「!?」
目覚めると見知った天井を私は見ていた。
最初は事態が理解できずにいたが、ゆっくりと意識が戻り知っている場所だと分かると意識が完全に目覚めた。
「私は確か」
天族が見える不思議な青年ゴンベエ。
磁石を作るから近隣で一番高い山は何処かと聞かれて、レイフォルクを教えてどうやって磁石を作るか気になりついていった。その結果、山頂に鉄の棒をくくりつけた槍を刺して雷を落とし、とてつもない磁石を作った。
「そうだ、あの後はドラゴンに遭遇して」
「アリーシャ様!」
覚えている事を全て思い出すと、メイドの一人が部屋に入ってきた。
ドラゴンに遭遇して危険だと撤退したが、逃げきれずに戦うことになり、最終的にはゴンベエが追い払った。
その後は…分からない。ドラゴンがいた間は呼吸が上手く行かずに苦しく、それでもと無理をしていたが追い払ったら気が抜けて気絶したのか。
「大丈夫ですか!?御身体に異常はございませんか!?」
「大丈夫だ」
そして目覚めると自分の部屋のベッドにいた。私の事を心配してくれるメイドに腕を回して体の何処にも異常はないと見せる。
本当に何処にも違和感は無い、しいて言うならば昨日の登山の疲れが残っているぐらいで怪我らしい怪我は感じない。
「よかった」
「心配してくれて、ありがとう…ところで、ゴンベエは?」
私が此処にいると言うことはゴンベエが此処まで運んできてくれた。
出会った時もそうだが、迷惑をかけたり面倒な事を起こしてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「ゴンベエ…ああ、あのワンちゃんですね!」
「ワンちゃん?」
「はい、夜中に屋敷の前で犬が頻りに吠えていて何事だと覗くとアリーシャ様を背負っていて…」
「犬…今、その犬は何処に?」
「少し待ってください、今連れて…ああ、待っていたのですね!お利口ですね!」
「バウ!」
ワンちゃんがなにかと気になると、呼びに行こうとする。だが、ドアを開くとそのワンちゃんが…犬と言うよりは狼に近い生物がドアの向こうに座っていた。
「ゴンベエの狼?」
白、黒、茶色の三毛猫ならぬ白、黒、緑の不思議で独特な体毛の狼。
ゴンベエがこの街にやって来た日に街の入口付近で眠っていた狼で、ゴンベエが背負っていた剣と盾を背負っている。
「クゥーン…」
「私は大丈夫だ、何処も怪我をしていない」
心配する鳴き声を出す狼に心配するなと言い、頭を撫でようとすると肉球で手を弾かれた。
「………あ、あの狼しか居なかったのか?」
「あ、はい」
「…他には、誰も居なかったのか?」
「居ませんでしたが…真夜中で見えない所もありましたので、もしかすると…」
狼だけで姿が見当たらないゴンベエ。
屋敷の場所を教えていないが、此処に私が寝ていると言うことは見つけ出した筈だ…昨日、私を置いて逃げろと言ったのにゴンベエは逃げなかった。理由は私を見捨てたら打ち首や国外追放されると言う理由だ。王族や王位継承権があるなんて一言も言っていないが、地位のある人間だとゴンベエは気付いていた
「……ゴンベエに伝えてくれないか?」
もしかすると、ゴンベエは遠い何処かに逃げたのかもしれない。だが、そこまでしなくていい。レイフォルクに行く際についていくと自分で決めたのだから、怪我をしたのも自分の責任だ。
「そこまで気にしなくて良い、そんな事にはならないし、絶対にしないと」
「…」
言葉が通じるかは分からないが、名も知らない狼に頼む。すると、私の言葉が通じたのか狼は器用に前足でドアを開いて出ていった。
「アリーシャ様、ゴンベエとは?」
「えっと……?」
ゴンベエの事を尋ねられたので、答えようとするが答えられない。
今思えば、ゴンベエは何者だろう?天族の存在を見抜く不思議な虫眼鏡、光の矢、闇と光の斬撃を飛ばす剣、珍しい物を持っているだけでなく、鉄棒に雷を当てると強力な磁石になることも知っている。
独特な名前に聞いたことの無い国からして、このグリンウッド大陸とは違う海を越えた遥か先にある異大陸の住人……天族の信仰を捨てた国の住人。
「……あの狼の飼い主だ」
ゴンベエをどういう人物か説明することは出来ず、一先ずの説明をした。
何時か私に何者なのかを教えてほしい、そう願った。
「……あの狼が出ていったと言うことは、追いかければゴンベエの家が分かる?」
だが、よくよく考えればと止まる。この街には住んでいない、かといって何処かの街に住んでいると言っていないゴンベエ。
そもそも彼は何処に住んでいるんだろうと疑問を持ち、さっきの狼についていけばどちらにせよゴンベエに会えるんじゃないのかと、迷惑をかけたのは私でゴンベエがこちらに出向くのは間違いだと立ち上がる。
「いけません、アリーシャ様!まだ、休んでいなくては」
「すまない…でも、行かなければならない!」
私の身を心配してくれるのは嬉しいけど、行かないと…。
ゴンベエはこの街の住人じゃない、出会った日に門の前にあの狼はいた。余計な道は行かずに、街の入口に先回りをすればあの狼に追い付くことが出来る!
「アリーシャ」
「ゴンベエ!!」
「五月蝿い」
全速力で街の入口に向かうと狼はいない。だが、代わりにポケットに手を入れたゴンベエがいた。
「す、すまない」
狼はいない。ゴンベエがいたことに喜んだが怒らせてしまった。
よく見るとゴンベエは寝不足なのか目元に隈がある。
「お前が一人で此処に来たと言う事は、オレの打ち首や国外追放は無さそうだな」
「そこまでの事はしない…私が意識を失いさえしなければ、こうならなかった…本当に申し訳ない」
「謝るぐらいなら、少し時間を貸せ…行くのは嫌だが、聞くのが一番手っ取り早い」
「?」
頭を下げるが、意識を失った事に関してはコレで終わりとするゴンベエは歩きだす。
時間を貸せと言うのは、なにかを手伝ってくれと言う意味なのかと街の外でなく、中に戻ると竹を注文した市場…でなく、湖の乙女であるライラ様が祀られている聖堂へと向かう。
「おお、これはこれは!お待ちしておりました!」
「別にオレはお前に用件なんてねえよ」
聖堂へ出向くと、神父の一人がゴンベエに待っていたと喜びながら近付くがゴンベエは威圧をする。
此処に来てほしいとライラ様や司祭達が見つけたら連れてくる様にとなり、私が頼んだ際には行かなかった…が、今は来た。
「ささっ、此方の奥の部屋に…アリーシャ姫、案内御苦労様です」
「待ってくれ、私は」
私がゴンベエを連れてきたと思った神父は、ゴンベエだけを連れていこうとするが、違う。此処にはゴンベエの意思でやって来て、私が連れてきたわけじゃない。
「私達はこの御方を見かけたのなら聖堂へと連れてきて欲しいと頼みました。それでもう結構です」
「お前がもう結構だよ」
「あいた!?」
私の方を向いていた神父の背中に蹴りをいれるゴンベエ。
さっき私に対して向けた怒りよりも強く怒っており、何処か苛立っている。
「な、なにをしますか!」
「オレは別に導師でもなんでもねえつってんだろ。あんましつこいと、しまいにはアリーシャと八百長試合して導師=雑魚のイメージダウンか、聖剣を根本から叩きおって花咲か爺さんよろしく枯れ木にばらまくか、海の底に捨てんぞ…もしくは乳首焙るぞ」
ボォオオオっと手のひらから炎を出すゴンベエ。
言葉遣いが荒い彼の姿は皆が待っている導師のそれとはかけ離れており、炎を見た神父は立ち上がる事も出来ないでいる。
「アリーシャはオレが連れてきた…まともに相手すんのはアリーシャぐらいだ。お前等が私腹肥やそうが好きにしても構わねえが、オレを利用するのは許さん、失せろ」
「ひぃい!!」
神父は立ち上がると逃げるように去っていった。
ゴンベエから放たれる威圧感に耐えられず、炎を見て圧倒されていた人達も声をかけるにかけれない。
「ゴンベエ、あんな言い方はよくない」
「自分を邪魔者扱いしてくる奴に情けをかけるとは、優しいな。言っとくが、オレはお前ほど善人じゃねえ…街の人間やお前が人質に取られようが躊躇いなく見捨てるぞ……つーか、神父に嫌われたり、あんな扱いされるってなに?なんかやらかしたの?」
「……」
私自身、特になにかをしでかした記憶はない。しいてあげるならば、あの神父は…いや、神父の裏には恐らく内務大臣のバルトロがいる。私の事が気にくわず、ローランス帝国に戦争をすることを勧めている…なんてゴンベエには言えない。
「まぁ、いい。私腹を肥やす馬鹿は何処にもいる…オレはそんな事をしに来たんじゃねえ…おい、おっさん。どっか部屋借りて良いか?」
「え、ええ…何をなさるのですか?」
「…なんでも鑑定団…ちょ、色々と話があるからお前も来い」
ブルーノ司祭に一室を借りると、なにも無い所に声をかけるゴンベエ。
「そこにライラ様が…は!」
私の目にはなにも見えないが、声を出すと言うことはそこにライラ様がいる。
姿を見ることも聞くことも出来ず、なにを言っているのだろうかと気になると思い出す。
「まことのメガネがあれば!」
天族であるエドナ様の声が聞こえるだけでなく、姿がハッキリと見える虫眼鏡。
アレならばライラ様の姿も声もハッキリと見えて聞こえると出そうとするが何処にも見つからない。
「ゴンベエ、まことのメガネを」
「さて、問題です…まことのメガネは最後、なにに使用したでしょうか?」
天族が見れる不思議な虫眼鏡は貴重だ。
見つからないのはゴンベエがレイフォルクを降りる際に回収していたと、ゴンベエにもう一度借りようとすると袋を取り出す。最後にまことのメガネを使ったとき?
確か、磁石が出来て下山しようとした途端に不快な空気を感じて、それは気のせいかまことのメガネの影響かなにかと一度手放してみるも、なにもなく…それどころか、裸眼でドラゴンを見てしまい……
「あ!!」
「…」
ゴンベエは袋を渡してくれた。
受け取った私は直ぐに理解した、持っている感じが明らかにまことのメガネじゃない。試しに振ってみるとジャラジャラと音が鳴り、恐る恐る中身を開いてみると粉々になったまことのメガネのレンズの破片が入っていた。
「見事な迄に、ドラゴンに踏まれたぞ…ちょ、五月蝿い」
「す、すす、すまない!!」
なんて事をしてしまったんだ!!
天族の姿を見ることが出来る不思議な虫眼鏡を壊してしまった!
こんな凄い物を弁償しようにも同じものを用意するなんて出来ないし、謝ってすむ問題でもない…どうすれば、どうすれば。ゴンベエの機嫌が悪いのは、この事が原因だったのか!
「土下座はやめろ…もう一個ある」
「だ、だが、どちらにせよ一個は壊してしまった。あの時、私がちゃんと回収しておけばこうはならなかった!」
特に気にしておらず、強くは責めないゴンベエだが私の土下座では足りない。
「…そう思うんだったら、今後色々と手伝ってくれよ。此方は磁石作るだけで登山しないといけない身で、とにかくやらないといけねえことが沢山あるんだ」
「やらないといけないこと…私の力で出来ることならなんでもする!!」
「そういう発言はヤベーからやめろ…とにかく今はその辺じゃなく知っとかないといけないことがあるんだ」
ゴンベエはそう言うと人のいない一室に行き、私にまことのメガネを貸してくれた。もうこれしかない…今度壊せば大変なことになる。
「あの、その虫眼鏡はなんですか?」
「コレは持っていると天族の姿や声が聞こえる不思議な虫眼鏡…貴女がライラ様ですか!!」
恐る恐ると慎重に動かしていると、何処かから声が聞こえた。
もしやと虫眼鏡でのみ見える人を探すとゴンベエの直ぐ側に綺麗な大人の女性が立っていた。
「はい、湖の乙女と呼ばれている天族、ライラです…霊応力が強くなくても天族が見える眼鏡ですか、ゴンベエさんは変わった物をお持ちですね!」
「正確には幽霊とか化物とかを見る眼鏡だ…そろそろ本題に入りたい」
ライラ様を前にしても相変わらずのゴンベエ。
本題と聞き、昨日は行きたくないと嫌がっていたのにどうして此処に来たと思っていると土で出来た箱、所謂、土器の様なものを袋から取り出した。
「ライラはナナシノ・ゴンベエと言う男を知っているか?」
ゴンベエの称号
新米転生者第16期生(初期)
説明
日本の地獄に導入された賽の川原の新システムで、二次元に転生した転生者の第16期生
第16期の転生者の中でも最も過酷な世界を引き当てており、転生特典はまーまーなもの!頑張って、人生を謳歌しオレTueeeをするんだ!