テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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違和感は時として仕事をしない。

 本当につい最近まで探しに探していた尋ね人ならぬ、尋ね天族ザビーダ。

 なにやら1000年前にどえらい目にあったようで、その事について色々と思っており更には1000年前にオレ達の先祖(オレ達)に出会い、深く関わっていたらしい。

 今現在1000年前にいるから、何時かは会うのだろうなとは思ってはいたが意外な形で会うとは……アイフリード海賊団副長と知り合いとか何気にスゴいぞ。

 

「落ち着きなさい、アイゼン!」

 

 オレ達を無視して喧嘩をはじめるザビーダとアイゼンだが、ベルベットの一声で止まる。

 すごくどうでも良いことだけども、ザビーダ服着てるな。あいつ、未来じゃ上半身裸だったのに、そういうタイプの男だと思ったのに違うのか。

 

「そうです、じゃなかった。そうだ。アイゼン、そちら……じゃなくてそっちにいるのは」

 

「聖寮に捕まっていない聖寮を襲うぐらい度胸ある聖隷だろう……お前はちょっと黙ってろ」

 

 演技が下手なアリーシャ。

 言いたいことはわかるのだが、物凄く噛みまくっている。今の今まで知り合いとそっくりとかそんなのがおらず、ライフィセットとアイゼンとビエンフーだけしか天族がいなかったが、目の前にいるザビーダは遥か未来で会っている存在で相手にしづらいのでオレが代わる。

 

「協力しなさい。その検問の結界を越えるには、聖隷が4人必要なのよ」

 

「ベルベット、もうちょい優しく言えって無理か」

 

 単刀直入でなにをするのかいうが、もうちょいどうにかならないのかと思うが無駄か。

 色々と面倒な手順を省き、一気に説明したので分かってくれるのかと思ったがザビーダは首を横に振った。

 

「つまらねえ理屈言うなって」

 

「オレは、オレのやり方でけじめをつける」

 

「「邪魔をするな!!」」

 

 まぁ、ザビーダはまだ分かる。

 現代では知り合いだが、過去では初対面だから好き勝手できて色々と言う権利はある。だが、アイゼン、お前は当初の目的を忘れてるよな。ザビーダがアイフリードの行方の鍵を握っている可能性があるとはいえ、当初の目的を忘れている。

 

「そう」

 

 あ、ダメだ。

 

「じゃあ、あたしはあたしのやり方でやらせてもらうわ……二人とも動けなくしてから結界を開く!!」

 

 アイゼンとザビーダの態度にキレたベルベットは左腕を憑魔化させ、戦闘体勢に入る。

 

「なんでこうなるんだ!?」

 

「とにかくベルベット側に立つんじゃ……そうせんと後が怖い」

 

「う、うん」

 

 怒りを見てしまい、一種の恐怖を植え付けられたロクロウ達。

 中立で見守るという立場を貫くことは出来ず、武器を取り出してアイゼンとザビーダと敵対する。

 

「あんたもやりなさいよ」

 

「生け捕りは苦手なんだけどな。アメッカ、退魔士が来ないか警戒しとけ」

 

「あ、ああ……その」

 

「殺るわけねえだろう……殺ったら洒落にならんことになる」

 

 現代でも生きているやつを無闇矢鱈と殺せば、どうなるか分からねえ。

 歴史の修正力とかそういうのがあったとしても、ザビーダは色々と深く関わりこの時代に来る切っ掛けとなった人物で、なにが起きるか分からない。弓矢とか爆弾だと洒落になら無いので程よくシバき倒すのにはうってつけの武器だと木刀を取り出す。

 

「お、遂に使うのか?」

 

「……いや、こっちの方が良いからこっちにする」

 

 ロクロウが期待した顔をするが、木刀よりも効果あって痛めつけるのにちょうど良い鞭があった。

 ある程度シバき倒しておかないとオレまでとばっちりをくらいそうで恐ろしいから真面目にやらないと。

 

「おいおい、俺はそっちの趣味はねえぜ。仮にあったとしても、野郎よりもあの子の方に頼みたい」

 

「安心しろ、オレも無い。お前が大人しく言うことを聞いてくれるなら別だがなって、割合おかしくね?」

 

 ザビーダとバトルする良い感じの展開になったのは良いけど、オレ以外がアイゼンに挑んでいた。

 誰でも良いから一人でもと思ったが、無理っぽいのでそっちの方に混ざろうかと動こうとするとペンデュラムが飛んできた。

 

「おいおいおい、色男を残すなんてやめてくれよ」

 

「鏡見て言えよ、バイパー」

 

 アイゼンの元には行かせまいとは言わないが、無視されることは気にくわないザビーダ。

 こりゃ嫌でもやらないといけないなと変化弾をブラフとして撃つがザビーダは変な反応をせずに的確に避ける。チャラい感じの風来坊だが、戦いに関しては真面目にやっている。

 

「その鞭は飾りかよ。破門者(キャンドル)!!」

 

「お前も大概だろう!」

 

 左右のペンデュラムを交差させ、衝撃波を飛ばす。そこはペンデュラムでぶっ刺すとか紐で縛るとかいう攻撃をしやがれよと思いながらも、盾を取り出して衝撃波を防ぐ。

 

「そっちの方、手伝った方がいいか?」

 

「割とどうにでもなる……そっちの方は?」

 

「殺さずに生かして斬るのが難しい!!」

 

 少し不利なオレと背を合わせるロクロウ。

 さっきのさっきまではどうしてこうなったと呆れていた癖に、戦いになった途端に一気に変わった。こいつ、マジで斬り殺さねえか心配だ。

 

「余所見してる暇なんてあるのか?磁界、乱そう。ジルクラッカー!!」

 

 ロクロウと話をしている隙に、天響術を詠唱し、発動するザビーダ。

 オレの周りに通常の何倍もの重力場を発生させるが

 

「そいつは悪手だぞ」

 

「がっ!」

 

 そういうのはオレには効かない。

 重力場から簡単に飛び出てザビーダに拳を叩き込む。

 

「天響術……じゃなくて、聖隷術の詠唱はやめとけよ。ヒットアンドアウェイで隙をついてやったとしても、大した効果はない」

 

「だろうな。そっちは後衛と前衛、ちゃんと分かれてて羨ましいぜ」

 

 拳を叩き込んでも立ち上がるザビーダはアイゼンと戦っているベルベット達を見る。

 一人ぐらいはこっちに来てくれよとオレも期待して見ると、アイゼン相手に4人は多いと感じたのかベルベットが来た。

 

「あんた、手こずってるの?」

 

「生け捕りなんてやったことないからな、そういうの上手いのは閻魔の三弟子のマスター次狼だ」

 

 転生者と聞かれれば転生者だけど、若干異なる転生者の名前を出しながらオレは避ける。

 

「多少傷つけても、ライフィセットに治させるわ。紅火刃!」

 

「おっと、炎はイケねえな。次の相手はお前か?」

 

「いいえ、私達よ」

 

 風の天族であるザビーダは炎に弱く、炎を纏った斬撃を寸でのところで避けた。

 油断も隙もできず、大技を使ったり剣を抜いたりすればザビーダを殺すことになる。手加減するの難しいな。

 

「ところで、ベルベットはライフィセットやマギルゥみたいに術できるか?」

 

「出来るわけないでしょう。業魔だけど、元々は人間よ?」

 

「憑魔で、似たようなこと出来る奴いるんだけどな……まぁ、いい。隙作るから大技頼む」

 

 オレは鞭を強く握り腕を引く。

 

「そういう武器での勝負、良いねえ。拳での喧嘩も好きだが、こういうのも好きだ!」

 

 鞭での捕獲でなく攻撃をすることに気付いたザビーダも動く。強風で鞭の軌道を反らさず、ペンデュラムを鞭の様に使うべく腕を引いた。

 

「オレ達の喧嘩の相手はお前じゃねえよ」

 

 あくまでも狙うはアルトリウスだ。なにを企んでいるのかは知らねえが、ロクでもないことなのは確かだ。

 鞭に炎を纏わせて、蛇のごとくうねらせて飛んできたペンデュラムを弾く。

 

「ベルベット、上下右右下前左右下右上下左左右下左下右下左上上左右下下上上右左下上だ」

 

「は?」

 

サルト・ヴォランテ(光速)ヴェローチェ・コメ・ルーチェ(天翔)

 

 

「ッグ、ハッハー!!おもしれえじゃねえか!!」

 

 鞭は余りの素早さにまるでタコの足の様に分裂したかの様にうねり、ザビーダを襲う。だが、ザビーダは倒れない。一応、炎を纏ってシバいているのだが避けたりするのが無理だと判断したザビーダが風で上手く反らして威力を落としてやがる。

 

「良いね、お前の鞭!いいもん見せてくれたお礼に、こっちもビートを上げるぜ!!」

 

「いいえ、終わりよ」

 

「なに!?」

 

「ヘヴンズクロウ!!」

 

 鞭の攻撃に馴れてきたザビーダが本腰を入れようとした瞬間、ベルベットは突如ザビーダの前に現れる。避けることが出来ず、威力を弱めて受けるのがやっとだったザビーダは突然の出来事に驚き一瞬の隙がうまれる。その隙を逃すほど、ベルベットは甘くはない。

 憑魔化させた腕を掬い上げるように動かしてアッパーをくらわせて、ザビーダを空中に浮かせる。

 

「ついでよ」

 

 ザビーダに言うことを聞かせるにはちょうど良い大きな一撃を与えることは成功したのに、物足りないベルベット。空中に浮いているザビーダを逃すまいとオレから鞭を奪った。

 

「ゴンベエ、あんた良いことを教えてくれたわ。電気鞭よ」

 

「いらんことを言ってしまったな」

 

 ヘルダルフは水とか炎とか色々と出しており、術も使った。

 ベルベットも出来るかなと思って聞いただけだったのだが、いらんことを言ってしまったようだ。炎とかを出す要領で鞭に電気を纏わせてベルベットは全力で振り回し、ザビーダの金的に一発で当てた。なんかもう、すごくあってる。ベルベットに鞭ってあってる。

 

「Oh……」

 

 流石にそこは鍛えようがないので苦しみ倒れてもがくザビーダ。ゴロゴロと左右に転がりながら痛みに苦しんでいると、ロクロウを相手にしているアイゼンが踏んでしまい、アイゼンはバランスを崩す。

 

「今じゃあ!!」

 

 バランスを崩したアイゼンの隙をつき、式紙を取り出すマギルゥ。

 

「伸びろ、伸びろぉ!!」

 

「って、なんだそりゃあ!?」

 

 式紙を物凄く縦長に伸ばしていくマギルゥ。オレやベルベット達の身長を足したぐらいに伸ばしていく。

 霊的なものを呼んだりとか、お札で渇!するんじゃなくてまさかの物理かとオレは見守る。

 

「光翼天翔くん!!」

 

「おっそろし~」

 

 魔女っぽい見た目に反しての圧倒的なまでの質量による物理技。式紙を伸ばすまでに時間がかかる大技だが、威力は確かのようでアイゼンとアイゼンの下に埋もれているザビーダは立ち上がろうとしない。

 

「ナイスだ、ベルベット」

 

「全く、あんな無茶振りをして……結果的にどうにかなったけど、アルトリウスの時は止めてなさいよ」

 

 オレの鞭が当たらない正しい避け方を教え、それをしたことによりベルベットは鞭に当たらずザビーダの前まで出ることが出来た。だが、なんの仕込みも練習も無しでぶっつけ本番でやったことについて怒っている。

 

「安心しろよ、裁くのはお前とアメッカだ。

お前とアルトリウスが因縁あるが、基本的にはオレにはなんにもない。お前が殺らんとダメだろう?」

 

「っ……あんた、本当調子が狂うわ……さっさと、起きなさい!!」

 

 真面目に返答するとは思ってなかったのか苛立つベルベット。ほぼ八つ当たりで鞭を振って意識が朦朧としているアイゼンとザビーダを無理矢理叩き起こす。もう、手足の如く使いこなしてるな。猛獣使いがよくやる丸めてある鞭を引っ張ってキッって睨むやつを簡単にやってるよ。

 

「はは……お~いてえ」

 

「てめえ、変なところで倒れてんじゃねえぞ」

 

「うるせえ、お前も踏んだだろう。お陰でケンカに負けちまったじゃねえか」

 

「お前だけはな。オレの方はまだまだどうにでもなった」

 

「んだと?」

 

「あんたら!」

 

「ひっ!」

 

「ライフィセット、離れていよう。今のベルベットは恐ろしい」

 

 オレ達をそっちのけで喧嘩を再開しようとするザビーダとアイゼン。ベルベットは鞭を聖寮が作ったであろう柵に叩きつけて破壊し、問答無用で黙らせるのだがライフィセットが怯えてしまい、戦闘に巻き込まれない様に避難していたアリーシャが出て来て落ち着かせる。

 

「ああ、負けだ負けだ。

このケンカはあんたの勝ちだよ……で、俺にどうしろって言うんだ?この結界の先になにがあるかしらないなんて言わせねえぞ」

 

 負けを認め、なにもない空中をザビーダはポンポン叩くと叩いた場所を中心に白く光り波紋が広がる。また嫌らしい感じの見えない結界なのか。

 

「導師を殺す」

 

「ひゅー、そいつはまた随分と恐ろしい」

 

「こいつは本気だ……」

 

 ベルベットの言っていることを冗談だと笑うザビーダだが、アイゼンはマジだと言うとベルベットの顔をみる。眉一つ動かさないベルベットの顔は本気であり、ザビーダは冗談でないことを理解する。

 それと同時にマギルゥの中にいたビエンフーが出て来て、結界を解除するんでフよと教えてくれた。

 

「では、聖隷のお歴々、結界の前に!」

 

 今、こんなことを言うのはあれかもしれないけれども天族四人で結界を突破できるってもしかして四人と契約していたら結界を通ることが出来るとか、そんな感じのオチじゃねえだろうな?

 

「あ」

 

 嫌な予感は珍しく外れてくれた。結界はパリンと硝子が割れるかの様に粉々に砕けちっていくのだが、ライフィセットが何故か慌てている。

 

「後は任せたぜ。その方が退魔士どもの慌て顔を見られそうだ」

 

「良いのか?この中には導師が、意思ある聖隷にとってはぶん殴りたくて仕方ねえ奴がいるんだぞ?」

 

 結界は壊れた。

 先走って行くのかと思えば、ザビーダはこの場から去ろうとするので一応聞いてみる。少なくとも、現代のザビーダは1000年前の事を色々と怒ってる。殆どの天族の意思を奪われたりしているから当然といえば当然なのだが。

 

「確かにぶん殴りたいが、俺以上の奴がいるだろう」

 

「待て、まだ肝心な事を聞いていねえ」

 

「それ以上はやめておこうぜ、アイゼン。そこから先は命のやり取りになっちまう」

 

 さっきまで軽かったザビーダはアイゼンの質問で雰囲気を変える。オレ達の想像を遥かに上回るなにかを知っているようで、アイゼンも察して別の質問をする。

 

「何者だ、お前は?」

 

「風のザビーダ、ただのケンカ屋さ」

 

「風のザビーダね……」

 

 現代では憑魔狩りのザビーダと呼ばれているが、今はまだ違うのか。ザビーダは普通に歩いて去っていった。

 

「結界は開いたわ。追うなら止めないわよ」

 

「いや、神殿に向かう。アイフリードの行方に近いのはメルキオルの方だ」

 

「バカね、割り切れるなら最初からそうすればいいじゃない」

 

「そんなに器用じゃない、だからここにいる」

 

「つーか、ベルベットも人の事を言えないだ、ろぉおう!?」

 

「なんか言った?」

 

「鞭を、返してください」

 

 ポロっと溢した一言でベルベットを怒らせてしまい、鞭が振るわれる。

 ベルベット、ボンキュボンの細身体型だが、業魔なので筋力とかのスペック上がってるせいか、威力が割と洒落にならないので結構痛い。そして鞭を引っ張ってる姿に違和感を感じない。

 

「これ」

 

「ダメです」

 

「ッチ」

 

 フックショットと違って、鞭は一つしかない。というより、鞭なら探せば簡単に購入できそう。SMショップとかで売ってそう。鞭を回収しておかないと今後ロクなことにならないと取り返し、オレ達は奥へと進んでいく。




スキット 転生者(男)が目指す先はキリトくんでなく野原ひろしか荒岩一味

アリーシャ「……よし、ゴンベエにビンタを一発叩き込もう」

ゴンベエ「待て待て待て、なにがよしだ」

アリーシャ「?」

ゴンベエ「オレ達は非合法な事をしているが今更だろう、地味に痛いんだから勘弁してくれよ」

アリーシャ「違う、そうじゃない」

ゴンベエ「?」

アリーシャ「ゴンベエは、その……ベルベットの事が、女性として好きなのか?」

ゴンベエ「……どうしたんだ、唐突に?」

アリーシャ「マギルゥがベルベットとなんだか良い感じとかイチャイチャしているとか……この間もサラッとデートの約束を。いや、構わないんだ。ゴンベエの言うとおり、ベルベットはとても素晴らしい女性だ。復讐鬼として常に怒り続けているが、そうでなく素を出せば家庭的で優しい……私とは天と地だ。私なんて未だにコロッケ一つ作ることが出来ない無能で、ベルベットはキッシュをあっという間に作って、ライフィセット達から大好評なのも知っている。
だが、此処に来てからと言うもののベルベットの事を構いすぎじゃないか?確かに弟を殺されて、怒り憎しむのは分かるが、殺すことを平気で手伝うのもいけない。それに、ベルベットの食事もだ。
ベルベット自身が作っても味がしないとはいえ、毎食毎食ベルベット用にと作るのも甘やかしすぎだ。勿論、それはベルベットの為を思ってやっているのもわかる。だが、甘やかしすぎだ」

ゴンベエ「早口でなにを言っているのか」

アリーシャ「甘やかさないといけないぐらいに苦しい思いをしているのは理解している。ベルベットが女性として素晴らしいのも分かっていて、ゴンベエが好きになるのも無理はない。だが忘れてはいけない、私達は未来から来たのを。何時かは未来に帰れなければならない。そう、そうだ。私達は元々は知りたいことを知るためにこの時代までやって来た。知りたいことを知り終えれば、私達は帰らなければならない。そうなるとベルベットとはお別れになってしまう。
ライフィセットとビエンフーとアイゼンは天族、1000年以上は生きることが可能で探せば見つかる。だが、マギルゥは人間で、ロクロウとベルベットは憑魔で1000年生きれるかどうか怪しい。殺されたり浄化されて人間に戻って寿命を迎えることもある。だから、一線を何処かで引いておかねばならない。なのに、ベルベットをなにかと甘やかしすぎている。これだと最後が辛くなる。だから、耳を噛んで痕を残し、現代に戻らなければならないと意識をさせたのだぞ」

ゴンベエ「あれってそういう意味だったのか」

アリーシャ「分かっているのか?」

ゴンベエ「まぁ、分かっている……何時か帰らないといけないのは。ベルベット達と仲良くしても、最後の一線は引いているつもりだ」

アリーシャ「いや、私からみれば全然一線を引いていない。ゴンベエは甘すぎる」

ゴンベエ「とはいっても、ベルベットは甘やかさないと」

アリーシャ「どうしてそうなる!?」

ゴンベエ「いいだろう、別に。つーか、恋仲とかそういうのにはな」

アリーシャ「言い切れるのか?」

ゴンベエ「ベルベットは嫌がるだろう。オレ自身も色々とあるし」

アリーシャ「色々、なにがある?」

ゴンベエ「そこは、色々だよ……」

アリーシャ「ゴンベエは……ヘタレ、というものなのか」

ゴンベエ「モテるだけでもありがたく思えと教えられているんだって、そういうんじゃねえよ」

アリーシャ「違うのか?」

ゴンベエ「そういう意味での色々じゃねえ。分かってんのか?」

アリーシャ「分からないから聞いている……なにがダメなんだ?」

ゴンベエ「……ベルベットもオレも頼れる人いない、一人身だぞ。オレはもう家族に会えないし、ベルベットの方はアルトリウスに殺られている。互いに一人身だ……なにかあった時の為に入念にしておかないといけない」

アリーシャ「入念に、か……」

ゴンベエ「住んでるところが川の水車小屋で、街じゃない。自転車とかあるからと思うが、何時かは限界が来る。水車はレディレイクで回せるんだから、そっちに移る。都心だと学校もある収入も今みたいに不安定なのだとダメだから、安定したのに変えねえとダメだろう。なにかあった時の為に二年ぐらい働かなくても良いと言う貯金を持っておけって教わった」

アリーシャ「そこまでしないと、ダメなのか?」

ゴンベエ「重いかもしれねえけどよ、経済的苦痛って地味にヤバいんだぞ?良い学校を卒業したと思ったら、その学校の学費が借金になって、借金背負った状態で就職とかあるし、少なくともハイランドは福利とか福祉とか充実してねえだろ」

アリーシャ「……私には縁遠い世界、か」

ゴンベエ「腹立つから落ち込むな。それに落ち込んでる暇はないぞ。
今回の事が終わっても、オレはスレイの代わりにヘルダルフをシバき倒すぐらいのことしかしない。明確に見える悪を倒した後は、裁くに裁けない悪をどうにかしないといけねえ。そいつらを裁いても、常に変化する世の中をどうにかしねえと……小さな村の子供が農業を手伝うんじゃなくて、学校に行って勉強をする制度を作ったりとかな」

アリーシャ「まだ落ち込んでいる暇は何処にもなかったないな……取り敢えず、一発を入れるぞ」

ゴンベエ「諦めろよ!?」

アリーシャ「私が諦めるのを。諦めるんだ。ゴンベエ、収入を気にするならば私に全てを任せれば良い。私は使わないお金は山ほどある……仮に何処か辺境の地に飛ばされても、私達二人ならどうにかなる……うぉおおおお!!」

ゴンベエ「少しは手加減しろよぉおおおおお!!」

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