テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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浸透してしまった悪い風習は中々に無くならない

「止まれ」

 

 エレノアを追い掛け、外へと出た私達。

 入口付近にエレノアは立っており、声が聞こえる範囲のところでアイゼンが歩みを止めるように指示する。

 

「なんだ、あの光は?」

 

 エレノアの前に突如として地面から出現する光の玉。

 今まで色々とおかしなものやスゴいものを見てきたと思うが、あのようなものを見掛けていない。

 

「メルキオル様の交信聖隷術!?」

 

「交信聖隷術……名前からして、あの光る玉を経由して会話をしているのね」

 

 遠く離れた人と会話をする術。

 戦う術や癒す術、強化する術は見たことあるが、あんな術まであるのか……そういえば、ゴンベエはあれと似たような物を作れると言っていたな。

 もしそれをハイランドに伝えればあらゆる情報戦を有利に進めることが出来てしまう。

 

『メルキオルに地脈を辿らせれば、妙なことになっているな』

 

「っ!」

 

「落ち着くんだ、ベルベット」

 

 光の玉から聞こえる導師アルトリウスの声に過敏な反応を見せるベルベット。

 ここで私達が出れば、もっと大変なことになる。

 

「アルトリウス様、この失態は」

 

『顔を上げなさい、エレノア。お前に導師の特命を授ける』

 

「!?」

 

 自分の失態を悔やみ片膝をつき謝るエレノア。

 謝罪の言葉を特に耳に入れず、状況確認もせず直ぐに自身の用件を述べる。

 

『ライフィセットと名乗る聖隷を保護し、ローグレス本部へと回収しろ』

 

「あの子を……」

 

 今すぐにベルベット達をどうこうしろとの命でなくライフィセットを連れてくる?

 

「あの聖隷を連れて王都へと連れ帰れと?」

 

『ああ……巧みに器となれたのは好都合だ』

 

「ですが、あの者は器である私の身に干渉ができるのですが……」

 

「普通、じゃないのか?」

 

 人間よりも遥かに優れた力を持つ存在と繋がっているのならば、操られてもおかしくはない。

 そもそもで天族にはエドナ様の様に人間を好きになれない方も要れば、ザビーダ様の様な風来坊もいる。

 スレイとミクリオ様の様に信頼しあう相棒の様な関係やライラ様の様に導師を導こうとする天族でなければ目的や行動が噛み合わずに破局する恐れがある。

 

「オレに聞くな……ライフィセットが普通の聖隷でないこと以外は知らん」

 

 アイゼンなら知っているのではと思ったのだが、アイゼンも余り知らないのか。

 

『聖隷が意思を持つならば、その意思を操れば良いだけだ』

 

「操る……」

 

『それと、もう1つ、ナナシノ・ゴンベエについて調査をしてくれ』

 

「ナナシノ・ゴンベエを、ですか?」

 

 ゴンベエについての調査?

 

『あの者とマオクス=アメッカに関する情報がないも等しい。

マオクス=アメッカはただの女だが、ナナシノ・ゴンベエは違う。奴は聖寮を脅かす存在だ』

 

 確かにあの時、不意打ちとはいえ導師アルトリウスに一撃を決めて衣服をボロボロにした。ヘルダルフをその気になれば倒せて簡単に封印するゴンベエを危険視することは当然だ。

 エレノアもゴンベエに一撃でやられた為に危険だと承知し……ライフィセットの時と異なりすんなりと頷く。

 

「あの男は業魔とはいえ、元は女の身ぐるみを剥ぎあろうことかキスをした最低な下衆です」

 

「……そういうのじゃなかったから」

 

 私の居ない間に起きたなにかを許しているのか……。

 

『奴は私でも手を焼く猛者だ。情報収集をし、あらゆる手を用いて始末をしろ』

 

「その命、必ずや成し遂げます」

 

『この二つは導師アルトリウスの名に置いて、特命完遂に必要な如何なる行動も許可する』

 

「!……業魔に従うということですか?

ゴンベエという男はまだ分かりますが、あの聖隷は一体……」

 

『できないのか?』

 

 エレノアの問い掛けに一切答えるつもりの無い導師アルトリウス。

 出来ないのかと軽く圧力をかけるとエレノアは追求せずに真剣な表情になった。

 

「屈辱は所詮、一時の感情。理と意志こそが、災厄を振り払う剣……この命、アルトリウス様の教えに従って使います」

 

 そうしなければならない。

 憑魔であるベルベットに従う事は屈辱だが、それでもとエレノアは割り切り、仕事を成し遂げて見せることを誓う。

 理と意志こそが災厄を振り払う剣……。

 

「その、理と意志が間違っていたら、どうするつもりなんだ……私は間違っていたかもしれないから、此処にいるのに」

 

 この時代と私のいた時代は異なっていることが多い。大陸の形からして違う。

 導師アルトリウスがなにをするか、なにをしているかは分からないが、現代から逆説して考えれば間違った事をしているのは確かだ……。

 私達が知っている事を伝えることは、出来ない……ダメだ、この様にネガティブに考えては。私達はこの時間の人間じゃない。昔は悪くても、未来では良くなる。私とゴンベエはコレからの未来を見なければならない。

 

「……戻るわよ」

 

「良いのか?」

 

 隙あればライフィセットを拐い、ゴンベエの命を奪う。

 その命を命じられたエレノアをこのまま見過ごして、良いのだろうか?

 

「喰ってやりたいけど、アイツは器で喰えないし……ゴンベエなら、殺される事は無いでしょ?」

 

 確かに、そうだが……ゴンベエは戦いの時は頼れる人で、その気になれば災禍の顕主であるヘルダルフをも封印できる。心配する要素はない。

 私達はエレノアに気付かれる前に遺跡に戻り、最初からそこにいた様に見せるべく寝たフリをし、朝を迎えた。

 

「で、これからどうすんだよ?」

 

「そうね……女対魔士、知ってる情報全て教えなさい。教えないというなら、力で吐かせるわよ」

 

 全員の身支度を整え、軽めの食事をした後、遺跡から出た私達。

 歩きながら今後についてベルベットに聞き、ベルベットは寝ていたという体なので、エレノアになにかを知っているかを聞いた。

 

「力とは野蛮な……女対魔士でなく、エレノアです。貴女方が知りたい情報についてはお答え出来ません」

 

「おいおい、まだなにも言ってないだろ?」

 

 ロクロウ、既に私が色々と聞いてしまっている。

 

「教えるつもりが無いのかしら?」

 

 左腕を憑魔化させるベルベット。

 エレノアの見る目がますますと強くなる。

 

「違います。私は決闘をする前に負けた場合は相手に従うという誓約の枷をつけて力を強化しました……」

 

「オレを見るな」

 

 呆気なくゴンベエにやられてしまったな。

 

「貴女達が知りたいのは、アルトリウス様のことやカノヌシの事でしょう。

聖寮がカノヌシを使い業魔を消し去り、開門の日から続く大災厄の時代を終わらせることしか知りません」

 

「どうやってだ?カノヌシが業魔を全て消すというのか?」

 

「そこまでは……その辺りはメルキオル様の管轄で、知っているものはいません」

 

「エレノア、ベルベットやロクロウを見て分かる様に人間が憑魔になることもある。

もし仮にそうだった場合、導師アルトリウスは聖寮を使いカノヌシで大量虐殺を目論んでいることになる……殺すことしか手段が無いと、救いが無いと言っているも同然だぞ」

 

 悩み苦しんだ末に1つの答えを出した。

 それを出す前に裁けぬ罪を個人で裁くしかできないのかと悩み、穢れに満ち溢れてしまった。それでも諦めず、ゴンベエの励ましや支えがあり、前を向き、裁けぬ罪を裁ける様にすれば良いという答えに辿り着いた。

 アイゼンの言っている通りのことならば、やっていることは……そう、バルトロの屋敷に現れた風の骨と同じだ。

 

「そんな事はありません!

きっとアルトリウス様はカノヌシを使い業魔病を治す薬や力を手にしようとしているのです」

 

「その為なら、業魔でもなんでもない私の弟は死んでも良いわけ?

沢山の人間を救うためならば、例え家族であろうとも犠牲にするだなんて、大層な御身分ね、導師様とやらは」

 

 私の言葉に反論するも更なる追い討ちがエレノアを襲う。

 詳しい事は聞けていないが、ベルベットの弟は導師アルトリウスに殺されている。何故、どうして?

 もしスレイならば誰かを犠牲にした上での平和なんて絶対に認めようとしない。別の手段を探そうとする。導師アルトリウスの人間性は知らないが、世界から痛みを無くそうと言うのならば、痛みを与える事はしない筈だ。

 第一、今いる憑魔をどうにかしたとしても第二第三の憑魔が生まれてその度に憑魔を倒していたらただの鼬ごっこだ。

 

「ゴンベエ」

 

 エレノアに真実を教えたいとゴンベエとアイコンタクトを取ろうとするのだがゴンベエは首を横に振った。

 今ここで憑魔になる原因の穢れを打ち払う力があることは未来になにかしらの影響を及ぼす……言いたい、事実を……。

 

「エレノアは力を持ったお前に近い。言うだけじゃダメだろ」

 

「……そう、だな」

 

 間違った道を歩まされている。間違ったことを手伝わされている。

 エレノアになんらかの罪があるかどうかは分からないが、導師アルトリウスが教えずに都合良く利用している筈だ。

 

「あんた等、なんの話をしてるのよ……まぁ、良いわ。それよりも振り出しになったわね……」

 

 私達の話を適当に聞き流し、なにも得られなかったのでどうするかと考える。

 エレノアが情報を握っていない以上は、なにをすれば良いか分からない。

 

「アイゼン、自分よりも高齢の天族を知らないのか?」

 

 カノヌシの細かな詳細は分からないが、少なくとも人でない天族の様な存在であるのは確かだ。

 だったら、天族に聞けば良い。ゼンライ殿を探す過程で使った方法を使い、カノヌシについて知っている天族を訪ねる。

 

「……カノヌシを知っている聖隷を探す、か。

確かにそれも1つの手だが、それは最も使えない手段だ」

 

「どうしてだ?」

 

 カノヌシを知っている天族は居るはずだ。

 

「どうしてもこうしても、決まっておるじゃろう。

数年前から聖隷は意思を抑制され、今では殆どの聖隷が意思を抑制され聖寮におる。

無論、アイゼンの様に聖寮に捕まらず意志も抑制されていない聖隷は極々僅かじゃが存在しているものの、奴等は姿を隠しておる。今の人の世とは関わるべきではないと、関わってはいけないと結界やらなんやらと使い、外界との交流を閉ざしての」

 

「外界との交流を……」

 

「仮に会えたとして、そいつ等が友好的にはならん。人が聖隷を道具扱いしていることに聖隷は怒っている。

ただの人間、魔女、変な人間に加えて聖隷の天敵である業魔二人に聖隷の敵である対魔士一人の計、6人。そんな奴等と一緒に居る奴等には協力はしない」

 

「おい、変な人間ってオレか?」

 

 ゴンベエ、黙っていてくれ。

 使えると思った手段はこの時代では使うことが出来ない手段だと分かると、ますますこの時代と現代の差異を知ってしまう。

 

「あの、でしたら王都に向かうのはどうでしょうか?」

 

「……何故、向かう必要がある?」

 

 エレノアの提案に私は嫌悪する。

 ライフィセットを連れ去り、ゴンベエの情報を集めて始末しなければならない。その為に王都に向かおうと提案している魂胆が丸見えだ。

 

「王都は敵の本拠地と言っても良い場所だ。

準備もなにもせずに導師アルトリウスの元に向かった結果が今だ。行って、なんになる?」

 

「……アルトリウス様は国の助力を得ています。王都でならば」

 

「却下。そんな曖昧すぎる考えで行くことはできないわ」

 

 嘘を上手くつくことができず、却下されるエレノア。

 王都に行くことは出来ない云々はさておき、本当にお手上げな状態。アルトリウスの身辺調査からスタートを、どうやってカノヌシを見つけたなどを調べないと……でも、それは分からないから困っている。

 

「ねぇ、皆、これ見て」

 

 無言の静寂が続いているとライフィセットが本を取り出す。

 それはギデオン大司祭を暗殺しに行こうとした際に盗った古代の文字が書かれた本で、古代の文字を解読した……ではなく、表紙の部分を指差す。

 

「コレって、あの神殿にあった!」

 

「うん、神殿にあった紋章と一緒なんだ……もしかして、コレ、カノヌシの事が書いてあるの!?」

 

「古代語だから読めないけど……多分」

 

「偶然に手に取った本がカノヌシの本だったとは、良い掘り出し物だな!で、なんて書いてある?アイゼン、お前なら読めるんじゃないのか?」

 

「いや、オレにも読めん。古代語を現代の文字や言葉に戻すのは生半可な事ではできない。

例えば文のはじまりにある文字があれば、意味がしたになる。文の最後にある文字があればしている。文のはじまりにある文字があるが、間にある文字があればする予定だったとな」

 

「おぉ……滅茶苦茶頭が痛い話だな。オレにはさっぱりだ」

 

 古代の文字を読むことが出来るか出来ないかは、勉強云々の問題じゃない。

 ある程度は知識が必要だが、最後は読み取る才能の様なものが必要で……私にはその才能が無い。スレイにはその才能があるようだが。

 

「古代の文字を読めるんは、やっぱそれが使われてた時代を生きてた長生きの聖隷に……振り出しに戻っちまったな」

 

「これもダメなの?」

 

「そうしょげるでない、坊よ。

グリモワールというワシの知人ならば解読できるかもしれん」

 

「ほんとう?」

 

「……か、どうかは会わねば分からんがの」

 

「曖昧すぎないか!?」

 

「ワシに言われてものぅ。

グリモワールには世話になった身ではあるものの、少なくとも古代語に関して世話になったことは一度もない!」

 

「どうすんだ、ベルベット?」

 

「なんで私に聞くのよ」

 

「だって、お前の喧嘩相手だろ」

 

「……はぁ、そうね」

 

 あ、ゴンベエに言い負かされた。

 読めるかどうか分からないが、今はそれにすがるしか無いベルベット。

 サウスガンド領のイズルトを目指すこととなり、遺跡を出た。




スキット ゴンベエ監察書 1

エレノア「そういえば、挨拶がまだでしたね」

ゴンベエ「ん?軽く自己紹介はしただろう」

エレノア「貴方の事ではありません」

ゴンベエ「?」

ビエンフー「僕のことでフね、エレノア様!!」

エレノア「ビエンフー!……そういえば、居ましたね」

ビエンフー「バッド!?僕のことじゃ無いんでフか!?」

エレノア「違います。それ以前に、貴方は元とはいえ私の聖隷じゃ無いですか。今さら自己紹介をするほど関係ではありません」

ビエンフー「言われてみれば、そうでフね。僕とエレノア様は自己紹介をしなくても良い、心と心が繋がったフカーい関係でフ」

ゴンベエ「言い方よ……で、自己紹介まだなのって?
ベンウィックとかのアイフリード海賊団は、会ってないから自己紹介はまだ以前に出来ないぞ」

エレノア「違います、海賊と馴れ合うつもりはありません。
その、貴方の聖隷についてです。ビエンフーもライフィセットも出ていますし、貴方の聖隷も外に出してみては?」

ゴンベエ「あ、オレ、聖隷は居ないぞ」

エレノア「聖隷がいない……貴方は人間、ですよね」

ゴンベエ「人間で、ジャンル的には勇者だな」

エレノア「勇者!?貴方の様な勇者、聞いたこともありません!」

ゴンベエ「お前が聞いたこと無いだけで、存在はしているんだよ。お前の基準で測るんじゃねえ」

エレノア「勇者とは弱い者を助け、悪どき圧政者を倒す存在です!」

ゴンベエ「ちげえよ、バカ。
勇者ってのは他人の家に勝手に押し入って勝手に宝の壺とかぶっ壊して中身を押収し、カジノで旅の軍資金を稼ぎ、はぐれた水銀的なのを乱獲し経験値を稼ぎ、汚いおっさんのおっぱいでパフパフし、魔王から世界の半分をくれてやるから仲間になれと言われて、はいと返事をしても戦闘になってしまう憐れな存在なんだ」

エレノア「ダメ人間まっしぐらじゃないですか!何処が憐れなんですか!」

ゴンベエ「国王からひのきぼうと100ガルドだけ渡されて魔王を倒して来いって無茶を言われて、魔王を倒したら倒したで、勇者は魔王よりも強い存在なんだと思われて化物扱いされる。それを憐れと言わねえのか?」

エレノア「!?」

ゴンベエ「別に驚くことはねえだろ、魔王を倒した勇者は魔王よりも強い。シンプルな考えだ……お前達だって一般人にどんな目で見られてるのか」

エレノア「……貴方は、もしかして迫害を受けたのですか?今でこそ聖寮が存在し、聖隷が認知されていますが、それは開門の日以降。それよりも前は」

ゴンベエ「……」

エレノア「……申し訳、ありません……」

ゴンベエ「あ、オレは魔王は倒してないぞ」

エレノア「騙したのですか!!」

ゴンベエ「騙したかと聞かれれば、騙したぞ」

エレノア「人の身でありながら、業魔や賊に手を貸す貴方は最低です!穢らわしい!」

ゴンベエ「……似たような状況にはなってるんだがな」

アリーシャ「ゴンベエ、エレノアは尋問をしている。余計なことは言ってはいけない」


スキット 取られたくないだけ

ベルベット「いい、エレノアはライフィセットを隙あらば拐おうとするわ」

ライフィセット「そんな風に見えないよ?」

ベルベット「騙されちゃダメ!現にゴンベエの情報を聞き出そうとしているのよ!」

アリーシャ「ゴンベエは上手く避けているみたいだぞ」

ベルベット「……とにかく、騙されないで!」

ライフィセット「エレノアと仲良くしちゃダメなの?」

ベルベット「それは……」

ライフィセット「僕はエレノアと契約して、器にしてるんだ。
だから仲良くしたいと思うんだ。命令とか誓約とかそんなの関係なく、仲良くしたい、かな」

アリーシャ「ベルベット、ライフィセットもこう言っているし、そこまで邪険にするものどうだろうか?」

ベルベット「ダメよ。エレノアみたいなのと仲良くしちゃ」

アリーシャ「ベルベット、お母さんみたいな事を言ってるな」

ベルベット「誰がお母さんよ!どっちかと言えばお姉さんでしょ!」

アリーシャ「いや、主婦が合う」

ベルベット「なんでそう思うのよ……とにかく、あんまり仲良くしちゃダメよ」

ライフィセット「ダメなの?」

ベルベット「……私が一番、ゴンベエが二番、アメッカが三番で一番下にあいつ!その優先順位を作りなさい……それなら少しぐらい会話していいわよ」

ライフィセット「!……うん!」

アリーシャ「ベルベット、束縛が強すぎる気も」

ベルベット「あんたが言う!?」

アリーシャ「私はただ依存してしまっているだけだ。
ベルベットのはそう、例えるなら弟を取られた姉の心境に近い。ライフィセットとエレノアは歳が離れているから、仲の良い姉弟に見えるからそれに嫉妬を」

ベルベット「違うわよ。そんなんじゃ、無いから……」

スキット 優先順位

ライフィセット「……」

ゴンベエ「どうしたんだ、ライフィセット?」

ライフィセット「ゴンベエ……ベルベットにエレノアと距離が近すぎるって怒られたんだ」

ゴンベエ「あのオキャンは細やかな嫉妬が多いな」

ライフィセット「嫉妬?」

ゴンベエ「気にすんな……それよりも、ちゃんと優先順位は分かってんのか?拐われたら元も子も無いだろう」

ライフィセット「えっと……たま~に、忘れちゃうかな。
エレノア、色々と面白い本を知ってて教えてくれるんだ。つい、話し込んでて」

ゴンベエ「そら、怒られるだろう」

ライフィセット「どうすれば忘れないでおけるんだろう?」

ゴンベエ「ん~……あ、アレなんてどうだ?」

ビエンフー「そういえば、マギルゥ姐さん。
僕とマギルゥ姐さんはなにか目的があるから行動をしているわけでもエレノア様の様に負けたからというわけでも無いのに、なんで皆さんと一緒に居るでフかね?今更なことですが疑問でフ」

マギルゥ「さー、成り行き上そうなったからの。
乗り掛かった船じゃ。例え泥船だろうがなんじゃろうが最後まで見届けなければならん」

ビエンフー「ど、泥船でフか!?」

マギルゥ「お主も見たじゃろ、導師の圧倒的な強さとワシ等の弱さを。ワシ等は今、世界を相手に喧嘩しておるんじゃ」

ゴンベエ「あんな感じを真似れば良いんじゃないのか?」

ライフィセット「どの辺りを真似るの?」

ゴンベエ「ビエンフーの呼び方。
マギルゥの事を姐さん、エレノアの事を様、ベルベットの事を呼び捨てで呼んでるだろ?
呼び方をちょっと変えて、優先順位があるんだなと思わせる様にしてみれば良いんじゃねえの?」

ライフィセット「呼び方を変えてみる……うん、やってみるよ!!」

ベルベット「ゴンベエ、グローブ油が切れそうだから買い足しといて。ついでに羊毛もお願い」

ゴンベエ「お前、普通に人をパシるんだな……まぁ、良いけどよ」

ライフィセット「買い出しなら僕が行こうか?」

ベルベット「別にあんたが行かなくて良いのよ?」

ゴンベエ「一応、オレはベルベットの下僕だから言うことを聞いてるからな」

ベルベット「一応?」

ゴンベエ「すみませんでした」

ベルベット「分かればいいわ。とにかく、買い出しはゴンベエに……違うわね。ゴンベエと一緒に行ってきなさい」

ライフィセット「!」

ベルベット「いい?知らない人にはついていかない。寄り道はしない。無駄な買い物はしない。ゴンベエの言うことをしっかりと聞いて、ゴンベエの右側を歩くのよ?」

ライフィセット「もう、子供扱いしないでよ!」

ベルベット「……」

ゴンベエ「ほら、母さんに反抗したらダメだろう。母さん悲しそうな顔をしてるじゃないか」

ベルベット「だから、誰がお母さんよ!!」

ゴンベエ「お前の言ってること、うちのオカンも昔、散々要ってたんだよ。
ライフィセット、子供扱いされたくなければ早く一人前の真の大人だってベルベットに見せてやらんと」

ライフィセット「……うん、そうだね。いってきます、ベルベットさん(・・)!!」

ベルベット「いってらっしゃ……あんた、今、なんて言った?」

ライフィセット「行ってきますだよ?」

ベルベット「そうじゃなくて、ベルベットさんって言ったじゃない。なんで急に」

ライフィセット「優先順位を分かりやすくしようかなって。
ビエンフーはマギルゥとエレノアをただ名前で呼ばず、ベルベットさんとアメッカを名前だけで呼んでるからそれの真似をしてみたんだ」

ベルベット「……そう……」

ゴンベエ「ライフィセット、今すぐにベルベットにさん付けを止めろ」

ライフィセット「でもベルベットさんが一番だって分かりやすくしてるんだよ?」

ゴンベエ「分かりやすいぐらいにベルベットが泣きかけてるから、本当にダメだ。早くしないと、穢れの領域が広まる」

ベルベット「別に、泣いてなんか、無いわよ……あんた、余計な事を教えないでよ。せめて、エレノアにさんをつけなさい」

ライフィセット「それだとエレノアが特別になるよ?」

ゴンベエ「じゃあ逆はどうだ?
油断とこんな純粋な子をと罪悪感に苦しませるべく、エレノアに懐いていると見せ掛けるべくエレノアの事をエレノアお姉ちゃんと」

ベルベット「態度で示しなさい。あんたもゴンベエも、優先順位は私よ!」

ゴンベエ「……え、オレも?」

ベルベット「当然じゃない。あんた、私の下僕でしょ?さっさと買い出しに行って来なさい」

ライフィセット「そういえば、そうだった。行こう、ゴンベエ」

ゴンベエ「なんか釈然としねえが、まぁ、行くか」

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