「そういえば、結局分からずじまいのままだ」
「なにがだ?」
ザビーダ様の後を追うかの様にロウライネを目指すが、1つだけ分かっていない事があるのを思い出す。
「どうしてザビーダが狙われているかだ」
ザビーダ様を聖寮が狙っている。
どうして?沢山の天族を捕らえていて、それを使役しているにしてもザビーダ様だけをピンポイントに狙うのはおかしい。ザビーダ様がなにか特別な天族なのかと言われても思い当たる伏は無い。
「……狙いはあいつじゃなく、あいつの持つ武器の可能性がある」
「武器……」
ジークフリートという不思議な武器を用いて、パワーアップをするザビーダ様。
ゴンベエはなにやら似たような物をしっているが、それを持っているのは現代でもザビーダ様だけで、天族の方々も不思議な武器だと言っていた。
「あれはアイフリードのお気に入りの1つで、異大陸で見つかった物だ。
大昔の滅んだ文明の技術で出来た物の様で、どんなものなのか詳しくは教えなかったが、次にオレと戦う時の切り札になると笑っていた」
「……待て」
「なんだ?」
「アイフリードはアイゼンと戦えるのか?」
サラリと語っているが、それはとんでもない事だ。
「あいつは3年前の開門の日よりも前からオレを見ることの出来た人間で、オレとやりあえる」
「……天族の力を借りずにか?」
「海賊に手を貸す聖隷なんて、オレぐらいだ」
天族と真正面から戦える人間が居るだなんて……。
「業魔が対魔士にしか倒せないと勘違いされがちだが、聖隷の器となることにより、パワーアップをしているがそれでも元の力が強くないとたかがしれている。アイフリードが一際強いというだけで、やろうと思えばお前もある程度の業魔と渡り合える筈だ」
……果たして、今の私に戦うことが出来るのだろうか。
「とにかく、ザビーダ自身が特別でないと聖寮の目的はアレだろう。お前達は異大陸の出身だが、アレについてなにか知らないのか?」
「私は特には……私の国はこの国と大して変わらない文明だ。
ゴンベエはそことはまた違う大陸の国の住人で、異世界に関しても色々と知っている様だからなにか分かるかもしれない」
本当は遥か未来から来たのだが、言うわけにもいかない。
上手く誤魔化しながら、ゴンベエに意識を向けるとゴンベエは懐に手を入れてなにかを探していた。
「何処だっけな」
「なにをしている?」
「ちょっと探し物……それよりどうかしたか?」
「ザビーダの使っていたアレについてだ。
自分に向けていた時、エレノア達は驚いていたがお前は動じていない……アレがなにか知っているのか?」
「類似している物は知っている。1つはアレと似た見た目で大砲を小型化させた物で、それは簡単に人を殺す事の出来る戦争の歴史を変える武器だ。うちの国はそれを大量生産することに成功させた」
「戦争の歴史を変える!?」
「あいつは自分に向かって撃っていた。それとは異なる物だ」
「本で見たんだよ、後悔している人間に撃ち込む事により火事場の馬鹿力を発揮することが出来る特殊なのもあるって」
「だから、驚かなかったのか……」
「まぁ、他にも色々とあるが……なんでそんな事を聞くんだ?」
「聖寮がザビーダを捕まえようとしているのは、ザビーダでなくあの武器が目的だからじゃないかと」
「……なんでアレがいるんだ?」
ゴンベエのその一言に私とアイゼンは答えれない。
確かにアレが天族をパワーアップさせる特殊な道具だとしても、それを欲する理由が分からない。
既に聖寮の力は国の中枢にまで及んでおり、スレイとは異なり国から全面的にバックアップを受けることができ、戦える人間が1人じゃない。先日ロクロウが戦ったシグレの圧倒的な強さを見ればこれ以上パワーアップをしてなんの意味があるかわからないし、ヘルダルフの様な災禍の顕主に対抗するためでは無さそうだ。
エレノアがロウライネについて教えてくれがが、対魔士として鍛える訓練所だが一人一人に合った鍛え方をしていて、聖寮は軍隊の様に少佐から中佐に昇格するシステムがない事を言っていた。上を目指すというものでもない。
「……ホント、なんも分かってねえな」
聖寮はなにかをしようとしており、その為に必要な事や物の準備が順調で、なにをしようとしているのかも理解していて私達はなにも知らない。後手に周り続けていて、罠でしかない場所に足を踏み入れなければならない。
「それを知るために船を出したんでしょ……寄り道ばかりだけど」
「寄り道ばかりだが、それが時には良い方向に進むこともある。
ロウライネにアイフリードが本当に居るならば、どうして拐われたのかなにがあったのかが知れる。居ないならば、オレ達を嵌めようとしているジジイの口を割ればいい」
「割れればいいがのぅ」
急がば回れを本当に体験しているんだな、私達は。改めて過去に起きた現代に繋がる出来事は壮大だ。
「警備がおらぬとは、罠丸出しじゃの」
「こっちが罠を警戒するのが折り込み済みなんでしょ……その上で、どんな手を打ってくるか」
前へと進み、ロウライネへと辿り着くが警備らしい警備は1人も居なかった。
罠が待ち構えているのは覚悟はしていたが、まさかここまで堂々としているとは……。
「慢心、いや、違うか」
自分達の力に過信し過ぎていて慢心していると思ったが、それは違う。これは自信だ。
エレノアが私達の足取りを伝えさえすれば何百もの対魔士をその場に向かわせる事が出来る。それどころか、バンエルティアが商船と扱い港に停泊していることを突きつければ港に止めることは出来なくなる。
罠を仕掛けているにせよ、油断しすぎとも思える警備0のこのロウライネは聖寮の自信と強さを表している……。
「ゴンベエ、このまま進んでもいいのだろうか?」
「十中八九ザビーダ用の罠でアイフリードは居ないだろうな。けど、進んでも無駄って言って止まると思うか?」
残っている一や二にアイゼンやザビーダ様は賭ける。
それは分かっているが、今回ここにいるのはこの前会ったシグレと同格の対魔士。ロクロウを相手に余裕を見せつけており、仮にベルベット達が加わっても負けるビジョンが見えなかった相手。
その大雑把な性格か、見逃したが今回の相手はそうはいかず、真正面から戦わずに罠に嵌められて終わる可能性も出てくる。相手が何段階も格上となれば、急いでいても慎重にならなければ。
「でもまぁ、罠に掛かるのはまずい。
シグレみたいに戦いでどうこう出来る相手ならまだしも、今回の敵の目的は戦いじゃない。勝利条件が異なっていて戦わなくても勝利が出来る相手の罠だらけであろう本陣に突撃しないといけねえ」
「……なにかあるのか?」
「こういう物があるぞ」
アイゼンの問いかけに答えると何処からか深い青色の導火線の着いた鉄球をって
「爆弾じゃないか!?」
「逆に聞くが、こんなザ・爆弾な見た目をしていて爆弾じゃねえつったらなんだよ」
如何にもな、それこそ絵本にでも出てきそうな形の爆弾をこれでもかと取り出すゴンベエ。
いったいこんな物を何処に仕舞っていたんだ。いや、それよりもだ
「これを使って、なにをするつもりだ……」
とんでもない事をするつもりだろう?
「んなもん決まってんだろ、相手の根城をボカンだ。相手がどんだけ罠を仕掛けようともぶっ壊せば怖くない!!なに、こんだけデカい塔だ、一番下の支えをぶっ壊せば連鎖的に崩壊する」
「ゴンベエ、流石にそれはまずい!」
「ふざけるな。万が一アイフリードが本物だったらどうする!」
「お前、なんの為のレイズデッドだ?」
「……根に持っているか」
「そこそこな。このまま普通に行けば嫌なオチが待ち構えてるんだぞ?」
嫌なオチ?いったいなにが待ち受けているんだ?
「アメッカ、アイフリードが居るとするならばどの辺りにいると思う?」
「それは……頂上じゃないか?」
牢獄の様な場所に閉じ込めていたら、罠にはならない。
ある程度は広々としていげ罠が仕掛けやすい場所となると入り組んでいる内部よりも頂上が最適だろう。この大きさでこの高さの塔ならば跳んで逃げるといった事も不可能だ。
「そう、大体の奴は頂上を思いつく。
上を目指すのは勿論でこんな構造だから嫌でも目指してしまう……そして頂上にはアイフリードがいる」
「……それの何処が嫌なオチなの?」
「ライフィセット、忘れたのか?相手は待ち構えているんだ。そこにいるアイフリードは偽物で隠し部屋的なのにアイフリードが捕らえられている。
このまま特に深くは考えずにザビーダに先を越されてたまるかと頂上にダッシュで向かったとして、そこにいるのは偽のアイフリードでなんらかの罠に引っ掛かる、或いは手こずっていると……ザビーダが横から現れて助けてくれるどころか本物のアイフリードを連れている……目を閉じて想像してみろ」
…………ダメだ。
ゴンベエの言っている事が簡単に想像できてしまう、罠に嵌まる展開からザビーダ様が颯爽と助けるシーンまで。お前達が囮になってくれたお陰で探せたわと言ってる姿が浮かぶ。それどころか、これが正しいのではないのかと訴えかけている自分が居る。
「っく、このままアイツの噛ませ犬になれと言うのか!」
アイゼンも想像できたようで、噛ませ犬の様な役割に腹をたてる。
「小説ではその様な事が定番ですが、ありえません!このロウライネに隠し部屋の様なものはありませんし、対魔士達が訓練をする為の場所ですので爆弾で壊れる作りではございません!!」
「エレノア……そんなにベラベラと言って大丈夫なのか?」
私達の感情にカッとなっているのは分かるが中の情報をベラベラと喋って、一応はスパイ状態なのだろう。
「あ、いえ……貴方達が物騒な会話をしているので忠告したまでです!」
素で口が滑ったのか。
「爆弾が無理なら、魔法で壊すしかねえか……うーっし、退いて一ヶ所に固まってろお前達」
「……罠だとしても潔く中に入りませんか?」
「嫌に決まってんだろ。
入口手前でぐだぐだやってんのに、対魔士1人出てこねえんだぞ。頂上に罠があるんだったら、向こうからやってこさせる。この辺りには罠はねえからな」
そういうとゴンベエは塔の外壁をコンコンと軽く叩く。
何処を破壊すれば良いのか、塔の形から計算して割り出しており、最適な場所を見つけると右手に冷気を、左手に炎を出した。レンガは炎に強く、凍らせるにしてもレンガは無機物で効果は0だぞ。
「極大消滅呪文を──あっちゃ!?」
引火した!?
ゴンベエの左手から出ている炎が左手に巻き付けている包帯に引火し、煙をあげる。
ライフィセットが直ぐに水の天響術で鎮火をしてくれたので、大事にならずにすんだ。
「エレノアの言うように潔く中に入って登ろう。確かに噛ませ犬の様な役をするかもしれないが、人命には変えられない」
「……っち」
ゴンベエは舌打ちをしたものの、渋々承諾したようで塔を破壊することをやめて中に入った。
私達も後を追い、中に入るのだがそこには沢山の対魔士達が待ち構えていた……とは、ならなかった。
アイフリードについて聖寮の人間であるエレノアが知らない事が多々あり、聖寮からそれ以上は知るなと調べる事も禁じられている事から、ザビーダ様を捕まえるのは限られた面々にのみ伝えられており情報を秘匿にしているというところか。
情報を知らされた対魔士達はついさっきの駐屯地の様な場所にいた対魔士達で、ここにいるのは特等対魔士のメルキオルだけ……考えようによってはチャンス、と言えない。
「アイフリード……」
頂上に居るものだと思っていたが思ったよりも複雑な構造で坂を上ったり下ったりを繰り返し、塔の文字通り真ん中にやって来た。マトリョーシカ?と言う何処かの国の伝統工芸品の様に塔の中にまた小さな塔があり、そこは日の光が当たる場所で、十字架に吊るされた海賊が居た。
「あれが海賊アイフリード」
「あれが……」
ライフィセットが言うようにアゴヒゲが特徴的で、左目に傷のある海賊の男性。
あれが後世にまで名を残した海賊の船長……だが
「ここにも人が居ない……アイゼン、明らかに罠だ!」
何処からどう見ても罠でしかない。
天響術の様なもので作動する罠が仕掛けられているに違いない。
「新入りか?……随分と、変なのが増えたな」
「変なので悪かったな……アメッカの言うとおり、明らかに罠だ。だから、そのアイフリードが偽物の可能性もある」
アイフリードへと近付くのを止めようとゴンベエは虫眼鏡を投げる……!
「メルキオルは幻術のプロだ。ここに入る時にベルベットが言っていたが、こっちが罠を警戒しているのも折り込み済みだ。メルキオルは幻術のプロ。ならこっちは幻術に惑わされない様にしよう。そう思わせる可能性がある」
「……!……成る程な」
「それでも進まないといけないなら虫眼鏡で観察しておけ。本物そっくりにメイクをしていて、幻術じゃないから本物だと思わせる可能性がある。術で服を燃やして黒子とか誤魔化せない部分を探してみろよ」
虫眼鏡を手に取り、ゴンベエの言いたい事を理解したアイゼン。
天響術を撃つ為の準備に入る……やはり、罠か。
「粉砕しやがれ、ストーンエッジ!」
アイゼンはゴンベエに言われた通り術を使った。だが、それ以外はゴンベエの言っていた事とは大きく異なっていた。
使った術はアルトリウスにも使った名前からして地の天響術だと分かるもので、効果は地面から岩が飛び出るもの。アイフリードの服を破ることは出来ても燃やす事は出来ない術で、それをアイフリードに当てなかった。
私達とアイゼン達の間の少し右側に向かって、ストーンエッジを使った。
「っぐ!」
「メルキオル様!?」
なにもないところに撃った筈なのに、水が刺激を受けて波紋を起こすかの様に空中が渦巻き現れるあの時にいた片眼鏡の老人。私達の事を見ていると思っていたが、まさかこんな直ぐ近くに隠れていたとは。
「何故、儂がここにいると……」
「こいつのお陰だ」
「おい、言うんじゃねえよ」
音も姿も気配も感じなかったメルキオルを見つけれたのは、ゴンベエの投げた虫眼鏡……まことのメガネのお陰だ。
私は天族と視認し対話をする為に用いているが、本来は幻で隠された物等を見つけ出すもので文字通り真のみを映し出す。メルキオルが特殊な術で姿を隠していても見ることは出来た。
「アイフリードが消えた……最初から居なかったのか」
アイゼンやザビーダ様を嵌める為の罠だったか。
「言え、アイフリードの居場所を!!お前等聖寮の目的を!」
「アイフリードか……あいつは中々の強者だった。
開門以前に聖隷を認識するだけでなく、己の中で区別をつけており穢れを産み出さない……今となっては人質にすらならんがな」
「てめえ!!」
いったいアイフリードになにをしたんだ!?
アイゼンは怒りに身を任せてメルキオルに向かって拳を振りかざすが、メルキオルは瞬時に姿を消して避ける。だが、無駄だ!
「何処に姿を消そうが、こいつがあれば逃すことはない!」
アイゼンの手にはまことのメガネがある。
ここで逃せば何時メルキオルと対峙するか分からず、ここにはアルトリウス達がいない。このチャンスを逃してはならない。
「な!?」
このチャンスを逃してはいけないと思っているとアイゼンの背後に突如として現れる幻。
メルキオルが幻術を使い、さっきまで居たアイフリードが幻で直ぐ様消えた為にアレも幻だと分かっている……そう、分かっている。それでもメルキオルの幻術があまりにも本物とそっくりで私は驚いてしまう。
「性懲りもなく、幻だと分かればっ!?」
「……そうか、そういうことか」
振り向き、その幻を見たアイゼンも固まる。ゴンベエは納得をする。
「……エドナ、様……」
そこにいたのは、1000年後の遥か未来で出会った地の天族、エドナ様が立っていた。
1000年前となんら変わらぬ姿……この時代にはザビーダ様は居る。エドナ様が居ても別におかしな事はなにもないが、天族を無理矢理使役する組織がある為に頭に不安が過る。
それと同時にアイゼンが驚いている事に頭の中でなにかが訴えかけている……アイゼンが驚いている理由、アイゼンもまた天族ならば1000年先の時代まで生きていてもおかしくはなく、エドナ様と知り合いでもおかしくはないがなにかが引っ掛かる。
『「ア…メ…ッカ…」』
「……あの時の、ドラゴン」
ゴンベエも私もアイゼンの声を何処かで聞いたことがあった。
何処で聞いたことがあるのか思い出せず、互いに交友関係がそこまで広くない為に思い出せないのならば、声がそっくりな誰かと出会ったのだろうと片付けていたが違う。
アレは……そう、エドナ様のお兄様……レイフォルクにいたドラゴンがほんの一瞬だが意識を取り戻した際に聞こえた声と同じ、更に言えば、音を残すレコードと言うものから聞こえる声と似ている。
「いったい、なにが、なにがあったと言うのだ……」
アイゼンがエドナ様のお兄様なら、より一層に謎が深まる。
私達が遥か未来でエドナ様と出会う事を予見してゴンベエに発明品の素材を残していたとしても、あのレコード。最後まで内容は聞いていないが、私達になにかを託そうとしていて、誰かに伝えたい言葉があった。
この旅はまだまだ続くのは分かっているが、それでもなにかを残さなければならないのかと、それほどまでの出来事がこれから待ち構えているのか……。
スキット 幸せが1番の復讐
ゴンベエ「人の気配は感じねえ……やっぱぶっ壊した方がよかったか」
アリーシャ「あの時、なにをしようとしていたんだ?炎と氷の魔法を使おうとしていたが、この塔はレンガで出来ていて耐熱性は抜群だぞ」
ゴンベエ「大魔導士の極大消滅呪文、メドローアだ」
アリーシャ「メドローア?」
ゴンベエ「燃やす力と凍らせる力はプラスかマイナスかの違いで、同じ力だ。
同じレベルのプラスの力とマイナスの力を合わせて0の力である光の矢を作り出して、放つ技だ」
アリーシャ「0の力、数学上は0は存在するが物理的には無いのでは?」
ゴンベエ「それが生まれるんだよ。オリハルコンだろうがなんだろうが問答無用で消す0のエネルギーが。この塔は爆弾で爆破しても頑丈だが、ただ頑丈なだけならメドローアで破壊は出来る……筈だったんだけど、まさか引火するとは」
アリーシャ「手は大丈夫なのか?その……私達の武器を作るために怪我を」
ゴンベエ「ゆっくりと治ってってるから問題ねえよ」
アリーシャ「……包帯が、焦げたままじゃないか。手にこの様な物を巻いていたら、治るのも遅くなる。私のリボンを」
ベルベット「包帯、出来たわよ。片手だからこれぐらい有れば足りるでしょ」
ゴンベエ「おー、サンキュー」
アリーシャ「ちょうど良かった。今、ゴンベエの包帯を代えるところだったんだ」
ベルベット「包帯を変えるところって、なにか代わりになる物があるの?」
アリーシャ「髪を束ねているリボンを」
ベルベット「……どっちもどっちもね」
アリーシャ「なにがだ?」
ベルベット「気にしないで。それよりも、早く包帯を代えるわよ」
ゴンベエ「足とかなら自力でどうにか出来るが手だからな、頼むわ」
アリーシャ「待て。ここは私が」
ベルベット「私がした方が良いのよ。万が一、足りなかったら補充する事が出来るから」
アリーシャ「……補充?そういえば、さっき出来たと言っていたが」
ゴンベエ「言ってなかったか?この包帯、ベルベットの左腕の包帯だぞ」
アリーシャ「な!?」
ベルベット「なに驚いてるのよ、こんな所じゃ薬屋もなにも無いでしょ。
左腕を変えたら包帯は完全に消し飛ぶけど元に戻したらどんな時でも絶対に包帯が巻かれた状態に戻るわ。それを利用して作ったのよ」
ゴンベエ「お前のその包帯のシステムって、どうなってんだろうな?」
ベルベット「私が聞きたいぐらいよ」
アリーシャ「……私のリボンを使おう」
ゴンベエ「なんでだよ?リボンはそう使わねえだろ」
アリーシャ「既に使用済みの包帯を使うのは、不衛生で汚い!」
ベルベット「ちょっと、汚くは無いわよ!」
アリーシャ「だが、使用済みには変わりはない!」
ベルベット「そりゃそうなるわ。巻かれているのを使っているんだから」
アリーシャ「なら私のリボンを」
ベルベット「明らかに足りないわ。私のは嫌でも使用済みだけど、ほら、新品同様よ。大体、あんたのだって毎日つけてて汗が染み込んでるんだから、どちらにせよ使用済みでしょ。いや、むしろあんたの方が汚いわ」
ゴンベエ「どっちも新品以上の価値があるから、どっちも巻いてくれ」
アリーシャ「……いきなりぶちこむのはやめてくれないか?」
ゴンベエ「もうなんかオチが見えてるからな……どっちも使えるだけありがたいし」
アリーシャ「そういうのじゃなくて……その……」
ベルベット「私にコイツが取られると思ってるの?」
アリーシャ「っ、ち、違う!私は本当に汚いと思ってだな」
ベルベット「はいはい……私はコイツに対してそういうのは無いわ。あくまでも下僕よ」
ゴンベエ「安心しろ、オレもそういうのは無いようにしている……てか、ダメだろう。オレ達的には」
アリーシャ「そう、だな……何れは元の時間に戻らねばならない」
ベルベット「私は愛だの恋だの、そんなのにうつつを抜かしてる暇なんて無いのよ。アルトリウスさえ殺せれば……」
ゴンベエ「……終わった後はどうするんだ」
ベルベット「……後の事なんかどうだって良いわ」
ゴンベエ「そうか……じゃあ、オレから一言。幸せになれよ、ベルベット……ある意味、それが1番の復讐になるからな」
ベルベット「……世界を救おうとする導師を殺した化物を好きになる物好きは居ないわ」
ゴンベエ「例え導師を殺しても、お前は化物じゃねえ。何度も言わせんなよ。
お前は本当は優しいけど、その優しさを表に出せないぐらいに無茶苦茶にされた被害者だろ」
ベルベット「っ……アメッカ、あんたがゴンベエに包帯を巻きなさい。足りなくなったら補充をするわ」
アリーシャ「わかった」
ベルベット「なんなのよ、あいつ……本当に、調子が狂うわ」
アリーシャ「……次回、過去の希望と絶望の未来……ゴンベエ、ここでの出来事は」
ゴンベエ「あくまでも知るのが目的だ……結末がどうあれな」