やはり俺の隣の席に紙袋が居るのはまちがっている。 作:ト——フ
「私だ!」(凛ッ!)
『いらっしゃい、めだかちゃん』『満を持しての登場というか』『やっと呼んで貰えたんだね』
「こらこら球磨川くん。そう煽るもんじゃないよ。確かに主人公の割には遅いとも思わないまでもないけど」
「ぐふっ、……ま、まぁいいとも。人の気にしているところをと言いたいところだが胸の内にしまっておくとしよう……だがな!私は呼んで貰えなかったのではない!敢えて!そう敢えてこの回まで待機していたのだ!」
『ふぅーーん、それはそれは』『んで、その心は?』
「うむ!実はというと今回の11という数字は私達3人に関係していてな」
「11、ふむ。11ねぇ……」
「まえがきで勿体ぶるのもどうかと思うので早速言わせて貰うぞ。私達3人が表紙を飾った単行本が11巻なのだ」
『あぁ〜はいはい、あの巻ね』『確か財部ちゃんにパンツ見せて貰った巻だよね』
「なんの躊躇もなく女子中学生のパンツに食いついてたね。あれは悪平等[ぼく]も予想外って反応だったかな」
「球磨川貴様……私との勝負の回を差し置いてする話がそれとは……はぁ……いや、何も言うまい。更に脱線していく予感がするので本題に入る。実は私達3きょうだいが表紙に載った記念回ということで祝賀会をと思ってな。このコーナーが終わった後はパーッとやらないか?禊お兄ちゃんになじみお姉ちゃん」
『あー、もしかしてさ』『今僕たちの居る部屋の横の会場ってめだかちゃんが抑えてたりするの?』
「あぁ、勿論」
「成る程そういわけか。いや実は、なんで今日は毎回このコーナーで使うスタジオじゃないのかと疑問に思ってたんだけどね、そういうことなら納得だ」
『んー』『けどそれならそうで事前に言ってくれなきゃね』『ま、別に僕予定空いてるからいいんだけどさ』
「ぼくも予定大丈夫だよー」
「それに関しては素直に謝罪する。だが言い訳させて貰うなら、何分此方も急だったのでな……なんせ今朝作者からこのコーナーのオファーの電話が来たばかりで、朝から忙しかったのだ。ほら、折角の初登場なのだから服を新調したりとか、隣の会場を抑えたりだとか、び、美容院に行ったりだとかな、ふふ……(テレテレ)」
((かわいい))
『ん?』『今、今朝って』
「球磨川くん。それ以上は、いけないよ」
『……』『そうだね』
「ではそろそろ良い頃合いだ。タイトルコールといこうじゃないか」
『了解』『じゃあ僕からね」『第11箱』
「 「まぁ、少しは働いた甲斐もあったか」だよ」
『「「どうか楽しんでいってね」」』
あの後上無津呂と別れ室内をぶらぶらと回っているうちに一つ気づいたことがある。どうやらお触り等、係の人に確認を取れば大丈夫のようだ。なら俺もと思い、動物達を見て回る。
猫……は、正直凄く抱っこしたいがまぁ家に居るし、パスだな。折角だから珍しい奴にしたい。
ならどうするかときょろきょろと見て回ると、見知った顔が見えた。先程の数字少女だ。
なにやら微動だにせずぼーっとしている。なにしてんだと思い彼女の視線を追ってみると、抱っこされている犬の姿が確認出来た。
そうしてもう一度彼女に視線を戻す。よく見れば、無表情ながらも何処か羨ましそうな目をしている気がしなくもない。
……なんだかな。妙に気になるっつうか、既視感を感じる。不思議とモヤモヤして落ち着かない。
一体なんなんだと取り敢えず直近のことを思い返していく。すると早くも、先程の上無津呂の浮かべた笑みに引っかかりを覚える。具体的にはあの笑みから覗く八重歯が。上無津呂は左右にあるのだが、妹の小町には確か左側だけだったなと思い出す。
あの時折見せるチャームポイントが小悪魔染みた妹のキャラクター性を際立たせてるなと考察をしていると、次第に小町について考えが傾いていった。
そして、昔あいつが小さい頃に一緒に行った動物関連の催し物について思い当たる。
確かあの頃は小町が隣で犬を抱っこしている人を物欲しそうな目で見ていて、気を利かせた親父がその人に頼んで抱っこさせて貰ったんだっけな。人によっては駄目な場合もあるが、その飼い主さんは大丈夫だったようで快く小町に抱っこさせてあげていた。
その時の瞳を輝かせ満面の笑みを浮かべた小町は、とても眩しく尊いもので……俺はよくやってくれたという意味で親父にサムズアップをし、カメラで小町の笑顔を収めていた親父は静かに、そして強く此方にサムズアップを返し、言葉には出さずとも分かり合えた気がした。
まぁともあれ、そんな過去の思い出が今の状況と繋がっていることに気づいた。向こうであの様に佇む数字少女の姿が昔の小町と似通っていて、小町と被って見えてしまったのだということに。
それと何故だろうか、彼女に対してよく分からない妙な親近感を感じてしまうのも相まって、大凡自分らしくもない行動に出てしまう。
「あの……すいません、その犬抱っこさせて頂くこと出来ませんでしょうか?」
係の人に尋ねる。俺の姿を視認して少しギョッとしたが、それも数秒のことで、すぐさま笑顔で対応してくれ、了承の返事を頂いた。マジか。なんて仕事意識の高いことだと感心と恐れを抱いていると、件の犬を抱っこして此方に近づき俺の腕の中に寄越してくれる。人懐っこい性質なのか、抵抗の様子も無く大人しい。
腕の中の温もりを感じながらほわほわとする傍ら、小声で係の人に確認を取る。
「っと、すみません。後ろのドレスみたいな服着た女の子にも抱っこさせてやっても構わないでしょうかね?」
「あぁーあの子ね。さっきからうちのワンちゃん見てるから興味あるのかと思って後で話しかけようと思ってたんだよね。あっ、勿論抱っこOKだから!」
「あ……そうですか。ありがとうございます」
俺が動かなくてもいずれは解決していたことかと思い、少しため息を吐く。
「要らぬお世話だったって訳ね……」
そう自嘲しながらも後ろの彼女の元へと歩いて行く。彼女の方はというと若干眉をひそめ此方を訝しんでいるが、そのまま腕の中の犬を差し出す。
「ほれ」
「6515290426」
なんの真似だと言っているかのような視線を受ける。当然相手がそんな様子なので、受け取ろうともしない。まるで頑固な妹を相手にしてる気分だ。
そんな感じでお互いの視線がぶつかり合い膠着状態に陥ったので、埒が空かないと判断した俺は強引に犬を押し付けた。
いや、だってこのままだと犬の方もいい迷惑だろうし……グダるよりはいいだろ。
「……!!」
腕の中の犬にあたふたと困惑の表情を見せ、そのまま此方に顔を向ける。
……当たり前だけど、そんな顔も出来んだな。
出会った時から表情の変化が乏しかった彼女の意外な一面が知れ、少し得したような気持ちになりながらも応える。
「俺はもう充分癒されたからいい」
そう言って彼女に背を向けその場を離れる。
比企谷八幡はクールに去るぜ。フッ、今の八幡的に超ポイント高い。
そんな馬鹿なことを考えながら歩みを進め、ちらっと一目彼女の方に目を向ける。
すると、腕の中の温もりを噛みしめるよう優しく、大切に犬を抱えている様子が見て取れた。その頬には少し赤みが差し、分かりにくいが少しだけ目元・口元が緩んでいる。
「まぁ、少しは働いた甲斐もあったか」
要らぬお世話だったんだろうが、それでも彼女の様子を見る限り少なくとも間違ってはなかったんだろうと思い、少し晴れやかな気持ちになりながらもその場を後にした。
まえがきでめだかちゃんが安心院さんに『なじみお姉ちゃん』って言ってるのは完全に作者の妄想ですのでご了承下さいませm(_ _)m
あっ、それと作者はめだかちゃん好きですからね?ただ、そのですね……出すタイミングというか、他に出て貰いたかった人がいたとかの理由でですね……ええ。
ごめんなさいめだかちゃんm(_ _)m
あと前回もですが、まえがきが長くて少しでも不快に感じられました方が居たのなら申し訳ありません。ですが作者はこれからも自分のやりたい放題やっていく所存ですので、ご了承下さいませm(_ _)m
それとあの後はというとですね、3きょうだい水入らずの祝賀会にご馳走の匂いを追ってきた不知火の乱入、更に不知火と一緒に遊んでた善吉が彼女を追ってきた結果自然と交ざることに。
そんでもういっそ皆呼んじゃおうかという話になり、安心院さんパワーで色んな人を連れてきて仲良くワイワイやったのでした〜みたいなオチです!