Summer Pockets 小説集   作:京四郎

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誕生日の夜に ~星に願いを~

 

今日、8月31日は、わたしの誕生日です。

でも、去年までは、わたしには誕生日はありませんでした。

去年の夏……ハイリさんとシズクが決めて、みんなで祝ってくれました。

 

そして今年、再び灯台に、この島に戻ってくることが出来たわたしを、みなさんは受け入れてくれて、誕生日も盛大に祝ってくれました。

いっぱいのワタアメや、シズクが用意してくれたケーキをみんなで分けて食べたり、ノムラさんとミタニさんの漫才や、カノウさんの卓球講座なんかもありました。

シロハさんは得意料理のチャーハンを作って持ってきてくれたり、アオさんも、カキ氷機を駄菓子屋さんから借りてきて、みんなでいっしょに頭がキーンとなるまで、食べたりしました。

 

更にはなんと、プレゼントまでみなさんで用意してくれました。

プレゼントは二つのぬいぐるみで、青い恐竜のぬいぐるみと、顔のかかれた丸い団子のぬいぐるみでした。

二つともとても可愛くて、すぐに仲良くなれそうな感じです。

そうして夕方まで、わたしのお誕生日会は続きました。

 

 

 

 

「それじゃあ、あたし達は帰るわね。あんた達はまだ居るんでしょ?」

「あぁ、せっかくだから今日は俺と静久は泊まっていこうかと思ってる」

ハイリさんの言葉を聴いたアオさんがみるみる顔を真っ赤にしていきます。

「と、泊まるって……恋人とは言え男女二人で一緒に寝泊りするってだけでもアレなのに、まさかの三人!?ダメよ、さすがにダメよそんなの!いくら仲良しだからって三人でなんて常識的にかんが」

「じゃあ、私達は帰るね」

「いくぞ、蒼」

何だかとても興奮して上の空でぶつぶつと何かを言っているアオさんを、シロハさんとノムラさんがひきずって行ってしまいました。

 

 

 

 

「星が綺麗ね」

「だな」

「はい」

わたし達は、空が見えるところで布団を並べて、一緒に星を見ながら横になっています。

今日は雲が無くてとても晴れていて、星がいっぱい空に輝いていました。

「あ、あの星……紬に似てない?」

「あれですか?そんなに似てるんでしょうか?」

「うんうん、嫉妬してちょっと目を怒らせてむぎぎぎぎぎぎぎって言ってる時の紬にそっくりじゃない?」

「あー、確かに似てるかも」

「……むぎぎぎぎぎぎぎ……二人とも、ヒドイです!」

もちろん、本気で怒ってはいません。

それは二人も解っているみたいで、わたしが言うのを笑って見ています。

そんな風に他愛の無い、でも大切な瞬間を過ごしながら、時間は過ぎていきました。

 

 

 

 

二人が寝てしまった頃、わたしは起こさないようにそっと布団を抜け出して、灯台の屋上へ出ました。

そこから見える景色は、屋内で見上げるよりも、とてもきれいで、広くて、周りの世界がすべて星の海にのまれてしまったみたいです。

 

わたしはそんな星空を見上げながら、胸の前で両手を組んで、そっと星に願います。

どうか……

 

「……紬?」

「むぎゅっ!?ハ、ハイリさん!?」

 

突然後ろからした声にびっくりして振り返ると、屋上の入り口にハイリさんが立っていました。

「す、すみません。起こしちゃいましたか?」

「いや、目が覚めたら紬が居なくなっていたから……探してたんだ」

月明かりに照らされたハイリさんの顔は、とても真剣でした。

そうでした、去年の今日は、ハイリさんとシズク……二人とお別れした日でした。

「すみません、ハイリさん……ダイジョブです、わたしはもう、居なくなりませんよ?」

心配をかけないようにと、出来るだけ笑顔で答えました。

するとハイリさんは、黙って近づいてきて、そのままわたしをぎゅっと抱きしめました。

「むぎゅ!?ハイリ……さん?」

「うん……ずっと一緒にいてくれ。な、紬?」

少しだけ、ハイリさんは震えていました。

それに気づいて、わたしも急に色々な想いがこみ上げてきて、思わずハイリさんを抱きしめ返していました。

「……はい、もう、消えません。ずっと一緒ですよ?」

自然と、ぽろぽろと涙があふれてきます。

ハイリさんの暖かさにふれて。

そして、一緒にいてほしいと言ってくれる事がうれしくて。

気づいたら、ハイリさんも、同じように泣いていました。

わたし達は、そのまましばらくの間、ぎゅっと抱きしめ合っていました。

 

 

 

 

「……そう言えば、なんで紬はこんな夜中に屋上に?」

二人で並んで屋上に座って、星をながめながら、ハイリさんが聞いてきます。

「えとですね……お星様にお願いをしようかと思いまして」

わたしはそう答えて、笑顔を浮かべて、続けました。

「ずっとずっと、一緒にいられますように……です」

「三人で、か……そうだな」

「あ、えと……それはもちろんですけど……」

「ん?」

ハイリさんが、わたしの方を見つめてきます。

こ、これを言うのはちょっと……いえ、かなり恥ずかしいのですが……

「ハイリさんと、です。ハイリさんと、ずっとずっと、一緒にいられますように……と、お願いしよう……かと……」

ダメです!ハイリさんの顔が見れません!

最後の方はうつむきながらになってしまい、思わずハイリさんから視線をそらしてしまいました……むぎゅぅぅぅ……

「……紬」

「な、なんでしょうか?」

「ちょっと、こっち向いて?」

うぅ、きっとわたしは今、顔中真っ赤です。

それでも、ハイリさんの方へゆっくりと向きました。

「んっ!?」

ハイリさんの方へ向いたわたしの顔に、ハイリさんの顔が近づいて……

「……ありがとうな、すごく嬉しい。俺もずっと紬と一緒に居たいよ」

「……ハ、イリ……さん?」

頭の中が真っ白になりながら、わたしはハイリさんの名前を呼びます。

後になって考えてみれば、この時のわたしは、まるで自分が自分じゃないみたいでした。

だからきっと、こんな大胆なことが言えたんだと思います。

「ん?」

「もういっかい……してくれます、か?」

「え!?あ、あぁ……うん……」

目の前のハイリさんの顔が、ものすごく真っ赤です。

いえ、きっとわたしの顔も真っ赤です、きっと負けてません。

でも、真っ赤になりながら、ハイリさんは、顔を近づけて……わたしのお願いを聞いてくれました。

 

 

この日の夜の事は、ハイリさんとわたし……それと、二人を見守ってくれていた、星達だけの、秘密です。

 

 

 

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