テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

97 / 212
ドラマcd、ラストです。


歴史の解明は恥の証明

 ベルベットが軽くゴンベエにキレる何時もの光景が起こったが、今回はゴンベエが不在だ。

 ゴンベエと通信出来る石をベルベットはぶん投げたので回収をする。

 

「全く、貴重な石を雑に扱うな」

 

 石をここぞとばかりにぶん投げたベルベットに説教をするアイゼン。

 やはりと言うか、このゴンベエと通信が出来る石はお宝に分類される物なのか。

 

「アイツが人の事を勝手に語るのが悪いわ」

 

 悪びれもしないどころか更に不機嫌さが増すベルベット。

 アイゼンは思わず引いているとマギルゥとビエンフーがこっちに向かって歩いてきた。

 

「おぉ、お主達、そこにおったか」

 

「探したでフよ~」

 

「マギルゥ、ビエンフー、お前達何処に居たんだ?」

 

「なに、水に流されてついさっきまでそこにおったんじゃ」

 

「そうでフよ~」

 

「お前等、嘘だろ」

 

 水の流れは激しかったもののこの辺りまでは浸水をしていない。

 ロクロウはその事に気付いているので疑いの眼差しをマギルゥとビエンフーに向けてみるが、2人は目線を合わせない。

 

「いや、これが本当なんじゃよ」

 

「そ、そうでフよ。別に、なにもなかった。無かったんでフよ」

 

「……お前等、まさか3つ目の緑色の部屋に先回りしてお宝を横取りしたんじゃないだろうな?」

 

 此処に来ての抜け駆けを考えギロリとアイゼンは2人を睨む。

 マギルゥには効果は無かったがビエンフーには効果はあったようで露骨にビエンフーは反応する。

 

「そ、そんな事はしませんでフよ。むしろお宝を……そう、流された宝石を回収しようとしてでフね」

 

「どっちでもいいわ。宝をネコババしたかどうかは最後の部屋に行けば分かるから、さっさと行くわよ」

 

 なにかを言いかけるが嘘で誤魔化すビエンフー。

 尋問をするよりも実際のところを確かめた方が早いとベルベットは来た道を先に戻っていく。

 私達もベルベットを追いかけて、緑色の道を進んでいくと、赤色と青色の時と同じくその色と同じ宝石がそこかしこに散りばめられていた。

 

「やはりこの部屋にも宝石が散りばめられていますね……」

 

「だが、これはダミーだ」

 

 三度目となるともう目移りはしない。

 目の前にある緑色の宝石は価値があるお宝だが、それはフェイク。本当のお宝を隠す為に置かれている。

 

「そうなるとやはり石の置物を……それだと欲望に溺れた末がどういう意味でしょう?」

 

 法則性がなんとなくで見えてきたが、ハッキリとは見えていない。

 石の置物を集めればいいのは皆も分かっているが、仮にコレを集めたとして宝は……。

 

『なんか長考してるっぽいから、ヒントでも要るか?』

 

 今まで黙っていた分、バリバリ喋ってくるゴンベエ。

 何処まで聞いていたのかは不明だが、既に答えは出している。やはりと言うか、ついてきたら一瞬で終わっていたか。

 

「……頼む」

 

 物凄い屈辱の表情を浮かべるアイゼン。

 やはりと言うか答えを他人に解かれるのは嫌なのか。

 

『ヒントは宝は何処にあるのかと今までなにがあったかだな』

 

「宝?……」

 

「此処にある宝はダミーだけど、さっきの赤色と青色の部屋にもダミーがあったから……何処かに隠し部屋がある!」

 

『じゃあ、それは何処にある?』

 

「それは……そうか!!」

 

 欲望に溺れた末の意味はそういうことだったのか!

 ゴンベエのヒントを貰って、古文書に書かれていた内容の意味が分かった。

 

「ちょっと、私達にも分かるように説明をしてよ」

 

「石の置物が置いてあった2つの部屋には罠が仕掛けられていた。機械仕掛けの罠で、石の置物を動かせば作動する仕組みとなっていた。ということは仕掛けを仕組むスペースが何処かにある。つまり、この遺跡には見えないだけで機械仕掛けの部分は空白の部分があり、本物のお宝が隠し部屋の様な場所にある」

 

「それはなんとなく分かるけど、それと石の置物がどう関係あるんだ?」

 

「私達が歩いていた道には隠し部屋の鍵になる場所は無かった」

 

 石の置物を置いたら仕掛けが開くといった仕掛けは何処にもなかった。

 特殊な仕掛けがあったのは、この遺跡の入口と今までの罠だけ。そして欲望に溺れた末にとの記述があった。

 

「罠の作動が隠し部屋がある部屋を開くための鍵だ!」

 

 ゴンベエが言っていた。

 指を鳴らして床が開いてウィーンと椅子がせりあがって来る仕掛けを作るには事前に建物に仕掛けを入れておかないと出来ないと、後付けは出来ないと。それと同じで隠し部屋が事前に作られていて仕掛けを全て解くことで解放される可能性がある。

 

『まぁ、後は頑張れよ』

 

 当たっているのか何処か間違っていると訂正をせず、ゴンベエは通信を切る。

 

「おい、コレを見ろ!」

 

「3つ目の翼だ!」

 

 ゴンベエが通信を切ると翼の置物を見つけたアイゼン。

 直ぐには手に取らず、全員がその場に集まるのを待つ。

 

「ゴンベエの考えが正しいならコレを取れば仕掛けが作動する……」

 

「最初は壁が迫ってきて、次に水が流れて来たんだよね」

 

「鬼が出るか、蛇が出るか……いざ!!」

 

 掛け声と共に石の置物を取るロクロウ。

 さっきまでと違って罠が作動するというのが分かっており、なにが来ても直ぐに対応が出来る。

 

 

━━━パカ

 

 

「え?」

 

「お!?」

 

「な!?」

 

「ちょっ!」

 

「っち!」

 

「わ!?」

 

「ビエ!?」

 

「いや~このパターンは予想しておらんかった」

 

 床が開いた。

 槍が降るか凶悪な憑魔が出てくるのか覚悟をしていたが、まさかの仕掛けに私、ロクロウ、エレノア、ベルベット、アイゼン、ライフィセット、ビエンフー、マギルゥの順に驚く。

 

「「「「「「「「ぬぅぁあああああああああ!?」」」」」」」」

 

 この状況で私達はなにもすることが出来ない。

 仮にゴンベエがいれば葉っぱを使ってゆっくりと落ちることが出来たが、それだけしか出来ない。

 

「おい、皆、無事か!」

 

「その声はロクロウ……何処だ?」

 

「その声はアメッカか!!」

 

 落ちると同時に皆がバラバラになってしまった。

 真っ先に声を上げたのはロクロウで、その言葉に反応するとアイゼンが声を出すが姿は見えない。

 

「ベルベット、何処!?」

 

「ライフィセット、あんた何処に居るの!?」

 

「無事だよ!周りには誰もいないけど」

 

「どうやらバラバラになってしまったようじゃの」

 

 落ちた先には更に遺跡の様なものがあった。

 やっぱり隠し部屋の様な場所がこの遺跡にはあったが、代わりに全員がバラバラになってしまった。

 

「俺の近くにアイゼンがいる!」

 

「ボクとマギルゥ姐さんは一緒でフ!」

 

「となると……ライフィセットだけが1人ですか」

 

 私とベルベットとエレノア、アイゼンとロクロウ、ビエンフーとマギルゥ、ライフィセット1人の4組に分かれてしまった。幸いにも声は聞こえるので安否の確認は出来る。全員が全員、声からして無事な事だけは分かりホッとする。

 

「どうやら迷路になっておるようじゃ。互いに声を掛け合って合流を目指すのが良いじゃろう」

 

「そうするしかなさそうだな」

 

「ライフィセット、1人で大丈夫?」

 

「1人じゃないよ」

 

『おいこら、お前に渡したんだからお前がちゃんと持っとけよ』

 

 ゴンベエの声が聞こえたので、懐に手を入れてみるがお守りが無くなっていた。

 どうやら落ちた時に落としてしまい、ライフィセットの元に行ってしまった。しかしゴンベエが声だけとはいえ、居てくれるのは心強い。

 先ずは合流をしようと私達は歩き出すのだが、マギルゥの言っていた通り此処は迷路になっている。

 

「此処が地下でなければ道を切り開いたが……」

 

「やめなさい。崩れてお陀仏なんてごめんよ」

 

 声は本当に直ぐ近くから聞こえるが思った以上に複雑な迷路。

 此処が地上ならば活伸棍・神楽で道を切り開けるのだが、生憎の地下で破壊できない。

 

「全く、こんな事になるなら途中で中止するべきだったかしら?」

 

「すみません……」

 

「すまない」

 

「あんた達が謝ってどうするのよ?」

 

 私達が謝ることに戸惑うベルベット。

 途中で切り上げずに続ける意思を見せたのはライフィセットだけでなく私達で、元々反対していたベルベットを巻き込んだも同然だ。謝るのは当然だ。

 

「アイゼン、どっち行く?」

 

「オレの勘がこっちだという」

 

「よっし━━ぬぅおおおあ!?」

 

「なにやってんのよあんた達!」

 

 大きな声を出して、迷路を辿っているロクロウとアイゼン。

 金属音が聞こえて叫んでいるということは罠のような物が作動したのだろう。

 

「アイゼンが罠に引っ掛かった!」

 

「これぐらいどうということはない……よし、次はこっちだ!!」

 

「ぬぅうおあああ!!」

 

「あんた達、遊んでるんじゃないでしょうね!!」

 

「遊んでるわけないだろう!アイゼンの選ぶ先に悉く罠がぁ」

 

「だったら、ロクロウが先導して進みなさい……全く世話が焼ける。ライフィセット、そっちは?」

 

「うん、今のところは無事だよ」

 

「マギルゥは?」

 

「あ、ああ、うん。ワシの事は気にせずに先に行っておいてくれ」

 

「そ、そうでフ~、ボク達の事はお構い無くでフーー」

 

 やはりなにかあるな。

 マギルゥとビエンフーの露骨な態度に呆れながらも、私達は足を動かすのだが中々に合流することが出来ない。

 

「そう言えば、貴女とゴンベエはどうしてベルベット達と一緒に居るのですか?」

 

「急だな」

 

「あ、いえ、詳しく聞く機会が無かったので。なにか聖寮と因縁があるわけでもないですし、何故ベルベット達と一緒にいるのかと今更ながら疑問に思いまして」

 

 確かに、船に乗せて貰う時に色々と説明をしたがその時にはエレノアは居なかった。

 色々と知るためだとアイゼン達には言ってはいるが、エレノアに対してはあまり言っていない。

 

「そうだな……振り返っている、と言うのが1番合う言葉だな」

 

 過去という単語をつけずに出せる答えを出す。

 

「私の国は色々とあって危機的状況なんだ」

 

「それはまた、大変な事じゃないですか!」

 

「ああ……だが、どうにかする事も出来なくはないんだ」

 

「だったら、こんな所で油を売らずにどうにかしなさいよ」

 

「それじゃあダメなんだ!!」

 

 確かに現代は、ローランスの内情は詳しくは分からない。だが、混乱の世なのは政に疎い私でも分かる。

 それをどうにかするには災禍の顕主であるヘルダルフを鎮めて地の主を増やして天族の信仰を取り戻せばいい……だが、それだとダメなんだ。

 

「今までも何度も何度も未曾有の危機に瀕していて、その度に同じ方法でどうにかしてきたんだ」

 

 詳しい事情は知らないが浄化のシステムはかなり昔からある。

 地の主も導師のシステムも昔からあるのに、それなのに悲惨な現実しか産み出していない。

 

「過去と同じ方法でどうにかして、暫くすればまた衰退する。これ以上、同じ事を繰り返さない為にも先ずは起源を知らなければならないんだ。その為に私は此処に居る……私達が部外者なのは分かっている。だが、信じてほしい。私達は敵ではない」

 

 どうしてあの時、ゴンベエの家の側で時間を越えたのに全く別の場所に飛ばされたのかは分からない。

 だが、別の場所に飛ばされた事は今となっては良かったと言える。ベルベット達と出会わなければ、真実になに一つ辿り着けなかった。偽りの幸せに騙されて残酷な現実を見ることは出来なかった。

 

「別に、あんたの事を信じてない訳じゃないわよ……アイツは別だけど」

 

「アイツ、と言うとゴンベエですか?」

 

「そうよ……アイツと居ると調子が狂うのよ」

 

 それは単純にゴンベエの行いが悪いからじゃないだろうか?

 思い出せば定期的に殴られたりしているゴンベエが頭に浮かんでくる。殴られても何がなんでも言うつもりの謎の覚悟が見える。

 

「まぁ、確かに変人で空気を読まないところはありますね」

 

「それはまぁ、諦めるしかないわ。アレはアレで悪くないけど……アイツ、若干変なのよね」

 

「若干ですか?」

 

「敵じゃないのも分かるし、極悪非道で冷徹でも無いけど……アイツ、なんかフラフラなのよね」

 

 ゴンベエがフラフラ?

 体調的な意味合いでなく、なにを示しているかは分からないがなにかを言いたそうなベルベット。上手く言葉に表せていない。ゴンベエがフラフラ?確かに、住所不定と言われてもおかしくはない。

 

「それは風来坊の様な人という意味ですか?」

 

「違うわ……なんというか無気力?な感じかしら?アメッカ、アイツと付き合いが長いんでしょ」

 

「長いと言われても1年程の仲だ。それよりも前はよく知らない」

 

 学校の様なところにいて、幸せになれるように強くさせられたとは語っていたが詳しい内容は思い出せば嘔吐するから語ろうとしない。そこに行く前の事になれば更に……。

 

「昔の事はよく知らないが、少なくともゴンベエはゴンベエだと私は思う」

 

「アイツはアイツ……」

 

 私の言葉に妙な違和感を感じているベルベット。

 

「なんだかモヤモヤしていますね……!」

 

「魔物!」

 

「中に居たのか!!」

 

 モヤモヤの原因が分からないまま歩いていると魔物が出てきた。

 今まで1度も出てこなかったから完全に居ないとばかり思っていたが、いたのか。

 

「信用や信頼は言葉ではなく行動、しかもその積み重ねによってようやく培われるもの!ゴンベエは基本的に中途半端だからじゃありませんか!」

 

「……かもしれないわね!」

 

「そういえば聞いていませんでしたが、ベルベットは私の事をどう思っているのですか?」

 

「あんたの実力はとっくに信用しているわ!この程度の魔物がどれだけ襲って来ようが、どうってことないわ。違うかしら?」

 

「!……ええ、そうですね」

 

「私も忘れないでくれ!!」

 

 まだまだ未熟だが、戦えないわけじゃない。

 ゾロゾロと出てくる憑魔を相手に槍を振って一体ずつ確実に倒していき、迷路を突き進んでいくと石像と対峙しているライフィセットがいた。

 

「ライフィセット!」

 

「大丈夫ですか!!」

 

「いったいどういう状況だ!?」

 

「ベルベット、エレノア、アメッカ!」

 

 よく分からない事になっているライフィセット。

 アイゼン達とはまだ合流をしていなさそうだが、いったいどういう状況だ?

 

「分からない。でも、もしかしたら宝を守る番人かも」

 

「あんた1人で相手をしてたの?」

 

「ごめんなさい……」

 

「あんたが謝る事じゃないわ」

 

「私達が来たからにはもう安心です。アメッカ」

 

「ああ、これが最後の試練だ!」

 

 本物のお宝がこの石像を倒せばある筈だ。

 私とエレノアが石像に向かって槍を向けると別方向から走る音が聞こえる。

 

「俺達も加勢するぞ!」

 

「皆、無事か!」

 

「ロクロウ、アイゼン!」

 

 いい時に来てくれた!

 これからという時に駆けつけてくれた2人は石像に向かって構える。

 

『ぬぅ、こんなに早く全員が揃うとは見込み違いじゃ!』

 

「ん?」

 

 今、この石像、マギルゥの様に喋っていなかったか?

 

「幸い体は暖まった!!瞬撃必倒!!この距離なら外しはせん!!零の型・破空!!」

 

 マギルゥの様な口調をしていた石像に秘奥義を叩き込むロクロウ……考えても仕方ない!

 

「次はオレだ!覚悟はいいな!躱せるもんなら躱してみな!!ウェストレム・メイヘム!!」

 

 ロクロウに続きアイゼンも秘奥義を叩き込む。

 しかし石像は少しだけ怯んだ様子で特にダメージを受けた素振りを見せていない。

 

「僕だって!霊子解放!!仇なす者に、秩序をもたらせ!バインドオーダー!!」

 

『ぎゃああああ!!』

 

「私も参ります!!奥義!!スパイラル・ヘイル!」

 

『にょえええええ!!』

 

「見切った!!槍流秘術!断鋼斬響雷!!」

 

『ご、ごふぅ!?お主達、ちっとは手加減を』

 

『ベルベット、足元がぐらついたっぽいぞ』

 

『ゴンベエ、貴様ぁああああ!』

 

「任せなさい!容赦しない!消えない傷を!刻んで果てろ!リーサル・ペイン!」

 

『ぐぅううぁあああ!やーらーれーたー!!』

 

 全員の秘奥義が炸裂して倒された石像。

 体が粉々に砕け散っていく。

 

「見た目ほど、強くは無かったな。これなら俺達が来なくても良かったな」

 

『お前等、集団リンチって言葉を知ってるか?』

 

 思ったよりも手応えがなく、面白味に欠けるロクロウ。

 お守り越しでゴンベエは本気で呆れた声を出している。

 

「マギルゥとビエンフーはまだ迷路に居るのでしょうか?」

 

 石像を倒したことにより一息つくことが出来てホッとするのも束の間、この場に居ない2人を心配するエレノア。

 

「罠に掛かっているかもしれないな」

 

「なら、早く私達で」

 

「ビエンフーは掛かっているかもしれないけど、マギルゥなら無事よ」

 

「?」

 

「何処かで見てるんでしょ、出てきなさい」

 

 ベルベットがそう言うと出てくるマギルゥ。

 無事だったのかと思ったが、それならどうして姿を現さなかったのかと考え、さっきの喋っていた石像の破片に目が向く。最後の最後にゴンベエの名前が出てきたが……まさか。

 

「さっきの石像、あんたよね?」

 

「あの石像は元々此処にあったものじゃよ。お主達を狙うようにほんのちょいっと操作したんじゃよ」

 

「操作したって、どうしてそんな事を?」

 

「悪ふざけにしては度が過ぎてるわね」

 

 ジャキンと籠手から剣を出してマギルゥに向けるベルベット。

 

「そういえばゴンベエが裏切ったと言っていましたね」

 

『あ、事の詳細はマギルゥから聞いてくれれば納得してくれると思います』

 

「お前、どんだけワシを売れば気が済むんじゃ!!」

 

「いいから、さっさと白状しなさい!後、あんた1発追加よ」

 

『待て、オレはチラリと聞いただけで無関係だ!!』

 

「怪しいこと自体が罪よ!!」

 

『そんな……』

 

 ゴンベエに追加の一発の判決がくだされると皆の視線がマギルゥに向く。

 悪ふざけをする性格ではあるものの、誰かを危機に晒すほどマギルゥは冷徹な人間じゃない。

 

「これにはふかーい事情があるのじゃ」

 

「どういう事情ですか?」

 

「エレノア、ベルベット、そう怒らずに」

 

 マギルゥの頸動脈付近に刃を向けたら話すものも話せなくなる。

 

「実はワシ等がこんな事をしたのはとある人物に頼まれ」

 

『あ、グリモワールです』

 

「これぇい!!いきなりのネタバレをするんでない!!」

 

『るせーな、こっちは色々と忙しいから省略してやったんだよ……あ、オレの通信、これで最後だから』

 

 グリモワールさんがマギルゥ達に邪魔をするように頼んだ?

 確かにマギルゥにとって頭が上がらない存在で、頼むことは出来る人物だが……。

 

「まさか黒幕がグリモワールだったとは」

 

「最初から私達を妨害していたのですか!?」

 

「いやいや、それは違う。途中からじゃ。ほれ、ワシとビエンフーが不在の時にのぅ」

 

「その話が本当なら、どっかにグリモワールが居るんじゃないのか?」

 

 ロクロウがそう言うと周りを見渡す私達。

 

「全く、少しぐらいボカそうとはしないのかしら」

 

「グリモ先生!!」

 

 ロクロウの予想通り、直ぐ近くにグリモワールさんは居た。

 テクテクと歩いて姿を現すグリモワールさん。ライフィセットはどうして此処にと驚く。

 

「あんた何時、こっちに来たの?」

 

「海賊団の子にお願いしてね……本当だったら、彼にお願いしたかったんだけど後もう少しでなにかが完成するから無理って断られたの」

 

「あやつめ、大まかな事情を知っておるのに堂々とワシを裏切りおって……」

 

「グリモ先生、どうして僕達の邪魔を?」

 

 改めて私達の邪魔をして来た理由を訪ねるライフィセット。

 

「懐かしいわね。この土地にもう一度来るなんて」

 

「ライフィセットの質問に答えなさい」

 

 質問には答えずに遺跡を見るグリモワールさん。

 発言から考えてこの場所のついてなにか知っている。

 

「この遺跡はね、かつてこの地で栄華を極めた古の王朝が築いた物なのよ。彼等は自分達の正当な後継者にある物を残そうと考えてこんな大掛かりな遺跡を作ったの」

 

「それって……」

 

「私は坊やが手に入れた古文書をたまたま手に入れて、自分で解読して自分の物を置いたのよ。ここならそう簡単に見つからないと思ってね」

 

 グリモワールさんから語られていく真実。

 なら、今まで見てきた宝石は本当にお宝だった?と言うことなのだろうか?

 

「それでその後に古文書を誰にも見つからない様に海に隠したの。宝箱に偽装して、もし誰かに見つかったとしてもそっちに目が行くように細工をしてね。ついでに古文書の内容も万が一に備えて書き換えたの……まぁ、坊やは見抜いたみたいだけど」

 

「そんなに知られたくなければ、古文書を燃やすなり消すなりすればいいじゃない」

 

「バカね。先人達の想いが籠った貴重な文章を抹消するなんて事はどうしても出来なかったのよ」

 

「そこまでして、いったいなにを隠したかったのですか?」

 

 此処まで大掛かりな仕掛けがある遺跡、しかもそこかしこに憑魔がいる。

 入れた当時はどうかは分からないが、今の時代でそこかしこに憑魔がいるこんな島にわざわざ隠すとは。

 

「おぉ、それはワシも聞きたかった!」

 

 マギルゥもその辺りの事は聞かされていなかったのか興味津々だ。

 上に大量の宝石があったとなると、それ以上の宝……ロクロウが言っていた不思議な力が宿った武器なのだろうか?

 ジークフリートの事もあるから、一概に無視は出来ない。

 

「それは」

 

「ただいまでフ~!」

 

 なにかについて語ろうとすると現れるビエンフー。

 

「お主、今まで何処に居たんじゃ?ワシが石像を操っておる間に居なくなりおって」

 

「いやぁ、実はこの奥がどうなっているか気になったんでフよ。調べてみると、なんと奥にお宝があったんでフよ!」

 

「なに!?でかしたぞ、ビエンフー!」

 

「あ、後お宝の直ぐ側に古文書があったでフよ」

 

 そう言うと古文書を見せるビエンフー。

 お宝の直ぐ近くにあったということは見つけた人にこのお宝はと、見つけた人に対してどういうお宝なのか説明をする物なのだろうか?

 

「ちょっと待ちなさ」

 

「あ、コレならボクでも読めるでフ!」

 

 本を開き、内容を見る。

 ライフィセットが普段解読している古代アヴァロスト語で書かれていないのかビエンフーでも読める文字の様で音読を始める。

 

「今日も錆びついた魂が軋みを上げる。掻き抱いた両腕から溢れ落ちるわ、剥がれ落ちた教示の欠片。今すぐこの手に剣を取り、蒙昧たる世界を浄化せん。全てを灰塵と化した暁に、我が魂は安息を得るだろう……なんでフかこれ?」

 

「宝のありかを示しているようには見えんぞ」

 

「これは……ポエムだな」

 

「何故でしょう、背中がむず痒くなってきました」

 

「エレノア、私もだ」

 

 なんというかその、これがなにかを示している訳ではないと分かると背中がむず痒い。

 予言的なことではないとアイゼンが真っ向から言った瞬間に背筋に寒気が走ってきた。

 

「まさか、あんたが宝と一緒に置いたのってコレ?」

 

「はぁ……」

 

 否定はしないということは肯定ともとれる。

 つまり私達は宝と同時にグリモワールさんのポエムを綴った古文書を探していたと?

 

「これ、ポエムなんでフか?ガッフッフ、だとしたらかなり恥ずかしいでフね!!書いた本人が此処にいれば、きっと悶絶死するでフよ!!」

 

 ポエムの内容を見て、大笑いするビエンフー。

 その光景になんとも言えない表情の私達、一方グリモワールさんは冷たく恐ろしい目をビエンフーに向けている。

 

「マギルゥ、ちょっとあの子を借りていい?……いいわよね?

 

「あー、あはは……好きにして結構じゃ……こうなっては血を見なければ収まらんじゃろ

 

 マギルゥからの許可が出るとガッシリとビエンフーを掴むグリモワールさん。

 

「あんた、ちょっと(ツラ)貸しなさい」

 

「んん?グリモ姉さん、どうしたんでフ?━━痛い痛い!ボクはなにもしてないで━━━ビエエエエエエン!!SO、バァアアアアアアアッット!!」

 

 

 

 

 

 

その後、ビエンフーを見たものは誰もいなかった

 

 

 

 

 

 

 

 ビエンフーがグリモワールさんに折檻されている間、私達は宝があった場所に向かうとそこには王冠があった。

 それを見て私は成る程と納得をした。王冠は宝石よりも遥かに大事な物、王様になる人がつけるものだ。この遺跡を作った王朝の人の物ならばかなりのお宝だ。

 此処まで来れたのはライフィセットが古文書を必死になって解読して最後まで諦めずにいたからだと、王冠の所有権等はライフィセットの物となり、ライフィセットは何時かコレを被る人が居るからとその王冠を置いていくことに。

 王冠は置いていくことにしたが、上にあった宝石は貰うことになり結果的には大量の宝石を私達は手にする事が出来た。

 

「コレで後はアイツを2発シバくだけね」

 

「その、出来れば手心を加えて欲しいのだが」

 

「ダメよ。グリモワールがビエンフーに徹底した様に、私も一発やらないと気が済まないわ」

 

 いや、2発と言っているじゃないか。

 バンエルティア号は着実に監獄島に向かっていき、ゴンベエがコレからベルベットにシバかれるのかとなんとも言えない気持ちになっていると監獄島の港が見えた。

 

「ん、あれ、ゴンベエか?」

 

 望遠鏡で監獄島がある方向を見るベンウィック。

 ゴンベエを見つけたのだが、何故か首を傾げている。

 

「どうした?」

 

「あ、いや、副長。なんかゴンベエ、港で倒れてるっぽいです」

 

「なんだと!?」

 

 ベンウィックから放たれる衝撃の一言に私は驚く。

 確かに切ると言ってから1度も連絡は入れてくれないが、それでも通信を切るまでは普通に会話をしていた。それなのにゴンベエが倒れているなんて信じられない。

 私はベンウィックから望遠鏡を取って、監獄島に向けて覗いてみるとゴンベエと思わしき人物が港で横になっているのを見た。

 

「そんな……急いでくれ、ベンウィック!!」

 

「急げって、もう目と鼻の先だ。無理にスピード出すと乗り上げたりするからこれ以上は無理だ」

 

「っく!」

 

 今の速度で我慢するしかないのか。

 いったいゴンベエの身になにが起きたのかハラハラし、早くついてくれと段々と遅くなっていく船に苛立ちを感じる。

 

「ゴンベエ!!」

 

あー……

 

 港につくと船から飛び降りてゴンベエの元に駆け寄る。

 うつ伏せに倒れているゴンベエは仰向けになるのだが、表情と顔色が余り優れていない。

 

「どうしたんだゴンベエ!いったいなにがあったんだ!」

 

……もーやだ、もうやってられっか

 

 声がガラガラになっていて何処となく鬱状態なゴンベエ。

 

「おぅ、お前等帰ってきたのか」

 

「ダイル、いったいなにがあったんだ!?」

 

 船がちゃんと停まると監獄から出てくるダイル。

 ずっと此処に居たからゴンベエの身に起きた事がなにか分かると訪ねると優しい目を向ける。

 

「もう、寝させてやんな」

 

「え、寝させて?」

 

「この野郎、とんでもねえ物を作る為にまともに寝てねえんだよ。今まで上手い具合に誤魔化してたみたいだけど、完成と同時に限界が来たみたいだ」

 

「ただの寝不足なのか……」

 

 ゴンベエの状態が分かり一安心をする……いや、出来ない。

 今の今までなにかを必死になって作っていたのは知っているが、なにを作ってるのか一言も教えてくれていない。これで変な物を作っていたら、一言言わなければ。

 

「それで、コイツは結局なにを作っていたんだ?」

 

「それなんだがよ、バンエルティア号に乗せなきゃ意味がねえつって使ってるところ見てねえんだよ。一応、完成した時にどんな物か聞いたがイマイチ、ピンと来ねえんだよ」

 

「なんだ言ってみろ?」

 

「確か、声を遠くに飛ばす電話つってたな……なにが凄いか、イマイチ分からねえや」




今回はスキット無しです。

100話になにを書く

  • 逃亡イクスくん(笑)(予告編)
  • 設定だけあるワールドトリガー
  • それよりも続きを書いて

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。