今日も地球の片隅で。   作:銀匙

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第25話

 

涙目の龍田と介抱するMP40から視線を外し、ホワイトは再び職人の方を向いた。

「さて、話を戻すが、そちらの貴方は何か提供してくれるのか?」

指を差された機械生命体の職人はふっふーんと笑いながら答えた。

「俺っちからは重収縮弾頭を積んだICBM出すぜ。5発あるから消してほしい場所を言いな」

 

「!?」

 

龍田はすんでの所で声を上げそうになった口を自分の手で抑えた。

それを見たMP40はますます心配そうな顔になる。

「だ、大丈夫ですか龍田様?吐きそうなんですか?」

「あ、い、いいえ、そうじゃないから」

「そうですか・・辛かったら言ってくださいね?」

「えぇ、あ、ありがと~」

龍田は目を閉じ、深く息を吸った。

事前調査結果には今聞いた2つの情報はどちらもなかった。

偵察中隊のリポートではデラの飛行機に積まれた25発の空対地ミサイルが最大火力の筈だった。

非核兵器とはいえ火力マシマシのMOABもバンカーバスターも凄まじい脅威ではある。

だが、重収縮弾頭を積んだICBMは次元が違う。

で、でも・・・まさかそんな。ありえない。

単に単語が同じだけで別の物に違いない・・そうよ龍田、落ち着きなさい。

機械生命体の職人を見ながら、ホワイトは小首を傾げた。

「すまない、私のデータベースは古いのだ。それは一言で言えばどのような兵器なんだ?」

機械生命体は頷いた。

「簡単に言やぁ人工のブラックホールだ。半径15km圏内はクレーターしか残らねぇよ。文字通り土に返るぜ」

「そうか」

 

「ふざけないで!」

 

再び全員の視線を集めた龍田だったが、当の龍田はたじろぐ機械生命体にすごい剣幕で迫っていた。

「な、なんだよ。説明しろっていわれたから」

「HCB(重収縮爆弾)のプロトタイプは先月臨界実験を済ませたばかりなのよ!?」

「それがなんだってんだよ」

「あれがもう弾頭サイズになんてなる訳ないでしょ!一式で25m四方もあるのよ!?」

「そいつを作ったのがどこのウスノロか知らねぇが、俺っちはもう10年前には実用化してたっつーの」

「なっ・・」

「15年前には半径50cm圏内を1cmの球に圧縮したしな!」

「うそ・・よね・・」

「弾頭サイズで15km四方ってのは厄介だったが、そこは俺っち天才だからちょいちょいってなもんよ!」

胸を張った機械生命体をジト目で睨みつつ、妖精の職人が口を開いた。

「その頃オイラに解析頼むって泣きついてきやがったのはどこのどいつだったっけ?なあ天才さんよ?」

「あっ・・そ、そういやアンタにも手伝ってもらったなぁ・・うん、そうだった、協同開発だな!」

リーリャの視線も機械生命体に刺さる。

「それをいうなら多次元収縮制御プログラムって私コーディングしたわよねぇ、ラショルフ?」

「いっ!?」

「あ!そうよ、あの時の代金!フィルタ5枚でうやむやにされたの思い出した!」

「げっ!思い出さなくていいのに」

「最初の契約じゃフィルタの束を5つだったでしょ!残り寄こしなさいよ」

「解った解った。あとで!あとでな!」

「証文書いてもらうからね!」

「ちっ」

 

龍田は力なく肩を落とした。

確かに自分達は巨大組織だから意思決定は遅い。

だが、人造ブラックホールなどの最新鋭兵器は大規模な開発人員と予算を揃える事こそが肝要だと思っていた。

まさかこんなド僻地に居る個人営業の職人達に15年以上遅れを取っていたなんて・・

色々な意味で情報師団長は帰ったらお説教確定ねぇ・・何してあげようかなぁ・・・

不幸中の幸いは完全にFOLMEの出る幕は無くなったってことかしらね・・

 

ホワイトは乱れだした場を鎮めるため、軽く手を打った。

「積もる話があるようだが、本作戦に関わる事以外はすまないが後でやってくれ」

職人達は口々に詫びの言葉を入れ、その後ホワイトは順調に供出される兵器の詳細を聞き出していった。

それを聞いていた龍田の顔色がますます蒼褪めていったのは言うまでもない。

 

 

-----

 

 

「・・・ふむ、こんなものだな」

ホワイトは龍田の持ち込んだ図面に最後の記号を書き終えると、皆の表情を見回した。

龍田はまだ少し顔色が悪いな。一時期よりはマシだが、もう少しそっとしておこう。

職人達には攻撃する拠点の位置と時間情報を正確に配分したし、検算も済ませてもらった。

後は・・

「MP40」

「はい!」

「君が直接突撃したい場所は、今回の攻撃を決定した地域管理者のいる工場だったな」

「はい」

「正直に言おう。この施設が一番巨大だ。他から引き抜いてでもHCBで無に帰すべきだと私なら考える」

「・・」

「だが、それでは納得出来ないのだな?」

「はい」

「では、HCB1発、あるいはMOAB4発の威力を上回るプランを示して欲しい。私もそのプランの確認をする」

「プラン、ですか?」

「あぁ。まさかとは思うが一人でプランも無しに突っ込むつもりではあるまい?さすがに自殺行為だぞ?」

MP40はマスターの視線に気づき、にこっと笑った。

「ええ。少し昔の伝手を頼ろうと思っていました」

「伝手とは?」

「フリーの傭兵をしている方達です。5人で1小隊を組まれています」

ホワイトが顎に手をやった。

「一人ではないが・・1小隊でこの規模の相手を攻め切れるか?」

「むしろ少なすぎると文句を言われるかもしれません」

「少なすぎる?6千万平米の敷地に、確認されただけで大型多脚戦車が800台以上展開してるのだぞ?」

MP40は目を細めた。

「お言葉を返すようですが、ホワイト司令官殿」

「う、うむ」

「私一人でも多脚戦車と自律人形の混じった300体規模の部隊に対処出来ます。彼女達はそれ以上です」

「・・・は?」

MP40は加古を見た。

「加古だって出来ますよね?」

全員の視線が集まった加古は欠伸をしながら答えた。

「あたしならホワイトさんの言う通りHCB叩き込んでもらってから遠距離ハンティングするよぅ」

「それは面倒だから、ですよね?」

「あったり~」

「仮に、奴らがマスターを人質にしてその敷地の中にあるビルの中層階に立てこもったとしたら?」

加古はスッと目を細めてMP40を見返した。

「ナイフ1本で殲滅してから迎えに行くよ。そんな悪手思いついた事を死ぬほど後悔させてやる」

「ですよね。今回それに近くないですか?」

「んー・・マスターの居ない鉄屑の基地なんてクレーターになれば良いよ」

「でも、加古の寝室やコレクションを台無しにしたんですよ」

「まあねぇ。でもあたしなら少なくともバンカーバスターは打ち込んでもらうなぁ」

「自分の手で始末をつけたくないんですか?」

「別に?地下シェルターとかあったら攻め込むのめんどくさいし」

「趣味の違いですね」

「だねぇ」

マスターはごくりと唾を飲み込んだ。この二人と夫婦喧嘩なんて想像もしたくない。

ホワイトが軽く咳ばらいをした。

「解った。それでは作戦の調整もある。その小隊の方達と連絡は取れるだろうか?」

「はい、直ちに」

 

 

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翌日。

 

「よぅ、元気だったか?」

「隊長殿、ご無沙汰しています」

「今度一緒に一儲けしないか?MP40が来てくれると大助かりなんだ」

「すみませんが、旦那様と少しでも居たいので・・」

「結婚したのか?良かったじゃないか!」

「ありがとうございます」

 

ホワイト達は待ち合わせた場所で、二人から少し離れた位置から、MP40の肩に腕を回す戦術人形を眺めていた。

腰まである金髪、アイスブルーの瞳、金色の1つ星輝く赤いベレー帽。

オリーブドラブ色のタンクトップにホットパンツ。

腰にある迷彩色のバッグからは手榴弾が見え隠れしている。

そんな視線に気づいたのか、二人でホワイトの方に向かってきた。

MP40が口を開く。

 

「ホワイト司令官殿、こちらが先日ご紹介した小隊の隊長で、AK-47殿です」

AK-47はニカッと笑って手を差し出した。

「アンタがボスか?アタシを呼んでくれたんだろ?世界中どこでも暴れまわってみせるよ!」

ホワイトは小さく頷くと、AK-47の手を握り返した。

「私はホワイトという。よろしくお願いする。作戦を説明するから意見を聞かせてほしい」

「あぁ。一方通行じゃないのは良い作戦の証拠だぜ」

 

 

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