ヅダ開発に内海課長を突っ込んで見た【完結】   作:ノイラーテム

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鋼の軍団やっつけろ!

 カナダにとある丘陵地帯にある、連邦の基地。

そこへファットアンクルから黒い機体が降下、独特のフォームで軽快に疾走を始める。

上半身は適度に揺れて、下半身だけを使った最低限の動きで駆けて行った。

 

 モビルスーツによる理想的な走行というものがあるならば、まさにコレだろう。

18mもの体を二本足で支えるというのはかなり無理が掛る物だ、それを最低限の負担だけで支えて居る。

 

 しかし、それもここまで。

 

「バド。発見さ……た、わ。注……して」

「ほいほい。そろそろ加速するでー」

 ミノフスキー粒子が次第に濃くなり、誘導して居た通信が徐々に遠くなる。

代わりに聞こえるのは、彼方から響く砲撃音だ。

初弾が当たる様な事はないが、念のために進路を変更しながら近くの丘陵を目指す。

 

 山なり弾道ゆえに姿は見えないが、丘の向こうで戦車か砲撃仕様のジムが、いまごろ陵線射撃を準備して居るに違いない。

登りつめると案の定だ。最後の砲撃を掛けた後、丘陵に姿を隠して砲撃を開始した。

 

「教科書通り過ぎやで!」

 黒い機体……グリフォンは前傾姿勢で疾走し、いつでも貫手を放てる様に腕を後ろに流す。

いわゆる『忍者走り』で被弾面積を抑えつつ、更にスピードを上げた。

 

 その機動はジグザグであったり、時に緩やかなカーブを付けた微妙な曲線。

ガシンガシンと踏みしめて居た足音は、キュィンキュィンと最低限の設置面積で走り抜ける。

 

「見えた!」

 丘陵を降ると、そこには三機編成のジムに戦車が一台。

ジムは二機がマシンガン装備で、一機がバズーカだ。

 

 この中で危険なのはバズーカ持ち。

だが一撃で大破させかねない機体を放置して、マシンガン持ちの片方に迫る。

 

「まずは一機!」

 ジムの右側に逸れながら、上体を起こして左手で貫手を放つ。

人体であればむしろ勢いを殺す動きだが、そのロボットめいた関節ならば問題無い。

 

 盾を迂回しながら脇腹へグサリ。

そのまま組み付いて右手を回して抱きしめた。

 

「パ~ス♪」

 せっかく捕まえた機体をバズーカ持ちの方に放り、自身はもう一機にマシンガン持ちへ。

すれ違いざまに放つ膝蹴りで、膝装甲(ブレード・ニー)が串刺しにする。

 

 その時、普通ならあり得ない事が起きて居た。

先ほどまでグリフォンが居た位置に、バズーカが撃ち込まれていた。

 

「平然と仲間撃ちおった……ウツミさんに聞いてた通りや」

 バズーカ持ちへ捕まえた敵を放った為、グリフォンではなくジムに命中した。

一撃で吹っ飛びはしないが、通常であれば戦闘不能な状況である。

 

 更に奇怪なのは中破か、悪ければ大破間際の個体がマシンガンを放とうと腕を動かして居る。

通常であれば、脱出しようと努力して居る筈なのに。

 

「うわっ。キショッ!」

 見れば膝蹴りを浴びせた機体も、胴部を貫かれた筈なのにギリギリとこちらに手を伸ばしつつある。バドはたまらずそいつも放りなげ、厄介な戦車を潰しに行った。

 

「……手応えも無かったし、やっぱこいつらAIなんか」

 バドはグリフォンを巧みに操ったが、敵は避けるよりも攻撃する方に夢中だったことも大きい。

うまく急所に命中させたことで相手は態勢を崩したはずなのに、オートバランサーでもありえないレベルの速さで復帰しようとしていた。

 

 これらの情報を総合する限り、事前に聞いて居た内容が正しかったと見えるべきだろう。

あれは……。

 

 その日、企画七課にキシリア経由で任務が舞い込んだ。

断ることはできるが、幾つかの問題が生じる。

 

「AI制御のモビルスーツ軍団?」

「クルスト博士はしょーも無い事を考えたな」

「亡くなられてるので正確にはお弟子さんとか、連邦の技術者でしょうけどね」

 キシリアからの話しでなければ断って居た所だ。

即座に断らないのも、最近研究中だから気になっているに過ぎない。

 

「でも、そんな事可能なの? ミノフスキー粒子だってあるのに」

「今でもボールの大半はAI製ですし、地上でも侵入者を迎撃しろと言う程度なら可能です」

 防衛戦だけなら迎撃を任せられる。

そこがある種の限界だろう。まだまだAIの能力には限界があるし……。

リアルタイムで指示を更新するには、ミノフスキー粒子が邪魔だと言うのには変わらない。

 

 しかし、ここで新たな疑問が出て来る。

ボールならやっているが、61式戦車ではやって居ない。

防衛戦ならば可能そうだが、攻撃面では使えないだろうと言うことだ。

 

「宇宙は当たり難いし遠間で撃ち合う分には、人でもAIでも当たらないってことよね?」

「ですね。ジムに二機随伴させたり、隊長機に数機付いてるもんなんですが……基本は『同じ相手を狙え』くらいですから」

 旅客機には早くからオートパイロットがあり、車両も二十一世紀には自動運転が確立して居る。

だから座標指定の応用で、ジムないしリーダー機の周囲に追随させるのは難しくない。

 

 技術的な問題で詳細な動きができず、認意の指定もミノフスキー粒子の為に随時変更できないことだ。

ジム等が射撃した後、追いかけるように同じ場所へ撃ち込む程度。

命中精度は高くなく、むしろ攻撃補助に収まるレベルだった。数を揃えられるからこその戦術、数で押し込む為の戦法だ。

 

「それが今更、しかも地上で実験してるの?」

「うちと同じ所まで考えついて、正反対の方向に舵を切ったのかもしれません」

 企画七課ではこのところ、AIの自己診断を意見の一つとして取り入れ始めた。

ウツミの極端な意見に毒されていたり、普通に無理な注文もあるので、あくまで一意見だ。

 

 だが人間とは違った見地による意見や、それを踏まえた周囲との会議は参考に成る。

例えばヅダ開発期の水星エンジンに出力固定現象が掛る問題があるのだが、コレに面白い意見が出たりもした。

 

「役に立たないからあくまで補助だったんでしょ?」

「例えば人的資源尊重の為に、困難な任務の露払いに充てるとかじゃないですか? 前衛部隊で撃ち合うだけなら飽和射撃で良い訳ですし」

 同じ場所に複数の角度で射撃するのが交差射撃というテクニック。

これを簡単に、誰でもできるように、数に任せてこれでもかと放りこむのが飽和射撃だ。

榴弾砲や爆撃で広範囲に着弾させたり、数にまかせてマシンガンをまとめて叩き込む姿を思い浮かべれば早いだろうか。

 

「確かにそれなら話は別だけど、そこまで連邦に余裕あるかしら? それよりも……」

「それも踏まえて、あくまで実験なのでは? ところで……」

 タケオと技術主任は先ほどから話に加わって居ない男に視線を向けた。

一同のリーダーであり怪しげな企みを考える男が黙って居るのだからこそ、つまらない話が長引いたとも言える。

 

「貴方の考えは?」

「課長次第で我々の動きも変わって来るんですが……」

「ボク? 最初から決まってるよ」

 二人は同時に同じ表情をした。

鏡を見無くとも間違いなく同じ顔の筈だ。

 

 タケオは額に青筋が浮かびそうになるのを堪えながら、そろりとウツミに忍びよる。

苦笑いを浮かべてウツミに尋ねた。

 

「へえ……。参考までにどんな対応なのかしら」

「ロボット軍団なんて邪悪な企みは叩いて砕かないとね。だいたいエレガントじゃない」

 胸を当てて密着しながら、腕を回して足を絡める。

 

「方針が決まって居るなら! さっさと伝えなさい!」

「ギブギブ! いやだってさ。君らが楽しそうに悪だくみをっ。うはっ、この感触は、悪くぁ、ギブアップだってば!」

 タケオはウツミをコブラツイストの態勢で締め上げた。

胸に密着しながら『今時コブラツイストなんか』とか余裕なことを言い出したので、つい、思いっきり締め上げてしまった。

 

 そんな他愛ないやりとりをしながら、今後の方針を決めて行く。

 

「どうせニムバス大尉あたりの嫌がらせだろうけど、まあいいさ」

 クルスト博士が連邦で作りあげた成果をまとめて始末する。

その方向性ではあるが、人間が乗って居る三号機の方は『自分で片付けるのが相応しい』とニムバス大尉は考えているのだろう。

それゆえに予備案であろう、AI制御の部隊をウツミ達に押しつけたものと思われた。

 

「この際、二番煎じが出てくる前に徹底的に叩き潰す。幸いにも片付け易いしさ」

 今は大したことの無いAI制御だが、何度も改良を加えれば優秀な物ができあがるかもしれない。

それはジオンが不利になるから……ではなく、面白くないからウツミは叩き潰す。

 

「課長のおっしゃる通り、確かに連邦の派閥が関わって居るなら、超党派でやられるよりマシでしょうね」

「そゆこと。相手に基地も判るし、どの程度結果に響いたかも追跡調査できるからね~」

「それは貴方だけよ」

 さて、場所の方は問題無く付きとめることが出来る。

いまから潜入工作は不可能だが、後から度うなかったかくらいは判る。

 

 では今からすべきことは?

 

「バドに注意しておくことはあるかい?」

「えっと。メカは自分の死を意識しませんので、自殺個体と指揮個体には細心の注意が必要です」

 AI制御のロボットは弱い。

しかし人間では無いことに注意が必要だ。

 

 腕がもげても、体が半分になっても、連中は動き続ける。

まるでファンタジーに出てくるアンデッドのように。

 

 ……バドはこの後で受けた注意を、今更のように思い出して居た。

 

 次々に成る警告音はセンサーによるものだ。

ミノフスキー粒子が散布されて居ても、特定の条項のみに絞れば、それなりに検知できる。

 

「うわっちゃ! ジムやのうて、こいつが指揮個体か!」

 グリフォンが61式戦車を始末するのと前後して、風切り音が聞こえて来る。

着弾修正の為に一発、周囲へ挟み込むように二発目。

 

「今度は二発……こいつら丸ごと囮かいな! アホンダラ!」

 バドはグリフォンを駆けださせた。

これ以上は倒しても意味が無い。そして本格的に弾丸の雨が降り注ぐ前にスタコラと逃げ出して行く。

 

 次々に降り注ぐ雨霰の砲弾。

逃げ出す事が出来たのは、一個小隊を瞬殺した事で、敵の予測よりも素早く行動できたから。

もしその辺のエースがカスタム機に乗る程度であれば、間に合わずに巻き込まれていただろう。

 

 もちろんバドとグリフォンが、彼ら(エース)より遥かに強いと言う訳ではない。

紙一重を連続で積み上げた結果、コンピューターが計測するよりも早かったに過ぎない。

だがそれこそが一騎当千の強さ。それこそがウツミ達が求めた性能だろう。

 

「ちんたら走っとったら、次は頭の上や。脱出用やけど、今使わなあかん!」

 バドは翼を展開するとブースターを吹かせて移動し始めた。

ただし上空にでは無い。それではただエネルギーを無駄にするだけだ。

 

 対空砲火を受けてしまうし、何より帰還の為の手助けが完全になくなってしまう。

 

「ほっ! はっ! たあ!」

 疾走しながらバッタのようにジャンピング。

ホップステップ、ジャンプ。時々地面を蹴りながら、ただ疾走して居るよりも素早く移動。

ブロッケンを軽量化して高速化を目指しているそうだが、ロケットダッシュで強引に大地を駆けた。

 

 本来ならばそんな事をやって、上手く着地やステップが踏める筈が無い。

しかしこの機体は、遊びながらこういうマニューバーを作りあげて居た。

タケオは良い顔をしなかったが、ウツミはBダッシュだと言って認めてくれた。

 

「足首に疲労が出始めとんなあ。キックは使わん方がええやろか」

 機体の自己申告を面倒そうに受け取るが、さすがに無視する事はない。

良く知らない大人の追う事ならいざ知らず、グリフォンのアシストである。

アップデートの度にぶっこわし、共に戦った相棒の助言を聞けるほどには、バドも成長して居た。

 

 そして人機一体となった彼らが向かうのは、悪の巣窟ならぬ連邦の基地。

マザー・コンピューター搭載機(推測)を目指し、軽快にカっ飛んでいく。

馬鹿と天才は紙一重と言うが、その紙一重を積み重ねた機体ゆえに、戦える時間はそう長くない。

 

「せやかて、これだけ時間が残っとったら、十分過ぎるわ!」

 不意に影が挿した時、バドは笑って機体を振り回した。

高速機動中の暴挙に軌道がズレ、同時に掛った負荷で、薙いだ腕と設置した足に赤いサインが灯る。

 

 それは山間に挿しかかった時、突如落下して来たモビルスーツの内一機を薙ぎ倒した結果だ。

反撃どころか墜落死を恐れぬスィーサイド・アタック。

普通のパイロットなら見ただけで混乱する攻撃だが、ゲームの中で見なれたバドが焦るほどのことでは無い。

 

「雑魚は邪魔スンナや! 今からボス戦やねん!」

 そのまま飛び抜けて山腹に有る基地へと侵入。

地面に激突したモビルスーツの小さな爆発や、奇跡的に態勢を立て直して追おうとする機体を置き去りにしていく。

 

 侵入するなり近くのジムへ無事な方の手で貫手を食らわせる。

直ぐ様、他の機体がこちらに向き直ったので、舌打ちだけ入れて奥へと進んだ。

 

「こいつら作った連中アホちゃうか? 反応が馬鹿みたいに遅っあーもう!」

 機械ゆえか特定のパターンでしか動か無い。

あり得無い動きをするグリフォンに、ジムはどうしてもワンテンポ遅れて対処する。

だが人間であれば驚く様なタイミングや、慌てて逃げ出す様な被害を受けても無感動に襲ってくるのだ。

 

 それも、平然と味方を犠牲にする様な動きで。

まるでゾンビか何かを相手にして居る様な気味悪さと、総合的に追い込まれているのではないかと言う気もしてくる。

その不気味な状態に、ついEXAMのスイッチへ指が伸びた。

 

「危ない危ない。ボス前で時間、のーなるところやった」

 バドは舌を出して笑うと、二つの制限時間を見比べる。

言うまでもなく一つ目はグリフォンの稼働時間、もう一つはウツミ達が用意した迎えの来る時間だ。

 

 途中まで使用したファットアンクルはもう使えない。

アレは目立つし、囮として使うのが精々だ。だから帰りの手段は別に用意してある。

ああいうものこそ、オートで何機も飛ばせれば楽なのにと思う。

 

 問題なのは時間内にそこへ辿りつけるかだった。

ボス敵らしき相手は御丁寧にガンダムタイプだ。しかも随伴機を連れて待ち構えている。

しかも護衛に射撃を任せて、自身は威力の強いビームサーベルを構えて居るのが嫌らしい。

 

「どこかで見られとったんかな。まあええわ、ボクとグリフォンは見ただけじゃ判らへんもん!」

 バドはあえて真っすぐ突っ込み、これまでとパターンを変えた。

起動変更はバズーカ持ちの直ぐ近くに向かう事で、当て難くくなるコースを取ることだけ。

マシンガンは当たるに任せて飛び込み、その際、急所を守る為に腕や足を屈めた。

 

 四肢を縮めて高速で飛び込む、可能な限り被弾を抑えた姿勢。

広範囲にばらまくはずのマシンガンを受ける時間を減らし、バズーカの位置調整を無効にする。

 

「らあっ!! これでどや!」

 最低限のダメージで飛び込むと、バズーカ持ちを抱えて、むしろボスとの間に距離を置いた。

すると狙い通り、敵はそいつ越しにサーベルを振るう。

 

 警戒して居なければ当たって居た攻撃だが、判って居たがゆえに当たりもしない。

バックステップを小さく掛けて、腰を落としながら一回転。

次の機体へ低い蹴りを放ちつつ、もう一機のマシンガン持ちへ蹴り飛ばした。

 

「さすがに何度も巧く行かんわなっ。せやけど勝負はこっからやで!」

 敵は倒れながらもマシンガンを放ち、後ろに居る機体も躊躇なく連射。

グリフォンは各部の装甲が裂け、あるいは千切れ掛けていた。

 

 いまのところルナチタニウムはフレームとクローのみ。

しかも軽くなった部分にマグネット・コーティングとテスト用の補助装置を入れたので、装甲は以前のままだ。

残念なことにこの合金は単純な形状は簡単に加工できるが、複雑な形状は難しいそうなので、改善は見込めそうになかった。

 

「システム起動! 起きや、ジークフリート!」

『イエス、マスター』

 バドはここでEXAMを起動。

ジークフリートと名付けられたAIが全体を制御し、不確かだったバランスを一時的に取り戻す。

AIの自己診断に任せて、各部のバランサーやら無事な回線を繋ぎ直したのだ。

 

 だが彼らの狂気と趣味は、ここから始まる。

この程度は誰でもやれる。機械が進化すれば当たり前にこなせるから、この程度で止まらない。

 

 切り込んで来たガンダムタイプのビームサーベルを、腕の装甲を犠牲に受け止めつつ……。

 

「要らんもんは全部捨てや!」

『七割りの装甲を分離(パージ)。重しとして機能する部分のみを残します』

 分離させることで身を軽くしつつ、全身への負担も軽減する。

 

 ガンダムの顔を右手で掴み、左手で相手がサーベルを持つ手首をキープ。

腕を引っ張ることでサーベルでの刺突を抑えておき、振り回しながら態勢を低くして足払いを掛けた。

 

「これは想像してへんかったやろ!」

 体当たりというには軽い動きでガンダムに未着。

そこから体を起こすと同時に、腰を跳ね上げて敵を自分の上に軽く持ちあげたのだ。

 

 タケオに習った0G柔道を応用し投げ飛ばしたのである。

とはいえ宇宙とは勝手が違い、重量のあるモビルスーツが豪快に吹っ飛びはしない。

だがそれで十分だ。テコの原理で持ち上げられたガンダムは真っ逆さまに大地へ叩きつけられたのである。

 

 もしバドが迂闊だったとしたら、頭を持ったことで重心が反れた事。

そして相手がメカゆえに、多少内部構造が潰れた程度では、気絶や死亡などしないのを忘れて居た事だ。

 

『マスター。反撃が来ます』

「へっ? っちゃー忘れとった!」

 ガンダムは倒れたまま平然とサーベルを振るう。

だがその動きは、決してグリフォンを倒す為だけでは無い。

 

「避け……」

『まだです。敵は……』

 倒れながら足を狙った攻撃は、軽いジャンプで被害を抑える事が出来た。

カカトを切られはしたが、まだ何とかなる。

 

 問題なのは……。

 

『敵は、自ば……く。しま』

「っ!? 強制休眠(スリープモード)? こんな時に!」

 ガンダムは自分をサーベルで貫いてミノフスキー融合炉を爆発させにかかった。

運が悪いと言うか、当然と言うか、グリフォンの方もそこで限界が来る。

 

 新型の流体パルス・アクセラレーターは、過剰供給で命令伝達を高速化するシステムだ。

パワーも得られるし良いことずくめに機越えるが、放熱も酷いし、それはEXAMも同じこと。

性能向上と引き換えにした放熱が、限界直前に来たところでEXAMによる演算加速を停止し、突如マニュアルに戻ったのである。

 

「走り難いなぁ。急がなあかんのに」

 できれば腕・足も切り離して軽くなって飛びたい所だが、それはできない。

空を飛んで去るだけの推進剤は残って居ないし、バランスを保つためには四肢というものは必要なのである。

 

 それに恰好良く勝つことで、AI軍団を無意味だと思わせるのも目的の一つと聞いている。

装甲くらいならまだしも、手足まで切り離せばみっともなく見えるだろう。

それにファットアンクルを戦闘機が追い掛け回して居る事を考えれば、空の旅も決して安全ではない。

 

「切られたんカカトゆうのが幸いやな。走るだけならできそうや」

 バドは来た道では無く、回収の為のコースを取った。

黒幕が実験の為に遠避けて居たとしても、基地全ての者が離れて見てはいないだろう。

航空機のことも考えれば、帰りは当然、別のコースを取る方が安全である。

 

 グリフォンは丘陵地帯を抜けて河の方へ。

その中でも峡谷のある場所へと向かって行った。

 

 薄まって行くミノフスキー粒子の中で、声が聞こえ始める。

 

「や……あ。……ド。勝った、みた……ね。ご……うさま」

「あったり前やん! ボクとグリフォンゆうたら無敵やからな。陸上戦艦でもおらんと負ける気せえへんで」

 バドはロクに話しもできない内から強がりを口にした。

もっともウツミにとっては慣れた物だ。

 

「……ハハ。デカ……ツは他の連中に任せるさ。グリフォンは最強のロボットだってことを証明さえ……あた」

「馬鹿言ってないで撤収準備をなさいな。無事に戻るまでミッションなんだから」

 ほとんど推進剤も残って居ないが、減速くらいは可能だ。

おつかれさまと告げ合って、らふれしあ号と書かれた船に向かって峡谷を降りる。

 

「ただいまー! これでゲームクリアや!」

「いえ~い!」

 みんなで親指を立て、下にクルっと回せばミッションを終了である。




 という訳で第六話です。

 終わる前にEXAM事件を片付けに言った感じですね。
三号機をニムバス大尉が倒して居る事なので、次で決着を付けて終わりに成ります。

●AI軍団
 パトレイバー劇場版ⅠでのHOS暴走、ブルー0号機(AI暴走)を合わせて見ました。
とはいえクルスト博士は死んでるのと、チームが分散したので、それほど大きな基地には立て籠って居ません。
言う事を聞く小さな基地に間借りして、AI軍団を作ろうとした派閥退治に向かった感じです。
(ニムバス大尉がカムラさんたち、優秀なサポート型のEXAMと戦いに行っています)

●グリフォンの機能
 世間ではドムがで回る中、ほぼ最終進化系であるガルバルディ級まで性能がUP。
とはいえ運動性能と演算性能だけなので、他はいつもの通り悲しいレベルです。

装備:
『流体パルス・アクセラレーター過供給型』
 ギャンの試験に使われている最新型で、エネルギー過剰供給で伝達を向上。
高速で動作が可能かつ、出力が向上するが、放熱も高くなる。

『ルナチタン製ムーバルフレーム』
 軽くて剛性の高い金属で作られた内骨格。
人体にも似た動き、および人間には不可能な関節動作の元に成っている。
以前より軽くなった部分には、試作のマグネットコーティングと、補助機構に変更。

『フレキシブル・ベロウズ・リム構造』
 多重関節で関節が僅かに伸び、その複数連鎖で、大きく伸びる仕組み。
グリフォンは腕に二か所、足に一か所存在して居る。

『ルナチタン製クロー』
 軽くて剛性のある金属製の爪。貫手や手刀に使用。

『EXAMシステム:ジークフリート』
 ニュータイプの性質を利用した演算型コンピューター。
疑似人格を備えたAIに管理を任せることで、人間には不可能な管制が可能になる。
グリフォンは確かに強力であるが、有効に活かせるのはコレあってこそ。
 ちなみに今回は移動することが前提であったため、回収不能になる前に強制休眠モードに移行する。
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