今日も地球の片隅で。   作:銀匙

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第12話

ホワイトがじっと聞き入る中、マスターの独白は続いていた。

「ずっと生きてきて、私は白い化け物対策の一環だったらしいことも知りました」

「対策?」

「白い化け物になるのは異次元から来た病だったようなのですが、人類を残す計画が立てられた」

「・・」

「1つは魂と肉体を分離して、人類を魂だけにして、遠い未来に肉体を作り、戻す方法を資料で残すもの」

「・・」

「もう1つが遺伝子操作した人間のクローンに元の記憶を入れてランダムな期間コールドスリープさせるもの」

「・・」

「私以外の保存ケースは開いてましたから、おそらく私が最後だったんでしょう」

「・・前者の、方は?」

「分離した魂の維持に必要なエネルギー源が途絶えたらしく、全滅したようです」

「・・そうか」

「そして私以外の保存ケースから出た人間達の行方は分かりません」

「・・」

「それに、私が普通の人として生きてきたころに比べると、地球環境は明らかに過酷になりました」

「・・」

「ですから無改造の人類が生きてるとは思えませんし、実際出会ったこともありません」

「・・」

「白い化け物も目覚めてから見たことがありませんから、元人類と言えるのはミュータントを除けば極少数なんでしょう」

「加古はミュータントと戦ったといったが、何か敵視される理由があるのか?」

加古は頷いた。

「ええとねえ、逆恨みが近いかなあ」

「逆恨み?」

「うん。ミュータントになると、体が裂けたり、溶けたり、変形したりして、自分で見ても怖いんだって」

「・・」

「だから冒されてない奴らが憎くて仕方ない、お前も感染しろ、そう言って物凄い怪力を振り回してくるんだ」

「・・」

「私は前線で戦った記憶が強く残ってる。だからいまだにデラさん見るとおっかなくってさ」

マスターが加古の頭にポンと手を置いた。

「そろそろ覚えてあげなさい」

「そうしたいんだけどさぁ」

ホワイトは眉をひそめた。

「ん?その、デラという者は、ミュータントなのか?」

加古が頷いた。

「そうだよ。元人類で、鉄血のエンジニアで、ELIDに感染したミュータント」

マスターが継いだ。

「ただし、ミュータントとしては珍しく友好的で、この店の大事なパートナーです」

ホワイトは頷いた。

「恐らくだが、その白い化け物については私のメモリにも登録されている。恐らくレギオンの事だろう」

加古がポンと膝を打った。

「そう!そうそう!赤目のレギオン!司令官が言ってたよ!なつかしー」

ホワイトは続けた。

「そして現在のように砂漠化したのは、レギオンとの戦いの後に起きた我々の戦争が原因かもしれない」

マスターと加古は声をそろえた。

「そのあと?」

ホワイトが頷いた。

「エイリアン、つまり異星人が襲来したのだ」

ホワイトはマスターと加古が同時にげんなりした顔になったのを面白そうに眺めた。

この二人は本当に息があっているのだな、と。

ホワイトは続けた。

「エイリアンは自ら戦わず、戦闘用に機械生命体を大量に生産したのだが、現存しているのか?」

二人は頷いた。

「その機械生命体と我々人類軍、つまりアンドロイドで戦いが始まった」

「その頃にはマスターの言う魂だけ保存する人類救済計画は既に失敗していたようだ」

「あと、人類軍側にはマスターの受けた救済計画は知らされていなかった。だから絶滅したと考えられていた」

「アンドロイド側は常に劣勢で、終わりの方では世界の2割ほどしか領土がなくなったそうだ」

「私に保存されている計画は西暦11945年3月に第243次降下作戦が始まる、という事までだ」

マスターは頷いた。

「私がちょうどコールドスリープしていた頃ですね」

ホワイトはマスターを見た。

「その、マスター殿はどこでコールドスリープしていたのだ?」

マスターは肩をすくめた。

「先程、ホワイトさんが逃げ込んだ地下空間のあったビルの近くです」

「・・見たところ、かつてはそれなりに栄えていた地域のようだが」

「今でもビルが林立してますからね。ことごとく壊れてますが」

「戦争で、我々が破壊してしまったのかもしれないな」

マスターは首を振った。

「もう誰の砲弾か爆薬かミサイルかなんて解りませんし、どうでも良い事です」

ホワイトは加古に向き直った。

「その、加古は我々が戦ってる間はどうしていたのだ?」

加古はフッと鼻を鳴らした。

「艦娘ってことで言えば、死に物狂いで兵站を守ってたっていうのかなあ」

「?」

「ここから車で半日くらい南下するとね、FOLMEの総本部があるんだけど」

「FOLME?」

「あぁ、えっと・・・ごめんマスター、正式名称なんだっけ?」

マスターが小さな紙を取り出した。

「ええとな・・Farm Of Liquids and Materials and Energy ・・らしい」

「よく覚えてたね」

「レシートに書いてあるからな。ほら」

「うわ字小っさ」

マスターがホワイトに向かって言った。

「まぁ言うなれば物なら何でも作ってる会社ですよ。水や燃料といった液体、食物、そして」

加古が継いだ。

「前線用のテントからアンドロイドのブラックボックス、交換用義体パーツまでな~んでも」

マスターが顎に手をやった。

「FOLMEにないと言われたら、それはこの世にないと言われるのとほぼ同じかなあ」

加古がひらひらと手を振った。

「ちょいまち。まだあたし達がいるじゃん」

マスターが笑った。

「FOLMEを向こうに回せるようなもんじゃないよ」

ホワイトが首を傾げた。

「そういえば、ここは店だと言っていたが、何を商売としているのだ?」

マスターは居住まいを正した。

「そうそう。申し遅れました。手前は雑貨屋「オリファイ」の主をしています」

「私達の仕事はお客様の望みと仕事人をつなげる事です。例えば・・」

加古が継ぐ。

「この間は機械生命体の社長さんとアンドロイドの奥さんのカップルが来てさ」

ホワイトは目を白黒させた。

「えっ、ア、アンドロイドが今生きて、いや待ってくれ、カップル?奥さん?」

マスターは頷いた。

「停戦して何千年も経ってますからね。今では共存を選ぶ例も多いんですよ」

「そ、そうか・・・」

加古が続けた。

「んー、でね、言っちゃ悪いけど、どっちも重いんだよね」

ホワイトは頷いた。

「あなた方二人を合わせても私一人分にもならないな」

加古が頷く。

「で、この店の椅子はちゃんと耐えられるように作ってあるけど、そういう市販品は無いわけ」

マスターが継ぐ。

「今の例でいえば、機械生命体やアンドロイドは座って休息する概念がありませんからね」

ホワイトが頷いた。

「そうだな。強いて言えばスリープモードの時に横になれる安定した場所があれば良い」

加古は苦笑した。

「でもその二人はね、旧世界のゴシック様式を模した家を作っててさ」

「は?」

「FOLMEは実用一辺倒だからゴシック様式の家に合う家具なんて無いって断られちゃって」

「・・」

「自分達でだいぶ作ったらしいんだけど、どうしても2人で座れるソファだけ作れなかったんだって」

ホワイトは頷いた。

「機械生命体の大きさにもよるが、2体なら軽く300kgはあるだろうな」

二人は頷いた。

「ええ。ですので、旧世界の洋室にふさわしい外装を持つ、二人掛けのソファをお求めにいらしたのです」

ホワイトは頷いた。

「そこで先程のデラが関わってくるのだな」

マスターはニッと笑った。

「ご明察。デラは元人間ですから旧世界の記憶があるし、鉄血の機械に関する知識もある」

「ふむ」

「だから外見はソファのようで、二人の重さに耐えられる機械を内包したユニットを作れるのです」

「なるほど。両者を仲介するという訳だな」

「ええ。ただ、分野を特定するつもりもありませんし、仲介だけに限るつもりもありません」

加古が口を開いた。

「今日出かけたのも、デラさんに頼まれて多脚戦車の部品を仕入れに行こうとしてたんだけど」

ホワイトは加古を指さした。

「私を襲った多脚戦車を仕留めたのはそういう事だったのか」

「正解。おかげで徹甲弾11発で手に入ったってわけ」

「だから雑貨屋か。納得した」

 




本話にあるように、NieRに関してはNieRオートマタの時代(2Bやホワイトの居る時代)のさらに過去としてNieRゲシュタルト/レプリカントの時代(レギオンが居る時代)も用います。
とはいえNieRゲシュタルト/レプリカントの方は古代史として登場する以外は出てきません。補足すれば、魂だけ保存する人類救済計画がNieRゲシュタルトの事、第243次降下作戦がNieRオートマタの時代を差します。

年表資料で確認するとNieRゲシュタルト/レプリカントの時代が、およそドルフロとニアリーイコールです。艦これは歴史年表が無いので私の前作設定を用いてますが、ドルフロとNieRの少し前から艦娘達は戦っていた、という感じです。

補足でした。
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