テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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※読む前の注意点

注意点

このサブイベントは本編とあまり関係ないもので、アリーシャが強くなるには結局なにが必要なの?とかを別の世界に転生した転生者に教えて貰ったり貰わなかったりするサブイベントであり、ゲーム的な話をすればサブイベントを進める事によりゴンベエの第三秘奥義が使えるようになり、最終的にある事を知ることが出来てアリーシャ達の好感度とかがなんかスゴい事になり更なるサブイベントが解禁されたりされなかったりします。
そしてこのサブイベントでアリーシャが槍を使える様になり精霊装擬きを使える様になるとかそういうのはない。所詮はサブイベントだから。



お詫び


その2でなにをやったりなにを言ったり考えて、取りあえずこんな流れにしようとなり書いてました。
その結果、前後編で終わる感じにならず更にはなんか果てしなくカオスな事になってしまった。いや、本当になんでシリアスな感じに書いてたら■■がはじまるんだ……。


サブイベント 姫騎士アリーシャと導かれし愚者達 その2(PART2)

「自分の事を美人って言ってるんじゃないわよ!そういうコードネーム的なのよ!」

 

「お前は愚かな美人と書いて愚美人で良いだろう」

 

「誰がポンコツよ!」

 

「お前しかいねえだろ、忘れたとは言わせねえぞ。

今時、料理なんて本さえあれば誰でも出来るからちょっとやそっとじゃ料理上手とは言えないわ。レシピを見ずにオリジナルの作り方が出来る奴が料理上手なのよ!って言って料理を始めたと思ったら美味い物と美味い物を掛け合わせる事により更に美味しくなるわ。カレーとチャーハンを合わせたカレーチャーハンよ!ってドヤ顔でドライカレーを作ってきただろ」

 

 異世界から迷い混んで来た人?であるマスク・ド・美人と知り合いなのか心底呆れているゴンベエ。

 

「仕方ないじゃないの!私にとってドライカレーって言ったら、なんかこうキーマカレー的なのが乗ってるのしかイメージが無かったんだから!」

 

「キーマカレー言うとるやないか」

 

 なんだかとっても嬉しそうに笑うゴンベエと顔を真っ赤にするマスク・ド・美人。

 するとマスク・ド・美人はなにかに気付いた様でハッとする。

 

「なんであんたがそんな事を……そうか、分かったわ!

あんたはアレね!主人公おちょくったり暴力振るうタイプのヒロインが主人公に見限られて捨てられて、別の男に同じことやろうとしたらやり返されたりして自分がどんなに主人公に甘えていたのか実感して恋心を自覚して戻ってみようとするけど別のヒロインとくっついていて、一人ぼっちになり絶望の淵に落ちる姿を見てみたいって言ってた」

 

「長い。そしてあいつは女だから、オレは違う」

 

「あ、じゃああいつね!!

ツンデレでデレた姿は可愛いけども日常的にダメな奴がメインヒロインはちょっと。僕的には良妻で人気投票でも勝ってるサブヒロインと主人公は結ばれるべきだ!ってカップリンク押しをする!」

 

「そいつも違う、そいつと仲良かったが違う。

アレだ。戦闘の実技訓練で人質を取られた際にどうするかで、その女に人質の価値はねえってお前を全力で蹴り飛ばした奴だ」

 

「ああ……あんたね」

 

「あんた等、いったいどういう関係なわけ?」

 

「アメッカと出会う前に色々と修行してた時の知り合い」

 

 なにやら色々と面白そうな事を語るマスク・ド・美人。

 会話からしてももしかしてと思っていたが、私と出会う前に出雲の国の黄泉比良坂を越えた先にある場所で色々と修行をしていた頃の知り合いだった。

 確か、出雲の国の黄泉比良坂を越えた先では異世界に関する様々な研究をしていて異世界にいく方法もあると言っていたな。彼女はそこから異世界に行って、ティル・ナ・ノーグという世界の干渉を受けて、こちらに戻ってきたのか……ん?

 

「ここは」

 

「細かいことを気にするな。アレは異世界の住人だと思えば良い」

 

 色々とおかしな点が浮かぶが、それを口にする前にチヒロさんが止める。

 口にはしなかったが、頭で考えてみるがよく分からずマスク・ド・美人もチヒロさんも異世界から来た人だと思えばいいと完結をした。

 

「大体の事は知ってるわ。私の世界でも似たような事が起きていたから」

 

「お前の世界というのはどんな世界なんだ?異世界はそれこそ人間の髪の毛の数ほど存在しているらしいが」

 

 興味津々に聞くアイゼン。

 スライムが統治する魔物の国がある世界、数百年先まで未来を視る事の出来る占い師が未来の技術を逆輸入し本来あるべき歴史から大きく変えた世界、城下町を暴れまわる最低でも家一件程巨大な蟲を倒す侍が居る世界。

 ゴンベエから聞いたことのある世界は幾つかあるがそれでもまだまだ世界は沢山あるらしく、語りきれないほど。

 

「言う義理は無いわ……それに、言ったところで行く方法は無いわ。

それこそあんた達が私みたいに向こうからやってくる形じゃないと……いや、あんた達の場合はコピーになるわね」

 

 アイゼンの質問を断るマスク・ド・美人。

 なにか意味深な事を言っておりその意味は分からない。私達の場合はコピーとはどういう意味だろうか?

 詳しい事を聞いても語るつもりは無いのかつけていた仮面を取り外してサングラスをかける。

 

「とにかく、あんた達が来たから帰る事が出来るわ……大事にならずに済んだわ」

 

 空を見上げ、そう呟くマスク・ド・美人

 これで仏の依頼は終わった……のだが、一向に仏が出てこない。

 

「出てこないわね」

 

「そもそもで、仏って一方通行だからな」

 

 そういえば私達から連絡を取ることは出来ない。

 一向に仏が出てこないとなると諦めたのか少し大きなため息を吐いた。

 

「ニノミヤ、あの腐れ仏が来るまで拠点かなにか貸しなさい」

 

 ……ニノミヤ?

 

「ニノミヤ言うな、ゴンベエだ」

 

「ゴンベエって、あんたどっからどう見ても」

 

「ちょ、こい」

 

 知らない名前を出し頭に?を浮かべる私達。

 そんな中、ゴンベエは自分はゴンベエだと主張するのだがマスク・ド・美人はおかしな事を言うと眉を寄せてなにかを言おうとするのだが、その前にゴンベエが連れていった。

 

「1つ聞きたいが、アイツの名前はゴンベエであっているのか?」

 

 ゴンベエとマスク・ド・美人が岩辺で話し合っていると、チヒロさんがおかしな事を聞いてきた。

 

「あっているもなにも、私と出会った時にナナシノ・ゴンベエと名乗りましたよ?」

 

 衝撃的な出会いをしたあの日、ゴンベエは自分でそう名乗った。

 レディレイクで商売や買い物をしたりするのに偽名を名乗るわけは無いですし……そもそもで私とゴンベエは一年以上の付き合いがあり、ハイランドで一番付き合いが長いと言っても良い私に偽名を名乗り続けるだなんてありえない。

 

「名無しの権兵衛……そういうことか」

 

 なにか1人に納得をするチヒロさん。

 なにがそういうことか聞こうとしたが、その前にゴンベエとマスク・ド・美人が戻ってきた。

 

「そんな名前でいいの?もうちょっとましなのあったんじゃないの?」

 

「いや、もうこれでいいかなって。

キラキラよりもシワシワの方がまだましだし、そもそもで今さらはな……なんか大変な事になるし」

 

 なにか気まずそうな顔をしているゴンベエ。

 チラッと私の方に視線を向けたが、いったいなんだと言うのだろうか?

 

「じゃ、あんた達がやってる事を再開しなさい。私はここで本でも読んで4号が来るのを待ってるから」

 

 何処かから持ってきたビーチチェアに寝転ぶマスク・ド・美人。

 私達の事を考慮してくれたのかさっさと行けと手を動かしている。これは……行った方が、良いのだろうか?

 王宮で見たあの憑魔が喰魔なのか確かめる為にも一度ペンドラゴに戻らなければならない。アルトリウスの目的が分からない以上は喰魔を地脈点から引き剥がさなければならない。

 

「お前がとっとと元の世界に帰らねえとなんも出来ねえんだよ。下手すりゃこの世界の人類滅亡迅雷なの分かってんのか?」

 

「バカね、そんな事ぐらい分かってるわ。私がそんなアホな事をすると思っているの?」

 

「真剣な話をしている途中で悪いが、業魔が集まってきよったぞ」

 

 普通に会話をしていたから、忘れていたがこの辺りには普通に業魔がいる。

 ついさっきゴンベエが放った一撃で退いていたのだが、それから特になにもしてこなかったせいなのか海洋生物型の業魔が海や砂浜からジッと此方を睨んできていた。

 

「ああもう!人が大事な話をしてるって時に邪魔すんじゃないわよ!」

 

 業魔の視線に苛立ちマスク・ド・美人は白色のなにかを取り出した。

 

『デンジャラスゾンビ!!』

 

 白色のなにかのスイッチを押すとなにかから人間の声が聞こえ、マスク・ド・美人の背後になにかの映像が浮かび上がり更にはマスク・ド・美人を中心にモザイクが出現して広がっていき、マクリル浜に来て最初に見た業魔ではないオレンジ色の頭をしたモンスターが出現する……これは、何処かで見たような……いったい何処だったろうか?

 

「言った側から、使ってんじゃねえよ!!」

 

「別にいいでしょう。この方が一掃出来るんだから!」

 

「よくねえよ、人類滅亡させんじゃねえ」

 

 話が見えてこないな。アレの何処が人を滅亡させる物なんだ?

 言い争うゴンベエとマスク・ド・美人。最終的にはチヒロさんが間に入ることで納まり、仏がやってくるまでここで待つこととなり憑魔とは絶対に戦うなと釘を指された。

 

「ゴンベエ、さっきの技なんだが」

 

「まだ言うのか?」

 

 睨んでいた憑魔はゴンベエが一瞬で倒し、待つだけの私達は暇だ。

 何時もの様に黄金の狼が現れてくれればと思ったがそう都合よくは現れず、ついさっきゴンベエが放った技を教えてほしいと頼む。

 

「ただ待っているだけなら時間を有効に活用したい」

 

 ゴンベエが槍の技を放った跡を見る。

 一直線に砂浜は抉れており、海まで届いたのか、その先にある海は大きく荒れていた。あの神速の突きをものにすればきっと私は今よりも強くなれる。

 

「なら、言ってやる。そいつは世界で一番時間の無駄な使い方だ」

 

「……そこまで言わなくてもいいじゃないか!」

 

 どうしてそんな事を言うんだ!私だって、毎日毎日頑張っているのになんでそんな酷いことが言えるんだ!!

 

「ちょっと、五月蝿いわよ。くだらないことでなにを揉めてるのよ」

 

「マスク・ド・美人、これはくだらないことじゃない!」

 

「……ごめん。マスク・ド・美人は止めて。やっぱハズい。本名飽田ヒナコだから、飽田様と呼んで」

 

「自滅してんじゃねえか……」

 

 毎日毎日、槍を振るっている。

 骸骨騎士から教わった技を実戦でも使える様に傲る事なく頑張っている。それでも足りないから、こうやって頑張ってるのに……。

 

「まぁ、話の内容はなんとなく分かるわ。取り合えずブラッディースクライドは教わらなくてもいい技よ。と言うか、アレって足りないのよね」

 

「足りない?」

 

「ある意味、未完成の技ってことよ」

 

 アレで未完成だと!?

 マスク・ド・美人にそう言われると、もう一度ブラッディースクライドの跡を見る。抉れた砂浜はあの技の恐ろしさを物語っている。

 

「途中で威力が消えたりしたわけじゃないし、アレが未完成ってどういう事だ?」

 

 話を聞こえたのか加わるロクロウ。

 ブラッディースクライドがどうして未完成か分からない。マルトラン師匠の槍術よりも恐ろしいあの一撃、足りない物が分からない。

 

「あの技は海と地しか斬ることが出来ないのよ」

 

 そう返されると頭にほんの少し前の事が頭に過る。

 海鳴閃という技を使って海を割っていた。あの技と魔神剣は似ているが魔神剣よりも遥かに優れた技だ。それと原理は似ているが異なるブラッディースクライド。

 

「海と地面以外にもなにかを斬れるってことなのか?」

 

「あ~、多分、あんたには一生出来ない技よ……邪悪な人間には使えないから」

 

「む、それは確かに俺には出来ない技だな」

 

 憑魔には使えない技?……意味がよく分からない。

 ブラッディースクライドにはなにかが足りない未完成の技だということしか分からなかった。

 

「ていうかさ、なにをそんなに強くなりたいわけ?

戦闘能力に999振っている化物染みた強さを持ってるそいつと比較したらダメよ。あんた、自覚していないだけでそれなりにやるわ」

 

「流石にゴンベエレベルは……それなりじゃダメなんだ。せめて、皆と肩を並べて戦えるぐらいには強くなりたいんだ」

 

 これから先、戦いはより激しくなる。

 それだけじゃない。アルトリウスとカノヌシを倒せば終わるという話でなくなっている。なら、最低でも皆と肩を並べる程の強さにならなければ、今のままで強いと言われても今の自分よりも遥かに強い猛者達を見ていて、それが敵なんだ。

 

「お前、結構無駄な考えをしているな」

 

 強くなりたい意思を見せると寛いでいたチヒロさんはどうでもよさげにそういう。

 

「私の何処が無駄だと言うのですか?」

 

「才能が無い」

 

「ちょ、黛さん」

 

「黙ってろ……力を貸すのは勝手だが甘やかして良い道理は何処にも存在しない。このままだと刺されるぞ、お前」

 

 ずっと黙って見ていただけのチヒロさんは重たい腰を上げて私と向かい合う。

 

「なんで無駄無駄言ってるか分からないバカに少しだけ理解させてやる」

 

「才能が無いなんて理解しています。だからこそ、人よりも努力をしてい」

 

「お前、なにか勘違いをしていないか?努力はして当然な物だ」

 

 チヒロさんのその言葉は私の胸に深く突き刺さった。

 

「努力なんて皆、当たり前の様にしている。違いがあるとするならば、その努力の効率の良さか悪さだ。

その上で努力は才能を凌駕するや才能が無くても諦めなければなんて甘えた考えを持っているのなら、才能がある奴が才能が無い奴並に高密度な努力をしたら終わりだって理論に気付いているのか?」

 

 私の考えを真っ向から潰しに掛かるチヒロさんになにも言い返せない。

 ……心の何処かで分かっていたかもしれない。必死になって毎日頑張っていて、少しずつ結果が出てきた。それでもまだ足りないと。毎日毎日頑張っても、届かない壁の様な物に阻まれているのを。

 ロクロウ達の強くなる速度と私が強くなる速度の大きな差があるのを……。

 

「……ゴンベエ、私は諦めた方がいいのかな?」

 

 結局のところ、何処まで行っても何処の場所でも才能の世界。

 私には才能が無いのならば諦めた方が良いのかもしれない……現に私は霊応力の才が欠けていたから、スレイに負担をっ!!

 

「いや、それとこれとは別の話だぞ」

 

「……え?」

 

「才能があるなしはあるが、それはそれ、これはこれだ。

そんな事を言い出したら黛さんなんて影の薄さ以外は才能の欠片も無い凡人どころか下手な劣等生だぞ……普通のやり方じゃ、ダメなんだよ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。意味がよく分からない」

 

 言っていることがおかしい。なにか所々真逆の事を言っていて理解が追い付かない。

 才能が無いから諦めるのと才能が無いから無駄でしなくていいは一緒じゃないのか?

 

「お前に分かりやすく言ってやる。

1の修行をして10の経験を得る奴が才能がある奴だとすれば、お前は4から6ぐらいの経験しか手に入れる事が出来ない」

 

「それなら1じゃなくて2の修行をして」

 

「さっきから同じ事を何度も言わせるな、それが無駄なんだ。

2の修行をして追いついたとして、才能がある奴が2の修行をすれば一瞬にして詰めた差が開く。簡単な数の計算も出来ないのか?」

 

「……益々意味が分からない」

 

 チヒロさんの言っていることは理解できている。

 それで諦めろと言うのならばまだ道理が通っているが、それで諦めるのは話が別なのが分からない。

 努力をしても無駄だなんだとさっき強く否定していたのに……。

 

「要するに、する努力が違うのよ。

人間にだって色々とあるでしょ?頭が良かったり、足が早かったり、手先が器用だったり。他の人には負けないオンリーワンな武器がなんなのか、他の人が1の修行で4しか経験を得られなくても自分は10の経験を得られる努力をしろって言うわけよ」

 

「成る程……確かに、それだとさっきまでは時間の無駄だな」

 

 マスク・ド・美人が要約してくれ、ロクロウは納得をする。

 私にしか出来ない、私だからこその強み……海鳴閃を教えてほしいと頼んだが、アレはゴンベエも使う事の出来る技だ。

 だったら私が覚えたとしても少し強くなれるものの、本当にそれだけだ。それならば他の事に時間を使えばいい。誰でもない私だからこそ強くなれる方法に。

 

「アメッカ、この場所に来てお前は色々な物事を見た。

オレ達のところじゃスレイしか出来ていない事をポンポンと出来て当たり前でインフレが起きていて、相手は神みたいな存在だ。そのせいで自覚は無いだろうが、既にスレイと一緒に居た時よりも遥かに強くなっている。けど、周りがそれよりも強い。もう最初に必要な土台は、基礎はとっくに出来ているんだ。後は自分の、自分だからこその型を、守破離の時なんだ」

 

 そうか……。

 今まではマルトラン師匠に、最近は骸骨騎士とゴンベエから色々と教わっていた。でも、もうその段階は終わりの時が来ていた。

 誰かが歩いていた後のある先が分かる道を歩んでいてはその人の真似、その人の下位互換になるだけ。誰も通っていない自分だけの道を通らなければならない。その道を通る為にすることが無駄じゃない努力なのだろう。

 

「答えは、ずっとあったか……」

 

 目を閉じ、自分だけの道を考えて直ぐに答えが出た。

 私の血を混ぜた私の為だけに作られた私専用の槍。この槍に秘められた力は凄まじく使いこなせれば……今まで色々と技を覚えたが為にこんな簡単な事すら見失っていたとは。

 

「うわ、なにそれ?」

 

 槍が放つ禍々しいオーラに引いてしまうマスク・ド・美人。

 私はもう馴れてしまったが、この槍から感じるオーラは凄まじく使いこなせればきっと道は切り開ける……

 

「この槍を、どうすれば使いこなせるのだろうか……」

 

 結局はそこが問題である。

 この槍を使いこなす為に毎日怠る事なく鍛練をしているものの兆しが見えない。一度だけ使えただけで、それだけだ。

 あの時を再現すればと思っても上手く出来ず、ピンと来ない。

 

「その槍、使ったら呪われるの?」

 

「呪われると言うより、気分が高揚していて自分が自分で無くなると言った感じで」

 

「成る程ね……まぁ、乗り掛かった船みたいだしズバリ、言うわ。強い魂が必要なのよ!」

 

「強い魂?」

 

「そう、闇にも負けない強い魂。それを持っていれば、その槍は使える筈よ」

 

 時折私は穢れを放ってしまう。それは諦めたり絶望したり非情な現実に負けそうになっているから。私と同じ素材を使って出来た剣をベルベットは使いこなしている。ベルベットは折れずに戦っている。一度、完膚なきまでにアルトリウスに叩きのめされたのに、それでも折れずに突き進んでいる。

 この強い心が、強い魂が差を作っている……どうすれば強い魂を手に入れる事が出来るんだ?

 心を鍛えると言っても、どうすれば良いのだろうか?それだけは分からない。

 

「健全なる魂は健全なる精神と健全なる身体に宿るわ」

 

 健全なる魂は……そうか!!

 

「筋肉を鍛えれば良いのか!」

 

 なにをすれば良いのか分かった。

 盲点だった……私に足りないのは筋肉だったのか。

 

「ゴンベエ、効率の良い筋肉の鍛え方は無いだろうか?」

 

「待って。うん、待ってくれ。なんでいきなり筋肉になったんだ?」

 

 早速、筋トレに取り掛かろうと効率の良い筋トレは無いかとゴンベエに訪ねる。

 何故そんなおかしな者を見るような目を私に向けるんだ?

 

「健全なる魂は健全なる精神と健全なる身体に宿る。ならば、強靭な魂は強靭な精神と強靭な肉体に宿る。

強靭な精神がどういった事かは分からないが、強靭な肉体はなにか分かる。その為に必要なものはそう、筋肉だ」

 

「成る程、確かに強い奴は筋肉があるな。

技1つ取っても筋肉あるかないかで大分変わるし、槍を使って戦うなら筋肉は重要だ」

 

 私の意見に頷いてくれるロクロウ。

 エレノアが言うには、ロクロウの兄であるシグレは天響術を一切使わずに剣だけで特等対魔士らしく號嵐を振っただけで突風が吹き荒れた。それはつまり鍛え上げた筋肉を使ったからだ。

 ライフィセットの様に天響術を主とした戦いでなく槍術を主とした戦いをするとなれば、シグレと同じように……筋肉が必要になる。

 

「ねぇ、ちょっと大丈夫なわけ?なんかおかしいんだけど、なんで筋肉達磨になるわけ?」

 

「体力と物理防御力が高いからだろ……ゲーム的に」

 

「アメッカ、違う。筋肉あるなし関係ねえ。そして黛さんはあんまそういうの言わないで、あんまそういう事を考えていないから」

 

「だが、ヘルダルフもムキムキでゴンベエも物凄い怪力なのだろう?」

 

 そしてスレイも神衣では大剣や大弓、大きな拳を振るっていた。大きな武器はそれだけで重く使いこなすには筋肉が必要ではないのか?

 

「違うわよ、筋肉なんて無くてもどうとでもなるわ。世の中には筋肉ムキムキでもそんなに力が無かったりする奴とか普通にいるし」

 

「おっと、心はガラスだぞ」

 

諏訪部(ピーー)ボイスで遊んでるんじゃないわよ……あ、でも防御力に全振りで体力自慢の筋肉で騎士で茅野」

 

「話、ズレてる……そういう危ないのは他所でやれ」

 

 段々と話がおかしくなってきたのをチヒロさんは修正する。

 なんだかさっきからピーー音ばかり聞こえているが、いったいなんだと言うんだ。いや、それよりも、今はどうすれば強い魂を得られるかだ。

 

「どうすれば強い魂を」

 

「簡単よ。こうすればいいのよ」

 

 マスク・ド・美人はそういいデンジャラスゾンビと音を出した物と形は一緒だがまた別の物を取り出し、白いアンデットの姿になった時につけていた紫色のよく分からない道具の挿し込み口に差し込んだ。

 

『ガシャット!』

 

「培養」

 

「っ、アメッカ!」

 

「──え」

 

 紫色のソレを籠手の様に装備をすると私に向かって振りかぶるマスク・ド・美人。

 さっきまで出していた声とは違う焦った声を出したゴンベエは私を突き飛ばした。

 

「て、っめぇ……」

 

「あんたなら確実に守る。この攻撃から自分を盾にしてでも。

これは攻撃とは言い難いもので、魔法を使っても防げない。いえ、魔法とは対極にある物だからこそ絶対に効かない」

 

「ゴン、ベエ?」

 

 攻撃を受けたゴンベエは今までに見せた事の無い苦痛の表情を浮かびあげる。

 マスク・ド・美人の狙いは最初からゴンベエだった様で、驚く素振りすら見せていない。

 

「後で、一回、殺、す……」

 

 ゴンベエが倒れた。

 

『インフェクション!レッツゲーム!バッドゲーム!デッドゲーム!ワッチャネーム!?ザ バグスター!』




スキット ナナシノゴンベエ(✕)

ゴンベエ「よし、アメッカ達は……来てないし聞いてねえな」

ヒナコ「なんなのよ、いったい」

ゴンベエ「いや、その……ニノミヤって言うのを止めてくんねえか?」

ヒナコ「はぁ?……ああ、そういうことね。マサタカって呼べば良いのね。この世界って名字じゃなくて名前呼びが当たり前よね」

ゴンベエ「そうじゃねえよ。ニノミヤでもマサタカでもなく、ゴンベエって呼べ」

ヒナコ「ゴンベエって、あんた何処からどう見てもワールドトリガーの二宮匡貴でしょ?」

ゴンベエ「いやまぁ、そうだけど…」

ヒナコ「もしかしてアレなの?転生する前の自分の本当の名前と被ってるわけ?」

ゴンベエ「いや、違う」

ヒナコ「だったら、なんでゴンベエなわけ?私達転生者の容姿は私達の魂が決めるわ。私が虞美人なのも、知的で理性溢れる人間だからよ」

ゴンベエ「それは絶対に違う」

ヒナコ「なんでそこは即答なのよ!!」

ゴンベエ「そういうノリだ……ともかく、ナナシノ・ゴンベエで通ってるんだよオレは」

ヒナコ「名無しの権兵衛って名前が無い奴をバカにする時に使ってるする言葉じゃない」

ゴンベエ「実際は違う。まぁ、とにかくはじめて出会った奴に名無しの権兵衛って言ったら、それが名前だと勘違いをされたんだよ」

ヒナコ「はぁ……待って、それおかしいわよ?
私達が転生した際にここはどういう感じの世界とか転生特典について書かれた紙が置かれていて、その際に自分の新しい名前とかも教えてくれる筈よ」

ゴンベエ「そうなのか?オレはなんにも書いてなかったんだが……運営サイドのミスか?」

ヒナコ「ありえるわね……そもそもでこの異世界転生のシステムってトライ&エラーの連続だし。養成所が出来たのだってある程度は育ってる中高生ぐらいの子供を転生特典を適当に渡して転生させたら大変なことに……いや、それよりもあんたもしかして魂が不安定かなにかじゃ」

ゴンベエ「もうそういう細かいのは良いだろう。オレはナナシノ・ゴンベエで通ってるんだよ。昔の苛められる原因だったキラッキラなクソネームから解放されて真っ白になったんだよ!」

ヒナコ「真っ白って、文字通り名無しの真っ白じゃない!!」

ゴンベエ「いいだろ別に。この世界、オレ以外の転生者居ねえんだし今のところは名前で迷惑を掛けてないんだから」

ヒナコ「それはそうだけれど……大丈夫なわけ?」

ゴンベエ「なにがだよ?」

ヒナコ「ナナシノ・ゴンベエって言う名前で通っているけど、名無しの権兵衛ってバレた時よ。
本当の名前を捨てて転生している私達が言うのもなんだけれど、名前って結構大事なものよ……名無しの権兵衛と名前が無い奴と知られたら、ショックを受けるわよ」

ゴンベエ「問題ねえよ……ナナシノ・ゴンベエがオレの名前なんだからよ」

ヒナコ「そういう良い感じの終わりにしても、絶対に大変な事になるわ!断言出来るわ!」

ゴンベエ「ならねえ……アリーシャなら優しく受け入れてくれる。オレはアリーシャの心を信じる……さっさと戻るぞ。長居してるとなにを言われるか分かりやしねえ」

ヒナコ「……絶対に刺されるわね」

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