ヅダ開発に内海課長を突っ込んで見た【完結】   作:ノイラーテム

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次世代マシンの憂欝

 企画七課ではグリフォンがオーバーホールされている。

腕や装甲が取り外され、頭部から足までの骨組みだけで立っている状態だ。

 

 そこで数人の技術者が見守る中、バドがなにやら体操らしきことをやって居た。

 

「何やってるの?」

「いま閃いたとこなんや。ちょいと待ってんか!」

 タケオはコックピットに乗り込もうとするバドに尋ねたが、いまいち要領を得ない。

 

 仕方無いので見て居ると、左足の踵を揚げ、右足の爪先を軽く揚げた。

そして右足の踵を軸に重心移動だけで右を向く。

 

「右向け右? なんでまたそんな事を」

「今までのモビルスーツではできせんでしたからね。AIの教育がてらに色々と教えてるんですよ」

 タケオが首を傾げると、主任技術者である髭の男が教えてくれた。

そして『おぉ』と唸る他の技術者たちを制し、バドに声を掛ける。

 

「ディスクを抜いておいで。記録を取っておくから」

「教えたこと、ドンドン覚えよるで。おっもしろいなぁ」

 何が賢いかって、音声で左向け左と告げたら先ほどの応用を行うのだ。

左の踵を軸に、左向け左。これならばもっと汎用性の高い動作で有れば、有効な動きを教えられるだろう。

 

「どうせなら算数の勉強も覚えて欲しいものね」

「アハハ。社会科はちゃんと覚えたで。初代首相のマーセナスがニュータイプも含めたみんなで政治しよとしたら、ドッカーンって」

 タケオは思わず苦笑した。

どこかでジオン・ダイクンのニュータイプ論でも混ざったらしい。

あるいはウツミが茶化して、それを混同して覚えたのかもしれない。

 

「それにしても意外ね。パーツが届いたのに、まだ組み上げて無いなんて」

「ブルーの情報が入って、一から調整してるんですよ。コレがまた面白いけど苦労するやつで」

 いつもなら詳細情報をくれる、つぶらな瞳の副主任が居ない。

仕方無いので脇に有る資料を眺めて、判ら無いなりにポイントを抜き出そうとする。

 

 なんでもニムバス大尉が蒼い機体を奪って来たそうで、こっちの技術者を連れて行かれた代わりに、データがただで手に入ったという。

そこには磁性と摩擦係数という言葉が書かれ、可能なかぎりゼロにすべしと記載されていた。

 

「磁性と言うとリニアに使われている技術よね? 浮かせてるやつ」

「アレを使って摩擦を可能な限りゼロにすると、タイムラグもですが、必要なエネルギーと生じる熱がグンと減るんですよ」

 分数で言えば、下にある分母を減らして数字を上げると言うことだ。

割ることの100が98、95……90と減れば、それだけで動きが良くなる。

 

 ツイマッド社では新型の流体パルス・アクセラレータを使って、一気に動かして居た。

先ほどの分数で言えば、上に乗ってる分子を増やすということにあたるだろうか。

100を103、105、108と増やして動きを良くすると例えられるだろう。

この方法は同時に高いパワーも得られるのだが、熱効率も悪い。

他の機体なら余裕があるから良いが、グリフォンにとってはあまりよろしくない問題だった。

 

「連邦はマグネット・コーティングと名付けたそうです。こっちのアクセラレーターとの比率も合わせて、当分は寝る間もないくらいですね」

「……それにしてはAIまで弄るのは余分で余計じゃないの?」

 好きな事に没頭している様だったので、苦労を背負ってるとは思わないでおく。

しかし判らないのが、AIに余計な動作を覚え込ませている事だ。

 

 作業や記録に時間が掛るだけではない、イザという時に調整が出来ないほか、下手をすると壊される事もあるだろう。

 

「そうでもないですよ。人間とロボットの感覚が違うだなんて、こないだまでは思ってもみませんでしたしね」

「……? どういうこと?」

 あまりにも当たり前のことに、タケオは思わず首を傾げた。

サイズや構造が違うのだから、バランスにしても何にしても、違って居て当たり前ではないか。

 

「えっとですね。人間だと主に目、次に耳。場合によって鼻・口・触感と来ますよね?」

「そうね。だからロボットにはメインカメラがあって、音感センサーがあって。鼻と口はないけれど、接触回線で多少と言うところかしら」

 主任が用意したのは複数の懐中電灯だった。

正面に二本、これが人間の視界と言うやつだろう。

次にロボットを示す為か、ロングにスイッチを切り替えると、スポットライトの様に遠くまで強く照らす。

 

「僕らのイメージって、ようするにコレなんですよ。つい、人間の延長に考えてしまう」

「違うの? 出力に差はあっても、メインカメラなんかの問題で処理は同じだと思うけど」

 主任は首を振った後、苦笑いを浮かべて髭をこする。

彼がこういう表情をするときは、たいていウツミが無茶なことを注文した時だ。

 

「実際にはこうです。課長に言われるまで僕らも気が付きませんでしたけどね」

 主任は二本のライトのうち、片方をスポットライトのまま。

もう一本をランタンのように、周囲を照らすモードに切り替える。

 

「確かに出力の差で正面の方が強力なのは間違いがありません。ですが実際のところ、AIは別の判断を下して居るんですよ」

 主任はそう言いながら、この間の戦闘記録を立ちあげる。

そこには通常ならありえないような動きで、グリフォンを追い掛ける蒼い機体の姿があった。

 

「こいつの場合、自分の感覚で正しい機動を掛けて居ます。……中の人間はたまったもんじゃないでしょうけどね」

「そういえば結局、脱出しなかったわよね。気絶……してたのかしら」

 どうでしょう、最悪死んでいたかもしれません。

主任がそう言うと、タケオは何も言えなかった。

これは最悪の例であろうが、人間とAIの思考差を突き詰めるというのは、重要なことだろう。

 

 似た様な機動を行っても、バドには感圧センサーがそのまま対G装備に成っている。

人間と機械の齟齬を放置しても良いことはないが、すり合わせて行けば良いモノが出来上がるだろう。

やり過ぎはマイルドになってしまうが、ここのスタッフであれば、むしろそのくらいの心配をした方が良いくらいだ。

 

「そういう訳で、ああやって色んな記録を与えた後、レスポンスがどう感じるかを判断して居ます。今のところは、往年の人口無脳レベルですけどね」

「大変そうね。そういうことなら止めないから、頑張って」

 趣味で作られたらしい人工映像に、マリオンとバドを足して二で割った様な姿が描き出された。

しかしその反応は酷い物で、良く判らない回答が多数返って来ている。

タケオに判るのは、ウツミといえば馬鹿野郎だとか、何様だとかいう罵詈雑言に心から納得したくらいである。

 

 この結果、何が起きたかと言うと、世にも珍しいAIの自己診断に寄る調整が導入された。

ここが良い、このパーツは格好悪いから嫌だ、あの強化パーツが欲しいなどなど。

グリフォンの性能は向上したが、ますます趣味に走ったと言う事である。

 

 一方その頃、ウツミたちはニムバスの所へ派遣されていた。

 

「連中の行き先が判っただと?」

「どうもカナダに移動するみたいですね。北極基地に逃げ込まれたら追い掛けるのが大変なところでした」

 厳めしいニムバスの詰問に、ウツミはヘラっとうすら笑いで応えた。

もちろん自分が調べたいから先回りして用意して居ただけで、決してニムバスの為ではない。

むしろブルーのデータを引っこ抜く為に、時間さえかけて居た。

 

「ガウが用意され次第出撃する。二号機の調整はそれまでに済ませておけ」

「ちょっ……。せめてもう二・三日なんとなりませんかね? まだ未解明の所やら、ジオニックさんが持って行ったモノもあるんですが」

 これにはウツミも慌てた。

データ取りの為に時間が欲しかったのもあるが、ニムバスの要求はあまりにも性急過ぎた。

 

 言葉通り判って居ない部分もあるし、ジオニックとはまだブン獲り合戦の話し合い中である。

 

「そこを何とかするのが貴様らの仕事だろうが!」

「……あー。あまりやりたくないんですが、強引な仕事をしても?」

 ウツミは薄い笑いを張りつけたまま、冷や汗を浮かべて見せた。

クロサキがいつもやってるので面白かったので覚えたのだが、これが実に、こういう時に誤魔化し易い。

 

「程度による。性能が劣化したら許さんぞ」

「それはありませんが、ご趣味に合うか次第ですね。……君、ビームサーベルがあっただろう」

「あ、あれはうちの機密ですよ?」

 凄むニムバスを無視して、つぶらな瞳の副主任に話しを向けた。

はらはらしながら成り行きを窺って居た彼も、機密情報をいきなり公開されて、演技ではなく驚いた顔に成る。

 

「連邦は既に持ってるじゃないか。今更だよ」

「課長が良いとおっしゃっるなら、自分達は取りつけるだけですが……」

 現時点で困っているのは現物を軍……ジオニック社が、ビーム関連品を外して研究中と言う事だ。

連邦でも完全に使いこなせるのはガンダムだけであり、同じパーツを使って居ても、リミッターの掛って居る陸戦型では少し怪しい。

 

 しかしビームサーベルだけならば、現状でも満足出来る能力だと伝えると、ニムバスは厳めしい顔のまま頷いた。

 

「……と言う訳で、うちの商品ならばジオン系のラインを使えます。ライフルはジオニックさんが持って行かなきゃ、調整したんですが」

「使えるならば構わん。どのみちビームライフルなぞ飾りだからな」

 手持ちのビームはまだまだで、地上では特にそうだ。

ウツミが誘導したイメージは、ちゃんと機能しているらしい。

 

 まあ実際に、リミッターがある以上はその通りだ。

各部のパーツやジェネレーターに一定の枠を掛け、暴走しない様にしているから、どうしても出力は低くなる。

確かにオーストラリアでは一撃で吹っ飛んだ機体と言うのは聞いたことが無かった。

EXAMのルーチン的にマシンガンの方が当て易いだとか、作戦として組み込み易いというのもあるだろうが。

 

「それとな……」

「はい?」

 不意にニムバスが正面に立った。

いままではウツミの方で遠慮して、彼を立てる位置に居た物だが。

 

「キシリア様の手前殺しはせん! だが手抜きは許さんぞ! マリオンもいずれ返してもらう!」

「プライドの方が女の子の生き死によりも先なんですか? そんなんじゃ今返してもまたフラ……っ」

 止せば良いのにウツミは平然と挑発した。

今だけは許してやると自分を抑えるニムバスの前で、痛い所を突く。

 

 彼にとって守るべき研究対象を、目の前で浚われたと言う事が問題なのだ。

その研究対象の健康状態だとか、今まで何をされていたかなど興味はなかったのだろう。

だから自分がいかに我慢して居るかの主張だとか、手抜きで研究優先して居るかどうかの心配を先にしてしまう。

 

「貴様っ!」

「あ痛たたた。眼鏡割れちゃったじゃないですか」

「ちょ、ちょっと。ここで刃傷沙汰は勘弁して下さいよ!」

 当然の様にニムバスはウツミを殴りつけ、周囲が仕方無く仲裁に入った。

あまりにも判り易い挑発だったので回りも飛び込んで事なきを得たが、強引に引っ張って両者は隅っこに分断された。

 

「良かったんですか課長?」

「いいんだよ。どうせ、ああいうのは誤射(後ろ弾)を狙うもんなんだから。それならむしろ、仲が悪いと知れ渡って居る方がやり易い」

 頬を抑えていたウツミに副主任はタオルを渡し、傷を冷やしておく。

そしてレンズは割れたものの、フレームは曲がって居ない眼鏡を掛け直して、心底から笑みを浮かべた。

 

「それにさ。この展開ならば、最後に彼と対決できるだろう?」

「……まさか、それが目的だったんじゃないでしょうね」

 この男ならばやりかねない。

副主任は思わず絶句したが、ウツミはなんのことやらと笑って受け流した。

 

「とりあえず二号機はビームサーベルを主体にするとして、どんな風にする気だい?」

「本気だったんですね……。とりあえず大型の盾を付けて、大出力のコンデンサーを仕込みます」

 ツイマッド製のビームサーベルを提供することか、それとも対決の為に挑発したことか。

どちらともいえない質問に、ウツミは頷きながら返した。

 

「確かタイプ・フィフティーンで武器を仕込んだ盾のアイデアがあったけど、あんな感じ?」

「仕込むのはコンデンサだけですけどね。武装まではやり過ぎなんじゃないかと思います」

 副主任の提案は、余計な能力は機体の外で完結させるというものだ。

本体にはエネルギー供給ラインだけを設置し、盾に仕込んだ大型バッテリーから供給する。

この方が今ある装備を活かせるし、技術改良も個々にできるという判断である。

 

 もちろんそれは機体の各部に強化パーツを仕込んだり、エンジン直結の大型武器は無理だろう。

しかしウツミの趣味であったり、要求される時間とスペックを両立させるには十分だった。

 

「いいねえ。何よりこの形状が怪獣みたいで意欲的だ」

「グリフォンの別バージョンです。バドほど振り回せない人には、こっちの方が戦い易いかと思いまして」

 まともにした機体を提案しても却下される為、別バージョンのグリフォンはたいそうゴツクなっていた。

放熱器を兼ねたテイルバランサーに、ノズル型スラスターである翼も肉厚に仕上げてある。

EXAMの放熱の為に頭も長くなっており、ビーム兵器を付けても放熱量は十分だろう。

 

 これに今言ったビームサーベルと、大型シールドを取りつければモビルスーツというよりはファンタジーの竜騎士である。

少々趣味に走り過ぎの気もするが、大仰なモノ言いのニムバスにはピッタリかもしれない。

 

飛竜の眷属(ザ・ワイアーム・ウルース)……略称をつけるとしたら、ズワウスになるだろうか。




 と言う訳で第五回に成ります。

 今回は技術的な解説、おおび改造回。
ついでに終わる為の伏線を張っておいて、できれば次回に最終決戦に向かう感じで。

・グリフォンの方向性
 思いっきり次世代の技術に走って居ます。
十分しか動かずビームも無いけれど、既にゼータ時代の概念で組み上がっている感じ。
さらにAIに体感?や趣味を聞き、機械の感性を導入することで、更なる仕上げを試みます。

・ブルー二号機の方向性
 ジオンの騎士を自称する人に、思いっきり趣味のマシーンを用意。
竜騎士みたいな外見にしたEXAM搭載機です。
この時期の陸戦ガンダムはリミッターのせいで火力が低いので、ジオンの技術も入れてビームサーベルだけガンダム並み。
名前は奇妙ですが、ズワウスというダンバイン外伝に搭乗した機体の名前を、無理やり広げた感じですね。

 なお、三号機は連邦が弄るのでドラグナーみたいな感じになるかと。
向こうはパイロットに気を掛けてくれる優しい人は居ませんが、パイロットは沢山居るので、適性を見て放りこむ。
一番相性の良いユウ・カジマ小尉たちが選ばれるという流れに成ります。

 このままいけば、宇宙では無くカナダで終わる感じでしょうかね?
第一部はともかく、第二部はレイバー以外も混ざって迷走して来た事もあり、あと1・2回で終了する予定です。
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