やはり俺の隣の席に紙袋が居るのはまちがっている。 作:ト——フ
それでは第17箱です!どうぞ!
「これは……とんでもない大物が釣れてしまったみたいで」
また邪魔されたと鬱陶しそうにしながらも同時に、新たなる強者の登場に少女は若干嬉しそうな雰囲気を漂わせる。
「さて、まぁまずは、お前のその制服を見るに……今日オープンハイスクールに来てる中学生の内の一人か」
「そーですよー。中学生同士の可愛い喧嘩に高校生が割り込むなんて不粋ちゃいますかねぇ?」
軽い口調ながらも日之影に向ける目つきは鋭い。
「おーおーそんな睨むなよ。何も俺だって小さくて微笑ましい、それこそ可愛い喧嘩なら横槍入れたりしねーよ。……だが、少なくともこんな惨憺たる有様になるような喧嘩は可愛くも小さいとも言えんがな」
よって止めさせて貰うと、負けじと目つきを鋭利にして対応するが、少女にはあまり効果は少なく
「おおっと凄い迫力。いややなぁ、そんな睨まんでくださいよ。ニュース見られてないんですかぁ?今時の子供ってば何しでかすか分かんないですよ?ほら、小学生のいじめだって周囲は気づかんだけでむごいことやってる奴おったりするし、しかもそんな奴に限って周囲から可愛いがられたりしてるなんてザラですよ。酷いことしても可愛いって言われる奴がおるし許されてる。なら私も酷いことしても、そんなん可愛いもんやって許される筈じゃないですか。差別はいけませんって」
「……よくそんな詭弁をつらつらと」
「いえいえ、それにご存知かと思いますが私まだ中学生なんですから。子供のやることでしょ?ほら、何でもかんでも大人が介入するのもアレじゃないですか。放っといてくれませんか?」
「……言葉だけ見れば尤もそうなこと言ってんだろうが、すまんな。生憎、中学生だろうと大人だろうと学園を害する者は排除する。それが俺の役割だからな」
「ふぅ──ん。んじゃ」
一旦バックステップで後退し、ばら撒かれている武器を可能な限り身につけ
「見逃して貰えなそうだし。それにとっても強そうなので、此方も最初から全力で叩き潰しますっ!」
日之影の元へと最大速度で襲いかかる。
「……学校見学に来てくれた中学生だし、大人しく投降してくれたら手荒な真似は控えるつもりだったんだが──」
拳圧。
大きく振りかぶったその右拳の衝撃は、少女が日之影に振りかぶろうとしていた武器を木っ端微塵に砕いた。
「……化けもん?」
「そうだな。なんなら特撮とかの怪人より化物してる自負はある」
「……流石に詰みゲーには燃えないなぁ」
その言葉を最後に、少女の意識は目の前の男により刈られることになった。
─
──
───
「さて、まぁ、軽く気絶させただけだ。死にはしない。それより」
後方にいる少年へと目を向け
「あっちのアリスみたいな子も大概だが、こいつはヤバイな。よくこんなボロ雑巾のようになるまでな──っとそんなこと言ってる場合じゃない。早いとこ保健室連れて行かんと」
即座に2人を抱え、保健室へと駆け抜けて行った──
そして保健室へと着いたのだが
「な、保健委員長が居ない!?」
そう、何故なのか保健室には誰も居らず無人。
本来ならば、今日何かあった時に備えて此処で待機している筈である保健委員長が不在。
「……急患の連絡を受けて委員長自ら飛び出して行ったとかか?あの人の性格からしたらあり得るな……しかし、こと今回に限っては不味い。コイツらの治療を早くしてやらなきゃなんねぇのに」
だだっ広い箱庭学園の敷地の中を探すしかないのか──?いや、それなら時間が、と思索を巡らせていると──
「ええっとすみません。中に入りたいんですけど」
横からの声に顔をやると、深い赤に染まったボブカットの少女と、布団?に体を埋めている少女の姿が。
「ん、あぁ悪い」
ささっと横にずれ道を譲る。
「──ん?いや待ってください。その抱えている2人、どうしたんですか?」
「いや、保健委員長に診てもらおうと思って此処に来たんだが、生憎不在のようでな。どうしたものかと俺も「その人達!特にその男の人は今直ぐにでも処置しなくては不味いです!」お、おぉだよな」
ことの重大さに気づいたのか、一気に捲し立てるボブカットの少女の勢いに押され萎縮してしまう日之影。
「保健委員長が不在……まだあの人からの使命を果たす時期ではないけれど、状況が状況だし……」
顎に手を置き、ブツブツと一人呟きながら10秒ほど思索に耽る。すると決意が決まったのか真剣な面持ちを日之影に向け
「私が治療します」
「いや、だが「これでも現委員長のお墨付きです。なんなら彼女にも引けを取りません。貴方も同じ穴の狢でしょうしこの際隠し立てしませんが、私は病気を操れます」」
そう言って自分の右手を見せるように前に出す。異常な程に伸びた爪を。
「──ッそれは……
「
ジッと、その真剣な瞳で日之影に訴える。
「……なら、コイツらを頼む」
「はい。では患者をベットへと運んでください」
「了解した」
(本来なら委員会の奴に連絡を取るなり色々とあって、俺のこの判断は正しいものじゃないだろうが)
それでもあの真剣な眼差しと、絶対的な自信に押されてしまった。この危機的状況に判断能力が鈍ってしまっていることもあるのだろうと自嘲する。
「──っとその前に」
メモ用紙を取り出し、サラサラと何やら書き留め、それを布団に体を埋めた少女へと渡す。
「悪い、アイツらが目覚めたらコレ渡しといて貰っていいか?」
「は〜〜〜い。任されました〜〜〜」
「じゃあ、後は頼んだ」
彼らの回復を祈り、静かに教室を出て行った。
─
──
───
「……95708588」
「おっ、赤〜〜〜女の子起きたよ〜〜〜」
「ふぅ、よかった。結構な酷い怪我だったんだけど……様子を見るにもう安心なようね」
「──4!897569」
「どうしようっか。この子独自の数字言語で喋ってるから意思の疎通は厳しいよ〜〜〜」
「……まぁ既に傷は完治して容態は健康そのものだし。強いて言うなら後は帰宅するだけだし、大丈夫でしょ」
「9853578、333」
キョロキョロと部屋の中を見回すと、隣のベットで寝ている少年に気づく。
「213455785」
そのまま少年のベットの横の椅子に腰掛け、ただじっと少年を見つめている。
「……じゃあ私は保健委員長に報告してくるから」
「いってらっしゃーい」
─
──
───
「……知らない天井っていうか、よく見えん」
視界がボヤけている。体の節々が痛ぇし、すげぇダルいし。なんだこれ。
ってか俺……ん?なんで寝てるんだ?寝起きだから頭がボヤけてんなどうも。
っと確か最後の記憶は……。
『……最後になんか言うことある?』
『……』
『なんもないか。んじゃ、さよなら』
──ッッ!!
そういえば俺死……んでないんだよな──?
体は繋がってるし、感覚もある。
視界はボヤけて身体がダルいが……それでも確かに生きている。
──え?なんで俺生きてるんだっけ?
あの後の記憶が無い。あのまま行くと確実に死んでいたよな──?どうやってもあの局面をひっくり返すことなんざ無理だし……。
だとすると、考えられることといえば、第三者の介入によって何かが起こったこと、それか、あの凶人の気が変わったことの二つってところだろうが……後者は無いだろうな。アイツに限ってそれは無いだろう。ならば前者の可能性の方が高いのだろうが……第三者といっても俺はその人物を見てもいない。多分気を失った後に現れたのだろうか……?
せめてお礼の一つでも言わなければバチが当たるような、それ程のことをして貰ったことになるのだが……何分姿を見ていない。
心苦しい所ではあるがしょうがない。
それにしても、此処は病院なんだろうか?
あの後運ばれた可能性も考えられる。
──って、ん?
なにか手に感触が。
まるで誰かが俺の手を握っているかのような──
その方向へと目を向けてみると、誰かが椅子に掛けていて俺の手を握っている。それ程まで離れていないが、視界がボヤけてよく見えない。
だが、なんとなく、感覚でその人物が誰なのかが分かった。
「小町か……?」
「……?」
目がぼやけてあまり見えないが、丁度小町程の大きさだったことと、なにより、不安がっているように見えたのだ。その姿に既視感を覚え記憶を探っていくと、昔怪我した時、小町に酷く心配かけた時と見事に重なった。
あぁ、そうか。多分……病院に運ばれたって連絡受けて駆けつけてくれたのだろうか。迷惑かけてしまったな……。
ほんと世話かけてばかりで申し訳ない限りであります。
──と、そんなことより、まずはこの目の前の妹に安心して貰わなければ。なんとか震える手を動かし
「……ッッ!」
ぽふっ、と頭に手を乗せる。
「はは、大丈夫だ小町……。俺はしぶとさだけは定評があるんだ。なんなら菌扱いされるまであるからな……知ってるか?なんせバリヤー効かねえくらい強ぇんだぜ?ってあれ……おかしいな。なんか目が熱くなってきた」
ボヤけた視界の中でも空元気で、にへらと笑い飛ばしてやる。
「それにな、俺はお兄ちゃんだからな。妹を残して逝ったりなんかしねぇし大丈夫。ハハ……今の八幡的にポイント高いんじゃね……」
から笑いを続けながらも、なんとか言い切った。
「80000……」
「ぇ?嘘、なんだよ名前呼びなんて……確かに俺は八幡だが、やめてね……反抗期みたいでビクビクしちゃう……。これまで通り頼むからお兄ちゃんにしてくれ」
小町に名前呼びなんかされたりしたら、ショックで会話もままならないだろう。頼むから反抗期くんな……。
──と思ったが、むしろ……逆にありなのか?
いや、まぁ、つまりはお兄ちゃんじゃなくて1人の異性として!……って馬鹿なこと考えてたら、眠くなってきた。
まだ本調子じゃないんだよな。何回も言うが身体痛むし、シンドイし。
それに回復力が強化されたとはいえ、まだ完全じゃないって名瀬に言われたし。
「……802130」
彼女が何か言っていた気がするけれども……襲いくる睡魔に負け、眠りについてしまった。
①日之影空洞 事態の収拾を図る。八幡と雲仙姉の容体が酷いため、保健室へと連れて行く。
②道端で寝てた太刀洗斬子を赤青黄が「寝るなら保健室で」と運んできた。(二人ともオープンハイスクールとして来てた。八幡と同い年)
③日之影空洞組、保健室に到着。
丁度居合わせていた赤青黄が治療。雲仙姉は直ぐに回復したが、八幡はまだ馴染んでいない異常の所為で、治療が厄介な状態。
(なんで保健委員が不在なんだっていうと、まぁ、ご都合主義でお願いしますm(_ _)m偶々その時間帯は居なかったって感じで。二人とも一刻も早く治療しなくてはならない状態だったので、保健委員を呼びに行くでなく、赤さんに任せたって感じで)
④二人の治療が済み、雲仙姉が先に目を覚ます。
八幡の寝てるベットの横の椅子に掛けて、八幡が起きるの待ってる。(流石に自分だけ先に帰るのは違うだろうと思ったことと、彼女なりに思うところがあったらしい)
⑤八幡がふらっふらな状態ながらも目を覚ます。
簡単に纏めるとこんな感じですねー!
あとなんで赤さんが日之影さんに気づいたのかっていうと、保健室に入ろうとしたけど、入り口に突っ立ってる日之影さんにぶつかって、え?なんで入れないんだ?って疑問に思ってたら、目の前に人が居るのに気づいてビックリしたって背景が。
次回は雲仙冥加視点の話になりまーす。