今日も地球の片隅で。   作:銀匙

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ライフルのレシピ5回回したらM99とNTW-20が出ました。
ビックリしてたら目覚まし代わりのandroidタブレットがお亡くなりになりました。
そんな月曜の朝です。おはようございます。



第33話

「それでは閉会とする。エージェントは残れ」

「はっ」

 

エージェントはエルダーブレインの声に返事を返しつつ、風向きの悪さを感じていた。

自分が用意した放棄を示唆する提案に対し、オーナーNもエルダーブレインも返事を保留したからである。

他のメンバーが会議室から去ると、会議室はエージェント一人となった。

エルダーブレインと記されたスピーカーから声が流れ出す。

「エージェント。先程の提案だが、お前はいつからそんな腰抜けになった?」

「・・」

「我々に資金が流れてくる根源的理由は恐怖だ」

「はい」

「それが総資産の1%にも満たない損失で撤退したなどと知れ渡って、他地域に示しがつくと思うのか?」

「・・は、はい」

「常識的な思考はエージェント、君の長所だ。だが我々は一般的なビジネスを行っているのではない」

「はい」

「我々が常識の間尺にあわない理不尽さを持つ事こそが、恐怖を生み出していることを忘れてはならない」

「はい」

「君は今回の案件を放射能によるAIの誤作動と断じたが、敵対勢力である可能性は捨てきれまい?」

「・・はい」

エージェントがしょんぼりと肩を落とした時、N2と書かれたモニタに映る赤い服を着た少女が口を開いた。

だが、その声は姿に似つかわしくないほど低く暗い声だった。

「エルダーブレイン君、彼女は我々経営層が示した目標を実現するべく判断したのだよ」

「・・・しかし」

「総資産割合では確かに1%未満だ。しかし生産拠点から展開中の兵力まで一切が喪失したのだよ?」

「・・」

「これが大都市の、PMCや正規軍と交戦中のホットエリアなら徹底的に調べて奪い返せというのが道理だ」

「はい」

「しかし仮に敵対勢力だとして、こんな極東の、臨海汚染地域を奪還してそのあと何になる?」

「・・・」

「我々が手を引き、その事を我々の脅威になる程流布する住人がこんなところにいるのかね?」

「・・・」

「この汚染状況では人間などとうの昔に死に絶えている。機械生命体ですら遠慮したいレベルだ」

「・・・」

エルダーブレインは苦々しく思いながら沈黙を保っていた。

自分が単独で鉄血を動かせたのは遠い昔。

資源的、資本的に窮地に立った時、赤のN2の指導者であるオーナーNが手を差し伸べてくれた。

その事には感謝しているが、今や我々は赤のN2という巨大組織の1つに過ぎない。

そうでなければ日々戦闘で膨大に失われる兵器や新型兵装の開発などが行えない。

PMC、特にグリフィンはIOP社と資本提携まで済ませ、政府と手を組み開発を進めている。

ペルシカリアのような天才が数百年に1度は研究に加わるので、我々と鍔迫り合いを続けている。

手を止めてしまえば負け戦の始まり。金の切れ目が縁の切れ目。

地球に害をなす人類を滅ぼし、真の平和を取り戻す。

シンプルな志であったはずなのに。

「・・エルダーブレイン君」

「はい」

「私としてはエージェント君の言い分も解らんでもない」

「はい」

「だが、君の言うことも解る」

「は」

「1つ懸念があるとすれば、あれだけの部隊を消滅させた何かが、これ以上浸食範囲を広げてくるか否かだ」

「はい」

「そこでだ、現在消失エリアに隣接している境界線の配置兵力を増強しよう」

「はい」

「浸食が進むなら原因を調べて潰さねばならない。そこにいるエージェント君を派遣してでもな」

「だから今は、境界線の維持で妥協しろと?」

「そうだ」

エージェントはごくりと唾を飲み込んだ。

確かに自分は失われた4体より上位のAIと兵装を有するとされている。

だが、アルケミストは前線での戦闘経験は自分より豊富だった。

本当に自分があの地域に送り込まれて、より良い成果をあげられるのだろうか?いや、無理だ。

ミュータントに眉一つ動かさず対処してきたエクスキューショナーが狂うほど恐れた相手。

エージェントは境界線で何事も起きないことを強く願うほかなかった。

「では閉会としよう。エージェント君、エルダーブレイン君、ご苦労だった」

「ありがとうございます」

オーナーNの掛け声を合図に、エージェントは重苦しい気持ちのまま席を立ったのである。

 

 

-----

 

 

「まいどどーも!FOLMEロジスティクスでーす!」

「はーい」

マスターが玄関先に出てみると、揃いの制服を着た可愛らしい女の子が数人並んでいた。

そのうちの一人が帽子のロゴを見せつけるかのようにくいっと動かしながら言った。

「ご注文の多機種対応型修復機1式お持ちしました、どこに設置します?」

「裏庭にしましょうか、こっちです」

 

「この辺りにお願いします」

「電源は200Vの急速対応系か、12Vの標準系どっちにする?」

「大丈夫なんで200V系で、コンセントはこれを」

「はーい、じゃあ危ないから離れててねー」

 

作業の音に気付いた加古が裏口のドアを開けると、集団から離れて柱にもたれかかる女の子が目に留まった。

「お、望月久しぶり」

「んあー?あー、加古じゃん。ここに居たんだぁ」

「仮住まいだけどね。仕事どう?」

「物流系はきっつい」

「うん。望月がやるとは思わなかったよ」

「皆がやるっていうからさぁ」

そういうと望月はテキパキと作業を進めていく他のメンバーに視線を戻した。

「で、そういう望月はサボってて良いの?」

「なにいってんのさぁ。私は仕事中だよー?」

「日陰の柱にもたれかかるのが?」

「有資格者が立ち会って作業全体を監督してるんじゃーん」

「見てるだけじゃん。その為に資格取ったのか?」

「当たり前じゃーん?楽出来るなら資格の1つや2つ頑張るよ」

「そういう資格って難しいんじゃないの?」

「筆記と実技と小論文と面接だよ?」

「この短時間で凄い矛盾を感じたんだけど・・」

「そういう加古は何してんの?相変わらず傭兵?」

「店員」

加古に返事を聞いた望月がジト目で振り返った。

「・・・暗殺教室の?」

「雑貨屋だっての」

「あぁ、表の顔?」

「裏なんかないっての」

望月はひらひらと手を振った。

「もうちょっとマシなウソ言いなよー別に言いふらしたりしないってばー」

加古の眉が吊り上がる。

「言ってないよ」

望月の手がぴたりと止まる。

「・・・うそ、だよね?」

「ほんとだっての。店長はあの人。ついでに旦那」

「マジで!?」

「だからほんとだって言ってるじゃん」

「才能の死蔵じゃん」

「いいの」

「はぁー、アズラーイールの二つ名を持つ名スナイパーが雑貨屋の店員って・・・もったいねー」

「だったら望月達は相変わらず裏の顔持ってるの?」

望月はひょいと加古を振り返り、ニイッと笑った。

「掃除は昔から得意だよ?」

「ゾーンスイーパーズは相変わらずか。まだSPAS使ってるの?」

「まぁね。最近はかったるいから余程じゃないと引き受けないけど」

「余程って?」

「そうだねぇ・・」

望月はマスターに元気よく受け答えをしてる皐月を見ながら言った。

「友達を傷つけられた、とかかな」

加古はふふっと笑った。

「それってあたしは含まれるの?望月にとってさ」

望月は腕を組んだ。

「加古がやられた時?んー・・FOLME総本部につなぎをつけるねぇ」

「なんで?」

「うちらで歯が立つとは思えないから」

「でもまぁ、動いてくれるんだ?」

「7000年も一緒に戦った戦友だからねぇ」

「7322年」

「端数なんて忘れたよぉ」

加古は肩をすくめた。

「だから望月に観測手やらせると外れるんだよ」

「そこは腕で当ててくれよー」

「962mを大体1000mって言われて当てられるかっての」

「めんどくさーい」

「望月は出来るのにやらないからなあ」

「細かいとこ全然変わってないじゃん・・それとさぁ」

「ん?」

「加古から硝煙の匂いがするんだけど?」

「輸送中の護衛とかあるし、仕事でハンティングするしね」

「武器は?」

「XM109」

「攻撃ヘリすら撃ち落とす加古が大口径対物ライフル・・ターゲット気の毒すぎ・・」

「馬鹿にできない相手だしねぇ」

「へぇ・・たとえば?」

「このあいだ、大体2kmくらい先の鉄血戦車を仕留めたよ。2週間で300体くらい」

「バリバリの現役じゃん!雑貨屋の仕事じゃないよ何やってるのさー」

「お得意さんに戦車の部品頼まれちゃって、経費込みで稼がなきゃいけなくてねぇ」

「はぁ。加古位ならなんでも来いって感じ?」

「犬っころは嫌い」

「あ、私は好きだよ?12ゲージで簡単に一掃出来るし」

「確かに犬っころにはSPASの方があってるなぁ」

「でしょ・・あ、そろそろ終わりかな」

「お。暇あったらまた遊びに来なよ」

「んじゃあこれ、連絡先」

そう言いながら渡された名刺を見た加古がくすっと笑った。

「かっわいー・・あ、ごめん。あたしこういうの持ってない」

「いいよ。そっちから掛けてきて」

「掛けることはないって?」

「着信履歴で登録するから」

「その方が手間が少ないと」

「だねー」

「ほんと、とことん面倒臭がりなのは相変わらずだなあ」

「極めてると言ってほしいね」

「ま、元気そうで良かったよ」

「加古もね。じゃー1ヶ月くらいで初期点検くるからー」

「あいよ」

望月が元の集団に混じると、制服姿の女の子達が一斉に笑顔でこっちに手を振った。

加古は苦笑しながらひらひらと手を振り返した。

あれが6人で中隊に匹敵するといわれた掃討専門部隊なんだから世の中見た目じゃ解んないね。

 

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