原作中に紬と羽依里がしていなくて、させてあげたかった事を形にしました。
拙い文章で申し訳ありませんが、読んで楽しんで頂けたら幸いです。
(以下本文、未クリアの方閲覧注意)
それはとある八月後半の夜……
わたしとハイリさんが、灯台で一緒に暮らし始めて、何日か目のことでした。
「なぁ、紬……そういえば、一つ忘れてた事があるんだけどさ」
「はい、なんでしょう?」
「一生分のイベントをするだろ?だからさ……」
「むぎゅ~?」
ハイリさんは、なんだかとっても話しにくそうにしています。
時々口をぱくぱくさせて話そうとするのですが、言葉が出てこないみたいです。
「ええと……これは70年分とかじゃないんだけどな?その、結婚式、とかもあるよなぁって……」
「むぎゅ!?そ、そうですよ!70年も毎年結婚式をしてたら大変です!」
「そ、そうだよな、一回でいいよな?」
「もちろんです、それに毎年結婚式って誰と挙げるんですか」
「え、そりゃ紬と……」
「むぎゅ~……それは、うれしいですけど……でも、70回もするものじゃないとおもいますよ?」
ハイリさんの言葉にものすごく動揺してしまって、照れ隠しもあって、あわててしまいました。
目の前に居るハイリさんは、顔を真っ赤にしてます。
きっとわたしも真っ赤になっちゃってます……むぎゅ~……
「で……紬はどうしたい?俺はしたいと思ってるけど、こればかりは紬の気持ちもね」
「えと、ですね……結婚式はちょっと……」
「恥ずかしい?」
「それもあります、けど、でもそれ以外もあります……えと……」
「……うん、無理しなくて大丈夫だよ、紬」
「はい……」
困っているわたしを見ていたハイリさんが、苦笑いしながらわたしの頭を撫でてくれました。
それがうれしくて、でも申し訳なくて、わたしは短く返事だけして撫でられ続けます。
本当は、わたしも、ハイリさんと結婚式を挙げたいです。
でも、わたしは、夏が終わったら、かえらなければいけません。
それに、ツムギちゃんが帰ってきた時に、わたしがハイリさんと結婚してしまっていたら、ツムギちゃんにも、周りのみなさんにも、ハイリさんにも……みんなに迷惑がかかってしまいます。
ツムギちゃんは灯台守さんの事が大好きでしたから、ハイリさんと一緒に居なければならなくなったら、困ってしまうと思います。
あと……もしツムギちゃんとハイリさんが、そのまま一緒に過ごしていたら……たぶん、きっと、わたしは嫉妬してしまいます。
だけど、そう言ってくれた事は、思ってくれた事は、すごくすごくうれしかったので。
「あの、ハイリさん……」
「ん?」
「ありがとうございます……だ、大好きです」
「あぁ……俺もだよ」
うれしかったので、わたしは笑顔でお礼を言います。
きっと、ちょっとまだ顔は赤かったでしょうけど。
ハイリさんも笑顔で返事をしてくれました。
……
…………
………………
わたしは、読んでいた日記を閉じます。
懐かしくて温かくて大切な……あの夏の思い出。
ずっとツムギちゃんを探して、夏を繰り返して、ハイリさんとシズク、二人も大切な人と出会って、ハイリさんと恋人になって……一緒に過ごして。
ツムギちゃんの代わりではなくて、自分のやりたいことを見つけて、いっぱいかなえて、わたしとして過ごしたあの夏。
「紬ー!準備できたかしら?」
「あ……はい!」
返事をすると、灯台の下の方からシズクが上がってきました、青い色のドレスを着てとっても綺麗です。
「シズク、すごくきれいですー!」
「あらあら、ありがとう。でも今日の主役さんの方が、綺麗で可愛いと思うわよ?」
「あ、ありがとうございます……むぎゅ……」
そう言ってシズクがわたしの服装を見てすごく嬉しそうに笑います。
きれいとか可愛いって言われるのは、やっぱりちょっと、はずかしいですね……
「やっぱり、羽依里君にはもったいないわねぇ。私がもらっちゃおうかしらー?」
「わっ……だ、だめですよぉー!」
シズクがものすごい勢いで抱きついてきて、思わず大きな声を上げてしまいました。
そのすぐ後に、階段の下から急いで駆け上がってくる足音が聞こえます。
「おい、なにかあったの……か……え?」
上がってきたのは……ハイリさんでした。
わたしとシズクがぎゅっとしているのを見て目を丸くしてます。
「こらこら、女性の部屋に入る時はノックしないとね、羽依里君?」
「……」
「……む、むぎゅー?」
「……あら?」
シズクの冗談を聞いても、目を丸くしたまま固まってしまっています。
こ、これはどうしたんでしょうか……
「……紬」
「むぎゅ?」
「……綺麗だ」
「むぎゅぅぅぅー!?」
「あらあら、紬のドレス姿に見とれちゃってた訳ね……ふふふ」
笑顔でシズクがわたしを放してくれました。
でもむしろぎゅっとしていてくれた方が良かったです、今はハイリさんに見られるのが何故だかとっても恥ずかしいです……
「そ、そういうハイリさんこそ、格好いいですよ!」
「そ……うか?」
「そうです、いつもの十倍増しくらいです!紬も思わず見とれちゃいます!」
「あらー、本当に羽依里君の事が大好きなのねぇ、紬は」
「そ、そうです!大好きですよ!」
「あ、ありがとうな、紬」
お返しに褒めるつもりがなんだか余計にはずかしい事言ってしまった気がします……むぎゅぅぅ~……
でも、ハイリさんのタキシード姿は本当に格好よくて……どきどきします。
「さぁ、二人とも。そろそろ時間よ。皆外で待ってるわ」
「そうだな……行こうか、紬?」
「はい……ハイリさん」
ハイリさんが笑顔で差し出してくれた手を、わたしも笑顔で手を伸ばして掴みます。
ハイリさんの手は、ハイリさんの優しさが伝わってくるようでとっても暖かいです。
二人で手をつないだまま、ゆっくりと階段を下りて、灯台の入り口のドアを開けました。
「「結婚おめでとう!」」
皆さんの祝福してくれる声が重なりました。
今日は、わたしとハイリさんの結婚式……あの夏にやれなかった、一番やりたかった事。
『おめでとう、紬……幸せになってね?』
一瞬遅れて、懐かしい声が聞こえた気がしました。
なんとなく、その声が誰なのかわかって……わたしは小さく、はい、と答えて、空を見上げました。
今日も、お日様はきらきら輝いていて、わたし達の時間を照らしてくれています。