今日も地球の片隅で。 作:銀匙
さらに結果が予想とまるで逆の展開にビックリ。
え?そうなの?続けていいの?
つまらんからノーリアクションなのかと…
もうしばらく様子見よう…
通信先の相手は不機嫌そうに答えた。
「あのねぇ、久しぶりの連絡が解析依頼っての止めない?しかも30秒で調査しろって無茶過ぎだよ」
「こういうことは時間が命なんだもん。今度奢る」
「だもん、じゃないわよ。ええとね、発信元はゴロツキの事務所。構成員は機械生命体とアンドロイド」
「で?」
「ええと待って・・あぁ、今あんたの居る所に車両2台で向かってるみたい」
「どっからくる?」
「このままなら西の路地ね。予想では480秒後」
「2台とも?」
「そうね・・あ、あとあんたの地点から東に75mの所に既に1台いるわ」
「なるほどね。それで全部?」
「ええ。人数までは解んないわね」
「奴らの構成員リストとボスの連絡先は?」
「このあと送るわ」
「さんきゅ」
「あんたまた何かやったの?」
「何も」
「その割には相手さん、持ってる車ほぼ全部出してきてる感じよ?総力戦仕掛けられてない?」
「バカの決めた事なんかどうでもいいんだよ」
「どうしてバカだって解るのよ?」
「望月が電話かけて来るはずないっての。それにあたしの主に銃を向けるような奴だから」
「なるほどね。じゃ頑張りなさいよ、アズラーイール」
「はぁい。サンキューな」
通信を切った加古は、カバンを背負って1階に降りると、そのまま表へと出る。
玄関先で急いで靴を履くように爪先を地面に叩きつつ、さりげなく左右を眺める。
(東75mに車両1、人数4、なるほどね)
そのまま正面の路地に入ると、手近な電柱を登り始めたのである。
一方、その車両の中では。
「大佐、警備の者は出たようです」
「あぁ。相手は2人だ。西からくるBC分隊の合流を待って一気に突入するぞ。抵抗するなら殺せ」
「解りました・・しかしあんな工事中のボロ家に本当に金が唸ってるんですかい?」
「あの一帯を丸ごと買い占めたり、MRAPを即金で買ったらしい」
「・・もう使い切ってたりして」
「じゃあ不動産屋襲ったほうが良いんじゃね?」
「いや、デボル&ポポルには手を出すな。自警団とつながってるってのもあるし、な」
「あーそらダメだ」
「・・大佐、B分隊、C分隊来ました」
「よし、C分隊は裏を塞げ。Bと我々が正面から突入する」
「了か」
そう言って運転手がエンジンをかけようとした、瞬間。
ドズズン!
「はぁ!?C分隊の車が吹っ飛んだぞ!?」
「バカな!ボディもガラスも防弾仕様だぞ!攻撃ヘリでもいるのか!」
「ヘリの音はしない!攻撃主が解らんが撤退するぞ!もたもたするな!」
だが、運転手は大佐に怒鳴り返した。
「大佐!エンジンが動きません!イグニッションが回らない!」
「直ちに車を捨てる!建物側と後ろから出ろ!GOGOGO!」
弾かれたように4人は車から脱出し、手近な路地に飛び込んでいく。
ドズズン!
その背後で大きな爆発音がした。
「大佐!Bチームから連絡!狙撃により車両大破3名死亡、サブリーダのブラボーのみ生存!」
「これで車両全滅か。よし、撤退プランD!撤退プランDだ!行け!」
部下がメンバーに怒鳴る。
「急げ急げ!バラバラの路地に入れ!通信ONのまま逃げろ!狙撃に留意!」
大佐はついてきた部下に囁く。
「Cチームと連絡は取れたか?」
「・・はい。3名死亡、運転手のキロのみ生存」
「クソッ!プランDで逃げろと伝えろ」
「はい」
大佐と部下1人は細い路地を駆けて行く。
1つ、また1つ。路地同士の交差点にぶつかる度に神経が昂る。
「左クリア」
「右クリア。いけ」
歩兵にとって姿の見えないスナイパーほど怖い物は無い。
確認用ミラーではゴマ粒のようにしか映らないアパートの窓。
屋根上の空調機の陰、給水タンクの脇、非常階段。
どこだ、狙撃手はどこにいる!?
今撃たれていないのは安全な場所だからか、見つかってないだけか、引き金を引いてないだけか。
「ガハッ・・」
通信機から嫌な声がした。
大佐は眉をひそめながら通信機を握る。
「アルファより全員へ。点呼だ、送れ」
「ブラボー、異常なし」
「デルタ、異常なし」
「エコー、異常なし」
「フォックストロット、異常なし」
・・・答えが1つ足りない。
「くそ、キロがやられた」
狙撃手は活動中で、まだ我々を狙ってるって事だ。
大佐は通信機を握った。
「プランD続行せよ、急げ」
角を抜け、階段の陰に飛び込む。
万一の為にと逃走車を置いといて良かった。
後に続くエコーに声をかける。
「ついてきてるか?前方クリアだ」
「ええ大佐!追跡者なしです!」
「よし」
あと3ブロックの間に狙撃手を始末出来ればベストだが、欲はかかないでおこう。
それから15分。
大佐は物陰から、反対側の建物の脇に停めてある逃走車を見ながら考えを巡らせていた。
完全な失敗だ。どうしてこうなった。
ボディガードと思われる艦娘を外におびき出すまでは上手く行ってたはずだ。
外部に警備を頼んでいたのか?
大佐は周囲に気を配りつつ、無線機を握った。
「アルファより全員へ。点呼と状況報告だ、送れ」
「ブラボー異常なし、周囲に敵見当たらず」
「デルタ異常なし、周囲に敵は見当たりません」
「エコー異常なし、周囲に敵なし」
「フォックストロット異常なし、周囲に敵見当たらず」
「よし、乗り込むぞ!GOGOGO!」
大佐は無線機に叫ぶと、一気に逃走用の車両にむかって走った。
それぞれ別の方角から走ってきた3人が素早くドアを開け乗り込んでいくのが見える。
ブラボーが後部座席のドアを開けて手招きをしているのが見えた。
あと20m
あと15m
あと10m
あと5m
バタン!
一瞬遅れてエコーが助手席に飛び込んだのを見て、運転席のデルタに怒鳴る。
「行け行け行け行け!こんな場所とはおさらばだ!」
デルタの運転は信用できる。とにかく今は撤退して態勢を建て直さねば。
車はタイヤを鳴らし、白煙を上げながら路地を飛び出した。
「路地をジグザグに行け!まっすぐ走るな!」
「了解!」
「・・・逃がすと思ったかい?有罪」
加古のXM109から放たれた劣化ウラン弾は逃走車の燃料タンクに命中した。
炎に包まれる車を確認した後、加古は手早くXM109をカバンに仕舞い、階段を下りていった。
1時間後。
ドアをノックする音に、男は唸り声で返事をした。
素早くドアが開き、敬礼する部下に頷いて続きを促す。
「失礼します。大佐から定時連絡がありません」
「・・何分遅れてる」
「5分です」
「車のビーコンは?」
「それが・・」
ピピッピピッ!ピピッピピッ!
部下が話し始めた時、男の通信機が鳴動した。
男は部下に片手を上げて制すると、黙って通話ボタンを押した。