Summer Pockets 小説集   作:京四郎

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ど~れみふぁ~そ~らし~ど~♪
今回登場するのは、鳥白島に住むしろはちゃん。
無事に本土に住む羽依里君のところまで、おつかいに行けるでしょうか?





そんな内容です(何)





はじめてのおつかい

私は今、船に揺られて本土を目指している。

学校に行く時にも乗っているはずなのに、目的が目的だけに、何となく落ち着かなくなってしまう。

「羽依里……」

ふっと名前が口から出てくる。

自分で口にしたのに、羽依里の名前を耳にしただけで、なんだか恥ずかしくなってうつむいてしまう。

「どうしてるのかなぁ……」

船があげる波飛沫を眺めながら、また自然と言葉が出てくる。

 

 

事の発端は、数日前にさかのぼる。

 

 

「……そっか」

手にした羽依里からの手紙を読んで、溜息をつく。

いつもなら羽依里からの手紙を読んでると、胸がどきどきしたり、思わず手紙を抱きしめちゃうくらい嬉しいときもあるんだけど、今回は違った。

「来れないんだ、羽依里」

手紙には、数日後の私の誕生日を祝いに来る予定だったのが、都合が悪くなって来れなくなってしまった事が書いてあった。

いつも羽依里の手紙には、書いてある内容に、笑わされたり、嬉しくさせられたりする事はあったけど、落ち込んでしまった事は初めてだった。

私、そこまで羽依里と会いたかったのかなぁ?

……い、いや、期待してないし!羽依里なんて居なくても、居なくても……

「……さみしい、かな、やっぱり」

あの夏に、羽依里と恋人になってから、もうだいぶ経った。

長い休みや連休に入るたびに、羽依里は遊びに来てくれた。

それ以外でも、特別な日にはほとんど必ずと言っていいほど、会いに来てくれた。

「…………」

そこまで考えて、気付いてしまった。

羽依里が会いに来てくれる事はあるけど、私から会いに行った事って無い様な……うん、無かった。

「……行っちゃおうかな……」

想いが言葉に出てしまう。

羽依里に会いたい。

「どこにだ?しろは」

「お、おじいちゃんっ!?部屋に入るときは声を掛けてっていつも言ってるのに!」

「いや、何度も声をかけたぞ?上の空で聞こえていなかったようだが……」

「あ、そ、そうなんだ……ご、ごめんなさい」

全然聞こえてなかった……

おどろくのと同時に、そこまで羽依里の事を考えていたのに気付いて、ちょっと恥ずかしくなる。

「……あの小僧のところか?」

「ちっ、違うし!羽依里関係ないし!」

「その手紙、小僧からの手紙だろう?」

「そ、それは……そう、だけど……」

図星を突かれて、思わず目を逸らしてしまった。

「ならば、行ってくるが良い」

「……え?」

「会いたいのだろう、あの小僧と」

「そ、それは……うん」

もう誤魔化せなくて、私は頷く。

「会いたい時に、会いに行けるのなら……行って来い」

そう言うおじいちゃんの表情が、一瞬だけ、とても寂しそうに見えた。

「……うん」

そうだよね、私から会いに行ったって良いよね。

誕生日だし……私自身への誕生日プレゼントと思えば、うん。

 

 

 

 

「……えっと……」

そして今、私は見知らぬ街の中で立ち尽くしていた。

迷った!完全に迷った!

ど、どうしよう……

「……あら、貴女は確か……羽依里の知り合い?」

「え!?は、はい!?」

急に声を掛けられて振り向くと、そこには髪の長い、とても綺麗な女の子がいた。

思わず返事しちゃったけど……だ、だれ!?

「もしかして、羽依里の家を探してるとか?」

「あ、うん、そう……」

「なら、案内してあげるよ、こっちこっち!」

そう言ってその女の子は私の手を引っ張る。

え、えぇ……!?

 

「はい、ここが羽依里の家だよ」

「はぁ、はぁ……ど、どうも」

この人、足はやい!

早歩きでも、ついていくのがやっとだった。

おかげで息があがってしまった。

……それはそれとして、どうしても聞かないといけないことがある。

「と、ところで、あなたは、羽依里と……ど、どういう関係?」

「んー……あ、それは本人に聞いたらいいんじゃないかな?」

そう言ってその子は、にやりと笑って羽依里の家の方を向いた。

私もつられて振り向くと、そこには……

「しろは……なんで!?」

鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をした羽依里が立ってた。

 

 

「…………」

私は羽依里の家の近くの公園で、一人でベンチに座っていた。

 

あの後、あの女の子は「じゃあ後はよろしくね」と羽依里に告げて、すぐに去ってしまった。

羽依里は羽依里で、家ではちょっとあれだからと、この公園まで案内されて、ここで待っているように言って、家の中に戻ってしまった。

 

「なんなんだろう……」

一気に色々な事があって、私の頭は良くない想像がぐるぐる回っていた。

なんで羽依里に会えたのに、こんなところで一人で座ってるんだろう?

羽依里、家にはあげたくないのかな……というか、あの女の子、誰?

「おまたせ」

羽依里の家知ってたよね……ってことは、家に行ったりする間柄って事?

「……しろは?」

あの子、可愛かったな……なんか向こうは私の事知ってたみたいだけど、会った覚えが無い。

「おーい、しろは?」

……もしかして、前に羽依里に送った写真で見たとか……でも、それくらい親しい仲って事?

親しい仲……羽依里と親しい仲の女の子……?

「……しろはー?」

「……ん」

「おわぁ!?」

なんか私の名前を呼ぶ声が聞こえたので、振り向くと、そこにはちょっと引いてるような羽依里の顔があった。

「どうしたの?羽依里」

「い、いや……しろは、なんかめちゃくちゃ怖い顔してたから」

「……どうせ私は可愛くないし」

なんだか自分でもわからないくらいに不機嫌になってる、なんでだろ?

「いや、可愛いよ」

「可愛くないし!さっきの子の方が綺麗だし!」

自分で自分の言った事に、はっとする。

あ、あれ……なんでさっきの子の話が出てくるっ!?

「しろは……もしかして、さっきのあいつの事なんか勘違いしてる?」

「あいつって誰、あいつじゃわからない」

羽依里に会えて、嬉しいはずなのに、とげとげした言葉がたくさん出てくる……うぅ、なんか、やだ。

「……え、しろは覚えてないのか?プールで一回会ってるはずなんだけどな」

「……え?」

プール……って、島の学校のプールだよね?

「あぁ、さっきのやつは俺の同級生だよ」

「同級生……え?もしかしてあの子……ううん、あの人って……」

羽依里の学校って確か……

「うん、男だよ。俺の学校が男子校なのは、しろはも知ってるだろ?」

「え……えええええっ!?」

私の絶叫が、公園中に響き渡った。

 

 

 

「そうかそうか、しろははヤキモチ妬いてたんだな」

「や、妬いてないし!」

「じゃあ、なんで自分と恵を比べるような事を言ったんだ?」

「そ、それは……私より綺麗な人だなと思って……」

「……俺がとられちゃうとか思った?」

「うん……じゃ、じゃない!そんな事思ってない!何を言わせる!?」

私の勘違いに気付いてから、羽依里はずっとにやけっぱなしで意地悪な事を言ってくる。

うぅ……うぅぅぅぅぅ!勘違いしてたのは私だけど、だけど!

「いや、だってさっきのしろは、あんまり怖い顔してたから……」

「もうっ!どすこいっ!」

「そ、それは言い過ぎなんじゃないかな!?」

「羽依里も意地悪言いすぎっ!」

「ご、ごめん……」

どすこいは言い過ぎかもしれないけど、羽依里も意地悪言い過ぎだもん……恥ずかしいよぉ。

「もう……で、でも……確かにどすこいは言い過ぎた、かも……私も、ごめん」

「……ははっ」

「……ふふっ」

お互いに謝って顔を見合わせると、思わず笑みがこぼれてしまった。

「……そういえば、しろははどうしてここに?」

「あ、うん……その……誕生日、プレゼント」

「え?」

羽依里がぴんと来ないって顔してる。

そ、そうだよね、その説明だけじゃわからないよね。

「羽依里に……会いたかったから。羽依里に会うって言う、私から、私への……誕生日プレゼント」

言い終わってから、自分が言った事のあまりの恥ずかしさに顔が真っ赤になってしまうのが自分でもわかる。

良いのっ、事実だもん……事実だもん!

「そっか……ありがとう、しろは。俺も嬉しい」

そう言って羽依里は、本当に、すごく嬉しそうに笑った。

その笑顔を見ているだけで、ここまで来た苦労が全て報われた気がする。

……私って、こんなに単純だったかなぁ……

「じゃあ、俺からも誕生日プレゼント……」

そう言って羽依里は懐から小さな箱を取り出して、私に手渡した。

「また島にいけるときに、直接渡そうと思ってたんだ。開けてみてくれないか?」

羽依里に言われるままに、手にした箱をそっと開ける。

「……こ、これって……」

「本当は今日、島に行って向こうで渡すつもりだったんだけどさ。親があんまり遠出し過ぎだって……反対されて、どうしても行けなくなっちゃってさ」

それで、あんまり家にあげたくなかったのかな?

残っていた疑問も、話していくうちにだんだん無くなっていって、嬉しさしか残らなくなっていく。

「羽依里、これ……つけてみていい?」

「あ、うん……バイトでためたお金で買ったものだから安物だけど……」

震える手で箱に入っていた物を手に取り、つけてみる。

ぴったりだ……羽依里の事だから、会いに来た時に調べてたのかな?ちょっと恥ずかしいけど……

「すごく嬉しい。ありがとう、羽依里」

「……誕生日おめでとう、しろは」

満面の笑みでお祝いしてくれる羽依里。

きっと私も、ものすごい笑顔になってると思う。

そんな二人の間で、私の手にはめられた指輪が、光を反射して眩しく輝いていた。

 

 

 

 

 

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