Summer Pockets 小説集   作:京四郎

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何となく友人二名と会話している間に想いついたSS。
題して「各ヒロインがヤキモチを妬いたらどうなるか?」。
短編四編の連作のような感じになりますが、よろしければお付き合いください。

なお、各ヒロインとも、ルート後の恋人となった後と言う設定で描かれています。




とある後日談~ヤキモチを妬くヒロイン達~

~しろはの場合~

 

それはある日、羽依里とデートに街に遊びに来ていた時の事だった。

「しろは、待って」

後ろから羽依里の声が聞こえるけど、私は立ち止まる気は無い。

きっかけはささいな事だったけど、私は今すごく怒ってる。

……ううん、怒ってるのとは、ちょっと違う。

なんていうか、モヤモヤ?イライラ?

「ついてこないで」

ちょっと自分が言われたら心が痛くなるくらいの強い口調で言ってしまう。

なんだろう、これ……すごく嫌だ。

「なんで急に怒ったんだよ」

「怒ってない」

「いや、怒ってなかったらそんな風に」

「どすこいっ!」

思った以上の声に、羽依里もだけど、言った私もびくっとなってしまう。

「……羽依里は、あそこでずっと、私より可愛い子達でも見ていたら良いよ」

一瞬の沈黙の後で私が言った言葉は、私自身も予想していなかった言葉だった。

言った後で、その裏にある気持ちに気付いて思わずはっとした。

私、羽依里が他の女の子見てたのに妬いてる……!?

「そっか。ごめん、しろは……」

「謝らなくていい」

胸の中に、恥ずかしさと、行き場の無い気持ちがあって、ついそっぽを向いてそう答えてしまう。

「あのさっき見てた女の子がつけてた髪飾り、しろはに似合いそうだなぁって思って見てたんだ」

「ほら、やっぱり見とれて……え?」

「だから、女の子じゃなくて、髪飾りがさ」

「え、えぇぇぇ!?」

「しろは、あんまりそういうアクセサリーつけてるところを見たこと無いからさ、ああいうのつけたら可愛いかなって」

「な、なんで唐突に可愛いとか言う!」

「え……だってしろはなら似合いそうだし、可愛いだろうなって」

「なんで二回も!」

な、なんか……えっと……えぇ!?

思ってもない話の流れになってどう答えて良いかわからないよぉ。

「……なぁ、しろは?」

「え!?……は、はい」

「さっきの子がつけてたのと同じのは無いかもだけどさ。これから一緒に、しろはに一番似合いそうなのを探しにいかないか?」

「う……う、ん」

真っ赤になっちゃって、うつむいてそう答えるのがやっとだった。

そっか、羽依里は他の子見てても私のこと考えてくれてたんだね……嬉しい。

「羽依里」

「ん?どうした、しろは?」

「……ありがと」

ちょっとだけ顔を上げて、それだけ言って、私は羽依里の手をそっと握った。

 

 

‐終‐

 

 

 

~蒼の場合~

 

ある夏の日。

あたしは羽依里と藍と三人で海に遊びに来てたんだけど……

「くぉぉらぁぁぁ!藍の方ばっかり見ない!」

く、屈辱だわ……あたしも多少はプロポーションには自信はあったけど、やっぱり藍の身体って綺麗だわ。

それに、いくらあたしでもあんな藍みたいなきわどい水着は……む、無理だわ!

「そうですよ。蒼ちゃんがこんな素晴らしい格好をしているのに、蒼ちゃんを見ないなんて罪深すぎます」

「わ、解ったから藍はもう少し身体を隠してくれ……男子校卒の俺には、刺激が強すぎるんだって」

「羽依里さん、あなたの蒼ちゃんへの愛情はそんなものなのですか?私がこの程度の姿で居るだけで目移りしてしまうようでは蒼ちゃんは渡せませんね」

なんかあたしを抜きにしてあたし争奪戦が始まってる!?

いやいや、突っ込むべきはそこじゃなくて!

「そ、そうよ羽依里!あたしも……その、見てよ」

「蒼……」

勢い任せでちょっとだけ胸を強調したポーズをとったところに、言われて顔をこっちに向けた羽依里の視線が突き刺さってくる。

こ、これはこれで恥ずかしいわ!?

「……あたしじゃ、やっぱり藍より物足りない?」

「い、いや……そうじゃなく、て……ぶはぁ!」

「羽依里ー!?」

 

……

………

 

「……あ、あれ?」

「あ……気がついた?」

「うん」

近くにあった海の家の座敷で、あたしの膝の上に頭を乗せた羽依里が目を覚ました。

ま、まさかあれで鼻血を出してぶっ倒れるとは思わなかったわ……男子高卒恐るべし、ね。

「……」

「羽依里?どうしたの?」

「また鼻血でそう」

「うぇぇ!?なんで!?」

「いや、ほら……俺の目の前に二つ、素晴らしいのが」

目の前って言うと、羽依里は仰向けであたしの膝の上に頭を乗っけてて、だから……

「きゃぁぁぁぁ!」

「ぐわぁ!?」

思わず叫んで取り乱しちゃって羽依里の頭を下に落としてしまった。

あぁ、痛そう……ご、ごめん羽依里。

「ご、ごめん!大丈夫!?」

「あ、あぁ……」

羽依里がよろよろと起き上がってそのまま座敷に座り込む。

ちょうど真正面で向き合うみたいな感じになって、なんかいたたまれない。

「えっ、と……さ、羽依里?」

「うん?」

「なんか、変に張り合って鼻血まで出させちゃってごめんね」

藍に目が行ってたのが、なんか悔しくて、それがやきもちなんだってのも解ってたから、あたしは素直に謝った。

「いや、謝る事ないぞ?」

「え?」

「だって、蒼は俺の恋人なんだからさ。むしろ俺の方がごめん」

羽依里から返ってきたのは予想外の答え。

「だ、だけど、あたしなんか変に対抗意識燃やしちゃって……羽依里をこんな目に合わせちゃったし」

「俺としては、それは嬉しいけどな?妬いてくれたって事だし、良い物見れたし」

「良い物?」

「可愛い恋人の悩殺姿」

「う……うあぁぁぁ!忘れて!今すぐ忘れて!」

「いや、絶対忘れない」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

羽依里に笑われながら、真っ赤になったあたしの絶叫が夏の海辺に響いた。

 

 

‐終‐

 

 

 

~鴎の場合~

 

「羽依里のばかぁ!」

ちょっと用事で出てくるって羽依里が一人で出かけたのが気になって、街で見かけた羽依里の様子を見て、そう言って一人で宿の部屋に戻って……そんなこんなで布団に丸まってからもう小一時間。

私はまるでだんご虫みたいになって過ごしてた。

「せっかく一緒に旅行に来てるのに、ひどいよ羽依里……ふみゅぅ」

文句は言うけど元気は無い、それが今の私。

そりゃ、外国の街だし、私よりスタイル良い子や、綺麗で可愛い子も一杯居るけどちょっと話しかけられただけでデレデレしちゃってさ。

羽依里はエロい!もう羽依里じゃなくてエロ里に改名しちゃえば良いんだよ!

「鴎ー……ここくらいしか無い、よな?行き先なんて」

きた!エロ里が帰ってきた!

でも返事なんかしてあげないもん。

「やっぱり。鴎ー?鴎さーん?」

ふーんだ。

「……なぁ、出てきてくれよ。せっかくの旅行なんだから楽しもうぜ?」

「ふぎー!ふぎー!」

「えっと、確かこれは求愛?」

「違う!これは威嚇!……あっ」

思わず答えちゃった!

「……やっぱり、なんか勘違いしてないか?街に出てた俺の姿見た後、急に走り出して居なくなっちゃったし」

「ど、どーせ羽依里はナンパとかしてたんでしょ?あんな楽しそうに女の子達と話して……もう羽依里はエロ里だよ!」

「な、なんだその良く解らないけど不名誉なあだ名は」

「だって羽依里がエロイから!」

「あぁ、もう……ほら、これだよ!」

そう言って羽依里は布団から顔だけ出した私に何枚かの用紙を手渡した。

……え、これって。

「ほら、鴎のスーツケース……あれに更にもっと一緒に行ったとこの記念になるものつけてったらって思ってさ。この街らしいシールとか売ってる店が無いかって聞いてたんだよ」

「え。じゃ、じゃああの女の子達と楽しそうに話してたのは!?」

「あー……それは、これ」

羽依里が懐から出したのは一冊の手帳のような本。

「俺、この国の言葉解らないから、身振り手振りで、このミニ辞典で翻訳して片言で話しながら説明してさ。それがあの子達には面白かったみたいで」

そ、そうだったんだ……確かに羽依里がくれたのは、どれもこの街や国に関係あるシールばっかり。

「……ごめんね、羽依里」

布団から出て素直に謝ると、なんでか羽依里は笑ってた。

「俺がもう鴎を一人ぼっちにするわけないだろ?」

「あ……う、ん……えへへ」

そうだよね。

あの島での時も、最後まで付き合ってくれた。

その後だって、私を諦めずにいてくれて、出会えた。

どうかしてた、そんな羽依里を疑っちゃうなんて。

「羽依里」

「うん?」

「ごめんね、やっぱり羽依里は羽依里だったよ」

なんだかんだ言っても私の事をちゃんと考えて大事にしてくれる。

そんな羽依里の事が……

「好きだよ、羽依里」

 

 

‐終‐

 

 

 

~紬の場合~

 

わたしは灯台の中に置いてある姿見の前で自分の身体を見ました。

そして、去年の夏に仲良くなった女の子のみなさんの身体を思い返してみます。

「……むぎゅぅ」

やっぱり、足りません。

ハッテントジョーなのは仕方ありませんが、身体は女の武器という話も、昔聞いたことがあります。

「ハイリさんも、やっぱりみなさんのような方が好きなのでしょうか……」

そもそも、わたしは成長するんでしょうか?

今までそんな事を思った事はありませんでしたが、わたしはこの身体になってからずっとツムギちゃんと同じままです。

ずっとこのままで、そのうちハイリさんにとってもっと魅力的な身体の女性が現れて、ハイリさんをとられそうになったら……

「ちみどろになってでも、あらそいます……むぎぎぎっ」

だめです、ハイリさんは誰にも渡したくありません。

シズクは……百歩譲って三人で一緒ならおーけーです。

でも、それ以外の人には……やっぱりだめです。

「むぎぎぎぎっ」

「紬、どうしたんだ?」

「むぎゅっ!?」

後ろからかけられた声に思わず身体がびくっとなってしまいます。

そこには心配そうに見ているハイリさんが居ました。

「え、えとですね……な、なんでもありません」

「何でもない事無いだろ。更に言えば、何か変にヤキモチ妬いてたんじゃないか?」

「むぎゅぅっ!?な、なんでわかるんですか!……あっ」

「ほら、やっぱり……前に嫉妬してた時の顔だったし」

やっぱり嘘と隠し事は出来ないようになっているものです。

ばれてしまったので仕方なく、わたしはハイリさんに全てを話しました。

「そっか……だけど、俺は紬の事が全部好きだから、さ」

「……でも、ハイリさんは時々静久の胸をものすごく見つめてる気がします。この前聞いた、ガン見というやつです」

「うっ……そ、それは静久相手だからだよ、うん」

なんで目をそらすんですか、ハイリさん。

じーっと見つめていると、急にハイリさんが真面目な表情で私の方に振り返りました。

「なぁ、紬」

「は、はい」

「俺はもう紬と70年分のイベントをして……最後まで一緒に過ごす約束したんだからさ。何処にも、誰にも行かないよ」

「……ハイリさん」

そうでした、ハイリさんはシズクと一緒にわたしと70年分のイベントを一緒にしてくれました。

そしてその次の夏にわたしが戻ってきてからも、今までと同じように、いいえ、それ以上に、楽しい事をいっぱいして過ごしてくれています。

「そ……です、ね。そうでした。ごめんなさい……」

「いいんだよ。それだけ、心配になっちゃうくらい、俺の事が好きだって解ったしさ」

「そ、そうですよ!わたしはハイリさんの事が大好きです!すごくすごく大好きです!」

「……あらぁ?改めて紬の方から告白してるのかしら。とっても可愛い告白ねぇ」

「むぎゅっ!?シ、シズク、いつから居たんですか!?」

「えっとぉ……パイリ君の『俺はもう紬と』の辺りだったかしら」

「俺のも聞いてたのかよ!」

ハイリさんがそう言った後、誰からともなく三人一緒にしばらく笑い合ってしまいました。

わたし自身の成長の事とか、やっぱり……発育の事以外でも……不安は、あります。

けど、三人で……シズクと、そして何よりハイリさんと、一緒に笑い合える今を大切にしていきたいと思いました。

 

 

‐終‐

 

 

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