今日も地球の片隅で。   作:銀匙

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第57話

 

数日後。

 

「まっ、マスター様はご無事ですかっ!?」

そう言って勢いよく店の戸を開けたMP40を、マスターはきょとんとした目で見返した。

「どうしたの?私は無事だけど?」

「よ、良かった・・表に変なガラクタが増えてたので」

「ガラクタ?」

「・・ご存じなかったんですか?」

「私とホワイトさんはずっとここに泊り込んで作業してたからね。加古しか外に出てない」

「・・なるほど。ちょっと失礼します」

MP40は察したとばかりに加古の方に近寄って行った。

「加古」

「肉は?金の延べ棒は?」

「そんなもの買ってきてません」

「えー、お土産ないのー」

「どこの世界に肉や金の延べ棒を土産に買ってくる人が居るのかと」

「あたしは大歓迎だよ?」

「そんなことはどうでも良くて。表のは現在進行形ですか?過去形ですか?」

「過去形だよ。あんな連中引きずる訳ないじゃん」

「相手は?」

「15名1組織。あと不動産屋の営業がドブネズミだった」

「ほぅ・・あいつですか。その上は?」

「デボルは知らなかったみたい。知らせたらガックリ来てたし」

「演技ではないと?」

加古の目からハイライトが消えた。

「あたしが目を見て間違えるほどポンコツだって言いたいの?」

MP40は首を振った。

「だったらとうの昔に戦場でガラクタになってる、ですか」

「そういうこと」

「つまり、約束を守ってくれたって事ですね」

「・・・まぁね。けっ、結果的にだけど」

MP40はニッと笑ってカバンから小瓶を取り出した。

「なら差し上げます。最後に仕入れたジンジャーエールです」

加古は受け取りながら苦笑いした。

「これが報酬ってんなら、随分高いジンジャーエールだね」

「お土産というのはこんなもんですよ」

「ま、もらっとくよ・・あぁそうだ」

「なんです?」

「おかえり」

MP40は一瞬キョトンとしたが、にこりと笑った。

「はい。ただいま戻りました」

 

 

-----

 

 

「車・・だね。表がこんなになってるとは思わなかったよ」

MP40が帰宅して一段落した頃。

マスター、ホワイト、MP40、そして加古は店の目と鼻の先で朽ち行く残骸を眺めていた。

ホワイトは肩をすくめた。

「これらはいつ処理したのだ?加古」

「1週間くらい前かな」

「・・あぁ、埃まみれで帰ってきた日か」

「そうそう」

マスターはくしゃりと加古の頭を撫でた。

「お前の事だから本拠地まで攻め登ったんだろ?」

「・・でないとまた来るから」

「もう来ないと考えて良いのかな?」

「うん。大丈夫」

「いつも護ってくれてありがとうな、加古」

「うん」

ホワイトはそっとMP40の隣に近寄り、ささやいた。

「・・羨ましがるのは良いが、よだれ出てるぞ」

「・・・はっ!つい!」

「ところでだな、MP40」

「えっ?あっ、はい、なんでしょうか?」

「その、私達の約束を覚えているか?同志よ」

MP40は同志という一言を聞いた途端、ピクリと肩を震わせた。

「んっ?その単語が出るという事は、マスターと上手く行きましたか?」

「い、色々紆余曲折はあったのだが、そういうことになった。だからその・・」

MP40はにこりと笑った。

「ええ、もちろん。今度は私が証人になりますよ」

「あ、ありがとう」

「何かしらの儀式はなさる予定ですか?」

「実は結婚指輪が・・今日出来上がる予定なのだ」

「おぉ。じゃあ受け取ったらすぐ挙式ですね!」

「そ、そうなる。いや、なってほしい」

「どうしてです?」

「ドキドキしてブラックボックスが破裂しそうだ」

「それは真面目にシャレになりません」

「ほ、本当に爆発する訳な・・・ない・・はず・・・たぶん」

MP40は小さく首を振った。

「出来るだけ早く進めましょう。それで一家全員滅亡なんてオチは最低です」

「うむ」

 

 

-----

 

 

それから1時間ほど後。

マスターは恐る恐るアクセサリ職人の仕事場を訪ねていた。

「こっ・・こんにちは・・・」

「おや、モテモテでウハウハのマスター様じゃありませんか」

「もうそれでいいよ・・指輪出来てるかな?」

「今日はお一人ですか・・申し訳ないですが今更キャンセルはできませんよ?」

「解ってるよ。受け取りに来ただけだよ・・・ええと、お金は足りたかい?」

「お待ちください。お品物と清算の手続きをいたしましょう」

 

アクセサリ職人は優雅な足取りで棚に向かうと、引き出しをさっと引き抜いてカウンターに戻ってきた。

「お待たせしました。結婚指輪です。こちらが旦那様用、こちらが奥様用です。ご確認を」

マスターはそれぞれ箱を開け、満足そうに頷いた。

「あぁ、イラスト画より格段に素晴らしい。いつもながら惚れ惚れする仕事ぶりだ」

「当然です」

「・・泣けるくらい高かっただけの事はあるよ」

「後金で金貨15枚くらい追加で頂きましょうか?」

「勘弁してください」

「冗談です。それと、こちらの金貨3枚は前金からのお返しです」

「えっ、良いのかい?」

職人はにこりと笑った。

「私からのご祝儀です。ご結婚おめでとうございます。お三方と末永くお幸せに」

「・・・うん、ありがとう」

マスターは照れ笑いを返しつつ、職人ときゅっと握手したのである。

 

 

同じころ。

「あ、あぁ、後は何だ?後は何があればいい?」

「ホワイトが落ち着きを取り戻せば良いんじゃないか?」

 

そう。

仮住まいの方ではMP40と加古、そしてリーリャが調理を進めていた。

会場はデラとラショルフに加え、デボルとポポルが設営を進めていた。

そしてガチガチに緊張するホワイトの隣にはアネモネが付き添っていた。

 

「なっ、何を言ってる。わ、わわ、私はいつも通り、ふっ普段通りだぞ?」

アネモネはポケットから取り出したスキットルの蓋を開け、中の液体をごくりと呷った。

「無理があり過ぎるだろう・・とにかく座ったらどうだ?式はまだ先だ」

「・・・それは酒か?」

アネモネは頷いたが、ジト目でホワイトを見た。

「そうだが、やらんぞ?今飲んだら絶対お前は酒乱になるに決まってる」

「・・ダメか?」

「ダメだ」

「あぁもう、旦那様はいつお戻りになるのだ!緊張して死にそうだ!」

「まだ1時間少々しか経ってないし、この間その店に行った時は片道1時間かかったのだろう?」

「そうだが、それがどうした!あぁ旦那様はまだか!」

「・・まさしくポンコツだなぁ」

 

その頃、キッチンでは。

「オーブン前退避!灼熱の鶏肉を搬送するぞ!」

「了解!退避!繰り返す!退避!」

リーリャは包丁を持ったまま苦笑した。どういうノリなのよ、この二人・・

「3・2・1!アチアチアチアチ!」

「メディック!メディーック!」

そう言いながら普通に食卓へローストチキン運んでるのよね・・二人ともちゃんとミトン嵌めてるし。

仲の良い事・・・よし、サラダはこんなもんかなっと。

 

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