「アメッカ、エレノアを見てないかしら?」
監獄島を拠点として制圧して早数時間。
アイフリード海賊団は今までの疲れを癒すかの如く私物やお酒を持ち込み広間で宴会を広げていた。お祭りは悪くはないのだが、どうにも気分に乗らない私は1人考え事をしているとベルベットが訪ねてきた。
「エレノアは見てはいない……なにか用事があるのか?」
「別に……モアナに探してきてって頼まれただけよ」
「そうか……私も探そう」
「別にいいわよ。急ぎの用事でもないし」
「いや、私が探したいんだ」
監獄島についてから一悶着あった。
ベルベットは怒り、パーシバル殿下はゴンベエに自分の世界の狭さを教えられていた。
「エレノアの事が心配なんだ」
パーシバル殿下はゴンベエのお陰か、鷹のグリフォンを連れ出した事に対する迷い等が吹っ切れた。
感情的になっていたベルベットは冷静になりモアナの頼みを聞いてこうしてはいるものの、迷いに迷いまくっている。
きっかけはそう、モアナを見てから。モアナから始まり、パーシバル殿下のグリフォンやベルベットの事を知って、それでもと言えばゴンベエに責められた。
「好きにしなさい」
ベルベットの許可も貰えたので、エレノアを探す。
既にアイゼン達にエレノアの居場所は何処かと聞いており、全員エレノアを見てはいない。そうなると外に居るのかと思ったが、こんなところで逃げるほどエレノアは弱くはない。
ゴンベエが書いたこの監獄の見取り図を見ると屋上に繋がる通路があり、そこだと確信をした私達は屋上に向かうとエレノアが項垂れていた。
「こんなところにいたのね。モアナが心配していたわよ」
「……わざわざ捜しに来てくれたんですか?」
「女の涙には弱いのよ」
「……そうですね。喰魔だけど、モアナは小さな女の子です」
モアナの事を出すと微笑みを見せるエレノア。
元気になったと思ったのだが、直ぐにエレノアは真剣な顔をする。
「貴女達と旅をしてはじめて知ったことです」
「私達、か……私とゴンベエもベルベットと出会わなければ同じだった」
「そうなのですか?」
「ああ」
私達が出会った憑魔は皆、理性を失い狂っていた。
唯一自我を保っていたヘルダルフはどうしようもない程の悪だ……ベルベットとロクロウとは大違いだ。
「恐ろしい業魔も喰魔も、道具だと思っていた聖隷も人と同じ想いを抱えて生きている」
「……」
エレノアが驚いている事に深く共感をする。
この時代には天族を信仰する文化が殆ど無い……だが、そのお陰で天族の方々も人となんら変わらないと分かった。
「私は、なにも知らなかった。教えられていた事をただ信じていただけ。業魔病の真実も聖寮がなにをしているかも、なに1つ……」
「知らない方が幸せな事だってあるわよ」
「それは対魔士にとって卑怯な道です!なにも知らず、だから責任もとれない!そんな生き方、私は……もう少し、ここで頭を冷やします。モアナには大丈夫だと伝えてください」
「……ほどほどにね。海風は冷えるわよ」
「……ありがとう」
「違う。あんたが風邪を引いたらモアナとライフィセットが心配するからよ」
絶対に嘘だ。
ゴンベエが何時もベルベットに殴られるのを覚悟の上で言っている気持ちがよく分かる。
本当はベルベットは「考えなさい。けど、ここは寒いんだから風邪を引かないようにね」と言っている様にしか見えなかった。
「アメッカ、戻るわよ」
「私はまだここにいる」
「……そう」
ベルベットは離れようとしたが、私はまだここを離れるつもりは無い。
私が此処に残る意志を見せると1人去っていった。
「自分の信じていたものが、知ろうとしなかった事が、辛く厳しかった」
「アメッカ?」
「私はゴンベエに理想像を砕かれてしまった……今となっては形すら無かった理想像だが」
「アメッカの理想像を、ですか?」
「穢れの無い美しい故郷を見たいと言う夢があった。だが、それがなんなのかすらまともに理解していなかった。
災禍の渦の中で一筋の希望を見つけて明るい未来がやって来ると思っていたが、それは永劫の明かりでは無いことを知った」
永遠に変わらず続くものなんて何処にも無い。
かといって水を与えている限りは変わらずに回り続ける歯車である導師のシステムを、このままにしておく事は出来ない。
「探すしかない……自分だけの答えを」
ゴンベエは言っていた、自分がそうしたいと心から思った事ならば自分が自分に対して文句を言わないのならそれでいいと。その結果が、私は悪を殴る。悪事の証拠が無いならば作り上げる。裁けぬ悪を裁くのでなく裁ける様にする。この答えになんの文句も無い。
「もし、もし答えが無ければ、どうするつもりなのですか?」
「……無いならば、作ればいいじゃないか。そう、無いならば作ればいいんだ」
遥か昔からそうだ。
そこにそれが無いのならば、新しく1から作ればいい。
「作ることが出来なければ?」
「どういう理由で作れない?」
「それは……材料が足りなかったり?」
「だったら、何処かから持ってくればいいだけだ。
自分の中に、エレノアの世界に新しい答えになるものが無ければ別の世界と触れ合えばいい……そうして今に繋がっている」
なんの因果か、私達の世界は今こうして交わっている。
自分の世界とは違う世界に一度道を踏み外してみれば、世界がガラリと一気に変わる……とはいえ、問題は山積みだ。
私達は過去に起きた出来事を知りに来ただけで、過去を改変して自分に都合のいい未来を作り上げると言った事はしにきてはいない。そんな事はするつもりは無い……。
「はぁ……」
「なにか悩みがあるのですか?」
「私達の問題はまだまだ山積みなんだ」
現代に帰れば戦争を再開させない為にも、戦争推進派やバルトロの様に私利私欲を満たしている者達をどうにかしなければならない。
その為には和平を結ばなければならないがローランスの方にも戦争推進派はいる為に上手くはいかない。両国の戦争推進派で戦争を手引きしている者達の中にはヘルダルフもいる。
嫌でも戦わなければならず、そうなると現状まともに戦えない私は邪魔だ。ヘルダルフ達はその事を知っており、迷いなく狙ってくる。だから、ゴンベエの側に居て戦える様にならなければならない。
ヘルダルフを倒した後にもまだまだやらければならない事はある。きっとローランスにも私の様に戦争を反対している平和を強く望む者がいる。その者達と暴力以外で戦争推進派の者達を裁かなければならない。
それからスレイのことも。戦争や政治にスレイを利用することは許さない。スレイが好きな遺跡探索を出来るようにしなければならない……。
「あの、顔色が段々と悪くなっていませんか?」
「問題が、あまりにも山積みな事を思い出した……」
ゴンベエの事も忘れてはいけない。
過去ばかり振り返っていたせいで、未来を見るのを忘れていた。改めて私がやらなければならない事が分かると胃の痛みに悩まされる。
「私でよければ相談に乗りますが」
「いや、これは私がどうにかしなければならない問題だ……エレノアはまず、自分の答えを探すことに集中してくれ」
最後のゴールはまだわからない。
けど、私には、私がやらなければならないと思うことは沢山あるんだ。ゴンベエと一緒に異大陸に逃亡をするなんて事は絶対に出来ない。無論、この時代に残ることもだ。
「答え……そうですね。自分の答えを探さねばいけません。戻りましょう」
「もういいのか?」
「海風は冷たくて、風邪を引いたらモアナ達が心配しますよ」
エレノアと一緒に監獄内に戻っていく。
監獄内の宴会は終わっておりゴンベエを除く面々が広間に集まっていた。
「ゴンベエは何処にいますか?」
「あいつなら木材を片手になにかをはじめてたぞ。
水力発電所がどうのこうので滅茶苦茶強力な磁石を船から出して、クロガネが引っ付いてたな」
「下水路に居る筈だよ……でも」
「来ない、か……」
皆が宴会で騒いでいる中、ゴンベエはこの監獄の見取り図を書いていた。
下水路に居るのと木材を手にしていたということはゴンベエの家にあった水車を作ろうとしている……此処を改造するつもりだが、大地の汽笛を見られて物凄い技術力の持ち主だと知られたのにそんな事をして大丈夫だろうか……ゴンベエの事だから、過去の出来事だからセーフとか言いそうだ。
「仕方がありません……皆さんにお話があります」
真剣な顔をするエレノア。
ゴンベエを抜きにして、話をはじめる。
「今までに隠してはいましたが、アルトリウス様に特命を受けたスパイでした。『聖隷ライフィセットを保護し聖寮本部に回収せよ』味方の命を奪う事すら許された最重要の特命です」
「……どうして、それを話すつもりになったの?」
「最初は貴方を騙して連れていくつもりでした。ですが、もう聖寮に従うつもりはありません」
「アルトリウスを裏切るわけ?」
ベルベットの問いに首を横に振る。
「いいえ。アルトリウス様が目指す世界も、その志も、人の世を慮っての事だと信じています。
でも、その方法を信じられない自分がいます……ですので、喰魔の保護に協力します。私が答えを見つけるために。私は本当の事を知りたいのです。自分に恥じない生き方をする為にも」
「お前の流儀は分かった。だが、本当の事を知って今までが間違っていたのならばどうするつもりだ?聖寮は聖隷を道具と認識してやがる」
決意を改め私達の前で表明をするエレノアにアイゼンは今までの間違いをぶつける。
「……まずは、謝ります。誠心誠意、頭を下げて。
意志を抑制して物の様に扱ってきた事を、一人一人に頭を下げて謝りたいと思います。アメッカ、その為に協力をしていただけませんか?」
「私の力でよければ、幾らでも力を貸そう」
ごめんなさいと謝るならば、どれだけでも笛を吹こう。
「はっはっは、完全な感情論だな」
「ようこそ。悪党の世界へ」
「一緒にしないでください!!感情で納得出来ない事こそ理に反する事です!!私が納得する事が出来ないことは認めませんよ!」
「ほんと、面倒なやつ……」
「面倒でもいないと困るでしょう!!」
「……うん。エレノアは僕の器だからね」
「面倒ではない。エレノア、答えを探そう。例え困難な道のりだとしても1歩ずつ歩いていこう」
「……はい!」
迷いに迷った末に答えを見つけようと決めたエレノア。
ライフィセットの為だけの関係から本当の意味での仲間になることが出来た。
今までとなにかが大きな変化があるかと言われれば、特にない小さな一歩を踏み出す事が出来た。
「あ~臭かった」
「下水路なんかに水車を作るのはやめとけつったんだ。ありゃ、糞も流れてくるんだぞ」
「悪かった。その件に関しては本当に悪かった」
下水路に行っていたゴンベエがダイルと共に戻ってきた。
2人とも物凄くげんなりとしており、ゴンベエは申し訳なさそうにダイルに謝っていた。
「ちょうどいいところに来てくれましたね」
「なんだ全員揃い踏みで?もう次の喰魔探しをすんのか?」
「違います……貴方にも聞いていただきたいのです……私は実はアルトリウス様の命を受けて、スパイをしていました」
「なんだそんな事か」
あ、これは……。
「そんな事って、私はライフィセットを聖寮の本部に連れていく命令を受けていたのですよ!?それだけじゃなく、貴方をどんな手を使っても殺せと命令を」
「エレノア、待て。ゴンベエ」
ゴンベエにさっきあったスパイの告白をしようとするエレノアを止めようとすると、マギルゥが邪魔をしてきた。
「エレノアは本当の事を知りたいんらしいからのぅ」
マギルゥ!?
私の口を封じてきたマギルゥはニヤニヤと笑いながら、エレノアとゴンベエを見ていた。
「いや、知ってるぞ?」
「……え!?」
ゴンベエの衝撃的発言を受け、驚くエレノア。
「さて、俺は寝る前の素振りでもしてくるか」
「オレは自分の部屋でも作りにいくか」
私達の方を振り向くとアイゼンとロクロウはそそくさと逃げていく。
「ぼ、僕は知らなかったよ!エレノアがスパイだったことは」
「坊よ、それはフォローにはならんぞよ」
自分は違うとライフィセットは強く否定するが、それは今するべき事ではない。
エレノアはマギルゥを強く睨んだ後に、ベルベットに視線を向ける。
「何時からですか!?何時から気付いていたんですか?」
「最初からよ。アルトリウスから命令を受けている所から全部見てたわ」
「全部って、あの時はゴンベエは寝ていた筈ですよ」
「アメッカが全部喋ったわ」
「ベルベット!?」
確かに、あの後にゴンベエの事を狙っているから注意をしてくれとは言った。
マギルゥ達にも言って、ライフィセットに言えばスパイと気付いている事に気付かれるかもしれないとあえて教えずにいた。
「てか、お前オレ達が疑問に思っている事を一緒になって考えてたりした時は普通だけど、自分から探りを入れてみようとライフィセットになんか聞いたりした時、あからさまに態度を変えててライフィセットも疑ってたぞ」
「そうなの、ですか……」
「えっと……なにかあるかなって」
「……っ……」
プルプルと震えて顔を真っ赤にし、今にでも泣き出しそうな顔をしているエレノア。
唯一の救いだったライフィセットにすら見捨てられてしまった。確かに、なにか気まずそうな人を騙している事に罪悪感を抱いている顔をしていたな。
「エレノア、ぶっちゃけた話、失敗した時は蜥蜴の尻尾切りだと器のお前ごとライフィセットを殺すとかアルトリウスの事だから企んでいる。自分で戦ってもまともに勝てないのを理解していないのか、お前にオレを殺せとか無茶を言ってきた……だが、だが、正直にそれを言おうとした事は変われたんだ」
「……」
「答えは様々な世界に広がっている。自分が行くことの無い、自分の無い世界に案外置いてるかもしれない。自分が自分に対して納得のいく答えを出してみろ」
「……ですか……」
「ん?」
「言いたいことは、それだけですか!!!」
「って、なに攻撃してくるんだよ!!」
顔を真っ赤にし、涙を流しながら怒りゴンベエに向かって色々と攻撃する為に槍を振るうエレノア。
エレノアに対していいことを言っているつもりだろうが、全然いいことを言っていない。
それどころかさっきまでその辺を私と話し合っていたところで、エレノアは納得のいく答えを出したいという答えを出している。
「知らなくてもいい事実は無いかもしれませんが、言ってはいけない事はあります!!それとやはり分かりました!!ゴンベエ、貴方と言う人がどれだけの屑かということを!!」
「オレが屑なのは事実として、逆ギレをするな!!」
「うるさい!!」
「エ、エレノア、落ち着いて」
「止めときなさい……こっちにまで被害を被るわ」
ゴンベエは全ての攻撃を難なく避けており、ライフィセットは心配をするが今此処で間に入れば自分達も巻き込まれるとベルベットは制止をする。
「大体な、スパイとかやる上で大事なのは日常に溶け込むことだぞ。お前は生真面目過ぎて溶け込めてなかったぞ」
「生真面目でなにが悪いのですか!!」
「っち、逃げるが勝ちだ!!」
エレノアの説得を無理だと分かったゴンベエは尋常ではない程の早さで逃げていった。
「はぁはぁ……っく、何時もはベルベットの攻撃を受けている癖に……」
「いや、あんた本気で殺そうとしてるでしょ」
ゴンベエを完全に見失ったエレノアは自分のスパイ行為が最初からバレバレだった事を1から思い出し、恥ずかしさに涙を流した。
スキット 兵器は平気じゃない
ゴンベエ「お前等、真っ先に逃げやがって……」
ロクロウ「いやぁ、お前が絡んで変な事になるとロクな事にならないからな」
アイゼン「案の定、エレノアに殺されそうになったか」
ゴンベエ「あの程度の動きで殺されるほど、オレは弱くはねえよ。ベルベットと違って殴られるのを覚悟してないから絶対に殴られない」
アイゼン「それがお前の流儀か?」
ゴンベエ「あいつには殴られるぐらいがちょうどいいんだよ……溜まってるもんとか吐き出させるのにも」
ロクロウ「まぁ、エレノアがクソマジメならベルベットはひねくれ者だからな」
ベルベット「誰がひねくれ者ですって?」
ゴンベエ「もう少しは素直になれってことだよ。パスカヴィルの婆さんから言われてただろ」
ベルベット「私は自分の気持ちには素直よ……それよりも、ライフィセットがあんたに用があるのよ」
ゴンベエ「オレに?」
ライフィセット「うん。電球を貸してくれないかな?本を読みたいんだけど、ベルベットが今は薄暗いからダメだって」
ベルベット「暗いところで本を呼んでたら、目を悪くするでしょ」
ゴンベエ「お前達に人間の原理が通じるのか……」
ライフィセット「蝋燭は火を使って危ないし、本に火がついたら大変だから、電球なら光だけだから」
ゴンベエ「光だけって、電球はガラスの中にある竹を蒸し焼きにした物を熱して明かりを灯してる物だ。作る過程で水銀を使って空気を抜いて中の竹が燃えない様にしてんだが、ライフィセットなら変な風には使わねえから、貸すのは構わねえぞ」
アイゼン「なら、オレにも1つ貸せ。この薄暗さも悪くはないが、ずっととなれば陰気臭くなる」
ロクロウ「確かに、ここは空気は入るが日の光が入ってこないのはな。俺にも1つくれ」
ゴンベエ「待て、電球には限りがあんだからそんな風にはっと、その前にお前達にコレを渡すのを忘れてた」
ライフィセット「地図……この監獄内の地図だ。聖寮が使ってたのよりも、見易いよ」
アイゼン「監獄島に見取り図か……同じのが何枚かあるようだが」
ゴンベエ「ここを拠点にするとして、何処になにを置くかはまだ決まっていないだろ?ただでさえ、デカい監獄で何処が誰の部屋とか書いておいた方が分かりやすいし……おーい、アメッカ達も書いてくれ」
アイゼン「今後の行動を円滑に進める為にも秘密基地を整備、改良をしておく必要がある」
エレノア「なんの話をしていると思えば……建物は業魔でも破壊することは難しい程に頑丈ですよ?」
ゴンベエ「でもあれだぞ。トイレの数がビックリするぐらい少なくて、風呂が1つしかなかったぞ」
マギルゥ「それは大変じゃ!!風呂が1つとすれば、なにかの拍子で風呂上がりにワシの裸体が皆に見られてしまう可能性がある。もしお主達に見られた日には記憶を消す為にワシの光翼天翔くんを振るわなければならん!」
アイゼン「お前の裸を見た程度でどうともならん」
ロクロウ「そっちが
ゴンベエ「大体そういう時って、風呂入ってるとか言ってなかったり言い忘れてるパターンがあるから何事もなく殴り返すぞ」
ライフィセット「は、入る前に誰かが入っているかちゃんと確認するよ」
マギルゥ「お主達の言葉が痛い。坊だけが救いじゃ」
エレノア「ライフィセットなら間違えて入ってきても怒りはしませんよ」
ライフィセット「ぜ、絶対にそんな事はしないよ!?」
マギルゥ「ぐふぅ!?」
アリーシャ「マギルゥ……ダメだ」
アイゼン「放っておけ。それよりも、居住スペースに目が行きがちだが此処は要塞であり秘密基地でもあるんだ。そういった改良も大事だが、もっと他の所にも目を向けておかなければならん」
ロクロウ「そうだなぁ。やっぱこういう秘密基地感があるところだから、普通の豪邸みたいな物ばかりあってもな。なぁ、ライフィセット」
ライフィセット「うん……」
ロクロウ「どうした浮かない顔だな」
ライフィセット「此処には無理矢理閉じ込められた人達が大勢いたのに僕達がこんな風に使っていいのかなって」
ベルベット「此処が嫌な場所なら最初から来ないわよ。私達の事なんか気にしなくていいわ」
ロクロウ「そうそう。むしろこうして俺達の物にしてやったぞ!って気持ちもあるしな」
マギルゥ「ワシは差し入れのマロングラッセを看守に食べられた恨みがあるがの」
アイゼン「他人がなにを思おうがお前はお前を貫け」
ライフィセット「……うん!」
アイゼン「とは言うものの、喜んでばかりはダメだ」
ゴンベエ「なにを作るか考えるところ悪いけどよ、1つだけ約束してくんねえか?」
アイゼン「約束だと?」
ゴンベエ「船の一室を借りる為に技術を提供している。ここを改造する上で技術は提供をするが、人を怪我させたり殺したりするのを目的に道具を絶対に作ることはしないし、オレには頼むな」
ロクロウ「おいおい、それじゃあ対撃砲を作るなって事か?秘密基地の対撃砲はロマンだろ」
ゴンベエ「分からないわけじゃないが、それでもだ。オレはオレ自身がどんだけヤバいかを自覚してるし、1回アメッカのところでやらかしたし。国じゃなくて社会を傾かせる事だって簡単に出来る……この約束を守れないなら、今すぐにでも此処を出てアルトリウス達を殺しにいく」
アリーシャ「ゴンベエ!?」
アイゼン「……分かった。兵器の類いは作らせない様にする。だが、思う存分、働け」
ゴンベエ「ああ、思う存分お前を驚かせてやるよ」
スキット 自爆スイッチは存在不可欠
ライフィセット「僕、消火装置が必要だと思う!ヘラヴィーサを見て、火事は怖いと思ったから!」
ベルベット「水の聖隷術を使えるあんた達がいれば、そんなの必要ないでしょ」
ライフィセット「あ……うん……」
ゴンベエ「あ、1つだけ大事な事を言うのを忘れてたが、基本的に外付けの改造しか出来ねえぞ」
アイゼン「なんだと!?」
ゴンベエ「睨むんじゃねえよ、建物と素材の都合上なんだよ。仕掛けのある建物は仕掛けがあるの前提で作り、ガッシリと隙間を無くしている所じゃ後から弄くったら大変な事になる」
アリーシャ「確かに、言われてみればそういった仕掛けは先に作っている物だ。ローグレスの王宮へと繋がる地下道もレディレイクの隠し通路も」
ゴンベエ「この監獄を1から作り直すならともかく、改造となれば中に仕掛けを施すのは難しい。紐やレバーを引いた瞬間に階段が坂道になるとか、指を鳴らした瞬間に床が開いて、秘密のお宝がせり上がって出現するとかは出来ない」
エレノア「その機能、必要なのですか?」
ゴンベエ「必要だ」
エレノア「……ダメです。全然分かりません」
アイゼン「しかし、そうなると秘密の部屋や抜け道といった事も難しいな」
ゴンベエ「時間を掛ければ可能だが、如何せん考えて作らないと建物その物が崩壊をしてしまう。元々あった部屋を隠して秘密の部屋にするなら簡単に出来るんだがな……」
ライフィセット「じゃあ、風呂場とかの居住スペースを優先しよう」
アイゼン「なら、風呂だ。比率的にも増築する風呂は男湯で、風呂場に流れるお湯の出口をライオン像の口にしろ」
ゴンベエ「いや、その前に最も優先しないといけない機能が1つだけある」
アイゼン「いざというときの地下道か……通路への隠し扉とダミーの扉、通路も作らなければならん」
ベルベット「2つも港があるんだから充分でしょ」
アイゼン「馬鹿を言え、元を正せばここは聖寮の物だ。何処になにがあるかぐらいは熟知している。なによりも攻めてくる奴が港を見過ごす筈が無いだろう」
ベルベット「周りは海なのよ?その地下道は何処に抜けるの?」
アイゼン「近くの島だ」
マギルゥ「近くに島などないぞ」
アイゼン「地下道の為だ、オレが島を作る」
ゴンベエ「島を作るんだったら、最初からこの拠点いらねえだろ」
ベルベット「船で攻めて来るのが分かってるなら、撃ち落とす大砲でも作った方が……」
アリーシャ「ベルベット、ゴンベエはそういうのを作らないとさっき言った筈だ」
ベルベット「……悪かったわ」
ゴンベエ「なに、気にすんな。お前の考えてることは間違っちゃねえ。島が無い以上は地下道は無理だし、島があるなら最初からそこを拠点にすればいい。オレが言っている優先すべきなのは地下道じゃない」
アリーシャ「そうなると、ゴンベエの家にあった様にあらゆる物の動力となる水車を作ることか?」
ゴンベエ「水車作りは既に始まっていて、現在ベンウィックをパシらせて材料を買いに行かせている。水車があって出来る物、そう自爆スイッチをどういうタイプにするのかを悩んでいる」
アリーシャ「さっきまで人を傷つける物を作りたくないと言っていなかったか!?」
ゴンベエ「バッカ、お前。自爆スイッチは別だ。万が一に備えて此処を乗っ取られたりすると色々と困る物を作ったりするんだぞ。相手に盗まれるぐらいならば、潔く自爆させる」
アリーシャ「困る物をと言うが、まさか大地の汽笛を」
ゴンベエ「作らねえよ」
エレノア「盗まれて困るぐらいならば、最初から作らなければいいじゃないですか」
アイゼン「ここは秘密基地だぞ。そういった物の1つや2つ、絶対に必要だ。誰かにお宝を盗まれるぐらいならば自分で破壊する。自爆スイッチ、悪くはない」
ロクロウ「そうだな。追い詰められていよいよとなった時に全員を一気に片付けるのにもいいしな」
ベルベット「持ち出せばいいじゃない」
ゴンベエ「そういう問題じゃないんだよ」
アイゼン「自爆をして『お前はあの時、死んだんじゃ!』と驚愕させたり、全てを終わらせたりするロマンが何故分からんのだ」
ロクロウ「大丈夫だ。お前の気持ちはよく分かる……だがな、彼奴等には理解させるのは無理だ」
ゴンベエ「自爆スイッチは、男のロマンだってのに」
ベルベット「自爆スイッチなんて、世界で1番いらないスイッチでしょう」