テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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定期的に人を絶望に叩き落とす、それがベルセリアです。


親業魔、子喰魔

「ふぁ~」

 

「……ふぁ……」

 

「なんだお前達、寝不足か?」

 

「すまない。ちょっと考え事が多くて寝るのが遅くなったんだ」

 

 グリモワールに変に勘繰られて無いだろうな?

 ザビーダもアイゼンも形はどうあれ生きているから、探せば現代の何処かに居ると思うけど。

 

「ほっほーう、2人同時に考え事かのぅ?」

 

「マギルゥ、そんな事を言ってもなにも出ないぞ?」

 

 ニヤニヤと笑うマギルゥだが、慌てる要素は皆無なので動じない。

 やったことと言えばカノヌシについてオレが気付いている事を喋らされただけで特になにもない。

 

「……お主達、一緒に寝ておるんじゃろ?」

 

「予算節約の為だ……ゴンベエがふしだらな事を私にすると思っているのか?」

 

「いや……お主がそれで良いなら良いんじゃよ」

 

 アリーシャのオレに対する感覚って本当にどうなってんだろ?

 寝不足だが体が動かないとかそんな事はなく、普通に歩けるので目的地であるパラミデスへと向かうべく宿をチェックアウトしようとするのだが、やたらとオレ達を見てくる。

 まさか伝説の昨夜はお楽しみでしたねえとか言ってくるんじゃねえだろうな?

 

「あの、聖殿パラミデスへと向かわれるのですか?」

 

「!……通報したの」

 

「通報?対魔士様がいらっしゃるのに何故?」

 

「……用があるなら対魔士様に聞きなさい」

 

 まさかパラミデスへ行かれる事を聞かれていたとは予想外だった。

 

「……聖寮対魔士のエレノア・ヒュームです。どんな御用ですか?」

 

「人探しをお願いしたいのです」

 

「人探しですか?申し訳ありませんが、今は」

 

「パラミデスへと向かわれる事は知っています。そのパラミデスにいる母娘(おやこ)を探して欲しいのです」

 

「母娘ですか」

 

「はい、母は聖主アメノチ様の巫女マヒナさん。娘はモアナちゃんという小さな女の子です」

 

「アメノチ様の巫女ということは……」

 

「はい。アメノチ様の聖殿を聖寮に接収されてから何度も抗議をしました。

でも、ある日帰ってこなくて……そしたらモアナちゃんまで何時の間にか居なくなってしまって。きっとマヒナさんを探しに行ったんだと思います」

 

「その二人が聖寮の施設に居ると?」

 

「いえ……ですが、この辺りで探せていない場所はそこしか無いんです。

モアナちゃんもマヒナさんが居なくなったと分かれば、そこに居ると向かうはずで……巫女の後継者としてモアナちゃんを厳しく育てていましたが、本当に愛していてモアナちゃんもその事が分かっていて……」

 

「分かりました。出来る限りの事はやらせていただきます」

 

「ありがとうございます!!その……今までの抗議の非礼をなんと詫びれば」

 

「私も母と2人で他人事とは思えないのです」

 

「……行きましょう、対魔士様」

 

「ちょっと待て」

 

 話が終わり、やることが1つ増えたのだが

 

「それって他の誰かも同じことがあったってのは?」

 

「いえ、居なくなったのはモアナちゃんとマヒナさんだけですが」

 

「そのパラミデスって礼拝堂みたいに聖寮が使用しているのか?」

 

「そこまでは……」

 

「基本的に誰かが警備してるぐらいか?」

 

「はい……あの、何故その様な事を?」

 

「つい最近派遣されたから現地の情報を知らねえんだ。

書類上色々と知っているけど、その母娘みたいなのは聞かされていなくてな……悪い、待たせた」

 

 出来れば違った答えを聞きたかった。

 だが、今の答えから物凄く最悪なものが浮かんでいる。

 

「エレノア、それはオレも手伝う」

 

「結構です。親娘の件は私が個人で探します」

 

「いや、それだとダメなんだ」

 

「……なにか気付いたのですか?」

 

「それはオレが言うべき事じゃない。目の前にある真実を見るしかない」

 

 どう頑張ったって、もう未来は決まっているんだ。

 過去に来てしまっているオレが言っちゃいけないことだけれど。

 

「目の前にある真実……私はその真実を知りたいと思っています。

悔しいけど、私はその真実を教えてもらえる程に信頼を得ていませんでした。だったら、自分で見つけ出すしかない」

 

 ほーっ、疑う心を持ちはじめたか。

 

「聖寮が表の道ならば、貴方達は裏の道です。裏表は違っても、辿り着く先は同じです」

 

「……道に裏も表もねえよ」

 

「裏も表もない」

 

「ゴールが同じなら、ただ見ている場所が違うだけだ。

お前が見ている方向からでは見えなかった物が見える……正しいと思っていた道を踏み外す事によりはじめて見える景色があるって、似たような事を前にも言ったか」

 

「初耳ですが?」

 

「お前じゃなくてアメッカだよ」

 

 どちらも強い信念を持っているが、それが絶対と思っていた伏がある。

 でも、ほんの少しだけ違う道を歩めばその強い信念を打ち砕く事が出来る非情な現実や理不尽が待ち構えている。

 

「その真実が酷く残酷で自分が許せない、認めないと思ったものだったらどうするつもりだ?」

 

「今はまだ……分かりません」

 

「分かりませんじゃダメだろ……アメッカみたいに1つの答えを出さねえと」

 

 今はまだ残酷な現実に振り回されているアリーシャだが既に1つの答えを出した。

 証拠が無いならばでっち上げる。殺しはしないが二度とそんな事をさせない為にも被害者の為にも槍ではなく拳を振るう。現代に戻れば私腹を肥やして悪政を強いる裁けない者達を裁ける様にするつもりだ。

 道中憑魔が出たりしたものの特になにか変なのとかやたら強いのとかに絡まれる事は無く、如何にも水の神殿と思える様な場所に辿り着いた。

 

「これは……ダメだ」

 

 何時ものよく見る聖寮の量産型対魔士達が神殿の入口付近でぶっ倒れている。

 アリーシャが駆け寄って意識を確認してみるも既に手遅れで死んでいた。

 

「こいつら、喰魔が殺ったのか?」

 

「いや、入口担当の警備みてえだ」

 

「もし喰魔が居るなら結界に閉じ込められている筈だ」

 

 オレ達以外の誰かが……ザビーダは無さそうだな。

 アイゼンの言う様に結界で閉じ込められてたら外に出ることは出来ない。中に喰魔が居る場合はそれとは別のがいると考えるのが1番……そうなるとなぁ。

 

「グォオオオオオ!!」

 

 来てみれば、既に警備の奴等はポックリ逝っていて唖然としていると中から獣が吠える声が聞こえる。

 

「うわああっ!」

 

 後に続くかの様に人の声が響く。

 

「業魔!?」

 

「噂の業魔かの?派手に暴れておるようじゃの」

 

「この混乱に乗じるわよ!」

 

 なにはともあれ、パラミデスの内部に侵入をすることには成功したんだが……なんでダンジョンになってんだよ?

 

「……似ていないか?」

 

「んだよ、急に」

 

「ガラハド遺跡とだ」

 

「天族関係の遺跡なら似ているもんだろ」

 

 水の中にある神殿なので物理的に破壊すればこっちも死ぬので、仕掛けを解きながら進むんだがアリーシャは遺跡を見回す……あ、そういえば。

 

「ライラが言っていたパワーアップ、ここの事じゃねえの?」

 

 今頃何処でなにをしているのか知らねえがパワーアップはあると言っていた。

 あんな危機的状況でふざけたことをライラが言うわけねえし、どちらにせよパワーアップさせんとヘルダルフとまともに戦えない。神衣という融合以上のパワーアップでパッと出来る方法となれば限られている。それこそ神様から力を授かるとか。

 

「……私はスレイと同じ道を歩んでいるのか……共に歩む事が出来なくとも」

 

「後悔をしてるか?」

 

「そんなの今更だ……だけど、前を見ないと」

 

「今絶賛後ろを向いてるがな」

 

「あんた達、なに立ち止まってるのよ!早く来なさい」

 

 っと、何時の間にか置いていかれたな。

 先々進んでいくベルベット達を追いかけ、憑魔を蹴散らしながら進んでいく。

 

「警備を蹴散らしてくれたけど、こいつは……」

 

 憑魔だけでなく対魔士達も殺られているお陰で、迷子にならずに先に進めた。

 厄介な仕掛けがあるダンジョン地帯から抜け出し大きなところに出るとさっきまで倒していた憑魔達とはレベルが違う憑魔がいた。

 

「グゥウウウ」

 

「あの声、外から聞こえたのはあいつか」

 

 ボキボキと腕を鳴らすアイゼン。

 獣人型の憑魔はオレ達の方を振り向き少しだけ近寄ってくる。戦闘は避けられないか。

 

「こやつ、胸にアメノチの紋章をつけておる!あれは巫女証じゃぞ!」

 

「あ~そう言われれば乳あるな」

 

「あんた何処を見てるのよ!!」

 

 おっぱいに決まってんだろ!

 

「じゃあ、あの業魔は」

 

「さっき聞いた、親娘の……母親の方、マヒナか」

 

「そんな……」

 

 あの憑魔がマヒナだと分かりショックを受けるエレノア…………。

 

「ゴンベエはこの事を気付いていたのか!?」

 

 アリーシャはついさっき聞いていた事はこれの確認なのかと聞いてくる。

 

「いや、まだだ」

 

 オレがここに来る前に聞いていたのはこの事に気付いていたからかと聞かれれば、それは違う。

 これと似たような事を想像しており、色々とあった可能性の中でも最も最悪な事をしている可能性が浮上をしている……胸糞悪いことをしやがって。

 

「巫女を務め、村の人達から慕われていた方が業魔になってしまうなんて……」

 

「エレノア……?」

 

 槍を出して、オレ達よりも前に出るエレノア。

 さっきまで居た有象無象の憑魔を倒していた時とは違うことにライフィセットは気付く。

 

「もう元には戻れない。こうするのがせめてもの……理であると!!」

 

 さっきとは違い、決意した顔に変わるエレノア。

 この時代には浄化の力は存在しない。だが、戦う力は存在している。

 ベルベット達の様に自我を保っているならまだしもマヒナにはそれがない。

 ああなってしまえばただ暴れるだけの獣畜生となり、イイ人だったと余計な情で見逃せば最後、無関係な人達が傷付いてしまう。ならば自分で決着をつける。

 

「あっ、これって!?」

 

 いざ戦いがというところで水が差された。

 ライフィセットがなにかを感じとり、声を出してしまいエレノアは一瞬振り向いてしまった。

 

「しまった!!」

 

 本当にしまっただよ。

 一瞬の隙をついてマヒナは物凄い速さで更に奥へと突き進んでいった。

 

「業魔は放っておけばいい」

 

 追いかけられない速度で走るので追いかけないエレノア。

 そんなエレノアに対してそれなりのフォローを入れつつもベルベットは前に進んでいく……世界は残酷だな。

 

「宿の娘への質問は、確認の為だったのか?」

 

 奥の方もやっぱりダンジョンで、憑魔が居た。

 倒しながら進んでいるとアイゼンは宿での事について聞いてくる。オレがマヒナが憑魔になっていたことを考えていたかどうかの確認か……

 

「それもあるが、それだけじゃない……アイゼンは穢れ云々は理解しているんだろ?」

 

「穢れとは人間の心にあるエゴや矛盾から目をそらす独善から生まれるものだ」

 

「……負の感情じゃねえの?」

 

「それも該当している。そしてそれらと向き合える者は穢れを生まない」

 

「……成る程」

 

 いつぞやの風の骨だかなんだか知らないが暗殺ギルドが憑魔になっていなかったのはその為か。

 

「知らなかったのか?」

 

「詳しい事は知らん」

 

 オレはあくまでも穢れは人間の負の感情が生み出すものだと認識している。

 人の業だ罪だと難しい話をされても困るんだよ。業とか罪とか、んなもん全員持ってんだよ。一蓮托生、全員同罪で道連れだ。

 

「簡単に考えれる事を難しく考えてどうするんだって話だ……まぁ、それでもなにかを言えと言うのならば言ってやるが」

 

 答えの無い哲学的な事とか答えが複数あることとか、ロジハラと逆ギレされてもいいこととか。

 難しい事を考えるのは好きじゃねえし、舌戦はそんなに強くはねえんだ。

 

「今必要なのは、その言葉じゃない」

 

 何処まで理解しているかを教えろか……。

 

「あの巫女さん、なんで憑魔になったんだろな」

 

「人が業魔になるのは穢れ……違うか」

 

「話を聞く限り、それはねえ」

 

 宿の娘が心配して今までの非礼を詫びて頭を下げに来た。

 他人から見ても立派な人で、親子の関係は好調。問題らしい問題があるとすれば聖寮にここを返してくれと抗議しているぐらい。どんな人かは知らんが曲がりなりにも巫女を名乗る存在。チャラついているわけがねえ。

 穢れに飲まれて憑魔になるのをヘルダルフの時にチラリと見た。けど、そういうのも無さそうだ。

 

「そうなるとベルベットと同じ、か」

 

「あたしとなにが同じなの?」

 

「……」

 

「私とアメノチの巫女の何処が同じなのって聞いてるのよ」

 

「どっちも本当に優しいから、憑魔になってしまったんだよ」

 

「……そう」

 

 ベルベットが憑魔になった理由は至極真っ当な理由だ。

 アメノチの巫女も恐らくだが、ベルベットと同じ理由で憑魔になった。

 

「待て、それだと色々と矛盾や不可解な点が多く生まれる」

 

「それを今から確かめにいくんだよ」

 

 母親の憑魔化は納得の理由だが、それだと様々な不明で矛盾な点が生まれる。

 獣人になった母親は外からやって来た。聖寮の計画の要は喰魔であの虫や鳥は結界で閉じ込められていたので、あれは喰魔じゃない。ライフィセットが喰魔の力を感じれるとした場合、獣人になった母親は違う。閉じ込められているのならばこの聖殿の奥だ。

 じゃあなんで憑魔になっているのかとなり、考えるのは娘を失ったと言うのが妥当なんだがそうなると少しだけ変な空白が生まれる。宿の娘が言っていた話からして、先に居なくなったのは母親で後から娘が居なくなった感じだった。

 娘が殺された時の怒りで憑魔になったとして、何故そんな事をしないといけないのか?喰魔も一括りにすれば憑魔の一種で人間の喰魔も居てもおかしくはなく、なんの迷いもなく天族をドラゴンパピー化させるジジイがいるんだ。喰魔になれるかもしれない奴を喰魔にしてもおかしくはない。でも、母親は喰魔じゃなかった。

 アメノチを祀る神殿を返せと喧しいから殺した?いや、そんな事をしてもなにも得策じゃない。なによりも先に娘の方を拐う。そうじゃないと神殿に誘き出せない。

 

 

 母親が娘関連で憑魔になった。

 娘は母親の後に居なくなった。

 憑魔になった母親は喰魔じゃなかった。

 それとは別の喰魔がここの更に奥に存在している。

 

 

 この4つの点と矛盾や不可解な点を組み合わせると最低最悪な答えしか出てこない。

 

「やっぱりいたわね……」

 

 聖殿の1番奥の大きな広間に、巨大な樹木の憑魔がいた。

 今まで見た憑魔達とは明らかに異なっており、異質な雰囲気を醸し出している。

 

「オッギャアアア!!」

 

 樹木の憑魔はオレ達に向かって飛びかかる……が、結界に拒まれた。

 

「当たりだな、コイツも喰魔ってわけだ」

 

「ベルベットの予想通り、七つの首は個体ごとに姿が違うようだな」

 

 え、なにその話。聞いてないんだが。

 

「感じてた場所はここだよ!」

 

「どうやら、坊の方も当たりのようじゃの」

 

「ワァーグ樹林の時と同じ感覚……僕が感じていたのは地脈点だったんだ」

 

 ……本当にロクでもねえな。

 

「さて、コイツをどうする?クワガタみたいに小さくなってくれればいいんだが」

 

「生き死になんてどうでもいいわ。喰魔(こいつ)を倒して、カノヌシの首を潰す。それだけよ」

 

 ロクロウがどうやって連れ出すかを考えるが、ベルベットは潰せば良いと先に進む。

 

「待て!!」

 

 結界を足に踏み入れる前にアリーシャはベルベットの左手を掴む。

 

「邪魔しないで!」

 

「違う、そうじゃない……口の中に、子供がいないか?」

 

 今からというところを邪魔されて苛立つベルベット。

 アリーシャは邪魔をしたくてしたのではなく、気付いてしまったから止めた。

 

「ふむ、言われてみれば坊ぐらいの子がおるの」

 

 オレ達の目の前にいる憑魔は樹木のモンスターみたいな見た目をしている。

 今まで見てきたのと明らかに姿が異なっているので他の奴等は余り意識をしていなかったが、よく見れば口の中に子供の様なものが居る。そしてそれ以外になにもいない……。

 

「さっき出会ったのは憑魔となってしまった母親で、外から侵入してきた。

宿の人はこの辺りを探していて確認していないのはこの聖殿の内部で、私達はまだ(こども)には会っていない」

 

「……まさか、そんな」

 

「いや、それで合っている」

 

 

 母親が娘関連で憑魔になった。

 

 

 娘は母親の後に居なくなった。

 

 

 憑魔になった母親は喰魔じゃなかった。

 

 

 憑魔となった母親じゃない憑魔が奥にいた。

 

 

 別の喰魔が最初から存在しているのならば、母親を憑魔にする必要は何処にもない。

 

 

 なら、何故憑魔になった?それは娘関連なのは間違いない。じゃあ、娘に何があったか。

 

 

「あの喰魔が娘のモアナだ」

 

 

 聖寮が娘を喰魔にした。

 何故娘を喰魔にしたのかは分からない。だが、喰魔も何かから喰魔になっている筈だ。その元となるのが娘のモアナ……。

 

 

「クククク、ハハハハ、ハーッハッハッハハ……笑えねえな、おい」

 

 胸糞悪いことをしてんじゃねえよ、聖寮。




スキット 最速を目指す走者達(RTA)

ライフィセット「えっと、ここがこうなっててこうだからここをこうしてっと」

ベルベット「解除できそう?」

ライフィセット「ちょっと待ってて。もう少しで終わるから」

ベルベット「そう……早くしてね」

ゴンベエ「神殿っつーのに、なんでこんなややこしいダンジョンになってんだか」

ベルベット「知らないわよそんなこと。それよりもフックショットみたいに便利な道具で先に進めないの?あちこち行ったり来たりして手間が掛かるのよ」

ゴンベエ「そんな都合の良い道具は……あ~」

ベルベット「なにかあるならとっとと出しなさい」

ゴンベエ「道具って言うより、技術だ。最速を目指す走者達が多用するダンジョンとかで使う技があるんだが……」

ベルベット「教えなさい」

ゴンベエ「結構難しいぞ?」

ベルベット「構わないわ」

ゴンベエ「一回しかやらないからよく見とけよ。
例えば、こういうライフィセットが開けようとしている仕掛けを解かないと開かない扉の左端に寄って壁に背中を向けるだろ……ひたすら扉に向かって横っ飛び!!せい!やぁ!はっ!」

ベルベット「ちょっと、めり込んでるわよ!」

ゴンベエ「このめり込みが大事だ!」

ベルベット「消えた!?」

ゴンベエ「これぞ最速を目指す走者達がダンジョンの攻略に使用する技術、壁抜けだ。
他にも1フレームごとに上下に移動する事によりジェット機よりも素早く泳いだり、爆弾を用いた高速移動や空中歩行とか色々とある。なんだったらアーウィンという世界観が別物な物を呼び出して進む方法もっと、これは難しいか……じゃ、先ずは壁抜けからだな」

ベルベット「……あんたしか出来ないわね、それ」


スキット 由緒正しき殺し方。


ロクロウ「はっ、そういえば!」

アリーシャ「なにか忘れ物をしたのか?」

ロクロウ「違う。よくよく考えてみれば、喰魔を見つけても肝心のカノヌシを斬らなきゃ意味が無い事に気付いてな。グリモ姐さんが解読した感じだとカノヌシは八つの頭を持つドラゴンだろ?
もし戦うとなったらそれこそ、この神殿よりもデカい本体と戦わなくちゃならねえ。大蛇みたいな見た目で八つの頭のドラゴンが毒だ炎だ吐いてくるんだよな」

ゴンベエ「8つの首の大蛇……」

ロクロウ「そうなると、一人一殺で戦わなきゃならん。だが、まだアメッカは戦えない。その時が来るまでに戦えなかったら、1つ余っちまう」

アリーシャ「そ、その時までに戦える様にしてみせる!!」

ロクロウ「期待はしている。とはいえ、相手は災厄のドラゴン。今まで相手にして来た奴等とは比べ物にならん。誰かが殺られる可能性も頭に入れなきゃなんねえ」

アリーシャ「私達も過去に……過去に1度だけドラゴンと遭遇したことがあるがアレは憑魔とは別次元の存在だった」

ゴンベエ「じゃあ、こっちもドラゴンを用意するか?強靭無敵最強究極の竜に混沌の戦士が乗っただけの究極の竜騎士は地水火風闇の5つの属性の首を持つドラゴンを銀河をも砕く一撃でぶっ倒したって言うし」

ロクロウ「ドラゴンの使役か……ピンと来ないな」

アリーシャ「私達のパワーアップよりもカノヌシのパワーダウンの方が良いんじゃないか?」

ゴンベエ「穢れの代わりに腐った賞味期限切れの芋羊羹を食べさせるとか?」

ロクロウ「8つの首全部を食中毒にさせるとなると芋羊羹だけだと限界があるぞ」

ゴンベエ「仕方無い。アメッカ、なんか作れ」

アリーシャ「それはいったいどういう意味だ!!私だって日々精進している。最近は一人で卵焼きなら焼ける様にはなった!」

ロクロウ「一人で焼けるだけで一人では巻けないのか……食い物を粗末に扱うのはよそう」

ゴンベエ「となると、後はもう定番中の定番で酒を飲ませて寝込みを襲うしかないな」

ロクロウ「定番なのか、それ……」

ゴンベエ「由緒正しい大蛇の殺し方だ」

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