今日も地球の片隅で。   作:銀匙

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第58話

一方、会場ではポポルがデボルの袖を引いていた。

「ん?どうしたポポル?」

「ね、ねぇデボル・・・あの人襲ってこない?美味しく食べられたくないよ・・」

「あの人?あぁデラさん?大丈夫だよ。ほら、目が緑じゃん」

「緑だから安全とか赤だから危険とかそういうレベルで判断していいの?」

「アンドロイドだって機械生命体だって艦娘だって似たようなもんじゃん」

「時折デボルの肝っ玉が羨ましく思うわ・・」

「それに、この物件買ってくれた人だし」

「売ったの!?」

「もうずいぶん前だけどさ」

「そっか。じゃあ知ってて当然か」

「あとはさ・・」

デボルはそっとポポルの耳元でささやいた。

「たぶんあのファミリーの中で最も常識人だから」

「えぇ・・ミュータントが一番まともなの?」

「アタシのゴーストがそう囁くんだよ」

「また深夜アニメ見たの?」

 

そんな二人を横目に、デラとラショルフは什器を動かしていた。

「デラさんよぅ、テーブルとか椅子とか重すぎねぇか?」

「アンドロイド対応だからな」

「あー、なるほど。花嫁ちゃんアンドロイドだったな」

「そういうことだ」

「で、結局この家はマスターにやるのかい?」

「いや、今の店の所に家を建てて引っ越すらしい」

「そっか。じゃあこの家どうすんだ?」

「また放っておくよ」

「要らねぇんなら俺っちが買っても良いぜ?今なら金あっから」

「ほう?買った値段で譲っても良いが」

「なんぼよ?」

「金貨5600枚」

「・・・なんでそんな高ぇんだよフリーズしかけたよ。つーかリーリャこの近所だろ?」

「警備兵常駐区画だからな。あぁ。リーリャは私より前から住んでるな」

「なんてこった。どいつもこいつも金持ちかよぉ」

「買うか?」

「萎えた」

「そうか」

「・・・あとはあのテーブルをそこで良いのか?」

「そうじゃの。あれは重いから二人で持とう」

「おう」

 

 

-----

 

 

「・・あ、あの」

「なんじゃ?」

「恥ずかしいのですが」

「そうじゃろうな」

「じゃあ向こう向いててくださいよ!あるいはお散歩に出るとか!」

「ここまで準備させといてそれはないじゃろう」

「そーよそーよ」

「さぁ男らしく一気呵成に語りなさい!すぱーっと!」

「ヒューヒュー!」

「頑張ってくださいマスター様!」

「早くしないとご馳走冷めちゃうよ~」

 

そう。

帰ってきたマスターは挨拶もそこそこにリビングに連れ込まれた。

そこにはめかしこみ、顔を真っ赤にして立ち尽くすホワイトがいた。

ホワイトの周囲には当然のように全員が勢ぞろいしていた。

そしてプロポーズをどうぞと大げさな身振りのラショルフに促された、という状況である。

 

マスターはデラ達をジト目で見た後、うおっほんと咳払いをした。

そしておもむろに、受け取ってきたばかりの小さな箱を取り出し、ふたを開けた。

 

ごくり。

 

デラ達が指輪をよく見ようと箱の方に視線を移した時、マスターはそっと切り出した。

「え、ええと、まだ本当に現実感が無いのですが」

「・・」

「砂漠の廃墟でお会いしてから今の今まで、私はホワイトさんを見るたびにドキドキします」

「・・」

「それくらい麗しく、お任せした仕事は完璧にこなされ、いつも大人な態度でいてくれて」

アネモネはぷるぷると震えながら笑いをこらえていた。

しまった!さっきのあのうろたえぶりを録画すべきだった!

「私達とはひと時の間だけ、たまたま一緒に居る高貴なお方、そんな気がしてました」

「・・」

「あの夜、アネモネさんの後押しがあったおかげで、こういう運びとなりました」

「・・」

「ホワイトさん」

「・・はい」

「麗しき貴女を、これからも大事にします。だから、一生、付き添ってください」

「・・・途中でエネルギー補充するのは、構わないか?」

「ええ。何度でも」

「随分長い間お付き合い頂くことになるが?」

「構いません」

「・・解った。不束者だが、このホワイト、残る全ての時を添い遂げると、やっ、約束しよう」

アネモネがニッと笑った。

「おいおいホワイト、随分男前な返事だな?」

リーリャが肩をすくめた。

「どっちかというとマスターが娶られるみたいよね」

MP40がふるふると首を振った。

「だっダメですよ皆さん!神聖な席を茶化しちゃダメなんです!」

加古が頷いた。

「うちらの時は皆でさ、こうやったよ?」

そう言いながら、加古はパチパチパチと手を叩き始めた。

MP40が、ラショルフが、デラが。

リーリャが、ポポルが、デボルが、そしてアネモネが続いていく。

温かい拍手の中、マスターとホワイトは互いに指輪を嵌めあい、そのまま抱き合って口づけをした。

途端にMP40と加古が反応する。

「あー!わっ!私の時はそんな良い事してくれなかったですー!」

「あたしにも無かった!ぎゅーって!むちゅーって!あたしもして欲しい!」

「プハッ!あとで!あとでやってあげるから!今いい所だから!」

「今!」

「して!」

「今はホワイトさんとの時間だから!今夜ちゃんとしてあげるから!」

「旦那様」

「えっ?ホワイトさん・・旦那様呼びにするんですか?」

「旦那様!」

「はい!」

「・・・こっ・・今夜は・・初夜であろう?それとも私に一人寝をさせるのか?」

「「阻止!」」

「そこで変な団結しないの!」

「私達だって!」

「無かったもん!」

「あーもう!あの時は爆撃受けた直後で寝床自体がなかったからでしょうが!」

MP40と加古に詰め寄られたマスターはぐいぐい迫る二人を押し戻しながら叫んでいた。

もう式次第も何もあったもんじゃない。

4人の様子を見て苦笑するデラに、アネモネが囁いた。

「いつもこんな感じか?」

「あぁ。大体マスターの家はこんなもんだし、これからもこうじゃろうよ」

「ふふ。来るたびに面白い場面が見られそうだ」

「本当に来るたびに面白い事があるぞ。時間があれば足を運ぶと良い」

「そうか」

「わしはこんな身じゃから、あまり足繁くとはいかんがの」

「なぜだ?別に誰も気にしていないように見えるが?」

そう言われたデラは、ふと顎に手をやった。

「・・そういえば、加古ちゃんもMPの嬢ちゃんも、以前に比べれば普通に接してくれるなぁ」

「傍から見て違和感を感じないぞ?」

「・・・そう、か」

「気にせず来れば良いじゃないか。何だったら私を誘ってくれてもいい。一緒に行こう」

「こんなのが一緒だと気持ち悪いじゃろう」

アネモネはスッと目を細めた。

「・・デラ殿」

「うん?」

「私は9千年以上、戦場に身を置いてきたからこそ言うのだが」

「・・」

「真に気持ち悪いのは、性根の腐った奴が裏切る時の目だよ」

「・・」

「それに、我々は負傷など日常茶飯事。外見の損壊なぞ見飽きてる」

「・・」

「私はそう簡単に自分の勝手で外出出来ん。外から誘ってもらう方が出やすいのだ」

「・・」

「私を助けると思って、な?」

「・・マスターの周りには、変わり者が集まるなぁ」

「お互いにな」

アネモネの目を見つめた後、デラはこくりと頷いたのである。

 




アンケートは本日までといたします。

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