テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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憧れや尊敬は理解から遠い感情

「この方角を弱めの風で頼む」

 

 真夜中の出航。

 それは予定外の出航であり目的地が定まってはいるものの、危険な場所で細心の注意を取らなければならず、アイゼンはゴンベエの風を操る力を思う存分に利用して船を動かす。

 予定外の出航だが甲種の憑魔が現れる気配は特になく、誰かが体調不良を訴える事も天候が荒れるといったこともない。このまま行けば普通に着くとベンウィックは言っていた。

 

「船も無事に出航したし、そろそろ素顔ぐらい見せても良いんじゃないか?」

 

 パスカヴィルから頼まれて目的地の監獄島まで連れていく事になったフードを被った人。

 分かることは香油をつけているのと男性だということだけで、お上の人に狙われない場所に連れていって欲しいと頼まれていた事からどういうタイプの人間なのかが分かる。

 

「そうだね。失礼した」

 

「やはり、パーシバル殿下!!」

 

 ロクロウに言われて素顔を晒すフードの男性。

 エレノアは素顔を見て驚く。ゴンベエに言われた様に予想していたらしく、その予想が当たっていた。

 細かな事は知らないが、確か演説の際にアルトリウスを紹介していた人物。殿下、と言うことは王族か。

 

「パーシバル・イル・ミッド・アスガード……ミッドガンド王国の第一王子とはな」

 

「……次の国王なわけね」

 

「お召し物から王族の方々のみが使うことが許された香木の匂いがしましたが……なぜ、この様なことを」

 

「話さなければ連れていって貰えないかな?」

 

「いや、話さなくて良い……ただ、ここは普通の船じゃない事は分かっているだろうな?」

 

「な、なにをしているのですか!?」

 

「見て分からないのか?」

 

 パーシバル殿下の首筋に背中の剣とは別の剣を背後から添えるゴンベエ。

 下手に動けば首と体が分かれる殺そうと思えば何時でも殺せる体制ではあるが、殺気の様な物が一切感じない。

 

「……私を利用したいのならば利用したまえ」

 

「オレはそういうのを求めているんじゃない。

オレ達は導師アルトリウスやシグレ、メルキオルといったお前の国に居ないと困るであろう人物をぶっ殺す為に色々と準備をしている。アルトリウス達の姿を見て噂を聞いた……この船はお前達の国を絶望に送る地獄行きの船だぞ」

 

 ローグレスでのアルトリウス達の人気は凄まじかった。

 導師の称号が与えられたあの日、スレイの時とは比べ物になら無いほどに人が押し寄せていた。ローグレスの人々も口を開けばアルトリウス様がとアルトリウスを称えていた。混乱の世を平穏へと導く者達と私達は戦っている。

 

「なら、地獄に連れていってくれ」

 

「な!?」

 

「そうか……詫びは言わんぞ。なにせ悪人なんでな」

 

 この船に乗る覚悟はパーシバル殿下は出来ていた。

 なんの迷いも間もなく答える姿にエレノアは驚愕をしているが、血翅蝶を利用した時点で覚悟は既に出来ている。

 

「ついでにもう1つ聞いておく……国はアルトリウスというのがどういう人物なのか理解していて導師の称号を与えたのか?」

 

「……君は聖寮が出来る前のミッドガンド王国を知っているのか?」

 

「知らん!!」

 

「ならば、薬と言う名の毒を食らうば皿まで食らうと言っておこう」

 

「屁、以下な陛下か」

 

「……聖寮が出来るまでのミッドガンド王国?」

 

 過去の出来事は分からないが……

 

「……殆どの人は聖隷が見えなかった、聖隷は見えない癖に業魔は見えていた。聖隷の力を借りなきゃ、それこそこっちも業魔にならなければまともに戦う事すら出来ないぐらいに力の差があった……お陰で山奥の小さな村に届く筈の薬が届かなかったりした」

 

 そんなに、酷かった……いや、現代のハイランドもローランスも同じか。

 そんな状況で救世主が現れたとなれば誰だって喜ぶ。私もスレイという導師の誕生を喜んだ人の1人だ。

 

「ということだベルベット。向こうは地獄に連れていってくれと言っている」

 

「どうだっていいわ。こっちもこっちで利用させてもらう……最悪、人質にでもなってもらうわ」

 

「その男に人質の価値は無い!!」

 

「その……地獄行きの船だと言うのは分かっているが、そこまで堂々と言われるのはそれはそれで困るのだが」

 

「諦めなさい」

 

「一度でいいから、そいつに人質の価値はねえ!ってやってみたかったんだよな……アメッカじゃ出来なくなったし」

 

 相変わらずのゴンベエに流石のパーシバル殿下もドン引きをしていた。

 ゴンベエのこういうところは多分、どう頑張っても変わらないと思うので諦めるのがオススメだと一言忠告をしておいた。

 

「ここが監獄島……」

 

「島全部が監獄なんだ、秘密基地みたい!!」

 

「ライフィセット、秘密基地じゃない。暫くはここがマイホームに変わるんだ……」

 

「いや、秘密基地だ。断じてマイホームじゃない!!そこは譲れん」

 

 私達の感傷を邪魔するゴンベエとアイゼン。

 

「秘密基地って言うけど、監獄だろう。牢屋以外ねえぞ」

 

「そこはオレ達の腕の見せ所だ」

 

「……オレ、最近、本気で忘れ去ろうとしてるけども本気で国外逃亡の準備をしておかねえとな」

 

 そんなことはしなくていい。ゴンベエの技術を独占しようとする者達から私が守る。

 

「しかし、見張りの1人もおらんのう」

 

「やけに静かだな」

 

 聖寮が管理しているという割には船の一隻も見当たらない。

 聖寮と連絡が取れていないらしいが、ここまで静かなのは不気味さを感じる。

 

「なにかあったのは確かみたいだが……モアナ達が居るから、ここより最適な場所は無いか」

 

「中の様子を確かめるわよ」

 

 今回はモアナ、ダイル、クロガネ、パーシバル王子も一緒に同行する。

 監獄だけあり中は全体的に暗く灯りが少ない。いや、それよりも人が少なすぎる。

 

「う、っ、ぐ……」

 

「対魔士!?」

 

 中を探索し広間の様な場所に出ると、そこには何時もの対魔士がいた。

 血塗れになっており、エレノアが駆け寄るのだが倒れてしまう。

 

「しっかりしてください!!」

 

「うっ……首の無い騎士……うま……」

 

「逝ったか……ハウンド」

 

「っ、貴方!!」

 

「違う、上だ!!」

 

 何時もの様に四角の正方形の立方体を作り出すゴンベエ。

 とどめをさすのなと思ったエレノアだが、その前に上から憑魔が襲い掛かってくる……のだが、その前にゴンベエが追尾する光る弾で撃ち抜き倒す。

 

「聖寮は囚人達の制圧に失敗したみたいね」

 

「おかしいな。無茶苦茶強い奴は居なかったが、それでも結構な数の対魔士達が居た筈だ。

俺みたいに業魔になっちまった奴も何人かチラホラと見たが、特段強い奴が居たわけでもないぞ」

 

「……蟲毒が行われたかもしれない」

 

「うげ……」

 

 どうしてこんな事になっているのか分からない中、1つの予想をするアイゼン。

 それを聞いたゴンベエは物凄く嫌そうな顔をしている。

 

「コドク?」

 

「業魔同士を喰い合わせることで、より強力な業魔を生み出す外法だ」

 

「なるほど……」

 

 大体の流れが読めた。

 

「囚人同士が喰い争って対魔士達が敵わない憑魔が出来たのか」

 

「暴動が起こったからですね」

 

「誰かさんのせいで、のう」

 

「……そういう風に言うのはやめるんだ。

結果的にはこんな事になってしまったが、今はまずその首無し騎士の憑魔を倒そう……そうでなければなにも始まらない」

 

 せめて、死んだ対魔士達や喰い争って死んでしまった囚人達の為にも。

 

「決まりね……その首無し騎士の業魔を倒すまで、広間を拠点にするわ。王子とモアナはクロガネ、ダイル、あんた等に任せるわ」

 

「おいおい、明らかに戦力差が激しいだろう」

 

「なら、オレが残ろうか?」

 

「あんたは私と一緒よ」

 

「そうか」

 

 明らかに戦力差が激しいが、気にしている場合ではない。一刻も早く憑魔を一掃しなければこの島を使うことは出来ない。首無しの騎士の憑魔は出てこないものの、普通の憑魔はわんさかと出てくる。

 

「ここにはどういった人達が捕まっていたんだ?」

 

「主に業魔病に……ダイルやクロガネの様に業魔となってもまだ理性ある方が多く捕まっていました」

 

「憑魔を捕らえていたのか……確かに、ここならば逃げ出す事は不可能だが……」

 

 要塞と呼ぶに相応しいが、牢屋の数が思っていたよりも少ない。

 王都の牢屋や監獄と比べれば物凄いが、憑魔を捕まえていたと言われるとどうにもピンと来ない……そう、何故かピンと来ない。

 

「憑魔を捕らえて、ずっとここに閉じ込めるだけなのか?」

 

 聖寮は憑魔と戦う為の組織だ。

 この要塞の中にいる理性の無い憑魔だけを倒し、ダイルやクロガネの様な理性ある憑魔を投獄すると言われてもあまりピンと来ない。まるで、ここ自体がなにかの実験をしている施設の様に見えてしまう。

 

「ここには喰魔が居るのか?」

 

 憑魔が群れれば発する穢れも強まる。

 要塞にいるのが憑魔だとするならば穢れは満ちており、穢れを喰らってカノヌシに送り込む喰魔にとって絶好の餌場だ。

 

「首無しの騎士!」

 

「アステロイド」

 

「……お主、本当に容赦が無さすぎんかの?」

 

「別にいいだろう」

 

 あれこれ考えている内に、首無しの騎士に遭遇するのだがゴンベエが瞬殺してしまう。

 その姿にマギルゥはドン引きするが、日頃はベルベット達が戦わなければ意味が無いと手を出さないのでこういう時はとゴンベエは容赦しない。

 

「……あ!」

 

「どうしたライフィセット?」

 

「カノヌシの力を感じた……」

 

「多分、この下よ」

 

 カノヌシの力を感じたが、まだ正確な場所がライフィセットには分からないのに此処だと真下の監房の入り口を開けるベルベット。

 

「監獄島で1番厳重な特別監房よ……ライフィセット、力を感じる?」

 

「うん……ここが地脈点だと思う」

 

「地脈点に作られた監房、ここに閉じ込められていたのが」

 

「餓えた喰魔が繋がれていた……」

 

 そうか……ここはただの監獄ではなかった。

 

「そいつは毎日放り込まれてくる業魔を喰らって腹を満たし、血まみれの唇を拭った」

 

 おかしいと感じていた違和感は間違いではなかった。

 

「島に何百といる悪人や業魔の発する穢れをカノヌシに送っている事も知らず、3年の時を過ごしたある日、女聖隷が現れた」

 

 ここは餌場。

 

「女聖隷は喰魔を閉じ込める結界を解いて喰魔を出した……喰魔は出してくれた聖隷すらも喰った──そして」

 

 喰魔であるベルベットが穢れを喰らう為の餌場だ。

 

「あたしは手に入れた、弟の仇を伐つ為の力を!!」

 

 感情的になり左腕を憑魔化させるベルベット。

 その目には怒りや憎しみが宿っており、私にはどうすることが出来ない。

 

「こんな場所が、後4つもあるのか……」

 

 穢れに満ちた地脈点。

 ひとたびそこにいる喰魔を引き剥がせば喰らう筈だった穢れは行き場を失い溢れ出て人々を飲み込んで憑魔化させてしまう。

 

「アルトリウス様が、そんな事をするはずが」

 

「もう、認めないか?」

 

 この残酷な光景を見てそれでもまだ、なにかがあると思っている。思おう必死になっている。

 でももう、誰が見ても酷い惨状だ。アルトリウスの行いをいい加減に認めなければならない。

 

「そんな……そんなってどれのことよ?

病弱になった義弟(おとうと)を犠牲にしたこと?喰魔になった義妹(いもうと)を監禁し続けたこと?

全部……全部あんたが讃える導師様がやったことだ!!カノヌシの力を手に入れる為に……」

 

「きっと……なにか、お考えが」

 

「お前さ、お考えが、お考えがって言っているけどお前自身が理解してなくてどうすんだよ?」

 

 エレノアの胸ぐらを掴み怒るベルベット。

 耐えきれなくなったエレノアはベルベットと目線を合わせる事は出来なくなるのだが、ゴンベエは一切逃がさない。

 

「憧れは理解から最も遠い感情だ。アルトリウスを慕い尊敬していて、その人のようになりたいと思っているんだろ。

だがな、人と人は完璧にも完全にも分かりあえない。十中八九ぐらいしか分かりあえない生き物で、お前が見ているのはそいつの外側だけ……表面上に見える部分だけだ。アメッカは真っ先に気付いたぞ」

 

「エレノア、私はあの日、泣いた。アルトリウスの演説を聞いて泣いたんだ……形が無いと」

 

 確かにアルトリウスが言っていることは大きく立派だった。言葉だけで強い人間なのだと思わせる程だった。だが、言葉だけだった。

 

「私はあの時、アルトリウスがなにを言っているのかが理解出来なかった。

世界を救いたいという思いは本物かもしれないが、その世界の形が見えずにいた……エレノアには見えていたのか?」

 

「……」

 

「世界の痛みを受け止める?ふざけるな!!あの子の痛みは誰が受け止めるんだ!あの子の絶望は誰が癒すんだ!!

世界の為なら……ラフィは殺されて当然だって言うのか?なにも見えていないなら、なにも理解していないならなにも語るな!!」

 

 怒りのままに叫ぶベルベット。

 なにも言えないままエレノアは終わってしまい意気消沈となる。

 

「女の涙は恐ろしい……スッキリしたか?」

 

 空気が重い中でもゴンベエは自分を保っていた。

 気が狂う程に怒っているベルベットに優しく声をかけており、ベルベットも吐くものを吐いて少しだけスッキリとしたのか乱れていた呼吸は元に戻り、冷静になる。

 

「とにかく、コレで喰魔を探す手間が1つ減ったわね」

 

「その代わりにややこしい手間が1つ増えたぞ」

 

「どういう意味よ?」

 

「お前、脱獄してからどれぐらい経ってる?」

 

「正確な日にちは分からないけど、そこそこよ」

 

「聖寮、手抜きし過ぎだろう」

 

 最終的にカノヌシを使ってなにかをしようとしているアルトリウス。

 先ずはカノヌシを完全にしなければならないが、そのカノヌシを完全にするには喰魔が穢れを送り込まなければならない。だが、目の前にいるベルベットは脱獄してからそこそこに日が経っている。つまり、カノヌシはずっと弱体化していることになる。

 

「……今はまだ分からないわ。取りあえず、地脈点に離れておけば穢れを送り込まずに済むわ」

 

 まだまだカノヌシに関する謎は多い。

 ベルベットが今までここにいないのに捕らえに来ないのは何故?という疑問は残されたまま、島を拠点にする事に成功した……かに思われた。

 

「モアナ!?」

 

 ゴンベエとベルベットに責められ意気消沈していたエレノアは急にモアナの名を叫ぶ。

 

「どうしたんだ急に?」

 

 ただ名前を呼ぶのでなく焦った様に叫んで、首無しの騎士の憑魔はもう倒された。

 それ以上に危険な存在は此処にはもう居ない筈で、心配する必要は何処にもない。

 

「……嫌な感じがします。モアナ達になにかあったのかもしれません」

 

「2人に怒られて幻聴が聞こえる様になったのではないのかのぅ?」

 

「蟲毒で出来た首無しの騎士はもういないよ?」

 

「……お願いです!急いで広間に戻りましょう!!」

 

「……ゴンベエ」

 

「はいはい」

 

 広間にマーキングをしていたのか、ベルベットに言われて何時もの様にワープをする私達。

 

「モアナ!!」

 

「そっちじゃない、こっちだ!」

 

 広間にワープをするとエレノアは直ぐにモアナの方を振り向いた。

 モアナはエレノアが来てくれた事に喜び笑顔になるのだが、ゴンベエは直ぐにモアナとは反対の方向をエレノアに向かせる。

 

「これは……首無しの騎士と、馬?」

 

 逆方向には馬に乗った首無しの騎士がいた。

 

「……あぁ、なるほど!!

首無しの騎士の業魔ではなく、首の無い騎士と馬じゃったのか!!」

 

「なるほど……」

 

 どうりで最後の言葉を残そうとしていた対魔士の言葉が途切れていた筈だ。

 マギルゥが妙な納得をした馬に乗った首の無い騎士の穢れはゴンベエが瞬殺した首無しの騎士よりも強い穢れを放っていた。

 

「ハウンド+ハウンド」

 

「待ってください!」

 

「なんだ?」

 

 倒しても問題の無い敵なので、迷いも無く攻撃しようとするゴンベエを止めるエレノア。

 その目はさっきまでの弱々しい目でなく、強い力がこもった目だった。

 

「約束したんです……必ず、守ると。ここは私にやらせてください」

 

「人が初の強化追尾弾(ホーネット)を撃とうとしているのに……仕方がない」

 

 エレノアの為に、一歩引き下がり光の弾を消したゴンベエ。

 約束を守る為に戦おうとしているエレノアの邪魔をする無粋な真似はしないとロクロウ達も剣を抜いてはいるが、攻撃はしない。

 

「参ります!!」

 

 約束を守ろうとするエレノアは強い。

 

「響け!集え!全てを滅する刃と化せ!!ロスト・フォン・ドライブ!!」

 

 槍で連続攻撃をした後に槍の刃先に光を集中させ、強烈な突きで首の無い騎士と馬の憑魔両方を貫いた。




スキット 真面目に不真面目

エレノア「いったい、どの様な理由でパーシバル殿下はこの船に」

ベルベット「別にどうだっていいわよ」

アリーシャ「王族には王族の苦労が存在している……私があまり言えた義理ではないが」

ゴンベエ「で、んかが此処にいるってことがへ、いかに知られたらややこしくなるなぁ、ぐらいの認識で良いだろう」

エレノア「あの、何故呼ぶ時に一旦区切るのですか?」

ゴンベエ「王様の事を屁以下と呼びたいから」

エレノア「上手い!って、違います!!あまり、粗相の無い様にしなくては」

ベルベット「嫌よ」

ゴンベエ「お前、そんな事を言い出したらオレはアメッカをはじめとしたそこそこの権力を持った奴等に対して粗相しまくりだぞ。もう喋り方1つで斬首されるレベルの粗相をしまくってるぞ」

アリーシャ「私は気にはしないが、もう少しゴンベエは態度を改めた方が良いんじゃないのか?」

ゴンベエ「分かった……いえ、分かりました」

エレノア「そうそう、その様な感じです」

ゴンベエ「しかし、エレノア嬢。今から向かいしは監獄でございます。城の生活と比べれば幾ばくかは劣ってしまうもの。誠に申し訳無いのですがパーシバル殿下には王族の生活でなく人としての生活をすると申し上げなければなりません。パーシバル殿下はなにかが出来るのでしょうか?」

エレノア「あの、私にまでそういった事をしなくてもいいのですよ?」

ゴンベエ「王族だけ特別視扱いをして敬う素振りを見せれば媚びた様に見えるものです。
こういった場合ですと皆に対しても分け隔てなく接しなければなりません……時にベルベット様」

ベルベット「なんで私は様なわけ?」

ゴンベエ「私は貴女様の下僕と仰っているではありませんか」

ベルベット「まぁ、そうだけど……てか、私!?」

ゴンベエ「監獄を拠点とした暁には少々監獄を工事したいのですが、よろしいでしょうか?」

ベルベット「好きにしなさい……」

ゴンベエ「ありがとうございます。因みにですが、その工事ですが拠点での生活を快適にする工事なのですが……アメッカ様、ベルベット様、エレノア嬢、なにかお望みとあらば拠点を快適に過ごしやすく工事致しますが?」

アリーシャ「待って、ゴンベエ。その、私には様をつけなくても」

ゴンベエ「それは出来ません。私からすれば貴女様はお上の人。更に言えば生殺与奪の権利を貴女様は握っておられるのです。貴女の鶴の一声で私の人生を終わらせることが何時でも可能なのです」

アリーシャ「そんな……私とゴンベエはそんな首輪と鎖で繋がった関係では」

ゴンベエ「所詮、私も飼い犬というわけでございます……貴女様が何故私と一緒にいるかお忘れではありませんか?」

アリーシャ「うっ……」

ゴンベエ「それで皆様、なにかお望みの様な物は無いでしょうか?」

ベルベット「あるわよ」

ゴンベエ「なんでしょうか?」

ベルベット「今すぐにその紳士みたいな喋り方を止めなさい……気持ち悪いわ」

ゴンベエ「しかし、これは貴女様」

ベルベット「いいから普通に喋りなさい!!」

ゴンベエ「……んだよ、ちゃんと真面目にやったじゃねえか」

ベルベット「あんたが私に対してそんな他人行儀の態度なんて気持ち悪いのよ!」

エレノア「なんというか、普段が普段だけに物凄くむず痒くなってきました」

ゴンベエ「おいおい、今でこそ矯正をされてある程度はマシになったが昔はもっとゴリッゴリの関西弁で下品だったぞ」

アリーシャ「無しだ……」

ゴンベエ「なんだ?」

アリーシャ「ゴンベエはどちらかと言えば下品だ。無しだ、あんな似非紳士みたいなのは無しだ」

ゴンベエ「肩が凝るからああいうのは基本的にはしねえよ」

アリーシャ「基本的じゃない!!絶対にだ!!」

ベルベット「そうね……命令よ。次、あんな真似をしたらぶっとばすわ!!」

エレノア「……普通は逆ではないのですか?」

アリーシャ「違う……このままでいい。このままでいいんだ……」

ベルベット「こいつが私に対して他人行儀なの、気持ち悪いのよ」

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