「お~……裏金や血税で建てられた神殿(笑)」
「やめないか、不謹慎だ……そう言うのは聖寮の上層部に取っておくものだ」
柵もとい結界を通り抜けると、そこは如何にもな中世のEU方面で見そうな神殿だった。
大司祭(故)が金を集めていたのは、私腹を肥やすためで神殿建立は言い訳だと思っていたが、これを見せられるとあながち嘘とは思えない。
「しかしまぁ、なんでこんな所に神殿を作るんだ?導師様なら王都に神殿の一つや二つ、作れるだろうに」
「……スレイ……」
裏ではクソッタレな事をしているとはいえ、表向きは英雄的な存在であるアルトリウスの権力と、絵に描いたような反吐が出るほどの善人であり駆け出しの導師であるスレイを比較してしまうアリーシャ。
今ごろなにをしているのか、結果的には戦争に関わってしまったから両国共に敵視されてたりしてなにかと大変だろうな。周りがこの時代よりもクソッタレだらけだからしゃあないとはいえ、導師の権力差を哀れに思ってしまう。
「……ここって」
「お前も感じるのか」
周りをキョロキョロと見るライフィセットとアイゼン。
「そういえば、地面に物凄いエネルギーを感じるな」
「お前もか……どうやら此処は大地を流れる自然の力、地脈が集中している場所のようだ」
「成るほどのぅ、カノヌシを祀るにはちょうど良い場所じゃ」
「襲撃にもよ」
物騒な事を会話するベルベット達。
大地に流れているエネルギーが半端ないんだが、これ本当に大丈夫か?何事もなくとはいわんが、順調に進んでいってるけどアルトリウスに挑んでも大丈夫なのか?負けイベントじゃないのか?ドラクエでいうレベル18辺りで挑む、終盤にやっと倒せるボス戦なんかじゃないよな?
ここまでスムーズに事が運んでいる事に不安を抱いていると、如何にも結界ですと言わんばかりの空中に浮かぶ術式を見つける。
「どうやら、何重にも聖隷術で鍵をしてあるようだな」
結界らしき術式は目の前にあるもの以外にも複数ある。
「どうすんだ?さっきと同じ開け方だと、開けられねえぞ」
「流石にそれはないはずだ……この手のものはオンオフ可能なタイプだ」
「長年の勘というやつか」
「そうだ……あれか」
結界らしき術式と似たような感じの術式が浮かんでいる台座をみるアイゼン。
ベルベットが触れると目の前にある結界のみ消え去り、神殿の奥へと続く道が開かれた。
「エバラのごまだれ!」
「……あんた、ふざけてんの?」
「これを言わないといけないんだ、悲しい定めなんだ」
気付いたら言ってしまうんだ、オレ自身も制御できないんだ。エバラのごまだれは。
ベルベットに冷たい視線を向けられながらも奥へと進んでいくオレ達。まだまだ結界があるので、それを開く鍵を探そうとするのだが、その前にとオレは結界に触れてみる。
「……アメッカ、ちょっとこれで結界をシバいてくれないか?」
「どうしたんだ?」
「ちょっと、気になることがある。
オレだとあっさりとパリンとやってしまいそうだから、頼む」
「わかった」
メガトンハンマーを取り出し、アリーシャに渡す。
結構重い物なので一瞬だけぐらつくが、直ぐに重さに馴れたのか持ち上げて全力で振り回し、強烈な一撃を叩き込む……が
「ダメだ……天族の作ったものだ。
マギルゥや対魔士の様に天族と契約している人間ならまだしも、私ではどうすることも出来ない」
「そうなるよな……」
「お主等なにをサボっておるんじゃ。鍵を探さんとベルベットにどやされるぞ?」
予想通り壊すことの出来なかったので、次はどうするかと考えているとマギルゥがやって来た。
「ちょうど良いとこに来た。マギルゥ、この結界に攻撃してみてくれ」
「なにを言い出すかと思えば……ま、謎解きよりは楽しめるから良いぞ。炎飛び交ってしまうのか?ブレイズスウォーム!」
結界に激しい炎の奔流を向けるマギルゥだが、結界は壊れない。
さっきのハンマーでの一撃でも今の一撃でも全くといってビクともしない。
「ビエンフーが無理でフと言っておるが、どうする?」
「安心しろ、最初から頼むつもりはない……あ~どうすっかな?」
今ので分かったことが幾つか存在する。
これは本当にどうするつもりなんだと頭を抱えていると、結界が解除されてベルベット達が戻ってきた。
「早かったな」
「おう、コレがあったお陰でな」
フックショットを見せるロクロウ。
立体起動装置の如く、飛び回ってたけど普通はそういう風に使うもんじゃない。そういう風に使うのTASさんだけだ。
取り敢えずは結界が解除された事を喜ぶのだが、そんな暇はないと歩むベルベットの手を掴んで止める。
「突っ走るのは良いが、流石にまずい……アイゼン、この結界は術の一種なんだよな?」
「ああ、そうだ」
「今さっきアメッカとマギルゥに力技で解除出来るかどうか調べたが無理だった……これがどういう意味か分かるか?」
「アルトリウスには勝てないって言いたいの?」
「……まぁ、そう言いたいのもある」
転生特典とかで異常なまでに強いオレはともかく、他はどっこいどっこいだ。鍛えているがなんの力も持たないアリーシャと特殊な力を持っているマギルゥの一撃をくらっても結界はうんともすんとも言わない。
「分かっているわよ、それぐらい。
あいつは右腕を使えないけれど、それでも尋常じゃない程に強い。その上に、シアリーズっていう聖隷を使役していた……今はもう居ないけれど」
オレに止められた事により、少しだけ冷静さを取り戻したのか立ち止まってくれた。
「今まで相手にしたので……多分、あの女対魔士だ。
忘れてるかもしれねえが、此処には導師アルトリウス以外にも選りすぐりの対魔士もいる。アイゼンが探してるやつと、ロクロウが狙ってる奴も居ると仮定して……あ~何処にもおらんが見たか?」
導師アルトリウスだけならばまだどうにかなるかもしれん。
だが、アルトリウスクラスが数名いるとするならば、この大地から出ている無駄に莫大なエネルギーを蓄えている奴が数名ならば、どうあがいてもベルベット達に勝ち目はない。
「ただの喧嘩じゃ済まない世界に入ってる、もう戦争だ。
喰うか喰われるかで、喰い終わるまでは絶対に終わらないくそ面倒な奴……ロクロウ、お前が狙ってるやつは
「あいつの性格的に、複数は早々に無いが……もしあいつレベルの腕前が数名なら勝てないな」
ベルベットに考えさせるべく、オレ以外の意見を出させる。
「選りすぐりとなると、オレ達と同じか少し。
一人一殺を前提にしたなら、オレはメルキオルのジジイをぶっ飛ばす」
なんつー会話をしているんだと思いつつも、アイゼンからも色々と出た。
ボス戦前のボス対策というなんともあれな会話をしているオレ達。取り敢えず、どうするかと改まって考えるようになり張り付めた空気が何処かに行き、全員が座る。
「やれやれ、ここまで来てのノープランか」
「だが、コレでよかったのかもしれない。
相手は格上の導師で、そのまま挑めば私達の敗けは確かだ。カノヌシが何なのかはハッキリとしないが、確実に強い。なにも考えずに闇雲に挑めば死ぬだけ。作戦を考えないと」
マギルゥは空気が変わったことよりもなんの考えもないことに呆れてしまう。仕方ねえだろう、基本的にノープランで他力本願な部分が多いんだから。実際問題、暗殺じゃなくて堂々とシバき殺すんだからな。
なにも考えていない事に気付いたことで立ち止まれたとホッとしながらもアルトリウスをどうやって攻略するかを考えるアリーシャ。
「中に複数の対魔士がいるパターンといないパターンを想定しよう。
要心に要心をしておいて、導師アルトリウス一人だったらよかったという策でいかなければ。
個の実力を同等と考えれば聖寮は組織、恐らくは連携の訓練をしている。そうなるとそういった訓練をしていないベルベット達には些か不利だ」
「今から僕達も連携技の練習をする?」
「却下、そんな事をしていたら気付かれるし増援が来るわ。大体、あんた戦えないでしょうが。戦力数が同等どころか、若干不利よ」
「……すまない」
鍛治屋、早く見つかれ。
ベルベットの言っていることが確かなだけあり、アリーシャはなんの反論もできない。謝り悲しそうな顔をするアリーシャを見馴れてきたとはいえ、割と辛い。
「連携が取れんとなると、多対一で確実に倒して数を減らすのが得策じゃろう」
「つっても、エレノアとエレノアよりも弱い奴数名でお前等そこそこ時間かかってたじゃねえか」
エレノア同等かそれ以上の対魔士数名いるだけで、その作戦はパーだぞ。
「な~に、あの時は場所が場所だけに派手な技が出来んだけじゃ。
しかーし!!今回はどれだけ派手な技をしても問題は無い!!どれだけ喧しくてもの!」
「ほぉ、つまり良い作戦があるということか?」
「勿論、この作戦の鍵を握るのはビエンフーじゃ!」
自信満々のドヤ顔になるマギルゥは良い作戦を思い付いたんだなと笑うロクロウ。
作戦の鍵だと言われてテンションを上げたのかマギルゥの中からビエンフーが出てきた。
「具体的にはなにをすれば良いんでフか?」
「なーに、相手の顔にしがみつくだけじゃよ。
その程度の隙ならば、例え導師でも此処にいる面々でどうにかなるじゃろう」
「成る程、相手の視界を奪うんでフね!急に目が見えなくなったら、動きが悪くなりますもんね」
珍しくまともな作戦を考えるマギルゥ。元から盲目なら空間認識能力に長けるが、急に目が見えなくなったら馴れるまでに時間がかかる。多数を相手に人間が一番使う視界を防がれてしまったのならば、割とどうすることも出来ない。
「マギルゥ姐さん、お任せくださいでフ!僕も役立ちます!」
「うむ!では、ゴンベエ、まずはビエンフーに爆弾を縛りつけるぞ?」
「え?」
「上半身や下半身を鍛える方法はいくらでもあるが、頭を鍛える方法はない。人は腕や足を無くしても生きれるが、頭を無くしては生きられん。ということでビエンフーに爆弾を縛りつけて、ボカンと一発するぞ。なに、安心せい。ダメージを受けない様にある程度はワシの術で防御力を高めておく」
「ダメだダメだ!!幾らなんでも惨すぎる!」
「むご、い?」
余りにも卑劣な作戦なので、却下と叫ぶのだがビエンフーは首をかしげる。
こいつ、マギルゥに馬車馬の如くコキ使われるから逃げたといっていたが感覚が麻痺していないか?
「惨いというのは、岩をくくりつけて海に捨てられることでフよ」
「……もうやめるんだ!!ビエンフーのライフは0だ!!」
コンプライアンスとかそういうのを無視すれば良いだけなのだが、その一線だけは絶対に越えてはいけない。
強制的にビエンフーボムの作戦は無しということになり、また振り出しに戻る。
「あんた、なんか作れないの?」
「無茶苦茶な注文をすんなよ」
こういう時にとベルベットはオレを頼るが、道具もなにもないんだ。
「出来ることって言ったら……あの、扉を完全に閉じる事ぐらいだぞ?」
「閉じたらアルトリウスを殺れないじゃない」
「いや、だからあの扉を閉じてその前で焚き火するだろ?
黒煙を徹底的に扉の中に入れて、一酸化炭素中毒にするぐらいしか浮かばんが……流石に気付くよな」
「お前のが一番酷い作戦だな……お手上げか」
相手が人じゃなかったら、一酸化炭素中毒で殺す作戦が一番使える。
黒煙を流し続けたら流石にアルトリウスも気付くだろうし、見当たらない対魔士達が炎を消しに来るかもしれないし、中の広さが分からないから、どれだけやれば良いのか分からん。
つーか、アイゼン、オレよりもマギルゥの方が酷いだろう。
「はぁ、もういいわ」
全くもって良い作戦が浮かばず、呆れてしまうベルベット。立ち上がったので、アルトリウスの元に行こうとするんじゃと思うのだが、ライフィセットを見つめる。
「中に居るのはなんであれ対魔士か聖隷だけの筈よ。
だったら私が一体ずつ聖隷を喰らう。そうすれば対魔士達はただの人間になる……アメッカでも倒せるわ」
「確かにそれが一番だが、対魔士1人に聖隷1人としても、4人いれば倍の8人計算だ。
下手をすれば数で上回り、一体ずつ的確に潰していくとなるとこちらの鍵がお前だと判明して集中砲火を喰らう」
「問題ないわ。斬られようが焼かれようが、喰っていく。傷はライフィセット、あんたの術で治しなさい」
「攻撃を受けるのを前提にした特攻か、それならば一気に喰えるな」
「即死しなければ、のう」
「でも、それじゃあベルベットが!」
「これは命令よ」
「……はい……」
ベルベットに関するリスクを除けばある意味一番の策で挑むことになる。だが、それは危険だとライフィセットは止めようとするが一睨みでライフィセットは黙ってしまう。ベルベットに逆らうことが出来ない、か。
「本当に危なかったら、オレがアイツをシバいて気絶させるから安心しろ」
「ありがとう、ゴンベエ」
「構わねえよ……」
ところでさっきからアルトリウスをどうシバくかどうかを話し合っているが、アイゼンの目的であるアイフリードが一切話題に上がっていねえよな?アルトリウスをシバき倒せば、ベルベットの復讐劇が終わるだけでありそれだけだ。
こんな神聖なところに海賊がいるとしたら、生け贄にしか使えない。だが、それなら殺したと言えば良いだけ……。
「まだ続きそうだな、この旅は」
オレ達はゆっくりと立ち上がり、ベルベットの後を追う。
奥へと進む度に物凄く強い気配を感じていき、これ本当に今の状態で挑んでも大丈夫なのかと少しだけ焦りを感じる。
「おぉ、自動ドア……あ、ラッキー」
神殿内部の一番奥のドアが自動ドアだった事に驚きつつも、オレ達はアルトリウスの元に辿り着いた。
運が良いことにアルトリウス一人で、他に対魔士の気配は感じない……代わりに、物凄く危険でヤバいと思えるエネルギーをアルトリウスから感じるが。
「アルト!!」
「デラックスボンバー!!」
「リウスゥウウウウ!!……お前……」
取り敢えず、狙うは今しかあるまいとデラックスボンバーを撃つ。
怒りに身を任せて叫ぶベルベットは一瞬で冷静になり、オレに殺気を向けてくる。
「業魔に聖隷……随分と変わった仲間を揃えたな」
「ッッチ」
大抵の雑魚ならば一瞬にして倒すことの出来るデラックス・ボンバー。
アルトリウスには直撃しており、着ている服が燃え尽きてしまい上半身裸になってはいるが、全くといって傷がついていない。若干だが、血の痕が見られる。少しだけダメージがあった。
スキット 満足とまた食べたい
ライフィセット「はむっ……」
アイゼン「う~む……」
アリーシャ「美味しくなければ、別に吐き捨てても構わない。無理に愛想笑いをするよりも、ハッキリと言ってくれ。そうでないと、何時までたっても上達しない」
ライフィセット「美味しいよ、アメッカの肉じゃが」
アイゼン「ああ、良い味を出している。材料をざっくりと大きく切っていて、食いごたえもある」
アリーシャ「その割には、余り箸が進んでいないが……」
ロクロウ「お、なんか良い匂いがすると思ったら肉じゃがか!」
アリーシャ「ああ、試しにと作ってみたのだが……失敗したみたいだ」
ライフィセット「そんなことないよ、とっても美味しいよ!」
ロクロウ「どれどれ…ハグ……ん、おお、良い味出してるな」
アイゼン「芋は男爵、肉は豚肉……旨いには旨いが……」
アリーシャ「なにか失敗してしまったのだろうか?」
ベルベット「なにやってるのって……あんたも肉じゃが?」
アリーシャ「あんたもと言うことは、ゴンベエも肉じゃがを作っているのか?」
ベルベット「ええ、そうよ。長時間煮込んで崩れかけた肉じゃがが良いってまた雑に切って、小さく切った方が味の染み込みも火の通りも早いっていうのに」
アイゼン「いや、ゴンベエの気持ちはオレには分かる。崩れた肉じゃがを米の上にかけてどんぶりの様に一気に掻きこむ。貧乏臭いがそれがまた良い男の飯だ」
ベルベット「煮物が崩れたらおしまいよ……」
ゴンベエ「お~い、ライフィセット、肉じゃがをって……アメッカ、肉じゃがを……大丈夫か、誰も気絶していないよな!?普通の奴等ならまだしも聖寮と戦える奴等が倒れたら、終わりだぞ」
アリーシャ「流石にそこまで私の腕は酷くはない!それよりもゴンベエも肉じゃがを作ったのか」
ライフィセット「同じ肉じゃがでも、違うね」
ゴンベエ「肉とか芋の種類とか違う、男爵じゃなくてメークインで、肉は牛肉だ……あ、旨いな、これ」
アリーシャ「そういってくれるとありがたい……だが、どうも成功したと思えないんだ。ライフィセット達は美味しいと言ってくれるが、余り箸が進んでいない」
ベルベット「なにか変なものでも入れたんじゃないの?」
ゴンベエ「あ~なんか出汁以外にも違う味混ざってるな、これ。ということで、ベルベット、口を」
ベルベット「……ハム……白葡萄の心水に、バターを混ぜてるわね。美味しいけど、これだとダメよ」
アリーシャ「レシピ通りに、作った方が良かったのだろうか?」
ベルベット「違うわよ、これじゃあおかずじゃなくて一品物の料理よ。家で食べる料理は、毎日作るもので美味しくてまた食べたいと思えるものが良いの。外で食べる料理は一回で満足する料理がいいのよ。これだと味が美味すぎるわ。ゴンベエのと食べ比べてみたら分かるわよ」
アリーシャ「……本当だ」
アイゼン「素朴でシンプルな味付けだが、これは良いな」
ゴンベエ「醤油と砂糖だけで出汁とか使ってない。しいていうなら牛肉とじゃがいもの出汁で煮込んだ」
ロクロウ「一日の仕事終わりのつまみにちょうど良いな。確か米で作った心水があった筈だ、ちょっと持ってくる」
ゴンベエ「これ、一応はベルベット用なんだけどな……」
ベルベット「根こそぎ食ったら、あいつらを食ってやろうかしら」