テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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刃は斬るものでありビームを出すものではない。

「シグレ様!?」

 

 クロガネが戦っていた相手を見て、驚くエレノア。

 

「誰だ、こいつは?」

 

「……聖寮の2人しかいない特等の退魔士です」

 

「特等、というとメルキオルと同じか」

 

 これは、まずいかもしれない。

 エレノアの言うように特等と言うことは、単純に考えてエレノアよりも強く導師アルトリウスよりは弱い。

 導師アルトリウスに手も足も出なかったベルベット達は勿論の事、まだ戦えない私が勝てないかもしれない。

 

「おう、エレノアじゃねえか」

 

 私達の声に反応し、振り向くシグレ。はっはっはと笑っている。

 

「んだ、お前。業魔に捕まったのか?それとも裏切ったのか?」

 

「それは……」

 

「まぁ、どっちでも良いわ。好き勝手やってる俺がああだこうだ言えた義理じゃねえからな」

 

 私達は誓約に従いライフィセットの器となり従っていると言うことになっているが、裏では密命を受けている。

 その事を知らないと思っているので密偵として動いていると言えず、答えられずにいるがシグレは一切気にしていない。

 

「にしても、今日は本当についてるわ。

征嵐と出会うどころか、征嵐作ってるジジイとまで出会えたんだからよ。久々に良い物を斬れたぜ」

 

「良い物って、お前は何処の石川五ェ門だ」

 

「誰だそいつ?」

 

「コンニャク以外ならなんでも斬れる剣、いや、武士だ」

 

「コンニャク1つまともに斬れねえのかよ」

 

「バッカ、お前。コンニャク舐めんなよ。

斬るときにはちょっと手で抑えとかねえと弾力がありすぎて斬れ味抜群の包丁でも斬るの難しいし、コツを掴まねえとスンナリと刃が通らなくて隠し包丁入れたみたいで終わんだぞ。プルンプルンしてっけど、プリンや茶碗蒸しみたいにスプーンで簡単にはぶっさせねえだろ?」

 

「言われてみればそうだな。よし、後で飲む心水のつまみをおでんにしてそん時に片っ端から材料斬って試してみるか」

 

「やめなさい、號嵐で斬ったら確実に食あたりを起こすわよ」

 

 猫が喋った!?

 

「シグレ、なんかスッゴく睨んでいる子が居るわよ。無視しちゃ可哀想よ」

 

 いや、それよりも猫が喋っている事に驚きを隠せないんだが……。

 

「悪ぃ、悪ぃ。昔から弟をいじめるのがクセでな……なぁ、ロクロウ」

 

「変わらないな……シグレ」

 

「弟!?」

 

 2人が兄弟だと分かると驚くベルベット。

 何処となくロクロウと似ている理由は兄弟だったから、言われてみれば顔付きが似ていて独特の服装も似ている。

 

「バカ野郎、滅茶苦茶強くなってるっての。

そっちこそ相変わらず俺を出来もしねえ事を考えてんのか?」

 

「ロクロウが斬りたい人って、お兄さんなの!?」

 

「こっちもあん時とは違う!」

 

 驚くライフィセットを他所に右目を光らせるロクロウ。

 

「おぉ、お前、業魔になったのか」

 

 業魔化したとハッキリと分かる右目を見て、シグレは笑う。

 

「待て、號嵐と戦えないだろう!」

 

「わりぃが、そうはいかん!!ライフィセット、シグレは俺がやる。手を出すんじゃねえぞ!」

 

 シグレに勝つためにここで色々としていたのに、それを忘れたのか落ちている無数の折れている刀から小刀ぐらいの大きさに折れている刀を二本手に取るロクロウ。シグレはかかってこいと號嵐を向け、軽く挑発する。

 

「何年ぶりだ、お前と斬り合うのは!」

 

「死んで後悔しろ!あの時俺を殺さなかった事をな!」

 

 斬り合うシグレとロクロウ。

 短刀の二刀流と號嵐の太刀筋は大きく異なるものの、細かな動作は似通っており、どちらも優れた剣士な事が分かる剣撃が繰り広げられる。

 

「四の型 疾空!」

 

「お!」

 

 三連続の鎌鼬を飛ばしながら斬り込むロクロウ。

 

「重ね陽炎!」

 

 鎌鼬に続く様に自分の体を動かし、突きに行くが避けられる。

 ロクロウは動じずに揺らめく炎の如く切り返し振り向き、連続の突きを浴びせ

 

「八股大蛇!」

 

 八連続の目にも止まらない斬撃で攻撃し、足元に小さな竜巻を起こして軽く飛ばす。

 

「やったか?」

 

 若干だが我を忘れたもののロクロウは押しまくっている。今の一撃は見事に決まった。

 

「……コレぐらいで倒せるのならば、シグレ様は聖寮に二人しかいない特等退魔士になりません」

 

 エレノアが俯きながらボソリと呟くと、小さな竜巻に飛ばされたシグレは空中で体勢を整えて綺麗に着地する。

 

「さすが、業魔だ。悪くねえ……だが、これまでだな」

 

「うぉおおおお!!」

 

「そいつじゃ俺は斬れねえ、よ……斬っ!!」

 

「っ!」

 

 號嵐を両手で持ち、上段の構えをとり大きく一太刀振るう。

 ロクロウは刀を交差させて防御に入るが、刀は簡単に折られてしまい、吹き飛ばされる。

 

「ここまでの様だな」

 

「ロクロウ!!」

 

 元々折られていた刀が更に折られて短くなり、絶体絶命の時、ライフィセットが声をあげる。

 

「えっ!?」

 

 するとエレノアが動きだし、槍を取り出してロクロウの元へと走り出す。

 

「体が……勝手に!?」

 

 自分の意思と反する様に体が勝手に動き出すエレノア。

 シグレに向かって突撃しようとするが、その前に更に短くなった刀をロクロウは投げた。

 

「邪魔すんじゃねえ、ここからが勝負だ」

 

「ほう、今度は折れねえか」

 

 今まで抜こうとしなかった背中の號嵐・影打ちを抜いたロクロウ。

 それを見て面白いオモチャを見つけたとシグレは好戦的な笑みを浮かべ

 

「ここからが勝負じゃなくて今から勝負の準備に入るんだろうが、アホ」

 

 二人の間にベルベットを抱えたままのゴンベエが割って入った。

 

「おいおい、邪魔すんじゃねえよ。折角面白くなってきたってのによ」

 

「悪いけど、こっちからしたらあんたみたいな化物がいて面白くないのよ。

ロクロウ、私が言えた義理じゃないけど頭を少し冷やしなさい。なんでここで足を止めてるのか忘れたの?」

 

「……クロガネ」

 

 細かな理由はそれぞれ違うが、港に行かずにここで止まっているのはこれからの戦いに備える為にも新しい武器をクロガネに作って貰うため。その事を思いだし、クロガネを見る。

 

「あんたは使ってたのも壊れたんだから、早いところ作らないと」

 

「そいつはいい。今のお前が強え刀をもったら、面白え」

 

「面白いって、一応お前を殺そうと必死になってんだぞ?」

 

「んなもん、昨日今日始まった事じゃねえよ」

 

 そう言い背を向けるシグレ。

 

「この先のカドニクス港で待っててやる。俺を倒さねえと、島からは出られねえぞ」

 

「ロクロウ」

 

「やめろ、シグレは俺の獲物だ……やるなら俺が死んだ後にしてくれ」

 

「へーへー」

 

 今この場で隙をついて倒そうかとアステロイドを出すゴンベエ。

 ロクロウから撃つ許可が降りなかったのでアステロイドは消えたのだが、背を向けていたシグレは振り向く。

 

「別に一対一じゃなくて、束になってかかって来ても文句は言わねえよ」

 

「随分な自信だな」

 

「気にくわなきゃかかってきな!」

 

 ゴンベエを煽る様にシグレは號嵐を団扇を扇ぐ様な感じで軽く振って威嚇しているのだが、威嚇にならない。

 斬り倒す為でなく威嚇なのに突風が吹き荒れており、それが今の私達とシグレの実力差を知らしめている。

 號嵐だけでもかなりの重さがあるのに、それを軽々しく振って突風を起こすのは恐らくだがマルトラン師匠でも出来ないこと。慢心にも見える自信と余裕を見せているシグレの力に私達は圧倒される。

 

「じゃあ、お言葉に甘えるわ」

 

「っ!」

 

 ゴンベエ!?

 

「てんめえ、今じゃねえだろ今じゃ……っ!」

 

 不意打ちに近い形で、ベルベットを左腕で抱え、空いた右手で剣を鞘ごと抜いたゴンベエ。

 シグレは咄嗟に反応して攻撃を防いだが、持っていた號嵐を手から放す。いや、落とす。

 

「こういう技もあっから覚えとけよ」

 

「……ああ、良い勉強になったわ。

それとエレノア、お前マジで裏切ったんだな。次あった時は容赦なく叩き斬るぞ」

 

 手をプルプル震わせ、ゆっくりと號嵐を拾うシグレ。

 鋭く強くゴンベエを睨んでいるが襲いかかることはせず、そのまま去っていった。

 

「あんた、なにをやったの?」

 

「號嵐を経由して振動を腕の神経に伝えて一時的に麻痺させる技を使ってやった。

シグレの剣が滅茶苦茶強いならば、剣を持たせれない様にすりゃ簡単にぶっ倒せるかと思って試したんだよ……アイゼン」

 

「あの野郎、まだ全然本気じゃないな」

 

「問題無いわ、ゴンベエが今の技をもう一度ぶつければ良いだけのことよ」

 

「いや、効かねえ可能性高いぞ。

剣とか持ってる手だけ麻痺させる技で、持ってない手で麻痺した方をぶん殴って無理矢理動ける様にする荒技もあるんだ……餅は餅屋に任せようぜ」

 

 そう言うとアイゼン達の視線はロクロウへと向き、ロクロウの視線はクロガネへと向いた。

 

「クロガネ、大丈夫か?」

 

「ああ、体の方も心の方も無事どころかより斬って欲しくなった」

 

 よっこいしょと立ち上がったクロガネ。

 自分の体をまじまじと見ており、なにかを考えている。特に目立った怪我はしていないし、腕が折れているという事も無いが違和感かなにかを感じるのだろうか?

 

「オレ達があの黄金の毛を持つ狼を追いかけるのと入れ違いであいつが来たのか?」

 

「何処ぞの誰かさんがとんでもねえ穴を開けた音が聞こえたのか駆けつけて来やがった」

 

「……悪い」

 

「謝るな……少々腹立たしいが、お陰でヒントを得た」

 

 どういうことだろう?

 

「それよりも、メダルの方はどうした?」

 

「それならば、砕く事が出来た」

 

 これならば槍を作るのに必要な新しい金属を作れる。

 クロガネに砕けたメダル等の破片を1つずつ渡していく。

 

「この大きさなら、槍を作るのに必要なちょうど良い大きさになる」

 

「クロガネ、その前に良いか?」

 

「なんだ?まだ、誰かの武器が欲しいのか?」

 

「アメッカとロクロウの武器を作る順番を変えてほしい」

 

「っ、何故だ!?」

 

 なんとか納得のいくサイズにし、これからだと言う時に水をさすアイゼン。

 なんでいきなりそんな事を言い出すんだ。

 

「既にベンウィック達にカドニクス港に来るようにシルフモドキを飛ばしている。

ベンウィック達ならばカドニクス港に行く事は容易だが、カドニクス港には聖寮が待ち構えている。

そこらの雑魚なら心配はいらないが、今からそこにシグレが加わる。あの感じからして人質の様な非道な真似はしないだろうが、真正面からぶつかれば全滅させられる。號嵐と撃ち合える刀を一刻も早く作らなければ、先に進めん」

 

 シグレと戦う為にも私の槍でなくロクロウの短刀を優先させてほしい理由を説明する。

 ゴンベエにやられるまで見せていた余裕とアイゼンが言う様に本気じゃなかったとすれば、私の槍よりもロクロウの刀を優先させた方がいい。アイゼンはそう判断した。

 

「……分かった」

 

 悔しいが、私よりもロクロウの方が強い。

 本当なら嫌だと言いたいが、世話になっているアイフリード海賊団を見捨てるわけにはいかない……っ!

 

「悪いな、この借りは何れ返す……つーことだ、この素材を使って短刀を作ってくれ」

 

「断る」

 

 な!?

 

「どういうつもりだ!さっきまでやる気満々だっただろう、今さら怖じ気づきやがったのか!?」

 

 突如として刀を作る事を拒むクロガネにキレてアイゼンは首元を掴む。

 目の前にある極上の素材を使えば號嵐にすら対抗出来る刀を打てるのにどうしたなんだ?私は後に回しても構わないし、なにが不満なんだ!?

 

「そんなわけあるか」

 

「じゃあなんで作らねえ!」

 

「アメッカやベルベットなら作ってやる。だが、ロクロウのとなれば話は別だ」

 

 アイゼンの腕から抜け出し、メダルの破片を手に取ったクロガネ。

 骸骨の騎士が砕いてくれたメダルは力任せに振って叩きつけたロクロウのハンマーでもアイゼンの拳でもライフィセットの天響術でも傷はつかなかった。

 

「素材がダメか?」

 

「素材がダメだなんて、これほどまでの物は何処を探してもないはずだ」

 

 私の槍を作ったとしても素材は余る、遠慮はいらない。

 

「確かにメダルを素材にすれば號嵐ともやりあえるだろうが、征嵐じゃない別の物が出来る」

 

「別の物……」

 

「よく見てみろ」

 

 砕けたメダルの破片を見せつける。

 メダルだった時と比べれば神秘的な力が若干だが弱まっているが、それでも神秘的な力を感じ取れる。

 

「メダルを素材にすれば雷やら炎やら氷やら色々と変なビームを撃つことが出来る変な刀が、妖刀や聖剣の類いが出来ちまう」

 

「ふむ、確かにそうじゃのう。

このメダルと言い、珠と言い、材質は勿論のこと特殊な力を持っておる。これを打てば、お主の野望が達成は出来ぬの」

 

「そう言うことだ」

 

 あくまでも征嵐で號嵐を斬ることに執着し、譲るつもりは無いクロガネ。

 ゴンベエが嫌がると言っていた事はこういう意味だったのか。

 

「クロガネ、お前の気持ちはよく分かった。ビームとか出る刀は面白そうだがお前が嫌ならば仕方あるまい。

だが、どうすんだ?この辺りを掘れば出る煌鋼で打った刀だとさっきみたいに簡単に折られちまう。煌鋼よりも頑丈な稀少金属(レアメタル)を今から探そうにも時間が無いぞ」

 

「安心しろ、素材ならもう見つけている」

 

 そう言うので辺りを見回すのだが、何処にも見つからない。

 あるのは折れた刀の数々とさっき砕いたメダルで、片方は使えば簡単に折られ、もう片方は征嵐にならない。

 

「號嵐とやりあう刀を作るには生半可な素材だと無理だ。だが、生半可でない素材ならば話は別だ」

 

「生半可じゃない……まさか、オリハルコンか?」

 

 生半可でない素材を浮かべ上げるアイゼン。オリハルコンは最も硬いと言われている稀少金属。

 硬度も去ることながら、そのあまりの稀少性に本当に存在しているかどうかすら怪しい代物……そんな物があるのか?

 

「號嵐と戦う為に生まれたかもしれないものだ」

 

「成る程、そう言うことか……何処を使う?」

 

「頭部で頼む」

 

 素材がなにか分かったロクロウはクロガネの頭部を折れた號嵐・影打ちで切り落とした。

 

「な、なにをしているのですか!?」

 

 首から上が切り落とされ、ガクリと膝をついたクロガネ。

 

「落ち着け、素材を切り離しただけだ」

 

 ロクロウがそう言うとクロガネの体が何事もなかったかの様に立ち上がり、切り落とされた頭部を掴んだ。

 

「成る程、確かに號嵐と戦う為に生まれたかもしれないわね」

 

 クロガネが見つけた號嵐を征する征嵐に必要な素材、それはクロガネ自身。

 憑魔となり肉体が変化したクロガネはライフィセットの攻撃を受けてもビクともせず、シグレにやられていた時も刀よりも硬い体だと言っていた。

 素材が號嵐を斬りたいという怨念で憑魔となったクロガネ自身なら號嵐と戦う為に生まれたと言っても過言ではない……だが。

 

「そこまで、するのか……」

 

 なんの迷いもなく己の頭部を差し出した。

 成し遂げようと言う思いは理解出来るが、ここまで来れば別のものを感じる。

 

「そうだ、この恨みの塊で新しい刀を打つ。

これならば、メダルと異なりビームとか変な力を持たず號嵐とやりあうことの出来る刀になるはずだ」

 

 クロガネは金床の前に座るとなんの迷いもなく己の頭部を燃やし、小槌を出現させ叩き始める。

 

「かなりの時間が掛かりそうだな……その間にこっちも仕上げに移るか」

 

 充分過ぎる程の素材に腕の良い職人、それでもまだ足りないのか?

 

「アメッカ……とりあえず、ごめん」

 

「っ、急になにをするんだ!?」

 

 私に謝罪をしながら数本の髪の毛を引っこ抜いた。

 髪の毛が引っこ抜かれるなんて早々に無いことで、いきなりの痛さに涙目になりながら抗議をする。いったいなんのつもりだ。

 

「アメッカDNA(成分)を抽出してるに決まってんだろ!」

 

「わ、私の成分?」

 

 何故か逆ギレ気味に答えるゴンベエ。

 アンモニアの時と同じなのかと引いていると逆に呆れられ、大きなため息を吐かれる。

 

「いいか、このままクロガネに槍を作って貰ったとしてもそれはもうなんか凄い力を持ったアメッカの手にちょうどピッタシ合うサイズの槍でお前がパワーアップしたとかそんなんじゃねえ」

 

「……分かっている、それぐらい」

 

 憑魔とまともに戦えていたのは、スレイと槍の力が大きい。

 私自身になにかがあったと言うわけではない。

 

「だから、お前自身をパワーアップさせるんだよ」

 

「言いたいことは分かるが、それが出来なかったのが今じゃないか」

 

 私自身がパワーアップをすれば大体の問題が終わることで、現代でもそれを真っ先に思いつき、イズチで方法は無いかと訪ねたが無かった。その後二転三転と色々とあり、今こうして過去に来ている。その方法はもう諦めている。

 

「出来ねえなら出来る様にするのが人間だ。だから、アメッカの成分が必要なんだよ」

 

「余計に意味が分からない!?」

 

「はえー話が槍を作る過程でお前の一部を混ぜんだよ」

 

「そんな事をして意味はあるのか?」

 

 金属を加工するには料理で使う炎をよりも更に高い超高温で熱して加工しやすくする必要がある。

 塊の金属を平らにして小割にして同質の物のみを熱して鍛接、そこから何度も熱しては叩く工程を繰り返して不純な物を無くす。他にも色々と工程がありなにに加工するかによって更に細かく工程が変わるが、基本的には熱しては叩くの工程を何度も何度も繰り返す。叩く工程で入れた髪の毛が無くなっている。

 

「世の中には起源弾という魔術師に絶大な効果を及ぼす不思議な弾がある。色々と細かな説明は省くが魔術師殺しの起源弾は術師の肋骨を擂り潰した物で出来た弾だ。クロガネが嫌がった様にあんだけの材料を使えば普通じゃない槍が出来る。そこにお前の成分を混ぜれば……なんか起きるだろう」

 

 薬や道具の知識を多く持つゴンベエがなんか起きる。

 それは起きない可能性もある……けど、ゴンベエの言うようにこのままだと普通じゃない物凄い槍が出来るだけで、私がなにかパワーアップするわけではない。

 

「ベルベット、髪を切ってくれないか?」

 

 私の一部を入れてなにかが変わる可能性があるなら、やるしかない。

 とはいえ髪の毛が引っこ抜かれるのは嫌なので、ベルベットにある程度の長さまで切ってもらおう。

 

「とりあえず、手当たり次第にぶちこむから髪の毛はもういい」

 

「となると爪……瓶?」

 

 髪の毛以外に加えれそうな私の成分と言えば、爪ぐらいだが何故か小瓶を取り出す。

 爪を入れる小瓶だとしても結構な大きさで、それしかなかったのかと思ったが私に差し出してくる。

 

「とりあえず、そこの裏で……アイゼン、ライフィセット、ちょっと別の場所に行くぞ」

 

 アイゼンとライフィセットを連れ、何処かに行こうとするゴンベエ。

 

「なんでここから離れるの?」

 

「アメッカが今から──」

 

「花を摘みに行くんだ」

 

 この場から離れようとする事がよく分からないライフィセット。

 ゴンベエが答えようとする前にアイゼンが先に答えると私はゴンベエに向かって瓶を投げつける。

 

「ゴンベエ、この量を一度に出せるわけないだろう!」

 

「アメッカよ、論点がズレておらぬか?」

 

 はっ、しまった!こういうのが多いせいで馴れてきている自分がいる。

 

「とにかく、絶対に嫌だ!!爪だ、爪を使うんだ!」

 

「爪って、お前、そういうのの手入れをちゃんとしてるんやから切れば深爪みたいになんぞ」

 

「それでも構わない!!……瓶に……は流石に恥ずかしい」

 

 強くなるためならば、色々な事を知るためならば多少の事は覚悟できている。

 だが、これはそういう感じのじゃない。体が痛いとか心苦しいとかと大きく異なる。

 

「アメッカよ、背に腹は変えられんぞ。

毛や爪以外に色々と混ぜたとしても金属を熱して打つ過程で消し飛ぶ、別の工程でアメッカの成分を……っ……くふふ」

 

 他人事だと思い爆笑するマギルゥ。

 背に腹は変えられないのは分かっているがそれをすれば人として大事ななにかを失う。別の意味で越えてはならない一線を越えてしまう。

 

「アメッカの成分、瓶……も、もしかしてその中におし──」

 

「それ以上は言うな!!」

 

 敢えて誰も言わない様にしているんだ、言わないでくれ!!

 瓶になにを入れるように言っているのか分かったエレノアはゆでダコの様に顔を真っ赤にし、両手で隠す。一番恥ずかしいのは私なんだよ!!

 

「とにかく、アメッカの力を強めるにもアメッカの体液も必要だ。こればかりは譲ることはできねえ」

 

 改めて瓶を渡すゴンベエ。

 体液を入れることはもう決定事項で、それを入れなければ私の槍は完成しない……っ……。

 

「アレには体の中の不要な成分が詰まっている。

アメッカから採取するならば、もっと別の体液にした方が良いんじゃないか?」

 

「あのメダルは邪悪ななにかに晒されたりしないと錆びたりはしねえから問題ない。アメッカの聖水を直接混ぜんじゃなく冷やす過程で使うからある程度の量が必要なんだよ。薄めるにしても最低でも一瓶丸々必要で鼻水とか唾液だと満タンになるまでどんだけ掛かるか分かんねえ……」

 

「コイツら、ぶん殴った方がいいかしら?」

 

 真剣な顔で議論するゴンベエとアイゼンに青筋を浮かび上げるベルベット。

 私は親指を突き上げ首元に近付け横に一線。思う存分にやってくれと合図をするとゴンベエとアイゼンに拳骨を叩き落としにいった。

 

「ライフィセット、私の血をこの瓶に入れる。腕に傷をつけるから、ある程度の量が入ったら治してくれ」

 

「う……うん…」

 

「お前っ、一番安全で確かな量が手に入んのに、血液は一番危険なんだぞ……」

 

 ベルベットの拳骨や膝蹴りをくらっているゴンベエとアイゼンを無視し、瓶に血を満たした。




スキット テイルズオブりたい

アリーシャ「ゴンベエ、次回予告だ!」

ゴンベエ「……ん?」

アリーシャ「だから、次回予告だ!ザクロスで終わりにスキットをして最後に次回を予告するアレだ!」

ゴンベエ「お前なに言い出してんだ?」

エレノア「成る程、そういう感じなのですね」

ゴンベエ「なにに納得してんだ。オレは納得できねえぞ」

ライフィセット「細かい事は気にしたらダメだよ……特に祭りの時は」

ゴンベエ「祭りって、お前……」

アイゼン「第4の壁を撃ち破っていると考えろ」

ベルベット「他所のザビーダとかと出会ったり、本編そっちのけでテーマパークや横浜に毎年行ったりしているアレよ」

ゴンベエ「横浜!?この世界、横浜ねえだろ!てかなに遊んでんだ!?」

ライフィセット「もっと具体的に言えば横浜アリーナ……驚く事かな?」

アリーシャ「驚くのも無理はない……スペシャルスキットに出ようにもゴンベエ(諏■部)は……天を掴みとれライダー、今こそ時は極まれりで」

ゴンベエ「おい、そのルビやめろ」

アイゼン「オレやベルベットの様にテイルズオブれる様になれよ、ゴンベエ(諏■部)……あーあー、ダオスコレダー!……この声であっていたっけ」

ゴンベエ「だからそのルビはやめろっつってんだろ……次回予告は何処行った?」

エレノア「何処に行ったと言えば、マギルゥとロクロウもいませんね」

ライフィセット「あ、あそこにいる。お~い」

ロクロウ「……ッチ……」

マギルゥ「ぷーんじゃ!」

ゴンベエ「お前等、なんでそんなに機嫌悪いんだよ」

アリーシャ「そんなに嫌悪感を出していては、次回予告が出来ないじゃないか」

ロクロウ「……お前等だけでやればいいだろ」

ゴンベエ「お前、なにすねてんだ?」

マギルゥ「別にぃ~、ワシ達が挨拶で出演したというのに出てるのが毎年お主達が祭りに出ているのを怒っているわけではない!!」

ロクロウ「ゴンベエ、お前はこっち側だ来い」

マギルゥ「毎年毎年呼ばれおって、ワシ達にもちっとはオファーせんかぁ!!」

アリーシャ「それを言うなら、私も──」

マギルゥ「シャーラーップ!!出てもおらんのに缶バッジを作られた小娘の戯れ言なんぞ聞かんわ!……ん?」

アリーシャ「呼ばれていない……スレイも、ミクリオ様も、二代目ライラ様も、ザビーダも、ほぼ毎年声がかかっているのに、エドナ様に至ってはメインを……私はっ、私は!!真の──うっ」

ロクロウ「そうか……そうだよな、お前も同じ、こっち側だ」

アリーシャ「エレノア……いいよね、貴女はちゃんと出演したんだから」

ゴンベエ「地獄兄弟みたいになりやがった!?」

マギルゥ「ワシ達の出番の為にも、先ずは手始めに一粒で二度美味しいザビーダを!」

アリーシャ「何れは真の主役であるゼ■スを……」

ライフィセット「ダメだよ、二人とも!そんな力ずくで奪うだなんて、未だに声がかからない人達は沢山居るんだよ!!」

ベルベット「一度出れただけでもありがたく思いなさい」

アイゼン「お前達2人が言っても説得力に欠ける」

エレノア「声がダオスに変わっている貴方もです……3人とも、落ち着いてください。特に貴女は来年、出番が」

アリーシャ「スレイのヒロインはミクリオ様だ!」

ゴンベエ「……次回、【目覚めよ、内なる魂】……こいつらは別のなにかに目覚めていやがる」

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