「申し訳ありません、アルトリウス様。
シグレ様が警護をしていると思い、油断していました」
「!」
「シグレなら修行に出た。
そもそも私を一番斬りたがっているのは、あいつだ」
そんなのを警備に回して良いのか、実力主義なのは良いかもしれないがもうちっと考えた方が良いんじゃないかと思う。と言うよりは、一番斬りたがっているのはベルベット……殺したいだから、別カウントか?
現れた四人の退魔士の1人である青年がアルトリウスに頭を下げているのをみて、色々と考える。
「変わらないな」
ロクロウがなんか言っているが気にしない方向で行く。
これ、此処から逃げ出すことが出来るか?何時もみたいにパッとワープしたいけど、妨害してきそうだ。
「まったく、アイフリードの時といい、勝手だな」
「このジジイが……」
アイゼンは船長の名を出す片眼鏡ジジイに怒りを向ける。
この場にいるのはオレ達だけで他にはいない。となると、アイフリードは此処にはいないということ……此処にいないなら、何処にいるんだ?カノヌシの生け贄に捧げるとかいう線があったのに、それもなくなった。
「業魔と馴れ合い、挙げ句の果てにはアルトリウス様を殺しに来るとは……二号、お前には罰を与えましょう。その業魔を殺して、貴方も命を絶ちなさい」
「な!?」
「ぐ、ぁああ!!」
青年の姉と思わしき退魔士がライフィセットに杖を向けると、苦しむライフィセット。
少しずつだが体が動いていき、このままだとベルベットに手を向けてしまう。
「その女を倒せ!!ライフィセットは、その女に操られている!!」
「わかった!!」
このままだとライフィセットがベルベットを殺す。なんとしてでも止めねえと、全てが無駄になってしまう。
「アステロイド」
アルトリウスは無駄に硬かったが、他の奴等なら問題ない。
何時も通りのアステロイドを放つと、女は手を翳した。すると、体から光の玉が出現し、ライフィセットぐらいの天族が出て来て防御壁を貼った。
「人の身でありながら、業魔に味方をするとは……その業魔共々、地獄にお送りしてあげます!!」
「がぁあああ!!」
「地獄ならとっくに見てるわ!!アステロイド、アステロイド!」
アルトリウスに通じないが、お前になら通じる。
防御壁の精度はアルトリウスのと比べれば弱い。細々したアステロイドを放ち、大きな結界を貼らせて力を分散。三角錐の大きな威力重視のアステロイドをぶつけて防御壁を突破。
「姉上、危ない!!」
後は顔面に当てるだけだと言うところで、弟が入ってきた。
顔の目の前に小さく高密度な防御壁を貼って、アステロイドを防いだ。
「チェックメイト」
そういうのは予想済みだ。
さっきまであった多対一の数による有利は消えている。相手側に隙が出来ても、別の誰かがフォローをするぐらいは折り込み済みだ。
指パッチンをすると、姉弟の頬に強い衝撃が走り殴り飛ばされたかの様に飛んでいく。
「一号、オスカーを!」
頑丈なの多いな、聖寮の退魔士は。
一号と呼ばれている天族は弟の方に向かっていった。
「ライフィセット!」
「ぐぅ……命令なんかに、従うものか!」
殴り飛ばしたが気絶すらしていないので俄然動くに動けない、だが少しだけ進展があった。
なんとか命令を無視しようと必死になって抵抗している。ライフィセットが時間を稼いでいる間に、アルトリウス以外の退魔士を倒す。とにかくにも倒さないと抜け出せない。
「まずは、お前からだ!」
あの女を倒さないと、ライフィセットがベルベットを殺してしまう。
フォーソードに闇を纏い、走り出して剣を向けるのだが片眼鏡をかけたジジイが氷柱を何本も飛ばしてきたので、斬り裂いて、弾いた。
「いかん、ゴンベエ!」
「何処も問題ねえよ!!」
大技を撃つための時間稼ぎだとしても、もう遅い。
女退魔士の目の前までやって来たオレにマギルゥはなにかを言おうとしているが、この機会を逃せば二度と来ない可能性がある。
その心臓を貰い受けると何処ぞの槍兵の様に心臓を貫こうと女の顔を見ると……そこには女退魔士でなく、アリーシャがいた。
「姉上に、手出しはさせん!!」
突然の出来事にピタリと一瞬だけ動きが止まり、その隙に治療を受けた男の退魔士がオレを斬りかかるが防いで距離をとる。
「あのジジイはの、人を騙すのが上手いんじゃよ」
「あ~そういうタイプか」
マギルゥからの説明を聞いて、さっきジジイが放った氷柱は幻術をオレに掛けるために意識を向けさせるもの。
氷柱一本ならば簡単に斬れるが数本だと嫌でも顔の向きを変えねえと斬れず、変えた先にはジジイがいる。斬るのと女退魔士の方に意識を向けていたから、ジジイにそこまで注意していなかった。
圧倒的な力よりもこういう人の嫌がることをするのが得意なタイプのジジイ、うざい老害タイプだな。
「アメッカ、頼むから人質にはなるなよ……多分、斬ってしまう」
SASUKE以上にスタイリッシュに斬ってしまいそうな自分がいる。
さっきは戸惑ってしまったが、タネさえ分かってしまえば怖くもなんともない……アリーシャを人質に取られなければだが。幻術で周りの姿を変えて撹乱させる作戦をされたら、下手したら全部斬ってしまうから人質になるなよ。
「覚悟は出来ている……足手まといになれば、命を絶つ覚悟は」
「なら今は見ておけ」
剣に女退魔士を襲おうとすると、弟が出て来てオレの剣を止める。
弟が持っている剣には大きなヒビが入っており、あと何回か唾競り合いをすれば壊れそうな感じだ……。
「これ以上、姉上には手出しはさせん!」
「と、思うだろう?」
汚ならしい笑みを浮かべてオレは弟の腹に蹴りを入れて、女退魔士を見る。
そこにはフォーソードで分かれたオレが立っていた。
「な!?」
「便利な道具を色々と持ってるんでな」
女の方にいるオレは透明マントを見せつける。
さっきこの姉弟をぶっ飛ばしたのはロクロウの側にいたオレで、透明マントで姿を消して背後に近づいて裏拳を叩き込んだ。
「んじゃ、まぁ一丁……ヘッドシェイカー!!」
左手で顎を、右手で頭を掴んで一気に左右に揺らす分かれたオレ。
ヘッドシェイカーを使いこなせる転生者はただ一人で、オレにはあんまり向いていない技だ。
「がぁっ!?」
「っち、仕留めそこなったか!」
口、鼻、目から体液を出す女退魔士。ゴキブリの様にピクピクと体が震えており、意識を失っている。
本当ならば一振りで絶命するとんでもない技だがその為には尋常じゃない程の腕力が必要で、必要な腕力をオレは持っていない。脳を揺らして脳震盪を起こして体から色々と体液を出させるのが限界だった。
「結果的にはぶっ倒した、ライフィセット!!」
「僕は!………僕は、ベルベットが死ぬなんて、殺すなんて、嫌だぁああああ!!」
女退魔士を結果的には倒すことに成功した。ライフィセットはどうだと様子を見ると、まだ縛られていた。
発動した奴が解除しないと気絶してもまだ発動し続けるのか、必死になってもがき、女退魔士の命令を拒むことに成功……すると同時に神殿の一部が、アルトリウスの背後の紋章っぽいのが光り出す。
「この力は!」
ライフィセットの叫びと共鳴するかの様に紋章が光る。アルトリウスはこの光りに、力に心当たりがあるのか驚いて背中を見せると同時にブラックホール……と言うよりは、次元の裂け目の様なものが開いた。
「あれは……全員、アレに飛び込め!!」
次元の裂け目的なのの正体を知っているのか、真っ先に飛び込んだアイゼン。
これがなんなのかは分からないが、少なくとも中に飛び込んだアイゼンは死んでいない。これはこの場から抜け出すのに一番だと理解すると気絶させたベルベットと今の叫びで意識を失ったライフィセットを抱え、飛び込む。
「いくぞ、アメッカ!」
「ああ!」
アリーシャの側にいるオレもアリーシャの手を握り、飛び込む。
「こぉれ、ワシを忘れるな!!」
「そんなことを言えるぐらい元気だろうが!」
マギルゥも後から入り、最後にロクロウも飛び込む。
この黒い次元の裂け目的なのの中は……よく分からない。時間の概念とか暑いとか寒いとかそういうのが薄れていく感覚がする。このままだと意識を失いそうだが、失ったらベルベットとライフィセットが何処かに行ってしまう。
空中に居るのか、歩いているのか、前を向いているのか、後ろを向いているのか、立っているのか、寝ているのかが分からなくなってきた頃、真っ暗闇な景色は消え去った。
「何処だ、ここは?」
神秘的でエネルギーが漂う場所に出た。
空を見ると、何時も見ている青空じゃない。此処に来る前は日が沈んでいたが、月は出ていた。空には雲もなにもない。遥か遠い場所に出たとしても時間がずれたりするだけで、なにもないといった感じにはならない。
ベルベットとライフィセットを寝かせて、少しだけ辺りを見回す。
「酸素がある……が、水とかは無さそうだな。
ロクロウ達が近くにいないとなると、バラバラになった可能性は大きい」
アルトリウス達が全くといって追ってくる気配はない。落ち着く時間が出来たので深呼吸をし、冷静になって状況を理解する。こういう時こそ一度冷静になる、限られているとはいえ余裕の時間を手に入れた。
後から入ったアリーシャ達が近くにいないとなると、バラバラになった。入口があんなんだったから、出口がバラバラだった説はあってもおかしくはない。
幸いにも、フォーソードの力で分かれたオレが直ぐ側にいるからなにかが襲ってきても問題ない。オレ達以外が此処にいるパターンもある。
「ベルベット、ライフィセット……ライフィセット!?」
とりあえずはどっちも起こそうとするのだが、ライフィセットに黒いモヤの様なものが纏わりついていることに気付く。
何度も何度も見ているどころかどうにかする方法も知っている穢れだ。ライフィセットは穢れにやられており、このままだと何時かのウーノの様に憑魔化してしまう。
「とりあえず、これで代用しておこう」
背負っているマスターソードを鞘ごとおろしてライフィセットの上に乗せる。すると、マスターソードはポワァっと青白い光を放ちライフィセットに纏わりついていた穢れが一瞬にして消え去っていった。
「脈拍は……若干弱いな。心臓の音はちゃんとしていて、苦しんでいる顔はしていない」
「ベル、ベット…し…なないで……」
触診等をしての体調を確認していると、寝言を呟いた。
弱々しい声だが強い思いが込められており、意識を失っている筈なのに手を動かそうとしている。
「大丈夫……ベルベットは健やかに眠っている。
だから、お前も眠るんだ。起きて、お前がボロボロだったらベルベットは泣くだろう」
「う、ん……」
オレの言葉に返事をすると、ライフィセットは完全に眠った。
とりあえずはこれでライフィセットは眠って飯食えば元気に……なるよな?天族は穢れに弱い。今の今までライフィセットはロクロウとベルベットと一緒にいて、何度か皮膚の接触とかあった。ベルベットやロクロウの側にいるのを何度も何度も見た。今になってライフィセットが穢れましたはおかしい。
「……マスターソードでの応急処置は出来ているし、アイゼン達と合流してから聞けばいいか」
難しいことを考えるのはやめる。転生特典で知識を貰っていても、肝心のオレがアホなので使いこなせない。餅は餅屋に任せる。アイゼンに聞けば大体のことがわかるはずだろう。
一息つきたいが、ベルベットが眠っているのでつけない。ベルベット、結構な量の血を流していた。貧血どころか血が少なくて上手く循環していない可能性がある。
「貧血程度で済んでくれよ」
ライフィセットと違ってピクリとも反応していないベルベット。
あんだけ血を失っているなら、意識が深く落ちていてもおかしくはないなと首筋に触れて脈拍を測る。
「……え?」
時計が無いのでなんとなくの時間感覚で脈を測るのだが、脈が動いていない。時折ピクリと動いてはいるものの、衰弱しているライフィセットと比べても弱々しく脈打つ回数が少ない。2、3回程度の誤差なんてものじゃない。結構な差がある。
「え、待って、待ってくれよ」
まさかと青ざめながらベルベットのお腹に手を置いてみる。
お腹が全くといって動いていない。少しだけお腹に圧をかけてみる……あ、結構な腹筋だ。
「……あ、よかった……じゃねえ!!」
口元に手を翳すと僅かだが熱を感じる。
本当に極僅かだが、ベルベットは呼吸をしている……が、喜ばしいことじゃない。
「……」
胸に耳を当てて心音を聞いてみると、物凄いまでに衰弱した音が聞こえる。
自分の心臓に手を当てて鼓動の差を確認すると物凄いまでの差が開いていることに気付く。
「……まずいな」
ベルベットの普段の呼吸とは大きく異なっている。脈も心音も弱く、衰弱する一方だ。
ライフボトルとかいう胡散臭いものを飲ませればどうにかなるだろうが、そんなものは持っていない。あるのは知識と胡散臭い魔力回復とかの薬だ。
「電気ショック……電圧等は知識から出せるか」
AEDがあれば良いんだが、生憎なことにこの世界にはそんな便利なものは存在しない。
電気をベルベットに流せばどうにかなるかと電気ショックの電圧等をググるのだが、機械無しでやって良いものなのかと手を止める。
「……前回はガチのビンタ……今回は、なにされるんだろう?」
「お前等、無事だったか!」
「無事じゃねえよ、ベルベットは死にかけだよ……はぁ」
覚悟を決めようとしていると、アイゼンが来たので気分が悪くなる。ベルベットの心肺が停止しそうな事を伝えた。
スキット ※高校生と小学生設定です
ゴンベエ「ブレザー……」
ライフィセット「どうしたの?」
ゴンベエ「いや、オレは学ランとこだったからさ。ブレザータイプの方はなにかと新鮮で……此方の方がいい」
ベルベット「……ッブ……似合っているわよ、あんたの学生服」
ゴンベエ「今なんで笑った?」
マギルゥ「いや~、どう考えてもお主が学ランは合わんじゃろう。どちらかと言えばスーツの方が似合うじゃろう」
ゴンベエ「スタイリッシュなのが似合うのはこの見た目のせいだ……」
ライフィセット「これで皆の制服が揃ったね!」
エレノア「揃ったのは良いのですが……アメッカとゴンベエの制服が私達と違いませんか?」
アイゼン「まぁ、二人は製造元が違うから仕方ないと言えば仕方ない……」
マギルゥ「そういう時は他校の生徒との交流と考えるんじゃよ」
ロクロウ「他校の生徒との交流……決闘か!」
マギルゥ「ちがーーーう!!なんでそうなるんじゃ!!お主、一応は軽音部なんじゃからそこはボランティアライブで偶然に出会ったとかそんな感じのがあるじゃろうが!」
エレノア「そこからはじまる恋物語、ですか?」
アリーシャ「エレノア……それは絶対に無いから、想像するのはやめてくれ……やめろ」
エレノア「っ、は、はい!申し訳ありません!!」
ライフィセット「ゴンベエとアメッカが他校の生徒として、どんな生徒なんだろう……図書室で本を読んでいる文芸部員?」
ベルベット「品行方正の生徒会長で、学園のマドンナとかもありそうね」
ロクロウ「じゃあ、両方を取って品行方正の生徒会長兼文芸部員の部長……ついでだから、学年首席でスポーツ万能も入れておくか」
ゴンベエ「属性盛りすぎだろうが!」
エレノア「そこからはじまるとして、どういう感じの物語を……」
ゴンベエ「おい、待ちやがれ。何故、ラブコメを前提としている?それをすれば誰かが負けヒロインになるんだぞ?」
アリーシャ「良いじゃないか……真のヒロインとか、そういうの」
ゴンベエ「言わせねえよ!!……つーか、お前等、オレの設定を忘れてないか?」
ベルベット「文句を言ってる割にはあんたもノリノリじゃない……学園の支配者?」
マギルゥ「年齢偽装してバイトをしている不良」
エレノア「え、ええっと……」
ゴンベエ「エレノア、無理にボケんな。二人は顔を見て、言っているだろう」
ロクロウ「まぁ……ぶっちゃけ、学ランだとコスプレに見えるからな」
ゴンベエ「……ブーメランって言いたいが、黙っておく。オレはアレだ、特待生になれたのを蹴って一般入試で入ったバスケ部員だ」
アイゼン「中々にドラマ性が有りそうな設定だな」
ゴンベエ「百戦百勝を絶対としているバスケ部に5人同時に現れた10年に一人の逸材の1人……と言っても、他の4人も同じく一般入試で進学したがな」
ロクロウ「全員が同じ学校って、そんなんじゃ面白くねえだろう」
ゴンベエ「そこが大事なんだよ。ズガタカオヤコロ系PG、能天気トトロ越えC、シャララ系ワンコSF、クソマジ眼鏡占い信者SG、オレに勝てるのはオレだけPF、どんな高校にも入るだけで全国区になる天才がどうして1つに纏まったとか色々な物語があるんだ。なにも戦って勝ったり負けたりだけがドラマじゃないだろう」
ライフィセット「天才5人の設定が凄い……けど、僕達ってどうやって出会うんだろ?ゴンベエとアメッカ、違う学校の生徒で、僕達も違う学校の生徒だから……合宿かな?」
ロクロウ「学校を使った合同合宿か。確かにそれなら複数の学校を集めれるが……そうなるとアメッカだな」
アイゼン「そこはバスケ部のマネージャーが急病で代理で手伝いを、顧問を生活指導のザビーダの野郎がしていることにすれば繋がる!」
エレノア「そこで私達がどんな試合をしているか見に行って出会う……で、良いのですよね?」
アリーシャ「ああ、それならば出会うことが出来るし違和感も感じない!」
ゴンベエ「……違和感と言えば、アイゼンは教師だからセーフとして、エレノアとライフィセット以外は学生服着れない年齢なんだよな……制服ある大学はあるけど、大学生の設定じゃなさそうだし」