今日も地球の片隅で。   作:銀匙

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第51話

マスターは頷くアネモネからホワイトへと視線を移した。

「ところで、ホワイトさん」

「あぁ」

「人類は絶滅したと思われてたんですよね」

「あぁ」

「エイリアンの方はどうなったんです?」

ホワイトは首を振った。

「解らない。少なくとも私に記録されていた情報では生死までは解らない。ただ長い事確認されていない」

「じゃあどこかでひょっこり会えるかもしれないですね」

ホワイトは苦笑した。

「そんなことを言うからマスター殿はアタリを引くのではないか?」

加古は肩をすくめた。

「どっちかというとハズレじゃない?」

「違いない」

 

夕食の席に、笑いがあふれている。

アネモネはそっと水の入ったコップを口にしながら思った。

別に自警団の部下達と仲が悪いわけではないが、雰囲気はドライなものにさせている。

それは遥か昔、私達がデボルやポポルにしてしまったことの反省からだ。

別に、あのデボルとポポルが暴走したわけでもないのに、同型機というだけで疎外感を与えてしまった。

いや、迫害と言うべきか。

終戦後、私はたまたまガレキに押し潰された二人を発見し、その扱いを任せられた。

私は引き取ってコアを直し、エネルギーを充てんした同型の別義体へと移植した。

何か月もかかる大変な作業だったが、なぜそこまでしたのだと問われれば、罪滅ぼしと答えるしかない。

同型機というだけでしてしまった事への償いとして。

到底許されないだろうが、それでも、そうしたかったのだ。

私の周りにも、こんな笑顔の溢れる空間を作れたら・・・いや、許されないか。

アネモネは食卓を囲む3人の笑顔を見ながら、悲しそうに目を細めた。

その様子に気づいたマスターは一瞬口を開きかけて、やめた。

 

 

-----

 

 

「・・・よし、片付け終わり!加古お疲れな」

「あーい、おやすみ~」

「歯磨き忘れるなよ」

「はーい、じゃあねー」

加古がふらふらと部屋に戻っていくのを見たマスターは、棚からボトルとグラスを取り出した。

そしてホワイトに向かって小さく手招きしたのである。

 

「ホワイトさんホワイトさん」

「なんだ?」

「アネモネさんイケるほう?」

「酒か?あぁ、先日は喜んで飲んでいたぞ・・そういえば言ってなかったな。すまない」

「いやいや良いの良いの。じゃあこれ食卓に持ってってください」

「・・ほう。この前のとはボトルが違うな。これも酒か?」

「ええ。私は何かつまめる物を用意していきます。先に行ってて、引き留めててください」

ホワイトはマスターの目を覗き込んだ後、こくりと頷いた。

「あぁ。わかった」

 

「この間もご馳走になったのに、それではあまりにも申し訳ない」

しきりに遠慮して家を辞しようとするアネモネを、ホワイトが引き留めていた。

そこにツマミを皿に乗せたマスターが現れた。

「食後なんで少しだけ、珍しい物を用意しましたよ。さぁアネモネさん座って座って。ホワイトさんも」

ホワイトはぐいぐいとアネモネをリビングのソファへと押しこんだ。

「突然押し掛けたうえに、ここまでしてもらって本当に申し訳ない」

アネモネがマスターに頭を下げたとき、マスターはふっと真顔に戻った。

「それでは、お話頂けませんかね?」

「ん?何を話せばいい?触媒石の事か?」

「いえ、夕食の席で、どうしてあんなに悲しそうな目をしていたのか、その理由についてです」

アネモネが息を飲んだのを横目に、ホワイトは黙ったままボトルから酒を注いでいった。

 

「なるほど・・デボル社長とポポル会長とは、そんなに長いお付き合いだったのですね」

「とはいっても、全てを記憶しているのは私だけだし、容量オーバーで失われた分もあるが・・」

アネモネはグラスから一口呷りながら答えた。

マスターはひょいとつまみを口にした後、ゆっくりと話し始めた。

「1度、これまでの事に終止符を打ってみませんか?」

「終止符?」

「ええ。デボルさんもどことなく覚えている感じで、アネモネさんも悩んでいる」

「・・」

「でもそれらは現在進行形の話ではなく、終わった事です」

「・・」

「黙っているとしこりとなっていきますから、終止符を打つために口にしてはどうでしょう?」

「・・デボルに何を言えばいい」

「アネモネさんの気持ちですよ。過去に罪悪感を持っている事、謝りたい事、これからを楽しくしたい事」

「・・都合がよすぎるのではないだろうか」

「そうしたかったから、義体移植をされたんでしょう?」

「・・デボルは、移植された事を喜んでいるのだろうか。違うなら私は余計な事をしただけだ・・」

「それこそ、デボルさんにしか解らない事ですから聞いてみては?」

「うーん・・」

眉を顰めるアネモネの肩を、ホワイトはそっと叩いた。

「迷う気持ちは解る。私も直接の記憶がないままアネモネと会うのは最後まで迷いがあった」

「・・」

「だがマスター殿に、全て打ち明けた上でそこから始めれば良いと言われたのと・・」

「・・と?」

「仮にアネモネに拒絶されたとしても、マスター殿は味方でいてくれると言ってくれたのだ」

アネモネはフッと鼻を鳴らした。

「このタイミングで惚気を聞くとは思わなかったな」

ホワイトの顔が真っ赤になった。

「んなっ!?」

「そりゃ愛する旦那様が傍に居てくれるなら、私の反応がどちらでも大丈夫だろうなぁ・・」

「あう・・」

そんなホワイトの反応を見て、マスターが肩をすくめた。

「いや、私とホワイトさんは夫婦の関係ではありませんよ?」

アネモネがきょとんとした顔になった。

「この堅物のホワイトがこんなデレデレになるほど好いているのにか?」

「へ?」

ぽかんとするマスター。

真っ赤になった顔でアネモネを見たまま固まるホワイト。

何かおかしなことを言っただろうかと二人を交互に見るアネモネ。

奇妙な静寂はたっぷり1分ほど続いたのである。

 

「あ、え、ええと、あ、そ、そうだったんですか。すみません気づかなくて・・」

「い、いや、その、わ、私もハッキリとは言ってなかったし・・」

 

妙にぎこちなく、頬を染めたまま再起動したマスターとホワイト。

この場面で自分はどう振る舞おうかと悩むあまりグイグイ酒を呷り続けるアネモネ。

そんな中、マスターがぽつりとつぶやいた。

 

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