テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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つまるところそげぶ

「おいこら、置いてくな」

 

「!」

 

「あら、驚いたわね」

 

 結果だけを見れば大司祭はくたばった。

 殺ったことに関しては代わりなく、洒落にならない悪事をしでかしてある程度の証拠が揃っていて、更に言えば暗殺者まで来てくれたと国としては色々と大助かり。

 あることないことでっち上げられ人相書きされて指名手配にされたら、たまったもんじゃないと姿を隠す透明マント(仮)を使って酒場まで戻った。

 

「おぉ、無事だったのか」

 

「無事もなにも、あの状況でどうやって死ねというんだ」

 

「オレ達と比べて少しだけ遅かったから、殺られたと判断しただけだ」

 

 うっわ、酷えな……海賊だから酷くて当然か。

 

「ノルミン……私達が来るまでになにを話していたんだ?」

 

 シルクハットを顔まで被っているノルミンを見て、此処に帰って来て報告し終えたのだと判断するアリーシャ。

 どうやら面倒なことになっている……と考えた方が良いんだろうな。ベルベットは鍵さえ分かればとそのまま行きそうだし。

 

「ベルベットがどうしてもワシについてきてほしいと泣きついてきてのぅ」

 

「言ってないし、泣いてないわよ。あたしはただ、その聖隷がいれば良いだけであんたは必要無いわ」

 

「……1からの説明を頼む」

 

 どういうことなのか、オレでも状況が理解できない。アリーシャは大きなため息を吐いて、オレ達が来る前の出来事を聞いた。

 ギデオン大司祭がくたばったのを血翅蝶は既に知っており、結果的にはくたばったから依頼達成とのことでベルベットが求める情報を教えた。

 現在の導師がいる聖主の御座に入る方法は、高位対魔士だと証明すれば良いらしく、Aランクの聖隷を四人連れていけば良いらしく、オレ達が来る前にライフィセットがマギルゥに一緒に来てくださいと言い、ならば行ってやろうという辺りでオレ達がやって来た。

 

「……数が足りなくはないか?

今、此処にいる天族はアイゼンとライフィセットと……えっと」

 

「あ、自己紹介が遅れました。僕はビエンフーでフ!マギルゥ姐さんの……聖隷でフ」

 

 おい、今ちょっと間があったぞ。若干嫌そうな顔をしたぞ、このノルミン。

 

「ビエンフーの3人で、突破するには4人の天族、聖隷が必要で数が足りないぞ」

 

 開けるのには四人で、今この場にいる天族は3人。船に乗っていたのはアイゼンとこいつらを除けば人間だけで、天族は3人だけだ。

 その事を指摘するとベルベットがオレに視線を向けてくるので、オレは両手で×印を作った。

 

「オレは人間で、天族とはなんもない。

オレとアメッカにはそういうのを頼っても無理っぽいし……潔く協力してくれる天族探せば良いんじゃねえの?」

 

「確かに、それが一番の正攻法だ。だが、聖寮に捕まらず従っていない聖隷で、高位の聖隷となれば限られている」

 

「高位の天族……ゼンライ殿?」

 

 力業でも小手先でもなく、普通に通る方向でアリーシャは考え、この時代でも生きている可能性がある天族の名を出す。

 天族基準で比較的に若い年齢のウーノが、物凄く長生きをしてたとかそんなことを言ってたから恐らくは生きているがアイゼンとマギルゥとビエンフーは渋い顔をする。

 

「ゼンライ、か……確かにAランクを越える聖隷だが」

 

「絶対に協力してくれんのぅ。

業魔と共に導師を殺そうなどとごめんじゃろうし、かといって聖隷の意思を奪う聖寮にも手を貸さん。中立でなく、人の世と完全に関係を断とうとしておる」

 

 良い案だが無理っぽいと無しにするマギルゥだが、ニャバクラに行けば会えそうな気がする。

 

「そのゼンライって、誰なんだ?」

 

「イズチの雷様と呼ばれる程の聖隷でフよ。

少なくとも、僕が生まれた頃にはもう居た聖隷で恐らくでフが世界でも10本の指に入る長生きな聖隷でフ」

 

「おお、そんなに長生きなら老練の強い聖隷でAランクは越えているだろうな」

 

「見た目ジジイで中身は更にジジイで……とにかく、ゼンライのジジイの協力は無しだ」

 

 良い作戦だが、絶対に協力してくれないとゼンライの件は無しにする。というか、元から無理っぽいとは思っていた。

 

「……フェニックス?」

 

「バッド!!それだけは御勘弁を!」

 

 ノルミン天族最強と呼ばれる漢を上げるとビエンフーは全力で嫌がる。

 マギルゥも暑苦しいから嫌と言い、そもそもで何処にいるか分からないのでNGとなった。

 

「となると…………お手上げだな」

 

 残りの知り合いも何処にいるのかわからず見つけ出さないとならないので、手を上げる。

 仮にアリーシャがイズチの場所を教えたとしても、この辺は未来ではローランス帝国で、ハイランドにあるイズチに行くまで時間がかかる。

 

「対魔士から奪うしかないわね」

 

「まぁ、それが……一番だな。やることが決まったとなれば、今日はもう休まないと…ライフィセットはもうギブアップみたいだ」

 

 途中からずっと眠っているライフィセットをみて微笑むオレ達。

 

「無理もない、子供には長い夜だ」

 

 ロクロウは窓をみて、今日は長い1日だったと微笑みベルベットはバスカヴィルの婆さんをみる。

 

「援助、頼めるかしら?」

 

「ええ、お安い御用よ」

 

 オレ達は今日もバスカヴィルの婆さんの世話になることになった。

 

「……4人いればか」

 

 ライフィセットを布団に入れている間に、オレは考える。

 余りにも現代と文明レベルが変わらないが、あくまでも此処は過去。さっき、アリーシャに余計なことを言わせないようにと強制的に会話を変えたが、フェニックスとザビーダは何処かでオレ達と会っている。いや、会うことになっている。

 ザビーダはなんらかの形で嫌でも会う。ザビーダは1000年前の事を色々と思ってて、そん時に出会ったと言っていたからな。

 

「ああ、そうそう。貴方の依頼の方なのだけれど、もう少し待っててね」

 

「オレの依頼……ああ、槍か。そこまで難しいものなのか?」

 

「適当な職人を見繕うのは簡単だけど、それだとどう考えても導師以前に特等対魔士である男には勝てないわ」

 

「男?」

 

 色々と考えていると、オレの方の依頼の進行状況を教えてくれる。

 暗殺とか拉致された奴の救出とかと比べれば何万倍も楽そうな依頼だが、オレ達の方も考慮してくれて考えてくれておりその際にとてつもない障害があるようで話を聞いていたロクロウが入ってくる。

 

「まぁ、確かに何れはアイツと会う。

お前の持つ素材がどんなものかは知らんが、少なくともアメッカの槍術は本物で後は実戦経験を積めば良いだけ。そうなると、問題は職人だ。どんなに良い素材を使っても、職人がどうしようもないんじゃマトモな武器は出来ない。それこそ業物の槍を簡単に作る腕を持っているぐらいの職人でないと、アイツの剣で真っ二つだ」

 

「その言い方だと、そいつは腕も武器も最上級と言ったところか……オレが作れれば良いんだがな……」

 

 ガラス用品とかそういうのは作れる。色んな意味で作るのが疲れたが、真空管を作るためにヒックマンポンプを製造したこともある。だが、あくまでもガラス用品とかの科学に使う物であり武器は基本的に専門外。

 転生者の中でも武器開発出来る奴はオレの知る限りは居ない。なろうみたいな既存の武器を融合させたりした感じのを作れる奴ならばそれなりにいるが、メイドインジャパンと言わしめる程に純粋に素晴らしい性能の包丁とか刃物を作れる職人はいない。そっち系が得意なの、地獄の傀儡師とかぐらい。

 余りにも長引きそうならば、そっちがお手上げなら依頼は無かったことにしてくれと頼むと今度はアリーシャがバスカヴィルの婆さんに色々と聞く……いや、色々とだけだが結果的にみれば一つだけなんだろうか?

 

「……聖寮は此処でしか言えないことをしていて、導師アルトリウスも加担したりしているか?」

 

「ええ、しているわよ」

 

「そうですか……情報料は」

 

「必要ないわ、少なくとも貴女達が動いてくれるだけで此方としてもありがたいのよ」

 

 この酒場は表向きには酒場だが、実際はヤバい奴等の集う酒場でヤバい奴が経営をしている。

 アリーシャはそれを理解した上で、聖寮が一般的にはやってはいけないことを平気でしているかどうかの最後の確認をする。

 

「いえ、それでは私の気がすみません。導師アルトリウスの顔をおもいっきり、殴り飛ばします」

 

「……そう。それが貴女の出した答えなのね」

 

 拳をグッと構えると表情を変えるバスカヴィルの婆さん。

 アリーシャは此処に出る前と今とでは心構えが大きく変わっており、微笑ましく思っている。

 

「裁けぬ悪を裁くのではなく、裁けぬ悪を裁けるようにする。それが私の答えで、それでも満たされない人のために私は槍ではなく拳を振るいます。貴女からすれば、甘い考えかもしれませんが」

 

「いえ、そんな事は無いわ。貴女の考えは立派よ。

裁けぬ悪を裁く人間は何処にいってもいる。けれど、裁けぬ悪を裁けるようにする人なんて滅多にいない。その道はとても険しいけれど、頑張ってね……導師アルトリウスをはじめとする聖寮の中枢を担う人物を殴ってやりなさい。私個人としても、聖寮は気にくわないわ」

 

「はい」

 

 決意を改めて表明し、拳を握るアリーシャ。

 出した答えに深く追求しないが、果たしてそれを続けることが出来るのかどうか考えているのだろうか?少なくとも、過去だからマオクス=アメッカで通じるが、現代だとアリーシャ=ディフダにならなければならない。

 アリーシャが選んだ道は上流階級とは決して交わらない、交わっちゃいけない道であり……王族とかそういうのをやめます的な覚悟を決めないとできないぞ、必殺仕事人は。

 

「さてと……オレも寝ようっとと」

 

「大丈夫か、足取りがおぼつかないが」

 

 伝える事も伝え、次にすべき事も決まった。

 今日はもう寝ようと二階に行こうとすると足元がふらついてしまう。

 

「問題ない、パラパラパパパ~すればいい……ガス欠なんだよ」

 

 フロルの風約25回にブラックホール・イクリプス、その他諸々で約一日で消費した魔法力的に300は越えている。

 確か時のオカリナでのリンクのMPは数値化すれば48だったから、4倍以上の力を使っている。一度眠っておけば、勝手に回復するがベルベットにオカリナを吹いてたから、寝てなかったんだよな。

 

「パラパラパパパ~って、なに?」

 

「分かりやすく言えば、睡眠だ。お前にオカリナを吹いてたからオレだけ寝てないんだよ……」

 

 ドラクエの効果音を口にしていると戻ってきたベルベット。

 今日はもう本当に限界なので、大きなあくびをしながらベッドに向かおうとすると前に倒れて真正面にいたベルベットのふかふかベッド(意味深)に顔を突っ込んでしまうが、今は性欲よりも睡眠欲の方が勝っている。

 

「シバき倒すのは明日でお願い、本当に眠い。おやすみ」

 

 ベルベットのベッドから顔を出し、オレは何事もなかったかのようにベッドを目指す。

 アリーシャは顔を真っ赤にしているが今は知らんと眠りに落ちた。




ゴンベエの術技

ブラックホール・イクリプス

説明

ズルいぞ悪いぞ、悪役のゼンリョク技。
ブラックホールを引き起こし、飲み込んだものを爆発させる超火力で連発は出来ない。
使う際には詠唱をしなくてもいいが、代わりに悪のゼンリョクポーズをとらなければならずなにをするのかがバレる。

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