今日も地球の片隅で。   作:銀匙

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第59話

「あー!肉の一番美味しい部分全部持ってったぁ!」

「名前でも書いてあったか?俺っち見えなかったぜぇ」

「半分返せぇ!」

「・・・ほらよ」

「どう考えても半分じゃな・・あー食べたぁ!」

「うめー」

「ラザニアの残りもらうわよ~」

「あー待って待ってぇぇ!」

 

その後の披露宴も、結婚式以上に賑やかな雰囲気で。

テーブルのあちこちで笑い声と喧騒が生まれていた。

 

ホワイトはそっと、マスターの肩に頭を乗せた。

「どうしました?疲れましたか?」

「・・いや」

マスターはホワイトの肩に、そっと手を乗せた。

「ずっと、こんな明るい毎日だと良いですね」

「あぁ。私は最初、自分の役割の無い世界で起動したことを嘆きもしたが・・」

「・・」

「マスター殿と出会えて、皆と出会えて、本当に良かった」

「・・」

「きっと前任者は、バンカーでここまで幸せではなかっただろう」

「解りませんよ?意外に楽しかったかもしれません」

「・・ふふ。そうだな。解らないな」

「ええ」

「私が解るのは、今の私が幸せだという、ただそれだけだ」

「・・ずっと、仲良くしていきましょう」

「あぁ」

ますます盛り上がる喧騒の中、マスターはそっとホワイトの肩を撫でていた。

 

 

「うーい、飲んだ食った。こんな楽しい宴席は久しぶりだったぜ!」

「ちゃんとアルコール分解してくださいよ?」

「大丈夫!デラさんが送ってくれるぜ!」

フラフラしているラショルフと、それをジト目でみるデラ、見送るマスターという図である。

「すいませんデラさん、ラショルフさんをお願いします」

「任せておけ。どうせ飛行機ですぐだ」

「・・・うぷ・・吐いて良い?」

「パラシュートなしのスカイダイビングをやりたいんだな?」

「なら離陸前に放出しとくぜ・・ゲロ袋ある?」

「どっかにあるじゃろう・・やれやれ・・」

「お、お気をつけて・・今日は来てくれてありがとうございました」

「またなぁ、マスター」

「では失礼するよ。また明日な」

「はい。また明日」

 

MP40はリーリャを見送っていた。

「じゃ、あたしも帰るね~」

「リーリャさん、今日は来てくれてありがとうございました」

「いいのいいの。ラショルフも言ってたけど楽しい宴だったし!じゃーね!」

「また遊びに来てくださいね!」

 

加古はデボルとポポルが営業車に乗り込む所まで付き合っていた。

「じゃ、アタシ達も帰るな?」

「うん。あー・・デボルさぁ」

「おう」

「後任見つかった?」

「そう簡単には居ないよ。けど、だからと言ってアイツで良かったわけでもない」

「・・」

「そんな顔すんなよ。こっちは気にしてないからさ」

「・・そっか」

その時、後部座席の窓を開けて、ポポルが顔を出した。

「そうそう、私も言い忘れてました」

「えっ?」

「うちのお店を救って頂いて、面倒な連中も奇麗に片付けてくれたこと、本当に感謝しています」

「・・」

「私達は治療用のアンドロイドだから、ほとんど戦闘力はないんです」

「・・」

「だからあなたがやってくれなかったら、アネモネさんにお願いしなきゃいけなかった」

「・・」

「またお店に来てくださいね。今度はお菓子をご馳走しますから」

デボルがニッと笑った。

「高確率でプリンだけどな」

ポポルが頬を膨らませた。

「プリン美味しいじゃない!」

加古がくすっと笑ったので、デボルは頷いた。

「それで良いんだよ加古。あんたは何も間違っちゃいねえんだからさ」

「そうですよ。私達が困った事になる前に助けてくださったんですから」

加古は数回、小さく頷くと、そっと営業車から離れた。

デボルはそれを合図に営業車のエンジンをかけた。

「じゃあな、たまには遊びに来いよ!」

「お待ちしてますからね!」

「うん。またね」

二人の乗った営業車が小さな砂煙を上げて去っていくのを、加古は小さく手を振って見送った。

 

ホワイトはアネモネと別れを告げていた。

「これに懲りず、また遊びに来るといい」

「あぁ。今度はデラ殿と来るかもしれん」

「デラさんと?どういうことだ?」

「なに、私は総司令官という立場上、自分から遊びに行くとは言い難いのだ」

「・・そうだろうな」

「だから所用を作ってもらう役を、デラ殿にお願いしたのだ」

「なるほど」

「その・・皆にとって、デラ殿の外見は今でも受け入れがたい物か?」

ホワイトは首を振った。

「私も最初は怖かったが、1度話せば大丈夫だった。加古やMP40も怖がっているようには見えん」

アネモネは頷いた。

「それならいい。デラ殿ご本人が一番気にしてる感じだったのでな」

「そうか。私達は平気だと伝えてやってほしい」

「解った。では、部下を待たせているので、これで失礼する」

「・・・アネモネ」

「なんだ?」

「ありがとう。アネモネの一押しが無ければ、今日という日は無かった」

「それが友達というものだ。違うか?」

アネモネはパチリとウインクすると、軽く片腕を上げながら去っていった。

 

 

-----

 

 

翌日。

 

「いよいよ、ですね」

「あぁ。いよいよだ」

 

マスターとホワイトが見上げる先には、高密度かつ整然と配された管と大小さまざまなタンク。

幾つものランプは全てグリーンの明かりが点いており、モーター類が静かな回転音を立てている。

そして、二人の前の操作パネルには大きくREADYの文字が灯っていた。

満面の笑みを浮かべ、何度も頷く二人の後ろでは、呆れ顔のMP40と加古が居た。

 

「初夜に精錬装置の構造考えてるマスターもマスターだけどさぁ・・」

「お二人揃ってパジャマのまま夜通し突貫工事で作り上げるって・・」

「初夜とかムードとかまるで無いよな」

「まぁその、似たもの夫婦ってことなんでしょうね・・」

「でも、あたしはあぁはなりたくない。譲れないラインはある」

「そうですか?私はマスター様の言う通りにしますけど」

「もうちょっとでイケる~って時に閃いたとか言って研究室へ飛びこまれても良いの?」

「・・・そっ・・それ・・は・・・」

「無理しない方が良いよぉ~?ほれ?ほぅれ?どーなのよぅ」

「・・・うー」

「あたしは絶対嫌だ。マスターの後頭部張り飛ばしてベッドに連れ帰る」

「そこまで出来る加古が羨ましいです。私は多分研究室の柱の陰に居るだけです」

「柱でイっちゃうの寂しくない?」

「そういう意味じゃない!加古のバカ!デリカシーゼロ!」

 

騒がしくなりつつある二人を他所に、マスターは触媒石の入ったバケツを手に取った。

ホワイトはマスターから幾つか触媒石の原石を受け取り、計量した後に投入口へと落とした。

そして二人は再び操作盤の所に帰ってきたのである。

 

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