今日も地球の片隅で。 作:銀匙
「・・・以上だが、どうだ?」
ホワイトの説明を聞き終えたAK-47は苦笑いをしながら紫煙を吸い込み、口を開いた。
「それならそこもMOABとバンカーバスターで潰せば良いと思うけどなぁ」
加古がニヤリと笑った。
「ほぅら、隊長さんだってあたしと同意見じゃーん」
AK-47は肩をすくめた。
「ビル内から奪取したいものでもなければ、普通はそうだろうけど・・」
だが、AK-47はちらりとMP40を見た。
「でも、それじゃアンタの勘定が合わない。そうなんだろ?」
MP40はこくんと頷いた。
「どうして合わないんだよ?アタシに言ってみな」
「・・この鉄屑共は、私の旦那様が居るシェルターに迫撃砲を24発も撃ちこんだんです」
AK-47は目を細め、携帯灰皿に咥えていた煙草を押し込んだ。
「そいつがやったのは確かかい?」
「はい」
「んー・・・」
ややあってから、AK-47はホワイトを見た。
「今の時点で、ここに回せるミサイルはある?」
「他でミスがなければMOABとバンカーバスターが4発ずつ。HCBは無理だ」
AK-47はくすくす笑った。
「MOABが2発もあれば充分だ。そいつを発射要請してから着弾までの時間は?」
リーリャが答えた。
「発射準備はしておくとして、到達まで4~5分よ」
「もう少し正確に解るかい?」
「ええと・・発射台を最寄りの奴に指定したとして・・228秒よ」
「2発とも?」
「ええ」
「MP40」
「はい」
「盛大に吹っ飛ばすオプション付きの殲滅ミッションなら付き合ってやるよ」
MP40は最終決定を下したハイエンド機とされるアルケミストの顔写真を指さした。
「こいつは私にやらせてくれますか?」
AK-47は実行犯であるデストロイヤーの顔写真を指さした。
「こっちは良いのかい?」
「実行犯は単なるコマなのでMOABに任せます」
「んー、お前が万策尽きたら介入するぜ?」
「・・」
「旦那にあんまり心配かけんなよ」
AK-47の言葉にはっとしたMP40は、マスターの方を見た。
マスターはMP40を見ながら何度も頷いていたので、MP40はAK-47を見返した。
「ど、どうしてマスター様が旦那様だと解ったのですか?」
「簡単なことだよ。旦那はずっとアンタを心配そうに見ていたからね」
「・・」
「アンタがしくじるとは思えないけどさ、アタシが見届けてもいいだろ?」
「・・解りました」
AK-47はホワイトに向き直った。
「こんな感じで良いか?」
ホワイトは頷いた。
「充分だ。ありがとう。ではこの発射台、MOAB2発はAK-47殿の指揮下とする。準備を頼む」
リーリャが頷いた。
「解ったわ」
AK-47はパンと手を打った。
「よし決まりだ。じゃあMP40、久しぶりに一緒に暴れようぜ!」
MP40は笑いながら頷いた。
「はい!隊長殿!」
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ズ・・ドズズン!
その衝撃波は余裕を見て安全圏と判断した分厚いコンクリートの壁さえも大きく揺さぶった。
MP40は雨のように降ってくる破片に眉をひそめた。
さらに自分達の頭上を瓦礫が飛んでいき、黒い雲が稲妻を幾重にも光らせながら流されていく。
MOABは非核兵器だが、とてもこの世の景色とは思えない。
砕けた壁の穴から観測を再開したSVT-38は、やがてげんなりした声をAK-47に伝えた。
「ボス・・今の1発で敷地の東半分がほぼ更地になったぞ?」
AK-47は瓶からぐいっとウォッカをあおると頷いた。
「爆心地からこれだけ離れててこのザマだ。コイツの勘がいつも通り冴えてたことに感謝だぜ」
AK-47にぐりぐりと頭を撫でられたOTs-12はフフンと満足げに鼻を鳴らした。
「どう?私、期待通りよね?」
そう。
ホワイトが職人から聞き出した情報で安全圏と定めたのはここからさらに1kmほど内側だった。
だが、デラの飛行機から空中へと飛び出した後、OTs-12は遠い地点へ着地するよう誘導。
首を傾げながらパラシュートを操るMP40にAK-47は良いから来いとハンドサインで伝えたのである。
もし予定通りの地点に居たら、いかに経験豊富な戦術人形達でもダメージを被っただろう。
間一髪、である。
SVT-38は双眼鏡を構えながら続けた。
「冗談抜きで展開中に2発目を使ったら我々は粉微塵だ。今使うか、もう使わないかの2択だろう」
AK-47はウオッカの瓶を腰のポケットに仕舞った。
「うーん・・まぁ発射用のリモコンは持っておくよ」
「ボス」
「どうせこんなもん、捨てても持ってても重量なんて変わんないよ」
「では参考までだが、更地になった所では建物の基礎すら判別できない。その事を覚えておけ」
「あいよ。西側の残った建物はどうなった?」
「全てのガラスが吹き飛んでる。建屋は歪み、火の手が上がってる。まともな物は無い」
AK-47は煙草に火を付けながらMP40を見た。
「アタシ達は正門前で待っていて、西半分にもう1発MOAB打ち込むのも手だよ?」
MP40は首を振った。
「殲滅だけなら確かにそうなのですが、管理者が普通に蘇っては意味が無いんです」
「どういうことだい?」
「現存するハイエンド機が活動停止すると、鉄血は記憶を引き継いだ当該機を別の地の工場で再生産します」
「そうだね」
「ですから蘇生後にAIが暴走するように仕向け、そのハイエンド自体の再生産を諦めさせたいのです」
「二度とマスターに近づかせないためか」
「はい。そのためには始末する時にAIが耐えきれないほどの恐怖を与えるしかありません」
「・・・・・」
「それは一瞬で無に帰す爆撃ではダメなんです。AI記憶部に焼き付くくらいの恐怖でないと」
AK-47はガシガシと頭を掻いた。
「解ったよ。突き進まなきゃいけない時ってのはあるからね!」
AK-47のその言葉を合図に小隊全員が立ち上がった。
「SVT-38、陸路でも大丈夫か?」
「ああ。奴らは混乱どころか動きすらロクにない。ショック状態だ」
「よし、じゃあさっさと行こう!アタシについてきな!」
MP40を加えた総勢6名は、かつて工場が立ち並んでいた跡地へと突入していった。
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「イ、一体、何ガ・・起キタ?」
工場も、地域すらも管理下に置く、アルケミストと呼ばれる鉄血製ハイエンド機は呆然としていた。
自室である高層ビルの一角で窓を背に仕事をしていたら、爆風と共に砕けたガラスの雨を浴びたのである。
停電の中で振り向くと、黒い雲が去った後には、敷地の半分ほどを占めていた筈の建物群が更地になっていた。
多脚戦車といったローエンドモデルの完成品を保管していた倉庫が丸ごと消え去ったことになる。
しばらく放心状態だったアルケミストは、ふとビルのアラート音が聞こえないことに気が付いた。
自己診断プログラムを走らせてみたが、聴覚センサーにエラーは無い。
余りにも大規模な爆風でアラートシステムがやられてしまったのか?
舌打ちをしながら全所内に向けて発信する。
「私ダ。各班長ハ被害状況ヲ確認シ報告シロ」
通信を切ってからアルケミストは思考を巡らせる。
敵の大規模攻撃?まさか。そもそもそんな事が出来る巨大組織がこんな僻地に居るわけがない。
だが、念の為だ。各拠点に連絡してみるか。
拠点01:Offline
拠点02:Offline
拠点03:Offline
拠点04:Offline
拠点05:Offline
拠点06:Offline
拠点07:Offline
拠点08:Offline
拠点09:Offline
拠点10:Offline
拠点11:Offline
拠点12:Offline
拠点13:Offline
拠点14:Offline
拠点15:Offline
「クソッ、外部通信中継施設ガヤラレタナ・・」
全拠点が連絡を同時に断つなどありえない。もし本当なら悪夢以外の何物でもないが。
さっきのバカみたいなあれのせいだろう。小型の隕石か?
その時、配下が緊急通信で敵の襲来を報告してきた。
同時に様々な銃声が響き始める。
大多数は自軍の発射音だが、違う音が混じっている。
「ライフル、アサルトライフル、マシンガン、サブマシンガン・・シカシ、ヤケニ少ナイナ?」
やれやれ、我々が混乱してると思って地元の貧乏ゲリラが迷い込んできたか?
多脚戦車だけで1200台配備しているのだ。程なく返り討ちに出来るだろう。