テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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準備よりも終わった後の方が大変

「……」

 

 予想以上に時間は食ってしまったものの、遂に目的地に向かって船は走り出した。

 ベルベット達は船の上でなにかしているがオレはそんな事をしている暇はなく、ベンウィック達に無理を言って取り寄せて貰った鉱石の種類分けだったり、ペニシリンの製作をしている。

 

「こんなカビが薬だなんて、到底信じ難いな」

 

 ペニシリンの薬効反応をロクロウの刀を作るためについてきたクロガネがオレの手の事もあるので手伝ってくれている。もっと正確に言えば頑丈に出来ている特別な船の上と言えども炎なんぞ出せばなにが起きるかは分からないから、船を出してる間は刀を作るのは出来れば勘弁してくれとベンウィック達、アイフリード海賊団からNG出された。

 

「いや、じいさん、カビが生えたチーズがこの世にはあってだな、これがまた絶品なんだよ。カビの生えたチーズが食えるんなら、食えるカビの薬もあるんじゃねえの?」

 

 後、二足歩行のワニの憑魔も。

 名前はダイル。色々とやってたらこうなったとかどうとかであり、その辺はベルベット達と出会う前に終わっている。

 

「お前等、知ってるか?世の中にはウジ虫入りのチーズもあるんだぞ」

 

「うげ、そいつ美味いのか?」

 

「確実に体は壊すな」

 

 海外じゃ食用の虫とか当たり前云々だが、流石にオレも食いたくはない。

 ペニシリンを確認しつつ談笑をしていると、入口がノックされてアイゼンが入ってくる。

 

「ゴンベエ、お前、色々と物を作れるそうだが薬を作れるか?」

 

「今、まさに薬を作ってる最中だ……効果はあるか検査していないが」

 

 今はまず、ペニシリンの元となる芋の煮汁とかで培養したカビを油なり酸性水なり蒸留水なりなんなりと入れて混ぜる。

 そうしてペニシリンのみを抽出しないとこれだとただの青カビで、薬じゃなくて毒。体にいれたら死んでしまう。

 

「この薬は、壊賊病に効く薬か?」

 

「おいおい、マジかよ」

 

 病名を聞いて驚くダイルだがオレはピンと来ない。

 転生特典を使ってみるものの引っ掛からないとなれば、この世界特有の病気だ。

 

「恐らくはペニシリンは効かないが、なんだその病気は?」

 

「原因不明の高熱を出して数日後には死ぬ病気だよ。

大昔に四海を制覇した大海賊団がいたんだが、これにかかっちまって全滅した事から壊賊病なんだよ!」

 

「壊血病じゃねえのか?」

 

 壊賊病で引っ掛からないが、別のものでは引っかかる。

 このバンエルティア号はどんな海でも制覇出来る通常の船とは異なる構造らしいが、電気でもオイルでも動いていない帆船でアイゼンが術で出した氷を使って冷やす昭和や大正初期の冷蔵室の様な物はあるにはあるが小さい。後、アイゼンの酒が多い。

 船旅をする以上は潮風に当てられて食材が痛むのが早かったりするから香辛料につけたりして保存が効きやすくしているが、それが出来ない食材は多数あり冷蔵室に入らなかったら買っていない。

 

「聖隷を天族と呼ぶ様にお前達の国ではそう呼んでいるのか?」

 

「症状は?」

 

「原因不明の発熱だ」

 

「……むしろ原因が分かるのか?」

 

 微生物の概念がある癖にウイルスの概念が無かったりする、なんともまぁあやふやな世界。

 抗生物質とかそういうのが無い世界で、ウイルスとか細菌を知ったのも元の世界でも1900年の近代。明治に入る前の勝海舟とか西郷隆盛とかが活動していた1860年代でもその概念が無い。

 

「だから、原因不明なんだ……お前なら分かるのか?」

 

「病気は大体、2つのパターンだ。1つは病気の原因を体内に取り込むこと。もう1つは体が弱くなって起きる病気」

 

 糖尿病とかの成人病は健康に気を付けた食生活をすれば、糖質やプリン体を分解とかしにくい体でない限りは若い内はならない。健康に気をつけて色々とやっても歳食って臓器が弱まってしまって体のバランスが悪くなったら、無駄に終わる。

 

「壊血病は後者に当てはまる。アスコルピン酸を含む食材を長い間食ってないと体調を崩す」

 

「アスコルピン酸?」

 

「ビタミンC……レモンや蜜柑なんかの柑橘類とか野菜に多く含まれる成分だ。

長期に渡る航海では食べられる食材に限りがある。野菜や果物なんかは長期に渡る航海には向いていない……腐った蜜柑が1つでもあれば連鎖的に物が腐ると言うだろ」

 

 金八先生でなんかそんな事を言ってた。

 

「確かに長期に渡る航海では食べる物は限られる。だが、ここ最近はアイフリードを探す為に船を停めている事が多い。健康を気にした食事をしているとは言えないが、野菜や果物は口にはしている筈だ。恐らくは、別の病気だ」

 

 だろうな。

 オレのこの転生特典では壊血病で発熱するとは出てこない。

 

「改めて聞く。この薬で壊賊病は治るか?」

 

「不健康が原因で起きる病気なら効かねえ……第一、まだ実験段階のレベルでその薬は安定しねえ」

 

「そんな不安定な薬を使うよりも、さっさとサレトーマの絞り汁を飲ませようぜ。クソマジいが、飲めば一発だ」

 

「……薬、あるんかい!」

 

 物凄くシリアスな空気が流れてて、話の内容からして誰かが発症したんだろうが特効薬があるんかい!

 なんだったんだよ、このペニシリンのくだりは!

 

「あるにはあるが、この船には無い。進路を変えてレニード港に行けば、手に入るが万が一と言うことがあるからな」

 

「あ~そうだな」

 

 天族の加護が逆に働いているのか不幸を呼び寄せるアイゼン。

 もしかすれば薬が底をついているということもありうるし、死んでしまう病だから治すなら早いに越したことは無い。

 

「レニード港に進路を変えるとして、ゴンベエ、1つ確認したい事がある?」

 

「なんだ?この前の異世界についてか?」

 

「あんな影の薄そうな男と頭がぶつぶつの男が異世界云々言われても信じられるか」

 

 バッカ、お前、仏はともかく黛さんはマジでやべえ人なんだよ。

 あの人、究極のハズレと言われるFGOの世界に転生して唯一生き残った精神力の化け物なんだよ。逆レされるエロゲ的展開になってばっかやけど。

 

「お前は業魔か?それとも人間か?」

 

「お前、その辺気にするタイプだっけか?」

 

「気に入れば種族なんぞ関係無い、ただの確認だ。壊賊病は聖隷や業魔にはかからない人間にだけかかる病気だ。お前は色々と謎めいている部分が多いから、ハッキリとしておかねえとなにがあるか分からん。」

 

 確かにそれはハッキリとしておかねえとな。

 ダイルが憑魔で良かったと小さくガッツポーズをしているのに若干だが苛立ちながらもオレは近くに置いているマスターソードを手に取る。

 

「主にマスターソード(コイツ)で境界線を弄くってる。だから、今は人間だ」

 

 デクナッツとかゾーラとかゴロンはそういう見た目の生物で憑魔じゃない。ただ、狼と鬼神は憑魔になる。

 大体はオカリナとマスターソードで境界線を操っている。分かりやすく言えばベルベットの左腕、常時でなく必要な時のみ変化させるのと同じみたいなもの。

 

「だったら、今から業魔になれ」

 

「お前、サラッと恐ろしい事を言うよな」

 

「お前だから言っているんだ。コレは原因不明の未知の病気、例え対魔士でもかかる。治す薬があるからと言って油断は出来ない」

 

 不治の病ではないが死の病であることには変わりない。

 その事を釘指すのでオレは部屋から出て、外にいるアリーシャ達を探す。アイゼンには悪いが、優先順位は決まっている。症状なんざ関係ねえ。

 

「……どうやら今のところは無事の様だな」

 

「ベンウィック、進路の変更だ」

 

 ライフィセットとベンウィックと談笑しているアリーシャは元気そうだ。

 だが、それはまだ本格的に発症していないだけかもしれないから出来ることは色々とやらないといけない。

 

「なにかあったの?」

 

「詳しい話はアイゼンから、オレはオレでやることがある」

 

 治すのが1秒でも早い方が良いのならば看病も1秒でも早い方が良い。オレはアメッカを抱える。

 

「ゴンベエ、ど、どうしたんだ!?」

 

「説明はアイゼンかベンウィック辺りから聞けっつっただろう」

 

 突然の事に慌てるアリーシャ。

 説明をしている暇はあるかもしれないが、取りあえずは寝かせると誰もいない船内の一室に連れていく。

 

「ゴンベエが今までの貸した分を返せと言うのならば、その……」

 

「お前はなにを言ってるんだ、さっさと寝ろ」

 

「きゃっ!」

 

 可愛らしい声を出して覚悟を決めた女の顔をしてもオレは知らん。

 オレは床に布を敷いて簡易的な布団を作りアリーシャを寝かせて、もう一度船の上に戻る。

 

「お主、大胆じゃ──」

 

「次はお前だ」

 

「ぬぅお!?こ、これぇい!!離さんか!?」

 

 アリーシャが終わったので今度はマギルゥを抱える。

 オレをおちょくるつもりだったろうが、予想外の事に驚き暴れるがオレの力には勝てずに連れていかれるマギルゥ。

 

「お主、ベルベットだけに留まらずワシまで、ワシは高いぞ?」

 

「そんなボケを噛ましてる場合じゃねえだろう」

 

 マギルゥを連れていこうと船の上に戻った時、ベンウィック達は慌てて進路を変えようとしていた。

 ということは壊賊病について聞いている筈だろう。ボケて言い場合じゃねえ。

 

「アルコールがあるから、両手を拭いとけよ」

 

「マギルゥまで……いったいなにがあったんだ?」

 

「マギルゥから聞け」

 

「事態は一刻を争うのは分かるが、丸投げしすぎではないか?」

 

「口を動かすことはお前にでも出来る」

 

 マギルゥが来たことに驚き、冷静になるアリーシャ。

 船の上だから密もクソもあるかとオレは説明をせずにそのまま船の上に戻る。

 

「おお、そういえばお前はどうなんだ?」

 

「オレは憑魔と人間の境界線を弄くれるから、後で憑魔になっておく」

 

 3度目となる船の上では壊賊病について話をしており、オレを見たロクロウは首を傾げる。

 さっきのアイゼンと同じ事を聞いているのが丸分かりなので、ざっくりと説明をするとエレノアは驚く。

 

「業魔と人間の境界線を弄くれる……貴方は狼人間の業魔ではないのですか?」

 

「お前、そんな風に見ていたのか……お前もだ」

 

「え、ちょっと!!離してください!!歩けますから!!」

 

「歩かなくていい」

 

 三度目となれば馴れた。エレノアを抱っこして部屋に連れていく。

 

「あの、私もですが3人とも壊賊病にはなっていません。確かに船の上は逃げ場の無い場所で、どうあがいても感染は免れませんがまだ元気です!」

 

「病気が流行ってる時は感染予防が大事に決まってんだろうが!」

 

 まだ元気だからセーフで調子こいてたら酷い目に遭う。

 昔、インフルエンザが流行した時に学級どころか学年、学校閉鎖が起きたりしたんだぞ。オレは普通にピンピンしてたけど。

 

「お前等は、取りあえずは、寝転んで安静にしろ!」

 

 エレノアを部屋に連れていき、色々と言いたそうな3人をこの一言で黙らせる。

 マギルゥは然程気にしていないが、エレノアとアリーシャはビクりと引いているがコレでもまだ優しい方。麻酔と言ってぶん殴って気絶させてないんだからな。

 

「アルコールで手を洗わせるとして、なにを」

 

「ゴンベエ」

 

 ライフィセット?

 なにをするか考えていると部屋にライフィセットが入ってきた。

 

「聖隷は絶対に感染しないってアイゼンが言ってたんだ。僕に手伝えることはあるかな?」

 

「でしたら、ボクもお手伝いするでフよ!壊賊病なんかでマギルゥ姐さんを死なせるわけにはいかないでフ!」

 

「お前等……」

 

 ぶっちゃければ船の手伝いをしてほしいんだけどな、オレ、4人まで分身出来るし。

 エレノアを心配するライフィセットとマギルゥの中から出てきたビエンフーにそんな事は言えない。

 

「ライフィセット、私はまだ」

 

「ダメだよ。今はまだかもしれないけど、もしかしたら急に、それこそ海みたいにドバッと来るかもしれないんだよ……器とか、そんなの関係無く、エレノアに死んでほしくはないよ……」

 

「……ありがとうございます」

 

 おねショタか?おねショタのはじまりか?

 なんだか甘酸っぱいものを見せられてしまい、むず痒い。エレノアも嬉しいのか頬を真っ赤にしている。

 

「症状は出てないが、何時出るかは分からない。

原因が不明で一応の特効薬はあるみてえだから、発症しても安静に出来る様に今の内にリズムとかなにやるかとか決めるぞ」

 

「特効薬があるのは幸いだが、薬を作っていなかったか?」

 

「原因不明だから無理だ」

 

 抗生物質はあくまでも菌をどうのこうのするもの。

 不健康が原因でなる成人病の類いは薬も大事かもしれないが生活面の改善が必要だ。

 

「お主なら、壊賊病の原因を解明出来るんではないかの?」

 

「……出来ないことは無いが、お前等死ぬぞ?」

 

「死ぬって、なにをするつもりですか!?」

 

「医術の進歩は死ぬか生きるかの何億回の挑戦なんだよ」

 

 エレノア達に壊賊病になってもらい、血液を採取してぶんぶん独楽を使って遠心分離し、血液になんらかの異常が無いかを確認するところからスタートし、血の中に原因が見つかれば、それを培養したりして色んな薬品を試す。

 血の中になにもなければ色々なところから調べねえとダメで、解剖も普通にある。更に言えば、抗体が出来ているかどうかの確認も必要で、失敗しては挑戦するの無限ループの世界だ。

 

「なに、安心しろ。料理と同じで失敗=経験になる」

 

「いや、失敗=死じゃろうが」

 

「特効薬がある以上は余計なことはしねえよ」

 

 第一、道具が船には無い。

 知識と顕微鏡があれば見てなにか分かるだけで、その後に色々としなければならない事とかが出来ない。

 特効薬がある以上はそれを使うにこしたことはないとビエンフーはマギルゥ、ライフィセットはエレノア、オレはアリーシャのマンツーマンで準備をする。

 つっても、エレノアが言うように症状は出てねえから備えたりするぐらいだな。

 

「どうした?」

 

 色々と備える為に部屋の扉を開くとベルベットが立っていた。

 

「何時までも来ないから、こっちから来たのよ」

 

「そうか……悪ぃ」

 

 ベルベットに呆れられたせいで、少しだけ頭が冷える。

 ヤバい状況だからこそちゃんとしとかねえといけない、医療の現場とか特に報連相が重要だ。

 

「死人が出る奇病なんでしょ?あんたが作ってた薬も効かないのなら、慌てるぐらいは普通よ」

 

「とはいえ、色々と無視してて……アイゼンには謝らないと」

 

 色々と丸投げしちまったからな。

 

「……アイゼンに?」

 

 ペニシリンを使っても効かない病気で特効薬はある。

 それを手に入れる為に今、進路を変えようとしているがこの船は帆船。進路を変えるには帆を弄くったりしなければならず、プロとも言える海賊達は何名か倒れている。あての無い航海でなく目的地が決まっているから発症していない奴等で進路変更をすればいいが、発症していない動ける3名を問答無用で寝かせている。

 猫の手も借りたい状況だろうが、病気なのに無茶して起きる損害の方がひどくなるんは目に見える。

 

「船を預かる身として指揮を取っているアイゼンには悪いが、オレ達は居ない扱いだ。後で謝らねえと」

 

「……そう」

 

 アイゼンに悪いと思っていると不機嫌になるベルベット。

 

「ライフィセット達を待たせてるから、じゃ」

 

「待って……あの子になにをさせるつもり?」

 

「もう口で言うのもアレだから、ついてこい」

 

 ここにベルベットが来たのはナイスタイミングだ。

 背後に刺さる視線を気にせずにベルベットを連れ、何時もの一室に戻る。ライフィセットとビエンフーは既にいた……部屋に置いている物を興味津々に見ていた。

 

「お前等、触れてねえだろうな?」

 

「触ってないよ……ただ、見たことない物が沢山あるからなにに使うのだろうって?」

 

 無害な物からヤバい物まで一応は置いているからやめてくれよ。

 

「ベルベットも来たんデフか?」

 

「来いって言われたのよ……それよりも、なにをしてるの?」

 

「エレノアの看病だよ。ゴンベエだけだと3人纏めては無理でしょ。だから、僕は手伝おうかなって」

 

「っ!……問題ないわ。コイツ、3人ぐらいに分身出来たはずよ」

 

 エレノアの看病だと分かると明らかに苛立つベルベット。

 当然と言うべきか、オレに余計な火の粉がふりかかる。フォーソードで数を増やしてもいいけど、それは上の人手が足りない時用にしておきたいんだよな。

 

「ライフィセットがやりたいって言ってんだし、やらせてやれよ」

 

「あんたは黙ってなさい」

 

「何時もならば黙るが今は嫌だ……病気は出来ねえ」

 

 この世界、四面楚歌とか川柳とか人の名前や状況が語源になってる言葉が異世界なのに一部が何故か通じたりしていて、電気や蒸気機関による文明が無いだけである程度はしっかりしている……だが、病気は違う。

 

 風邪をひいた? あ、じゃあ病院に行って診断して処方箋もらって薬局で貰った薬を飲んで寝とけ。

 

 それが現代、それが地球、それが日本。

 でも、ここはそうはいかねえ。

 

 風邪をひいた?……死か……

 

 とかも、ふっつーにありえる。ありえるじゃない、普通にある。

 レディレイクが国の首都で物流が安定してたりしたが、ちょっと小さな村に行けば田舎と都会との格差があるとか言うレベルじゃねえんだよ。

 

「とにかく、アホな事をするなら真面目な事をするぞ」

 

「ぼく達はなにをすればいいんでフか?薬の調合ならマギルゥ姐さんの方が得意でフよ」

 

 だから、薬が効かねえから進路を変えてんだよ。

 

「コイツを混ぜるだけだ」

 

 蒸留水と3つの粉を取り出す。

 おい、こら。ヤバい液体とヤバい粉かもと引くんじゃない。塩とクエン酸と砂糖でなんも問題ない食えるもんだ。

 取りあえずは手本にと秤を使う。ひとつまみとかなんとなくの感覚でやってもええんやけど、ライフィセット達もするから、感覚じゃなくて理論でいかんと。

 

「はい、完成」

 

「え、もう!?」

 

 量った粉を蒸留水とガーッとかき混ぜて、終わり。コレで終わり。

 

「……なんなの、これ?」

 

 余りにもあっさりとし過ぎているせいで、ピンと来ないベルベット。

 

「ん」

 

 口でああだこうだ言うよりも飲めば色々とわかる。

 オレはスプーンを取り出して、ベルベットに近付ける。

 

「……レモネードみたいなのじゃない」

 

 飲めと言っていると分かったベルベットはスプーンを口に入れ、素直な感想を言う。

 

「レモネードは知らんけど……それっぽい味になってるな」

 

 ベルベットの感想だと若干分からんから、一応は飲む。

 あくまでもアリーシャに飲ませる物だから味見で良いとスプーンで一啜り。アクエリとは似ているが違う、ポカリっぽい味がする。

 

「ジュースを作ってたの?」

 

 ペロリとライフィセットも味見をして首を傾げる。

 ……スポドリってジュースのジャンルなんかな……。

 

「原因は知らんが、壊賊病の症状は高熱。

うちの国では熱を出した時は薬に加えてコレをもっと上手く作った物を飲んだりしている。熱を出せば体から水分を奪われて、脱水症状になる。水を飲めばと思うが水分以外にも色々と体から失ってて」

 

「水分と水分以外を補給する為にコレを飲めばいいんだね」

 

 そういうことだ。

 今作ったのはアメッカに飲ませる分なのでエレノアとマギルゥの分はお前等がやれ。

 コーラばっかり作っていた自分がまさかのスポドリを作るとは少し思いながら、他にもぶっ倒れてる奴等の分も作る。ぬるいから若干凍らせてみるか?いや、それよりも若干濃いめに作って氷を入れた方がいいかもな。

 

「ベルベット、上の奴等も何時ぶっ倒れるか分からないから持ってけ」

 

 人手が足りない分、普段以上に働いているだろう。

 そうなったら普段以上に汗をかいたりして、そこで壊賊病でぶっ倒れて寿命縮まったなんてのもありえるかもしれない。

 完成したポカリ擬きをベルベットに渡すと不機嫌そうな顔で見つめる……。

 

「お前、なんでそんなに機嫌悪いんだよ?いやまぁ、確かに出鼻挫かれまくりだけどよ」

 

 ずっと苛立ちっぱなしのベルベット。

 ライフィセットの事とかあったとしても苛立つ要素が多々あり、本来の目的地に中々に迎えず順調とは程遠い。

 けど、その辺はこの前物凄く殴られた時にある程度は落ち着きだったり余裕が出来たのに……。

 

「……別に」

 

「いや、別にでそんな不機嫌です。早くご機嫌を取りなさいよオーラを出さないだろう」

 

「はぁ?なんであんたなんかにご機嫌を取らせてあげるのよ!」

 

 逆ギレ気味のベルベットは扉を蹴って開けて出ていく……。

 

「お前、いっぺん死んだ方がイイでフよ!」

 

「なんでだよ?オレ、なんもしてねえぞ」

 

 例によって乳を揉んだりしてねえ。

 セクハラな事もしていないし、なんか苛立つ事もしていない。一方的にあいつが怒ってるだけだろう。

 

「なにもしてないのが問題なんでフ!」

 

「…………いや、待て。おかしいだろう。その段階はおかしい」

 

 呼んでいないのにベルベットは部屋の前に立っていた。

 あいつは憑魔になってしまった人間で壊賊病にはかからねえとアイゼンからの説明があったはずだ。エレノアやマギルゥを連れていったから、流れで私もと思ってたのか?いや、ねえだろう。

 でも、思い返せばアイゼンに謝るとかベルベットを特に気にしていない様にも聞こえる発言で物凄く苛立っていたな……おかしくねえか?こう、心の距離感が一気に飛躍してる。アリーシャの時と同じぐらいにだ。

 

「おかしいもなにも、既に一気に飛んだことしてるでフよ!」

 

「ねぇ、なんの話をしてるの?」

 

「ライフィセット、まだ聞くな……」

 

 アリーシャですら一緒の布団で留まっているのに、ベルベットはもう色々と次元が違う。

 揉んだり見たり、口づけしたりと本当に色々としていて……いや、違う。

 

「確かにベルベットはアリーシャに負けず劣らず、むしろおっぱいや女子力は10:0の割合で勝ってる出来た女性だ。

だが、この前耳を噛られた時にしつこく言われたように、あくまでもその場限りの関係。知らなければならない事とかを色々と知ったら家に帰らないといけない」

 

 そうしたら前と似たような生活……そういえば

 

「ライフィセット、氷を貰えないかしら?冷たくないから飲みにくいって言うのよ」

 

「あ、うん」

 

「……」

 

「なによ?」

 

 戻ってきたベルベット、ライフィセットに氷を作ってもらい袋に入れる。

 明らかにオレを無視しているなと無言で見ていると視線に気付いたのか睨まれる。

 

「氷を入れると味が薄くなる。本来の味とは程遠いから、こっちを冷やすから持ってけ」

 

 味的に言えばポカリじゃなくてポストニックな感じで、水を入れれば美味しくなくなる。

 既に出来ている分を凍らない程度にアイスロッドを使って冷やしてベルベットに渡すと強く睨まれる。

 

「コレ、アメッカの分でしょ?」

 

 そんな細かいことを気にすんなよ。

 そう言うとぶん殴られるんだろうとオレはもう一度、いや、二度ポカリ擬きを作る。アリーシャの分と同じ様に冷やす。

 

「なんで2つなのよ?」

 

「1つはお前の分だ」

 

 ベンウィック達の分とお前の分じゃ明らかに量が違うだろう。

 少ない量の分が自分用だと分かるとマジマジと見るベルベット。呆れた顔でオレを見る。

 

「壊賊病は人間にしか掛からないわよ……私が掛かってるのは業魔病よ」

 

「……そういえばさ」

 

「なに?」

 

「アルトリウスを殺したら、その後はどうすんだ?」

 

 ここは過去の時代、でもオレ達にとっては今。だが、何れは元の時代に戻って過去の出来事となる。あんま気にしたりしちゃいけねえが気にはなる。復讐の憎悪は燃やし続けているが、その目的を達成したらどうするのやら。

 

「……先の事なんて考えてないわ。アイツを殺せるならどうなったっていいのよ」

 

 ベルベットにとってはその辺りはどうでもいい。殺すことに己の全てをかけているので、寿命と引き換えに殺せるならば喜んで殺す……。

 

「ライフィセット、ベルベットの事、好きか?」

 

「きゅ、急にどうしたの!?」

 

 ベルベットが完全に去っていった姿を見て色々と思うところがあり、ライフィセットに質問をする。

 ライフィセットは思春期の少年の様な反応をして顔を真っ赤にしてポカリ擬きを落としそうになるので素早くキャッチ。

 

「女性的な意味合いで好きかどうか聞いてねえよ。人間として好きかどうかだ」

 

 聞いてんの天族だけども。

 

「ベルベットのこと……好きだよ。

ベルベットは怒りっぽくて怖いところは多い。けど、それと同じぐらい優しくて暖かい。怒りっぽいけど、本当は怒っているのが辛い。色んな顔があってまるで海みたいだけど、僕は好き」

 

「ライフィセット……そこまで言わんくてもええのに」

 

 イエスかノーで答えれば良いのに、わざわざどういうところがとか色々と言ってくれる。

 ライフィセットがベルベットと一緒にいる理由は仕方なくとか利害の一致云々じゃないのは分かってるし、そこまで言わんくてもエエんやで……にしても、海か。

 海の気候は変わりやすい様にベルベットもコロコロと変わっているな。

 

「ゴンベエが言わせたんでしょ!?」

 

「まぁ、そうだな……ライフィセット、1つ頼みたいことがある」

 

「ゴンベエが僕に頼みたいこと?」

 

「アルトリウスをぶっ殺した後、ベルベットと一緒に居てくれ」

 

 アイゼン達とベルベットは仲が良いが、あくまでもそれだけで友達とかそんなんじゃねえ。

 利害が一致していて話が通じているから一緒で、なんかやらかそうとしているアルトリウスをぶっ殺せば全てがそこで終わる。そうなれば解散!で解散する。アイゼンは居なくなった船長と一緒に冒険に出て、ロクロウは斬り甲斐のある相手を探し、マギルゥは……分からん。けど、そう易々とくたばりそうにないな。

 

「ベルベットと一緒に……どうして頼むの?」

 

 オレの言っている事にイマイチ、ピンと来ないライフィセット。

 自分にとってベルベットと一緒なのは当たり前ってか。

 

「あいつ、殺った後はどうなるか分かんねえんだよ」

 

 アルトリウスを殺った後、その後は分からねえ。

 ベルベットはボコボコにされても諦めずにいる。今も尚、復讐に燃えているがそれが終わった後はどうするか?そこだけが心に残る。転生前は将来に特に夢も希望も持たずになぁなぁで生きていたから、目的を果たして脱け殻になったベルベットを想像すると凄く嫌な気持ちになる。

 復讐鬼になったんじゃなくて、なってしまったんだから……。

 

「オレの言っている事がよく分からなくてもいい。ただ、殺った後もベルベットの側に居てくれ」

 

「……うん、分かった」

 

 出来ればオレの言っている事がよく分からないままでいてほしい。




スキット 愛に触れなきゃ祟られない

ロクロウ「おお、良いタイミングだな。こっちも進路変更を終えたとこだ」

ベルベット「……どれくらいで着くの?」

アイゼン「このまま順調に行けば、レニード港に直ぐに辿り着く。港にさえつけば薬は簡単に手に入る」

ベンウィック「壊賊病になった時は副長の呪いだけど、天気まで荒れなくてよかったよ……ところでその持ってんのって?」

ベルベット「さっきのを冷やしたやつよ。あんた達の分だから適当に飲みなさい」

アイゼン「さっきのやつは中途半端にぬるかったからな…ング…冷えてたら結構いけるな」

ベンウィック「副長、それオレ達の分!」

ロクロウ「そうケチケチすんなよ、無くなったらゴンベエに作って貰えば良いんだし」

ベンウィック「そういう問題じゃない……あ、そうだ。あいつ等はどうだ?壊賊病になってないか?」

ベルベット「……問題無いんじゃないの、アイツが側に居るし」

ロクロウ「……なんで不機嫌なんだ?」

ベンウィック「さっき見てただろうが、3人が問答無用で連れていかれたの。3人とも女だったから自分も来るって期待を」

ベルベット「壊賊病とは別の熱で苦しみたいの?」

ベンウィック「ぬぅおあ!?船の上で炎はダメだろう!」

ロクロウ「ハッハッハ、触らぬベルベットに祟りなしだぞベンウィック」

アイゼン「今のベルベットは鬼よりも恐ろしい」

ベルベット「あんたら……暫くはお酒は禁止よ」



スキット 愛に触れたら祟られる


ベルベット「そういえば、あいつの手の怪我、治ってたかしら」

アイゼン「ゴンベエの手ならまだ全然だ」

ベルベット「治ってないの?」

アイゼン「治ろうとはしているが、お前達の武器を作るには数千度の熱では足りなかったからな。怪我の度合いが普通の火傷とは比べ物にならない」

ベルベット「……」

アイゼン「船は順調にレニード港に向かっている。戦うことは出来ても海に関しては素人が一人減った程度でなにも出来なくなるほどうちは柔な海賊じゃない」


移動中


ベルベット「……あいつの手がああなったのは、私に原因がある。ただそれだけよ……」

ビエンフー「なにぶつぶつ言ってるんでフか?」

ベルベット「っ!あんた、何時の間に」

ビエンフー「何時の間にもなにも、僕はマギルゥ姐さんの看病をしているんでフから、ここに戻ってきてもおかしくは」

マギルゥ「ビエンフー、とっととプリンを持ってこーい」

ビエンフー「あ、はいでフ……そこに突っ立ってると邪魔でフから入るなら入ってください」

ベルベット「はいはい……ゴンベ──」

エレノア「あの、別にそんな事をしなくても良いのですよ?」

ライフィセット「ダメだよ!自分で平気だって思ってても、もしかしたらもう掛かってるかもしれないんだから。ほら、口を開けて」

アリーシャ「エレノア、ここはライフィセットの好きにやらせてはどうだろう?」

マギルゥ「そうじゃぞ。坊は必死になってお前を看病しようとしておるんじゃから好意は無駄には出来んじゃろう?それとも何だかんだで敵の施しは受けんと突っぱねるのかえ?」

ゴンベエ「切るんだったらバッサリと施しは受けません!(キッ)って言ってやれよyou!」

エレノア「う……あ、あ~ん」

ライフィセット「……変な味しない?」

エレノア「甘くて美味しいですよ」

アリーシャ「……ゴンベエ」

ゴンベエ「はいはい、口を開けろ。あーん」

アリーシャ「あ~ん……ん……ベルベット、どうかしたのか?」

ベルベット「……なにしてんの?」

マギルゥ「見て分からんのか、看病をされとるんじゃよ。
人の事をいきなり病人扱いしたのは気に食わんが、コレはコレで悪くはない」

ベルベット「あんたには聞いてないわよ、エレノア、ゴンベエ、なにをしてるの?」

エレノア「なにをと言われましても、この甘い飲み物を飲ませて貰っているだけです」

ゴンベエ「スプーン使ってアメッカに飲ませてるんだよ」

ベルベット「っ……」

アリーシャ「ベルベット、そんな嫉妬の眼差しを向けないでくれ。
私達も出来ればベンウィック達を手伝いたいが、問答無用でゴンベエがこの部屋に居ろと言われているんだ」

ゴンベエ「特効薬が存在しているとはいえ、手元にはない。
海のプロとも言うべきアイフリード海賊団だってあっさりとなっちまった。もしかするとなんの段階もなくいきなり高熱でぶっ倒れる事もありうるんだ。後、倒れた後に自分はなにをすれば良いか分からねえ状態だとダメだろう……」

マギルゥ「そういうことじゃ。いや~ワシ達も死にたくないし、レニード港に行く手伝いをしたいのは山々じゃが何時ぶっ倒れるかわからんからの~ま、ベルベットには関係ない話じゃ」

ビエンフー「マギルゥ姐さん、プリン持ってきました!!」

ベルベット「……け……」

ゴンベエ「ん?」

ベルベット「全員元気で口を動かす暇があるなら、とっとと働きなさい!!」

ゴンベエ「おまっ、なんだよ急に!」

ベルベット「あんた達は、そんなにピンピン、元気なら、とっとと、表に出ろ!!」

アリーシャ「そんな……」

ベルベット「そんなじゃないでしょ、そんなじゃ!!あんた明らかにこの状況に楽しんでるでしょ!」

アリーシャ「馬鹿を言うな!命が掛かっているんだぞ!大体、なんでベルベットがそこまで怒る!」

ベルベット「っ、それは……とにかく、全員出ろ!私達が薬を買いに行かないとダメなのよ」

マギルゥ「やれやれ魔女使いが荒いの……しかし、面白いものが見れたから、それでチャラとしてやるか」

エレノア「面白いものですか?ベルベットとアメッカが言い争っているだけに見えますが」

マギルゥ「カーッ!若いの!のう、ゴンベエ」

ゴンベエ「おい、オレに話を回すんじゃねえ」

マギルゥ「お主が諸悪の根元じゃろ?」

ゴンベエ「……」

ライフィセット「なんでゴンベエが悪いの?」
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