掲載は話の冒頭部分までとなります。
フェリーが港に着岸する。
俺は荷物を詰めた鞄を持って、他の乗客と一緒にフェリーから港に降り立った。
「一年ぶりか……」
自然とそう呟いていた。
この島に来たのは、去年が初めてで、それも夏休みの間だけ。
だと言うのに俺は、まるで何年も、何度も夏を過ごした故郷に戻ってきたような、そんな懐かしさを覚えていた。
「は、羽依里ー!」
俺の名前を呼ぶ声のする方へ視線を向けると、そこには去年恋人になったしろはが、こっちに駆け寄ってくる姿があった。
一年ぶりの再会とは言え、ここまで喜んだ様子で迎えてくれると、とても嬉しくなる。
「おぉ、しろは……ん?」
笑顔で手を振って答える俺は、違和感に気付く。
こっちに向かって走ってくるしろはの表情は、喜んでいるというよりは必死の形相と言うか……
「た、助けて!羽依里!」
「え、え?」
俺のところまでたどり着いたかと思うと、そのままさっと俺の背中に隠れてしまう。
……恋人同士が会った時の、その……ハグとかって、こんな感じだったっけ?
「しろは!頼む!少しだけでも考えてみてくれ!」
疑問に思っている俺の思考を遮るように、また聞きなれた別の声が耳に入ってくる。
その声の方へ視線を向けると、これまた見慣れた人物が、しろはと同じように必死の形相で此方に向かって走ってきた。
「し、しつこいし!嫌だって言ってるし!」
俺の背中に隠れて、めいっぱい嫌がってる恋人と、そんなしろはに物凄い勢いで迫ってくる友人。
……そりゃ、どっちを優先するかは明白だよな?
「何が何だかわかんないけど、とりあえず……落ち着けぇぇ!天善ー!」
俺は思わず力の入った叫びをあげながら、手にした鞄をしろはに向かって突っ込んでくる友人……天善に勢いよく投げつけた。
「他校とのダブルス親善試合?」
「あぁ、そうだ」
港での一騒動から少しして。
鞄が見事にヒットし盛大に吹っ飛んでから、多少は落ち着いて天善を連行して、俺としろはは駄菓子屋に来ていた。
あのまま港で話を聞いても良かったが……あんだけ騒々しかったんで、さすがに人の目が痛い。
落ち着いて話が出来る場所はと考えて、結局駄菓子屋の奥の座敷を借りて、そこで話を聞く事にしたんだ。
「学年毎に対抗でやるんだが、今年は受験だなんだで俺一人しか三年の部員が残っていなくてな。顧問に相談したら、特別に卓球部に所属している者以外でも、了解を得られれば出場可能と言う事になったんだ」
「そうか。って、それなら良一とかに頼めば……」
「試合形式が男女混合なんだ」
「……なるほど。なら、蒼とかのみきとかは?」
「あー……それがね?」
蒼の声は駄菓子屋の店舗の方から聞こえてきた。
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