今日も地球の片隅で。   作:銀匙

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第60話

「ここはホワイトさんがスタートを押してください」

「・・旦那様になってもさん付けなのか?」

「よっ呼び捨て希望ですか?」

「あぁ」

「えっ、えっと・・・じゃあ、す、スタートボタンを押してくれ、ほっ・・ホワイト」

「あぁ」

溢れんばかりの笑顔でスタートスイッチを押し込むホワイト。

「READY」の文字が「Operation」に変わる。

モーターの音が大きくなり、ガリガリと砕く音と共に配管内をゴウンゴウンと音が巡る。

上の方で蒸気弁が作動したのを見て、ホワイトは頷いた。

「よし、第1窯が規定温度に達した」

マスターは操作盤を見て頷いた。

「想定電力量で充分収まってます。発電機異常なし」

「さぁ、マスターが昨夜思いついたアイデアが功を奏するか、だな」

「えぇ・・上手く行って欲しいのですが」

「配管を途中でツイストさせるなんて当時誰も思いつかなかったからな」

「じゃあこれが初ですか」

「あぁ、初だな」

「二人で行う、初めて、ですね・・」

「なんだか照れるな・・」

 

加古はげんなりした顔でMP40に告げた。

「あれのどこがどう照れるのかなあ・・」

MP40も似たような表情で頷いた。

「ちょっと上級すぎますね・・」

「朝ごはん作ってこようか・・」

「そうですね・・」

 

そして案の定、加古達が朝食だと言って上に連れていくまでマスター達は操作盤の前に居たのである。

 

 

-----

 

 

「ど、どうでしょう?出来てますかね」

「慌てるな。息がかかったら粒子が舞ってしまうかもしれない」

「なるほど。ではマスクをしますか」

「良いアイデアだ」

「ふわーぁ、出来たぁ?さっさと売って肉買いに行こうよ」

「加古、飽きるの早すぎです」

 

朝食後。

熱々のコーヒーをもどかしげに啜り終えたマスターは、一目散に地下へと舞い戻った。

一足先にホワイトが戻っており、精錬処理は終わったと告げた。

ただし正真正銘の初動作であり、ホワイトは慎重にログを解析していた。

そしてようやく、取り出し口と書かれた引き出しの前に立ったのである。

 

マスクをつけたマスターが引き出しのロックを外し、同じくマスクをつけたホワイトが引く。

「・・・・へぇ」

「綺麗・・」

 

加古とMP40が目を見開いてそう呟いたように。

取り出し口に溜まった触媒石は、粒子状になった時特有のキラキラとした輝きを放っていた。

「・・・」

マスターとホワイトは無言で互いに頷くと、そっと引き出しを傾け、濾紙の上に粒子を落としていく。

最終的に触媒石の粒子は、光りを放ったままガラスの小瓶へと納められたのである。

ホワイトはマスターから手渡されたガラスの小瓶を、重量計測器へとそっと装填した。

ホワイトは映し出された重量を見て即座に言った。

「廃棄率は68%だ。マスター、これまでの記録を大幅に更新したぞ!」

「やった!ホワイト!」

「マスター!」

ひしと抱き合うマスターの肩を、加古はつんつんと突いた。

「ねぇねぇ」

「ん?なんだ?」

「いや泣かなくても良いじゃん・・何がどうなったの?」

「今まではな、不純物として捨て去る割合を80%とするのが最高だったんだよ」

「ふんふん」

「それを68%まで下げる、つまりもっと触媒石を原石から拾い上げることに成功したんだよ」

「ふんふん。あと3行で」

「・・・ええとつまりだな」

「あと2行」

「加古の取り分が」

「あと1行」

「当初の予定より1.6倍になった」

「・・・えっほんと?」

「ほんと」

「2000倍じゃなくて3200倍って事?」

「その計算は間違ってる」

「だって2000倍って!」

「単位重量当たりの価値は2000倍だが、68%は廃棄されるんだから掛け算にはならん」

「・・・私でも解るように3行で」

「だから原石で売るより640倍上がるの」

「どっから640って数字が出てきたのさ?あと2行」

「単位重量当たり2000倍で、68%廃棄するって事は32%残るって事だろ?」

「うん」

「だから2000x0.32で640だろうが」

「うーん・・」

「お前狙撃の時に弾道計算やるだろ・・・」

「いちいち計算なんかしてたら殺されちゃうよ。勘だよ勘」

「頭良いんだか悪いんだか・・まぁとにかくそういう事だ。損はしないから」

「ふーん」

「全然実感してないな?」

「うん」

「はぁー・・・」

がくりと肩を落とすマスターと首を傾げる加古という構図を横に、MP40はホワイトと話をしていた。

「廃棄率が80%から68%に下がるのはどれくらい凄い事なんですか?」

「そうだな・・人類軍最初の精錬プラントは99.8%を捨てていたんだ」

「はい」

「一方で同時期の機械生命体側のプラントでは95%の廃棄率だと推定されていた」

「はい」

「採掘量が同じとして、何倍取れることになる?」

「・・・25倍」

「そうだ。そしてそれが、我々アンドロイドが機械生命体に劣勢となった理由だ」

「あ」

「我々が1体分作る間に、奴らは25体完成させていくのだ」

「・・絶望的ですね」

「人類軍側は1体の高機能化と高耐久性を追い求めながら除去率の低下を死に物狂いで探していた」

「・・」

「私に残された記録では80%まで低下させたが、機械生命体側は70%後半まで下げたらしい」

「・・・えっ、じゃあ68%というのは」

ホワイトが頷いた。

「もしも1万年遡れたら、アンドロイドが機械生命体に有利な戦況を作り出せただろうし」

「・・・」

「今であっても、一度精製処理を通って廃棄されたスラグから、更に触媒石を取り出せる可能性がある」

「・・ホワイトさん」

「なんだ?」

「もしかして今回私達が探し当てたのは、それじゃないんですか?」

「古い時代に、高い除去率で捨てられていた頃のスラグという事か」

「それなら現存することの辻褄はあいますよね」

「ふむ。確かに1度精製処理を経たスラグなぞ見向きもされないからな」

MP40は原石の1つをつまんだ。

「私にはこれが、溶かして押し固められた物のように見えるんです」

「ふむ」

「鉄鋼スラグってコンクリートの骨材とかに使われたりするじゃないですか」

「確かに、触媒石スラグも鉄鋼スラグとさほど変わらない」

「仮にそうだとしたら、シェルターの中にあるだけじゃなくて」

「シェルター自体を形作るコンクリートそのものに含有される可能性があるという事か!」

「はい」

「それは気づかなかった!その前提で早速再計測してみよう!」

ホワイトは採掘地点へと駆けていった。

 

 




・・・ええと。

50話で予告したとおり、ここで終了でございます。

予告した時点では、本作は反応が薄いし、話自体が解らなくなっているのかなと受け取っていましたので、打ち切りレベルとして終了へ持って行きました。
その後、削除してたはずのアンケートが何故か発動してしまったので、多数派は解らないという人、一人二人は次章希望してくれるかもね、ハハハという思いで様子を見てたのですが、次章希望があれよあれよという間に8割超えまして・・・・・

良い方向の結果なのでありがたいのですが、予想外過ぎてどうしようというのが現状です(滝汗)

正直に言いますと2章以降のシナリオ捨ててしまったのと、一度打ち切り方向で決めたのでモチベが戻らないというダブルパンチ。

今度からは決める前にアンケートしようと思いつつ色々考えているのですがまとまらないので、第2章は始められたら始めるという程度の確率だと思っていてください。

励ましのお便りや評価は大歓迎ですが、ハゲ増しの批判は勘弁してください。
お前メンタル弱すぎだろというご指摘は尤もだと思いますが、そこは生まれつきの仕様なので。

ともあれ、ひとまず区切りとして御礼を。

ここまで読んでくださった方、特に感想や高評価を入れてくださった方、本当にありがとうございました。
結局、作者は楽しんで読んでもらいたいと思って公開してるので、共感を示してもらうことが書く励みになります。
本作の続きなのか新作になるのかは今は解りませんが、またどこかでお会い出来たら幸いです。

※自分の結論が出るまでは本作の状態は継続中にしておきます。
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