「ったく、無茶をしやがって」
エレノアとベルベット、双方が納得できる天族との繋がりを断ち切る答えを出したアリーシャ。
どうすれば良いかは分かったが、それをどうやってするかは出来ずに困ってたのでオカリナと目覚めの歌を教えたが限界を迎えた。
「う……あ……」
「ん、どうした?」
4人の対魔士達で一人だけ格好の違う一等対魔士から出てきた天族がなんか呟いてる。
凄くどうでもいいことだけど、出てきた天族達、服装が一緒だな。意思を抑制し統一している証ってか。規律と統制は大事だが意思まで奪っちゃ停滞するだけだぞ。
「う……あ……」
なにか言えよ。
「ゴンベエ、アメッカが吹いてた曲を吹いて」
「まだ足りねえ感じか」
「僕、分かるんだ……この状態、ベルベットに名前を呼んで貰う少し前の僕と同じだって」
シリアスな空気を醸し出してるが、オレ、お前とベルベットの出会いは知らねえぞ。
「コイツらもオレ達の様に強い意志がある。抑制された意志を解放すれば聖隷の方から契約を解除する事が出来るはずだ」
「……」
「どうした?」
「天族の方が力あんのに、なんで捕まってんだ?」
天族と契約云々をアリーシャは出来ないし必要ないとあんま気にしなかったが、なんで捕まってんだ?
手からハァ!と炎に水に風に岩を出すことが出来て天響術とかいう魔法的なのも出来る。アリーシャやあのババアみたいにある程度鍛えて実力があっても攻撃が届かねえと話にならねえ。剣とかで勝てなくても距離を開いて天響術でシバくだけで勝てる可能性がある。清浄な器は人じゃなくてもいい。現にアイゼンはコインを器にしていて、ウーノの奴も水を器にしてる。憑魔化するのは分かるが、捕まるのはおかしい。
シグレとかが普通に捕まえてんのか?いやでも、そういうのしなさそうだな。
「力があっても意志が抑制されては力を振るう事は出来ぬ」
「いやだから、聖寮……違うのか。エレノア、お前の同僚とかの器になってる天族ってどんな感じなんだ?」
「……ビエンフー以外は大体この様な感じでした」
「……アイゼン」
エレノアじゃ無理なので、天族の意見くれ。
「その辺りに関しては色々と分かってはいない。ただ3年前にあった降臨の日になにかがあったと言うのは確かだ」
「3年前……」
「降臨の日?」
「知らないのですか?」
残念だが、1003年前の事は知らない。
なんか数年前に色々とあって、ベルベットは心当たりがある様で思い出す。
「三年前、紅く染まる満月の日。
その日を境に人間が聖隷を視認出来るようになった……それから暫くして聖寮が出来た」
「……4年前まで聖隷を見ることは出来なかったわ。その頃は
憑魔になったから見えるようになったんじゃねえのか?ヘルダルフ、ライラ達認識してたぞ。
と言いたいが、アリーシャがこの時代に来て早々に肉眼で天族を見れる様になってるから、そうじゃねえんだろうな。
「三年前のあの日から人間全体でおかしくなった、力や器のある聖隷以外はおかしくなった」
「……とりあえず、起こすか」
ヘルダルフがクソザコに見えるぐらいヤベー相手に喧嘩を売ってるのは分かった。
アリーシャが握っていたオカリナを取り、目覚めのソナタを吹いて意識が覚醒しかけていた天族を叩き起こす。
「ここ、は……」
「起きたか」
「お前は……業魔!?」
仮面が割れて素顔を晒す天族。
アイゼンが声をかけると知っているのか驚いているのだが、ベルベットを見て直ぐに構える。
「待って!僕達は皆を目覚めさせたんだよ!」
「目覚めさせた……!」
「このままいけばベルベットに喰われていたかもしれん。アメッカに感謝するんじゃぞ~」
全力で恩を売りにいくスタイルだな。
気絶している対魔士達を見て、憤怒の表情を浮かびあげる天族。蹴り一発ぐらいなら見なかったことにするからとっとと蹴ろ……よし、蹴ったな。
「意志を解放してくれた事、感謝する」
「礼なら私達じゃなくて、アメッカに言いなさい」
「彼女が我等を……身を呈してまで、なんと感謝すればいいのか」
言えない、アリーシャ気絶してんの別件だと言えない。
意識を失っているアリーシャに感謝する4人の天族。意志を奪われていた事について憎んでいたのか、どさくさ紛れに何回か無理矢理従えていた対魔士達に蹴りをいれる。
「とっととどっかに行ってくれ、聖寮の力の源はお前達だ。お前達が力を貸さなければただ鍛え上げた人間達で終わる」
「お前達は、彼女はどうするつもりだ?」
「諸悪の根元をぶん殴る……はよいけ!」
お前等がどっかいかんとなんも出来ん。
アメッカの事を少し気にしながらも、この場から去る4人の天族。
「遅れちまったか」
入れ替わる形でロクロウがやってくる。
クロガネを素材にして出来た二本の短刀を手にして。
「準備は出来たな」
「ああ、コレでシグレを斬るだけだ」
「俺も見届ける」
おい、待たんかい。
「お前、アメッカの槍はどうした?」
後ろから登場するクロガネ。
自身の短刀で斬る様を見たいのは分からんでもないけど、最優先すべき仕事を放置すんなよ。
「ロクロウの方を優先する、だったら最後まで見させろ」
「最後までって」
「安心しろ、ここで斬れても斬れなくてもアメッカの槍を作ってやる」
ロクロウがシグレを斬って勝ってしまったら、成仏するとかしそうでこえーんだが。
「それに、問題はまだまだ山積みだ」
オレの手にメダルの破片を置くクロガネ……そうか。
「アメッカは大丈夫なのかえ?さっきからピクリともせんぞ?」
アリーシャの返事はない、ただの屍のようだ。
そんな皮肉が皮肉にならない程にピクリとも動かない。大きなダメージを受けたわけじゃねえから、ライフィセットの回復術に頼れない。アップルグミとか使っても、血を失ってるから鉄分とか豊富な物を食わせた方がいい。
絶対安静だが聖寮の対魔士達を放置して行かないといけないから、ここに寝かせる訳にもいかないので砂地とかで使うスピナーを出してその上に乗せる。
コマの様にグルグルと回転しているが、乗っているアリーシャは回転しない……ラブホのベッドとかって回転するとか誰か言ってたな。
「お前、それ背負ったままでやんのか?」
準備が出来たので向かおうと歩きだすが、ロクロウは號嵐影打ちを背負ったままだ。
そいつを弄くるのが嫌なのは分かるが、そいつを背負ったまま戦ったら邪魔になるだろう。
「號嵐・影打ちは俺が未熟者だったという証だ。そう易々と手放せん」
「今から未熟者じゃないって証明するんだろう。背負ったままにするんだったら、せめて使えるようにはしとけよ」
ジャックナイフぐらいの刃しかねえんだから、それこそ勿体無い
「影打ちってなに?」
「刀を作る時に同じ刀を複数作ってその内の1番良いものを真打、他を影打と言うんだ。
俺の一族は当主になった者に真打を、そうでない兄弟の者に影打の號嵐を渡すことになってる」
「偽物と本物ってこと?」
「……そうだな。シグレの剣が本物で、俺の剣が偽物かもしれん」
ライフィセットがポロっと言ったことに深く考えるロクロウ。
「優劣はあったとしても真偽は存在しねえだろ」
ロクロウはロクロウ、シグレはシグレ。
シグレは優れた使い手でシグレに劣る使い手がロクロウで偽物も本物は関係無い。
「世間はここまでやれただけでも凄い立派と言ったり、逆にもっとやれるだろうとなんもせずに見ているだけかもしれない。だが、挑戦者は挑戦者になった時点で欲しいものは称賛の言葉じゃない……1番であると言う事実、自分よりも優秀な奴に勝利した証のみ」
勝たなければ屑であり、ある程度勝つことにより世間は認める。勝てばある程度は正しくなる。
転生者になる際に綺麗な言葉で誤魔化すのでなく、取り敢えずは勝たなきゃなにもはじまらないと言われたのを思い出す。
「シグレが1番、俺が2番……俺が勝ってシグレが2番になるか、悪くはないな」
オレに言われた事が妙にしっくりと来ているロクロウ。
シグレもロクロウも兄弟だなとシンプルに考えれる二人が被る。言ったら、物凄く怒りそうだけど。
でも、あれだよな~ロクロウが折れたままの號嵐・影打ちを背負ったまま戦っても無理っぽいぞ。兄弟だから使っている剣術は同門みてえだから、二刀流の型もバレてる。もう一本剣を加えたりして……3刀流はシグレの方が似合うな。声的な意味でも。
「ベルベットにとっては、ライフィセットは真打ちなのか影打ちなのかどっちじゃろうな~」
「!」
「どういう意味です?」
「僕の名前はベルベットの弟の名前なんだ」
「えっ!?」
「僕はベルベットにとって本物なのかな?偽物なのかな?」
目元の辺りとか何処となくベルベットに似ているライフィセット。
姉弟に見えるかと言われれば見えんこともなく、ベルベットは時折ライフィセットを弟と重ねている時がある。ベルベットにとってライフィセットは
「偽物が本物に勝てない道理は無い」
「偽物は、偽物だから偽物なんだよ?」
「いいか、そもそもで世の中は大体偽りだらけなんだよ。スッピンじゃなくてあの手この手とメイクをしたりお洒落をしている、素じゃなくなってるんだ」
「その本物と偽物は断じて違います!そういうのは綺麗に見せる、綺麗になる努力と言うのです!」
「だが、世の中どう頑張っても綺麗に見せられないブサイクが存在している。そいつ等はあの手この手を尽くす。顔を弄くるのは勿論の事、子供を不幸にしない為にイケメンの血を取り入れたりする!」
「醜いアヒルの子と言うお話をご存知でしょうか!」
「カエルの子はカエルと言う諺を知っているか!大体、あれ、アヒルと思ったら白鳥の雛でしたってオチだろ。ブスの心が美しくて美人の性格最悪な純愛ラブストーリーの方がまだ説得力あんぞ!」
てか、あるんだな醜いアヒルの子。アレって、アンデルセンが作った話だろ?
「お主の思う真実とベルベットの思う真実、どちらが真打ちでどちらが影打ちか……って、聞いておらんか」
取り敢えず、アルトリウスがヤベー事をしている奴なだけは分かってるからその辺はあんま気にしない。
クロガネに入り組んでいる道を教えて貰いながら炭鉱を抜けると港だった。炭鉱と港が繋がっていたのか……。
「よう、き」
「デラックスボンバー!!」
港湾まで足を運ぶと立っていたシグレと対魔士二人
挨拶代わりにデラックスボンバーを撃つ、結構本気で撃つ。
「まだシグレ様が喋ってるじゃないですか!?」
「諦めろ、ゴンベエは復讐の憎悪を燃やしているベルベットを横にしてアルトリウスに一撃を与えるぐらいに卑劣だ」
取り敢えず、やる。
ヘルダルフに撃った時よりもちょっと強い威力で撃った……。
「おいおい、まだ喋ってんだろ?」
だよなー。
デラックスボンバーが直撃した対魔士2人はぶっ倒れてるが、シグレは上着が燃えて乳首が見えている以外は何事も無かったかの様に立っていた。ほんと、ヘルダルフより強いのばっかだな。
「それを言うならば、ワシ達の元に対魔士達が来おったぞ」
「そいつは悪ぃ。アイツ等じゃお前等では勝てないって忠告してやったんだけど、どうにも頭が固くてな」
どうせそんなオチだろうと思った。
「で、どんな刀を打ったんだ?」
やられた対魔士達には興味なく、ロクロウの新しい刀に興味津々なシグレ。
ロクロウは無言で構えると面白いと笑みを浮かべて號嵐を鞘から抜いた。
「やってみりゃ、わかるか」
それはそうとして、シグレの直ぐ側にいる猫、天族なんだな。
「ゴンベエ、手は出すなよ!」
「シグレよりも、あの対魔士達だ」
アリーシャが必死になって知恵と経験を振り絞って出したんだ。
威力こそ死ぬほど痛いがフルパワーで撃ってねえから意識を失ってるだけだ。
「簡単に終わっちまったらつまんねえ。手段は選ばなくていいぜ!!」
「っ、舐めるな!」
「だったら、お言葉に甘えさせてもらおうかしら!紅火刃!」
挑発的なシグレにキレるロクロウだが、チャンスとばかりに突っ込むベルベット。
それと同時にアイゼン達もシグレを狙いに行くのだが、オレはスピナーで横を通りすぎる。気絶している対魔士達と契約している天族の意識を起こさねえと。
「おいおい、お前も来いよ!」
「っ、お前の相手は俺だ、シグレ!!」
多対一でも優勢に戦っているシグレ。
無視しているオレに挑発してくるがオレは乗らず、眼中に無いとロクロウはキレる。
前と違って冷静さがあり、剣は荒々しいもののシグレと撃ち合う事が出来るものになっている。
「ほおう、中々良い刀じゃねえか」
「お前を斬る刀だ、拝んでおけ!」
「その威勢、最後まで続けよ」
余裕の笑みを溢さないシグレ。
人の事を言えた義理じゃねえけど、こいつどんだけ手を抜いてんだ?まだまだ本気じゃねえんだろ?
「瞬撃必倒!!」
撃ち合う事は出来ているが、決め手にかけており仕掛けてきたロクロウ。
「阿頼耶に果てよ!」
斬りに加えて蹴りを何度も何度も入れて斬りぬける
「嵐月流・翡翠!」
直ぐに往復して斬り込む。
シグレに当たったが、ちょっとの斬り傷しか出来ていない。致命傷になるもんじゃない……
「うっ……ヒロ、イン……」
「大丈夫か?」
出来れば宿で休ませたいが、シグレ達がどっか行ってくれねえと休ませる事が出来ねえ。
ロクロウにぶん殴られるの覚悟でシグレを殺るか?過去の時代だから、あんまそういうのやりたくねえんだけど。
「やりやがるなぁ!!」
「っ、全員避けろ!!」
ロクロウの攻撃を受けたシグレはちょっと本気を出しやがった。
「避ける必要はねえ、何処にいたって同じだからな!!」
目の前にロクロウはいるが、號嵐の制空権でないのにゆっくりと上げる。
「嵐月流・白鷺!!」
「ぐあああああ!!」
號嵐を力任せに振り下ろす。
無明斬りと同じく飛ぶ斬撃がロクロウを襲い、更にはなんか地面からエネルギーが出てくる。
「アリーシャの上にいてよかった……」
アリーシャが寝ているスピナーの上で、ネールの愛を発動。
これでオレだけでなくアリーシャもシグレの技から身を守ることが出来た。
ロクロウも短刀を重ねて×の字にして飛ぶ斬撃を受けきり、ダメージを軽減するがクロガネがクロガネで作った禍々しい短刀は見事なまでに折れてしまった。
「お前の腕は悪くはねえよ。だが、業魔になったってのに出来の良いランゲツ流じゃ当主である俺には敵わねえ」
「……だったら、見せてやるよ。俺の剣をな!!」
ロクロウは左手に持っていた刀を捨てて突撃する。
二刀流で戦っていても弄ばれていたところがあり、名刀と呼ばれる刀並みに切れ味のあるクロガネの短刀でも折れてしまっていてはただのナイフで、簡単に対処されて吹き飛ばされる。
既存の型通りにやっても勝てず、型を無くしても勝てない。
「ぐぉおおおお!!」
「おぉう!?」
ちょ、そういう感じでやるのか!?
正面に向けられた號嵐の先端部分に左手をぶっ刺して突き進む。剣の技術云々の捨て身の特攻は流石に予想外で、號嵐を使って戦うのならば號嵐を押さえれば良いと鍔の部分をガッチリと掴む。
「もらった!」
よっしゃ、殺れってベルベットとアイゼンが今がチャンスとばかりに走り出しやがった!
「なっ!?」
首を斬ろうとしたその瞬間、シグレは動く。
ロクロウの背負っていた折れた號嵐・影打ちを抜いて短刀を防いで
「勢っ!!」
ロクロウをベルベット達の元へ吹き飛ばす。
背負ってなければ、今の一撃で仕留めきれていたのに惜しい。
「はっは!それでいいんだよ、それでやりゃあ出来るじゃねえか!!
驚いたぜ、腕を捨てて首を狙いに来るとは。後、一瞬遅れてたら斬られてたわ」
ポイっと號嵐影打ちを投げ返すシグレ。
良いものを見せてくれたと満面の笑みを浮かべている……乳首が立ってるから絵にならねえな。
「よっし、今日はここまで!」
「なんじゃ見逃してくれるのか?」
「おう!いいか、てめえ等!もっとスゲえ刀を打って、もっと腕を磨いて、俺を斬りに来い!!」
「お前、そういう風に余裕ぶっこいてたら斬られんぞ?」
ゲーム序盤でよくある負けイベントで、本当なら主人公達を殺せるが面白い物を見せてくれたとか今日はこの辺でとか言って殺そうとしないシグレ。
こういうのってムカつく糞みたいなタイプなら物語中盤から終盤にかけて再会して秒殺されて、戦うのが好きなんだタイプは終盤に良い感じの見せ場をもらえる。シグレ、最後辺りに良い感じの見せ場をもらえるぞ。
「だったら、てめえが斬りに来いや。
その女がぶっ倒れちまってて、守るの優先してるから見逃してやったが、次は容赦はしねえぜ」
ぐうの音も出ねえ正論を言い返されちまったな。
「次は折られんじゃねえぞ、ロクロウ」
「……斬ってやるさ、何百回負けようが、何千回折られようが」
「はっはっはっは、いい顔だ。いい悪い顔だ……と、1つ言い忘れてたわ」
エレノアの事か?
「コンニャク、中々に強敵だったぜ」
マジで挑んだのか……刀で斬ったコンニャクなんてお腹壊すぞ。
「なんという人……」
ほんと、色々な意味でスゲエよ。あの男。
「他人の心配をするよりも、自分の心配をした方がいいわ。貴方の裏切りは聖寮中に伝わったわよ」
最後に猫型の天族がエレノアの状況を伝えると完全に去っていった……。
「一応、コイツら生きてんだけどな」
瀕死寸前だが、対魔士達は生きているのに連れて帰ろうとしなかった。
やっておいてなんだが可哀想だなと思いつつ目覚めのソナタを吹いて縛られていた天族を解放し、それとほぼ同時にアイフリード海賊団の船であるバンエルティア号が到着した……オレ達が来るの、ちょっとでも遅れたらベンウイック達はシグレにやられてたのか……危なかったな、おい。
スキット 姫が寝ている間に隙あらば
マギルゥ「のぅ、ゴンベエ」
ゴンベエ「なんだ?」
マギルゥ「お主、さらりとじゃがアメッカが吹いたオカリナを吹かんかったかの?」
ゴンベエ「吹いたが……ああ、そういうことか」
マギルゥ「やれやれ、気付いておらんかったのか」
ゴンベエ「ちゃんと後でうがい薬使ったりして嗽しろってことだろ。
アメッカの口の中は汚いどころか舐めても問題無さそうだが、オレは不摂生な生活をしているし、こんな旅だと不衛生になるからな」
マギルゥ「ちっがう!お主、アメッカと間接キッスをしておるじゃろ!」
ゴンベエ「……今さらかよ」
マギルゥ「確かに散々ベルベットのバリボーな肉体を堪能しておるから、アメッカでは満足出来んか」
ゴンベエ「いや、アイツ結構着痩せするタイプだしベルベットと方向性が違うし、太ももが売りだとノルミン達が言ってたぞ」
マギルゥ「確かに、アメッカの絶対領域は魔性じゃの」
エレノア「貴方達、本人を目の前にしてなんて会話をしているのです!」
マギルゥ「なーに、聞かれてなければなんの問題もない」
ゴンベエ「つっても、知人をエロの妄想に使うのには罪悪感はある。
やっぱ、こんな状況だし御時世だし、ベルベットもアメッカも綺麗な女性だけど口説くとか恋愛とかにうつつを抜かしてる暇なんてねえだろ……」
ベルベット「……服、買いに行くんでしょ?私、そういうのあんまり興味無かったりしてたから、選ぶの手伝いなさいよ」
ゴンベエ「お前、なに着ても似合うだろうが。現にその格好もなんだかんだで似合ってるぞ?」
ベルベット「……どういう意味でよ?」
ゴンベエ「言わなきゃダメなのか?」
ベルベット「当たり前じゃない。油断すれば直ぐに人の事を綺麗だなんだ言って、具体的にはどの辺とかちょっとは言ったらどうなの?ハッキリ言うけど、お世辞にしか聞こえないわよ」
ゴンベエ「でも、お前それ明らかに身ぐるみ剥がれた後か適当に有り合わせで着ている性能重視に近いだろ?」
ベルベット「それでもあんたにとっちゃこんなの着てる私も美女なんでしょ?」
ゴンベエ「……いや、当たり前だろ?」
ベルベット「……そう」
エレノア「あ、あの、お2人とも、そこまでで」
ベルベット「なんて言われて、誤魔化されると思った?言いなさい」
ゴンベエ「そうだな……ゴスロリっぽいと言うか、悪の女幹部的な感じで綺麗な女性のベルベットにセクシーさを与えている。だけど、ベルベットの内面をなんとなくレベルとは言え知っているオレからすればギャップが感じられる。姉力たっけーよ、おかん力もあんだろ」
ベルベット「誰がおかんよ……そういえば、あんたずっとその緑色の服よね?」
ゴンベエ「後、溶岩地帯で着る赤色と水辺で着る青色もあるぞ」
ベルベット「流石にて言うか前々から思ってたけど、ダサいわよ、その格好。あんた、無駄に顔はいいから余計に」
ゴンベエ「おい、無駄とはなんだ無駄とは」
ベルベット「そのまんまの意味よ。女一人引っ掻ける事が出来てるんだから、他の女に目移りしないの」
ゴンベエ「いや、アメッカとはそういう関係じゃねえからな」
マギルゥ「アメッカ、早く起きるんじゃ!!このままだと、糖尿病になってしまう!!」
ゴンベエ「歳なんだろ……次回、番外編