やはり俺の隣の席に紙袋が居るのはまちがっている。 作:ト——フ
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今回は雲仙冥加視点のお話です。
では、どぞー!
今まで自分に手を差し伸べた連中は居た。両親が亡くなった時、弟2人が亡くなった時、祖父祖母が亡くなった時は親戚の叔父さんとか、色んな人が手伝ってくれた。
家族が亡くなっていった私たち姉弟を不憫に思ったのか家においでと言ってくれた人も居た。
だけど、私と弟の異常性にだんだんと恐怖を覚えていったのか気がついたら周りには誰も居なくなってた。
親戚の人から生活する為に辛うじて資金の援助はして貰ってはいるが……やんわりと近寄らないでと言われた。
当時は冥利も小さく、今のように歳離れした聡明さも鳴りを潜めていて、年相応のような子供だった。故に、お姉ちゃんの私がしっかりしなければと、気丈に振る舞おうとして──恐らくその時からだろうか。隙を見せないよう、鉄仮面を貼り付けた様に表情の変化に乏しくなってしまったのは。
一番近しい親戚からも拒絶され、周囲の人間からも距離を置かれ、私の薄かった人への関心は更に薄くなっていた。
人と人は分かり合えないと……いや、化け物である私が人と分かり合おうなんて最初から無理があったのかもしれないが、とにかく人には見切りをつけた。
私にはもう残っている家族、同じ化け物の弟、冥利だけ居ればいい。
──そう思っていたのだが。
変な人間に出会った。目の腐った、どんよりとした雰囲気を醸し出す一般人。いや、正確には異常性も含まれているんだろうが、彼はそれでも化け物でなく、まるで人のようだった。
最初は少し私達と同じ感じが、同じ化け物で、
結果的には私の言葉は分かっていないようだったけれど、困った風にしながらもなんとか私の真意を汲み取ってくれた。
そして時には頼んでもいないのに勝手にお節介を焼いてきて、反発をしながらも内心は嬉しかった。
借りを返す流れで彼と食事を共にするような形になった。
その後にはカフェオレを一本ご馳走にもなった。なんで1本丸ごと寄越したのかは、言葉が分からず真相は不明なのだが。それでも、きっと悪い理由ではない筈だと思った。
その後は急に襲いかかってきた変な奴と戦闘になったが、途中またしても彼が現れた。
最初は何も出来ずに呆然と立ち尽くすのみだったが、途中行動に移ろうとして負傷させられていた。
彼には今日一日世話になった礼もある為、早く片を付けて治療を受けさせてあげようと私としても懸命に戦ったのだが、結果は敗北。
最終的には数多の武器に翻弄され、何も出来ずにやられてしまった。手足を動かす気力もなく、後はトドメをさされるだけと、そんな時、またしても彼がやって来た。
余裕なんか無く、それでも必死に駆けつけてくれた彼には嬉しさを感じたけれども、しかし戦えるタイプでもないのに助けに来たのは愚かだとも思えてしまった。
現にあの後はいいように嬲られ続けていて、見ていられない有様だった。
それに、私が戦っているところを見ていた筈なのに、私が化け物だと理解している筈なのに、ましてや守ろうとするなんて衝撃的なことで、手足が使えなかったこともあるが、動くことが出来なかった。
ふと、あの人達なら守ってくれただろうかと頭によぎる。否、それは無いだろう。即答出来る。こんな命懸けの危険な状況ならば、きっと見て見ぬふりを貫くに違いない。きっと助けなんか見込めはしない。
それでも彼は私を放って置かずに、身を呈してまでも助けに来てくれた。自分が何も出来ないというのに、私は化け物だというのに。助けに来る要素なんて、そんなもの有りもしないというのに。不恰好で無様で、やられっ放しでしか無かったけれども、それでも懸命に私を守ろうとしてくれた。
忌避され続けた化け物で、強い私を守ってくれた。
その事実は正直とても嬉しかった。
そして巨漢の男が現れてから保健室へと行き、ボブカットの女性に治療され、意識が途切れてしまったが直ぐ様回復した。再び目を覚まして彼を見たが、未だ眠ったままだ。
彼の安否が心配で居ても立っても居られなく、とにかく彼の目覚めを待つことにした。彼の寝ているベット横の椅子に掛け、暫く待っていると反応があった。
目は虚で、私を誰かと勘違いしている様に思えた。私を見ている様に見えて、違う誰かを見ているような。
どう反応していいものか、そう困惑していると頭に軽く衝撃が走った。見てみると、頭に手を乗せられている。
まぁ、好きにしておこうかと放置しておくことに。
きっと、誰かと勘違いしているんだと思ったし、この向けられたものは私のものでも無いのだと、割り切って流そうとした。そう、した筈だったのだが──
頭に感じた感触が。
大きな掌は昔父に頭を撫でて貰ったこと、そして、感じた温もりは、母に甘えていたことを思い出し、胸が暖かくなったのだ。
そして視界が定まらない中でも、懸命に私に向け続けたあの眼差しは、まるで親しい者へと向けるかの様な、それこそ妹へと向けるような気持ちが籠っていて。
私には向けられていない。私を誰かに、それこそ彼の妹にでも重ねていたに違いないのだろう。
だとしても、それでも──
──私の沈んでいた気持ちを、心地の良いものへと変えてくれた。温かく溶かしてくれた。
久しく感じていなかった家族愛のようなものに、甘えさせてくれるような安心感を抱かせてくれてたのだ。それは私が求めて止まなかった、もう手に入らないと諦めていた、酷く渇望していたもので。まるで兄のような存在に触れてしまい、私は──
「……802130(お兄ちゃん)」
胸中にじわりと広がっていく温かな、言い表せない気持ちが溢れ出るように、ポツリと、心の内を吐露してしまった。
──今日の出来事を思い返すと、不思議なもので。
たまたまウロウロとしていた所に彼が居て
その彼もたまたま図書館に行こうとしていて道案内を買ってくれた
たまたま同じ本を選んで一緒に読んだ
たまたま行き先が被ってお節介を焼いてくれた
たまたま食堂に行く時間が彼と被り、借りを返せて名前を聞けた
たまたま、かどうかは判断しかねるが、厄介な奴を相手取っている所に彼が来て。
そんな彼は少し特別で、人より何倍もしぶとかったけど、ただそれだけのことで。実際は滅法弱くて。それでも私を助けてくれて。
色んな偶然が重なりあって、私は今日色んなことを超えてこられた。彼のお陰で。
こんなに出来過ぎなことはあるのだろうかと思う。
だから、今日の出来事は、たまたま何かがあったの連続で、それを〝偶然〟と呼ぶのは容易いのだけれど、それでは納得がいかない気がするし、納得したくはないと思う。
思うに、出来過ぎている、というのはつまり、必然だったとはいえないだろうか?これは定められたことだったのだと、決められた道筋を当然の如くなぞっていったのだと。
そう思えれば、納得のいくような気もする。
ならば──と、思考を巡らせていると、ふと頭に一つの言葉が浮かぶ。
自分の頭から何故こんなものが出てきたのだろうかと困惑してしまう。そもそも今までの私ならばそんなもの、こんな間違いだらけの世界にある筈は無いと一笑に付していたに違いない。
だが、何故なんだろう──?そこまで解っていながらも、なるほどどうして私にとって妙にしっくりきた。
彼のことは憎からず思っているとの認識であったが、改めるべきだと思った。
そして、こんなものは乙女チックな考えで、浮かれた頭だと言われても仕方ないかもしれないが、それでも私はそう捉えたいと思ってしまった。
〝運命の出逢い〟と。
酷く押し付けがましいことだと思う。だけど、そんな思いを突き通しても──
彼に甘えたい、彼の妹として付き添いたい、彼と一緒にいたい。強い私も気に掛けてくれた存在で、正にお兄ちゃんの様な存在で。彼を兄として慕いたいと。
そんな気持ちがぐるぐると私の頭の中を駆け巡り、幸せな気持ちに浸りながらも、気がつくと疲れからなのか、彼が起きてくれた安心感からなのか、睡魔に落ちていた。
はい!お兄ちゃん……ってね!
流石ヒッキー!妹を増やすなんて俺たちに出(ry)
とまぁ、巫山戯るのはこの辺で。
冥加ちゃんは家族愛強いと思うんですよね。原作でも言及してましたが、引きこもりの彼女が唯一外出する機会が『お墓まいり』というくらいなんで。
しかも彼女、弟以外の身内を亡くしていることから、寂しい思いしてるんじゃ……って思いました。
弟の冥利くんは子供ながらに達観していますけど、それでも弟に不安とか抱かせないように、表面上は着丈に振る舞ってたんじゃないのかなって思いました。おっぱいネタとか言うのは、冗談でなんとか暗い雰囲気を払拭しようとしてたのかもしれませんし(まぁただ単におっぱいが好きな可能性もありますが……いや、多分単におっぱいが好きなだけだなきっと)
だから、そんな弟と二人で、自分は姉だからと弱みを見せず頑張ってたけど、実は誰かに甘えたかったんじゃないかなと思ったんですよね。
今回八幡に感じた『甘えさせてくれるような存在』という感覚。八幡からすれば、朦朧とした意識で小町にするように頭を撫でて安心させようとしました(年下とはいえ中二の女子の頭撫でるなんて、八幡の性格からして、よっっっっぽとじゃない限り無いよなって思ったんで、こんな形になりました)。
が、それは冥加ちゃんからしたら、もう親も亡くなってしまい諦めていたもの。甘えられる様な存在も居なくて、手に入らないと思ってたもの。そんな求めて止まなかったものに触れてしまって、例え、自分ではない誰か(小町)と勘違いしてるんだと理解していても、それは非常に心地良いものだったと。
だから、これは恋とかそういうのじゃなくて、家族愛みたいな感じじゃないかな。甘えさせてくれる存在の『お兄ちゃん』って感じで。だからヒロインではないかな?多分。
〝運命の出逢い〟のくだりは化物語の漫画版読んでて「うわ素敵!これ使いたい」ってなって採用させて貰いました。ガハラさんのあれです。