

 

「アレをすれば、もしかしたらアリーシャが……だが、今の槍だと出来ないか」




スキット 異世界(他の転生者達がいるとこ)①

ゴンベエ「はよ、煮えろ」

アイゼン「なにを煮込んでる?」

ゴンベエ「その辺に這えてた無駄に長い草」

ライフィセット「食べれる野草?」

ゴンベエ「いや、その辺に這えてた雑草だぞ」

アイゼン「毒か?」

ゴンベエ「もう少し、優しさのあることを言ってくれよ。紙を作ってるんだ」

アイゼン「紙は竹や麻からじゃないのか?」

ゴンベエ「木材とか雑草で良いんだよ。その辺の雑草を水酸化ナトリウムとか煮込んで解して水洗いして、潰して干せば出来る。そろそろ紙が切れそうだから作ってるんだよ」

ライフィセット「紙って、簡単に作れるんだね」

アイゼン「……お前の知識は何処で得たものだ?」

ゴンベエ「アメッカと出会う前に、黄泉比良坂を越えた先にある訓練所に居たとだけ言っておく」

アイゼン「そこで学んだのか」

ライフィセット「訓練所……学校みたいなところ?」

ゴンベエ「一般教養とかも学ぶから、学校みたいなところと言えばそうだな。詳しい数はオレも知らんが年間1500人ほど入ってくる。何年間通ってたら卒業出来るとか言うのじゃなくて、完全な実力主義の学校でなにを基準に卒業かはオレも知らんが、かなりの脱落者がいる」

アイゼン「訓練に耐えきれなくなった奴等か……なにに成るための訓練をしている?」

ゴンベエ「しいて言うならば幸せになるために生きる訓練だ、一般教養はともかくわけわかんねえ訓練とか多くて、毎日毎日脱落者が出ていた。卒業して未熟な奴等ばっかで、生き残っているのは極僅かしかいない」

ライフィセット「皆、死んじゃったんだ……」

アイゼン「訓練をした上でそれは弱かった、弱肉強食の世界で生き残れなかった奴か」

ゴンベエ「いや、違うぞ」

アイゼン「どういう意味だ?」

ゴンベエ「オレもよく分かんねえけど、世の中は腕っぷしが強いだけじゃダメだ。頭がいいだけじゃダメだ。コミュニケーション能力なんかの横の知識があるだけでもダメだ。此所とは違う世界でオレより先に卒業したけど生き残ってる奴等は全員、変人だったり人間臭い奴ばっかだ」

アイゼン「文字通り、人間として強い奴等が生き残っているのか……異世界にだと!?」

ゴンベエ「どちらかと言えば平行世界に近かったりするが、ざっくりと言えば異世界だな。言っとくが、オレは行ったことねえし知識しかねえこの世界の住人だから聞いても異世界の事を少しか出来ひんからな」

ライフィセット「聞いてみたいな、異世界がどんなところか」

ゴンベエ「まぁ、ある程度落ち着いたら話をしてやろうか?アメッカが居るときにだけど……あいつ絶対、無視したら怒るからな」
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