Summer Pockets 小説集   作:京四郎

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2023年の今日で、とうとうサマポケ五周年ですね。

俺が実際にプレイしたのは、発売からだいぶ経ってからでしたが、この作品は想い入れが特に強い作品で、ぶっちゃけこれが無ければ俺は多分今精神的に病んでいて生きていないでしょう。

仕事・私事共に、見捨てられたり裏切られたりと、色々な事が山と重なった時期に、この作品をプレイする機会が巡ってきて、気分転換と言うよりももっとずっと強く、心が洗われる様な経験をして、支えられた想い出があります。
作品としては他にもKANONやCLANNADなども特に好きなのですが、一番の作品と言う意味では、恐らく今後も譲らないでしょう。

ともあれ、そんな人生の分岐点の一つにもなった大切な作品の五周年と言う事で、掌編?SS?程度の内容ですが書かせてもらいました。

なお、冒頭は同時に投稿予定のTwitterでの1ツイートSS(1ツイート内で完結するSS)と同じです。
あちらはあちらで区切りがついてますが、こっちはそれをより掘り下げた話と言う事で…


なお、この話は紬ルートエンディング後の状況ですので、
ネタバレ等を控えたい方は、是非本編終了後にお読みいただけたらありがたいです。



『Summer Pockets』発売五周年記念 ショート・ストーリー

 

「ここからの景色は相変わらず綺麗だな」

「そですね。変わらずきれいです」

「そうだな。五年経ったけど変わらないよな」

「はい。これからもずっとずっと変わらずいっしょですよ」

「だな……灯台の女神様が言うんだから間違いない」

「ふふふ……はい」

「~♪」

 

灯台屋上のテラスに出て、一緒に夕焼けに染まる海を眺めながら、嬉しそうに鼻歌をうたう紬。

あれから五年……様々な事があって、今も変わらず俺達はここでこうして一緒に暮らしている。

 

五年前。

あのあまりにも眩しくて、夢中で駆け抜けた夏。

その夏の眩しさが起こした奇跡。

それを日々噛みしめながら、紬と俺は今もこうしてこの灯台で一緒に暮らしている。

 

「……ハイリさん、ききたいことがあります」

 

とびっきりの笑顔を俺に向けながら、やけに神妙な雰囲気を出し始める紬。

 

「ん?どうしたんだ紬、改まって……」

「わたしといっしょになって、後悔はしていませんか?」

 

不安を滲ませたと言う表現がぴったりとくるような、そんな声色で紬が問いかけてくる。

紬は普通の可愛い女の子だ。

だけど、他の人達とはちょっと違う女の子だ。

まだ五年しか経っていないけれど、まず見た目は全く変わってない。紬という存在を考えたら、ひょっとすると十年、十五年、二十年……ずっと、ずっとこの見た目かもしれない。元々が、本当は、普通の生きているものじゃないから。

 

『だいじょうぶです!その時はこんじょーで見た目も変えます!』

 

以前、紬が今後歳を取らないかもしれない可能性の話が出た時、そう言って明るく元気に笑って答えた……様に見せていた紬。

けれども、ずっと紬の中で不安と、迷いがあったんだろう。

 

でも、俺の答えは決まっている。

いや……ずっとずっと前から、それはもう決まっていた。

 

「後悔なんてしてないし、これからも後悔なんてしない。俺は何があっても紬と最期まで居ると……『あの夏』に決めたんだ」

「ハイリさん……」

 

紬と過ごした夏……その翌年の夏。

引き寄せられるように、灯台の前に集まった俺と静久。

紬の事を懐かしんでいると、何故か灯台の中から紬の歌う声が聴こえた気がして。

灯台のドアを開こうとしたら、内側から開いて紬が「おかえりなさい」と出迎えてくれて。

静久と二人でとてもびっくりして、次の瞬間俺達は泣き出してしまって。

そうしたら紬も泣き出しちゃって、三人で抱き合いながらわんわん泣いて……

そう、あの時から……あの、紬ともう一度会えた夏から、俺は……

 

「それに、さっき『これからもずっとずっと変わらずいっしょ』って言ったのは、紬じゃなかったか?」

「……はい……はいっ!そでしたね!」

 

瞳を涙でにじませて、にっこりと、今度こそ屈託の無い笑顔を浮かべる紬。

そんな笑顔を浮かべた紬の頬を、一筋の雫が流れ落ちる。

夕日に照らされてキラキラと輝くそれは、紬の笑顔をも更に輝かせて。

その光景は、まるで本当に目の前に女神様が居る様な、そんな錯覚を覚えさせる物だった。

 

 

*********

 

 

時間は更に下がって夜更け。

紬は夕方泣いたりしたせいか、疲れている様子だったので先に休ませて、俺は俺で仕事に取り掛かる。

 

「さて、新作も頑張って作っていかないとな。紬とずっとここで一緒に生きていく為にも」

 

そう、あれから五年経っているから、俺ももう22歳でとっくに成人して社会に出ている。

……と言っても、俺が選んだ道はちょっと特殊だったりする。

 

紬と再会できたあの日から将来の事を色々と考え、紬と島の皆が良ければ、此処で……この灯台で暮らしていけないか。

そう思った俺が選んだ道は……

 

「……ハイリさん?まだ起きてるんですか?」

「え、紬!?……あ、起こしちゃったかな。ごめんな」

「いえいえ。そんな事より……無理してよふかしし過ぎないでくださいね?」

「あ、あぁ……うん、大丈夫だよ。ありがとうな」

 

昔の事を想い出している間にだろうか。いつの間にか俺の横に座り、見るからに心配そうな表情で気遣ってくれる、ネコの着ぐるみパジャマ姿の紬。

俺はそんな紬に答えながらその頬を優しく撫でる。すると紬は一瞬で顔を微妙に紅潮させた後、「にゃー」と鳴いて頬を撫でる俺の手を受け入れ、むしろ自分から俺の手に頬を擦り付けたりもしてくる。

 

「こうしてみると、灯台の女神様って言うよりお猫様だよなぁ」

「むぎゅ!?かくさげされました!?」

「いや、可愛さはかなり増してる感じだぞ?」

「ならいいです」

 

良いのか、紬よ。

そんな突っ込みが口から出そうになるも、「~♪」と心底嬉しそうに鼻歌をうたいながら、頬に俺の手を添えたままの紬を見ていると、自然と俺も嬉しさがこみあげてくる。

 

「……あ、ハイリさんの邪魔になっちゃいますね。すみません」

「いや、ちょうど休憩しようと思ってた所だから大丈夫だよ」

「そですか、それならよかったです……ところで、今度はどんな作品をつくっているんですか?」

 

もはや逃がさないという感じで、頬に当てた俺の手の上から、更にネコパジャマの肉球グローブ部分を当てて俺の手の感触を満喫している紬。

そんな紬の視線が、俺が向かっている机の上に置いてある、書きかけの新作へ移る。

 

「処女作の灯台の女神様に続く作品だよ」

「おぉー、それはとても期待できそうです!」

「内容聴く前から期待すると、期待外れになるかもしれないぞ?」

「だいじょーぶです!」

 

茶化したように答えた俺の言葉に食い気味に答えながら、空いたもう片手を俺に向けて肉球を見せつける紬。

きっと紬的には、いつもの人差し指を立てて腕をびしっと伸ばす、あのちょっとした決めポーズ的な仕草をしてるつもりなんだろうけど、パジャマと肉球効果でもう可愛さしかない。

 

「ハイリさんなら何があってもだいじょうぶだと信じてますから、いつも」

「あっ……あ、ありがとう……」

 

にこにこと満面の笑みで、真正面から見つめて言われると、言われる側はとても照れる。と言うか照れた。

 

俺が、紬と一緒に居られる為に、選んだ道……それは作家。

灯台に住んで、なるべく灯台で過ごしながら出来る仕事。それを模索して出した結論がこれだった。

最初はもちろん大変だったし、島の皆の協力もあって、いろんな仕事の手伝いをしながら、生活を助けてもらっていた。

その後、紬の事をモチーフに書いた『灯台の女神様』が、ありがたい事にかなりのヒットをして、今はそれ一本で何とかやっていけてる状況だ。

作品のレビューでは『時々入るポエミーな表現がクセが強いけど癖になる』とか、変な賛辞?も多いけど、おおむね好評だからそこはまあ良いかな。

 

「おやぁ?あたらしい作品のタイトル……これは……もしかして……」

「あー……うん、まぁそういう事、かな?」

 

発表までは紬には内緒にしておきたいなと思っていた部分が、目に留まってしまったようだ。

そう、『灯台の女神様』が紬の事をモチーフに書いた作品で、その続きにもなるこの作品は、今度は俺の事をモチーフにした……

 

「『灯台守の物語』……灯台と、灯台の女神様を守り、添い遂げる男の話だよ」

 

 

 

                                               

                                  終






なお、ここまで話のタイトルは表記していませんでしたが、
このショートストーリーのタイトルは、『灯台守の物語』です。
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