今日も地球の片隅で。   作:銀匙

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第27話

「お待たせしました。発破準備完了です!」

PPSh-41は傍らに戻ったDP-28とハンドサインで結果を確認しあうと、無線でそう告げた。

「あいよ。じゃあイヤーマフ忘れるな」

AK-47からの返事に思わず緩んだ頬を抑えながら、PPSh-41は答えた。

「はーい」

 

「あらよっと」

AK-47は自らのアサルトライフルで大型多脚戦車2台と自律人形4体を始末してから物陰に飛び込んだ。

デジタル無線機をポケットに仕舞いつつ、AK-47は控えていたMP40に話しかけた。

「聞きな。SVT-38の観測ではお前さんの相手はあのビルの25階、中央の部屋にいるんだってさ」

MP40は頷いた。

「まずは正面突破ですか?私が先に援護します」

AK-47は首を振った。

「わざわざアタシ達が上ってやる必要なんてないんだよ」

「ではどうするんです?」

「降りてきてもらうのさ。25階の窓がどこか今のうちに数えておきな」

「えっ・・あ、はい」

怪訝な顔をしながらも目的階に目を向けるMP40。

「特定したかい?」

「ええ、でもどうするんです?」

「こうするんだよ」

ニヤリと笑ったAK-47はポケットから小さなリモコンを取り出した。

「地上階にごあんなーいってな」

AK-47がリモコンを押した途端、MP40の目の前でビルの足元が爆発したのである。

 

「ナッ!ナンダ!何ガ!ウワ、ウワアアアアア!」

 

激しい爆発音と共に自分と部屋の備品や机、椅子などが宙に浮いた。

・・・違う・・・これは

 

「ヒギャァアア落チルウウウゥウゥ!」

 

ビルが崩れて地面に落下しているんだ!

 

 

-----

 

 

「・・・うわぁ」

もうもうと立ち込める煙がやっと引いた頃、MP40は目の前のビルのフロア数を数え直していた。

間違いなく24階分「減っている」

つまり、あの見えているビルの1階が25階だったという訳だ。

目の前の結果を見てMP40は呆気にとられていた。

どうやったら40階建てのビルの下半分だけ綺麗に崩せるんだろう?破壊精度が高過ぎる。

そんなMP40の肩をAK-47がポンと叩く。

「そうそう。プレゼントはこんなんで良かったか?」

AK-47がMP40の手に握らせたのは新品の紙箱だった。

開けると中には全長4cm程の長釘がぎっしり詰まっていた。

AK-47はMP40が頷いたのを見て周囲をくるりと見回した。

「雑魚がまだ200匹は残ってるけどそっちは任せとけ。楽しんで来いよ!」

MP40が走り去るAK-47からビルに視線を戻すと、その中央部から大柄な人影が表れた。

「・・・間違い、ありませんね」

MP40はまっすぐに人影に向かって歩き始めた。

 

「ゲホッ・・ゲホッ・・・」

奇跡的に上層階に押し潰されなかったことに安堵しながら、アルケミストは地上に降り立った。

通信回線は故障してしまったのかどことも連絡が取れない。

もうもうと立ち込める煙の外では散発的な銃撃音が続いている。

「何ヲモタモタシテイルノダ・・・・ン?」

 

ザッ・・・

 

アルケミストはその姿を見て、リポートを保存メモリから呼び出した。

遊撃大隊を潰し、我々の製造拠点3か所をウイルスで壊滅させたMP40か?バカな。

いや、奴はデストロイヤーの撃った迫撃砲で叩き潰した筈だ。バックアップか?別個体か?

そのリスクは確認しておく必要があるな。

 

「ココハ我々ノ拠点ダトイウ事ヲ知ッテルカ?IOPノ低級人形サン」

「ええ」

「ソウカ。トコロデ何故ココニ来タ?」

「お礼に」

「迫撃砲ガオ気ニ召サナカッタカ、低級人形サン?」

「いいえ」

アルケミストは挑発しつつ非常回線を開いた。

恐らく私も壊される可能性が高い。ならば近隣の空軍基地から無人爆撃機を送ってもらおう。

この敷地ごと爆撃されてしまえ。どうせ私はお前に壊されて意識は無いだろうからな。

「ソレトモ、粗末ナシェルターデ殺サレタコトガ不満カ?死ニ方ニ拘ルカ?」

「さようなら」

 

ヒュッ

 

キン!

 

MP40は自らが投げた長釘が叩き落されたのを見て目を細めた。

「ナルホド。MP40ノ9mmナドトイウ、弱ッチイ弾デ何故部下達ガ散ッタノカ疑問ダッタガ」

「・・・」

「タカガ釘トハネ。私ガ両腕ニ何ヲ装備シテルカ見エナイノカ?サスガ低級人形ダナ」

アルケミストは両手に装備した両刃斧にも似た近接武器のグリップを軽く握り直した。

面白い。出撃要請はもう少し後にするか。楽に死なせてはつまらない。

 

ヒュッ

 

キン!

 

再び飛んできた釘を再び叩き落すと、アルケミストは愉快そうに笑った。

「ムダダ。神様ニオ祈リデモスルカ?」

「始めましょう?」

 

2体は同時に地面を蹴った。

 

 

-----

 

 

「よっ、状況はどうだ?」

「恐らくだが、想定以上で苦戦していると思われる」

「へぇ」

「釘が通じない相手は珍しい」

「んー、ちょっと見せて」

「あぁ」

AK-47はSVT-38から双眼鏡を受け取ると、MP40達に向けた。

小隊の他のメンバーも集結しており、簡単な武器の手入れを行っていた。

つまり戦闘を行っているのは既にアルケミストとMP40のみということである。

 

しばらく双眼鏡を覗いていたAK-47は、SVT-38に返しながら肩をすくめた。

「もう少し様子見よっか」

「何故だ?ここからなら簡単に鉄屑の頭を撃ち抜けるが?」

「別にアタシだって始末出来るし、MP40も出来るんだよ」

「やらない理由は?」

「それだとあっという間に死んじゃうからかな。敵は今舐めてかかってる」

SVT-38は双眼鏡を覗きながら頷いた。

「あぁ。笑ってるな」

「そこで大逆転が起きたとき、MP40の望む状況になるんだろ?」

SVT-38は肩をすくめた。まだるっこしい。

「それなら余ったミサイルで次の製造拠点を木っ端微塵にしてしまえばいいではないか」

「AIの学習結果を使い物にならなくしないと、また別の拠点で作られるだけなんだってさ」

「来ても無駄だと何度でも眉間に撃ち込んで学習させればいい。我々はそうしてきた」

AK-47はポケットから取り出したウオッカの瓶を口に含んだ。

「うちらと違って、MP40は守りたい者が出来たからじゃない?」

SVT-38は首を振った。

「そんな余計なもの、戦場では命取りだ」

AK-47はくすっと笑った。

「そういう余計な物こそ、生きる潤いとして必要なんじゃないかな」

 

 

-----

 

 

「マダヤルノカ?イイ加減ニ諦メタラドウダ?」

アルケミストはMP40の真意が読めなくなっていた。

飛ばされてくる長釘は簡単に叩き落せる。コースもタイミングも一緒で馬鹿みたいだ。

その割にこちらからの攻撃は体よくかわされてしまう。

何の時間稼ぎかと思ったくらいだ。

確かに工場内から戦闘音が消えてしばらく経った。

だが、コイツの仲間が現れないという事は相打ちでもしたのだろう。

こちらの味方も全滅したようだがな。

しかし自分がノーダメージである以上、空爆要請は出来ない。

ハイエンド機である自分がノーダメージでそんなことをしたら資源の無駄遣いだと査問会に責められる。

ならばと自分が敷地から離れて空爆要請などすれば敵前逃亡の重罪に問われる。

つまり自分が始末されなければ空爆要請は出来ないことになる。

面倒な状況になってしまった。

MP40は攻撃を避けつつ、常に同じパターンで釘を投げていた。

箱の中にあった釘は既に投げ終わり、今は地面から拾っては投げている。

同じタイミングで、同じパターンで。

MP40はただただひたすらに攻撃を続けていた。

 

 




小説を執筆する時はBGMをかけているのですが、この話を書いた時はこんな曲を聴いてました。
映画の予告編やゲームで使われるBGMを作る人達の曲です。
youtubeのリンクを置いときますから、よろしければ聞いてみてください。

Two Steps From Hell - Strength of a Thousand Men (Extended Version)

https://www.youtube.com/watch?v=N2RK6OGNMCY

お風呂掃除する時とかにも使えますw
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